52話 地竜討伐
13話構成は諦めた。まだまだ四章続きますー。
「うっふん、なのです! ……あんまし効果ないみたいなのです?」
やや前屈みの姿勢で、そのまま両方の手を膝に置き、両方の二の腕でどたぷんな胸を挟み込むようにして大質量を強調しつつ。
そのまま顔を上げて170センチ強まで背丈を伸ばした、成長したタクミの顔を見上げたタギツはそんな声を上げて、『頑張って誘惑作戦なのです!』を実施したものの。
当のタクミ本人が浮かない顔でいることに、不思議に思いつつ小首を傾げた。
「寝てる間に俺の神力吸ったんだって? 悪い子だなあタギツちゃんは」
「むぅー、タギツも呼び捨てがいいのですー、クルルさまやリュカさまみたいにっ!」
「うぇ? んー、じゃあ、タギツ?」
「はいなのでーす、タクミさまのお嫁さん、第四夫人になるタギツなのです! うっふーん!!」
ぶっ、とタクミは思わず噴き出してしまい、焦りながら手の甲で鼻水を拭った。
「えーと、待って待って? そのお嫁さんは一体どこから出て来たの?」
「?? 父上もクルルさまも、タクミさまが了承したらなっていいって言ってたのです? タギツのこと、お嫌いですか?」
何を今更? という風にもともと大きな目を更に大きく見開いたタギツが、タクミの腕にすがりつく。
同時に、タギツに新たに装備された極柔の果実たちの谷間に挟まった形となり、それは「むにゅるん♪」とタクミの腕に押し付けられ、タクミは意識せずその間近に近づいた深い谷間部分に視線を落とす。
「あっ、あっ!? ギュゲスさんの言う通りなのです、やっぱり見ちゃうのですねっ? タクミさまも、こういうのお好きですか?」
「こら、ギュゲスさーん! こんなちびっこに何教え込んでんのアンター!」
違うんす団長、そいつは悲しき男の性って奴で、あっしのせいじゃ、などというギュゲス、タクミたちとのやり取りを横目に、タギツは幸せそうに目を閉じて本格的に両腕と全身を使用して、タクミの左腕に全身でしがみついた。
――――☆
『そんな難しいお話じゃないんですよー、タギツちゃんを奥さんに迎えるのは?』
――難しい話だらけだろ、身体は育ったって言っても中身は幼児のまんまじゃん、この子? ヤバイってぜったい。
前日にクルルがギュゲスたちを引き連れて露払いしておいた、という地竜の洞窟へ向かう道すがら、タクミは脳内会議中、とあらかじめ断りを入れた上で、クルルと絶賛相談を行っていた。
議題は当然、目が覚めたら目を瞠る爆乳猫娘に変身が完了していたタギツに関することで。
『いえいえ、反応が幼児然としてるのは他人との接触時間が今まで少なすぎただけで、知識や能力はもう達人級に達してますよ?
何より、一度見聞きしたことは絶対に忘れませんから、シェリカさんについて回っている間にかなりの医学知識を修めてるみたいですし?
そろそろ予定を早めて治療術の実施に進む段階に来ているそうですよ。
あとは、見たことは一度で要訣を完全に理解して使用出来ますし。
吸収力の塊な子ですねえ、普通の神は自身の最初の能力を超えて新たに技術を覚えるっていうのはやらないので、ちょっと珍しい部類かも?』
――一度見たら要訣を理解する、ってことは。……もしかしてタギツちゃんって、俺の武術も使えるの?
『そうですよ? タクミくんの武術のほか、リュカちゃんの銃把棍もたぶん使わせたらすぐに使いこなしますよ。
応用力には欠けるので、自分で技を組み合わせるとかの発想には結びつかないと思いますけど。
いまは8番隊隊長のアトールさんに習った銃棍槍術をメインに前衛してますねー。
神力を無変換で直接撃てますし、後衛も兼任するのは他の聖神軍団幹部さんたちと同じですから、運用には困らないかと』
――そうなんだ? 俺の槍術も教えっかな。そういや俺も神鉄銃棍槍持とうかって思ってたんだった。やっぱ遠近両用は欲しいよねえ。重力魔法の応用でそのまま真空波とかも撃てるけど、どうも厨二臭くて抵抗感が……。いやそういう話じゃなくて。俺がそういうことする相手が増えていいのかって話!
『……あっ、えっ? ――いやん、タクミさんのえっちぃ。タギツちゃんは「神」ですから、そういう方向のアレやソレは必要なくて、ただ単にキスの回数が増える、くらいのものですよぅ? いつもやってるじゃないですかー』
――えっちぃー、っていや、だって、なぁ? そういえばクルルとバーチャルですると終わったあと物凄い虚しいよなあ、やっぱ実体なしじゃ……、いやそうじゃなくてっ!
『あうぅ、だってだって、クルルだって最後までしちゃったらいくらなんでも余韻中まではバーチャル感覚維持出来ませんよぅっ。――でも、真面目に話してもタギツちゃんの意志は「この世が滅びるその瞬間を超えてすら未来永劫に変わらない」ので、受け入れても誰も損しないと思いますよー?』
――ああ、そうか。神同士だもんな。……まあ、確かに嫌ってるわけじゃないんだし、そういうことする対象としては見れないけど、あの「神界最強の頑固親父」の了承もあるんだし、いいのかな? んー。じゃあ、この話はクルルに預けるから、奥様会議だっけ? そっちの方でよろしく?
『了解ですっ! でわミニクルルに戻りますねー?』
タクミが頷くと、すぐに肩の上にミニサイズのクルルの仮実体が出現する。
そのクルルが大きく頷きつつVサインをタギツに送り、タギツが歓声を上げる様子を横目に確認しながら、タクミはふとした疑問が浮かんだのだった。
(俺の神力を使って、実体がツクヨミ神殿にある状態で、俺に精神体を憑依させつつ、俺やタギツを媒体に仮とはいえ実体を新造出来る……。
それって自分の神力でなくても借りた神力で、自他関係なしの神核なしで実体創造出来る、ってことなんだから。
神核がないと実体がなくなるスサノオより全然強い証明なんじゃないのか?
――なんか、アンバランスすぎるんだよな、クルルの能力制限って)
後ろに続くミリアム、ギュゲス、リッティたちを見やると、どうもギュゲスとリッティの恋人繋ぎや恋バナなどを参考にタギツが更に要らない知識を仕入れている最中らしい。それはそれで微笑ましくもあったが。
(俺の能力もなんかいびつってか、変に矛盾がある気もするし。
スサノオも認める最強最大神力があるのに全開使用出来ないし、魔法は重力魔法以外殆ど反応しないし。
まるで何か初期制限があって、それに引っかかることは全部出来ない、みたいな見えない禁止システムがあるみたいな。
神力制限もそうだ。5パーセント制限、って言われてるけど、「神力の最大容量に神ごとに差があるのに、出力が一律5パーセント制限」っておかしくね?
俺が500なら25、スサノオが100なら5って感じで最終出力に差が出て来ちまうし。
「瞬間最大出力だけは三貴神が上」って『設定』もおかしい。
最終出力のパーセンテージが制限されてるなら、元が多い方がどんな使い方したって常に多いはずだし。
水圧の掛け方違ってる水道の蛇口なんだよな。山の上と下にある家の蛇口ってか。
蛇口の開き方をどう変えたって、同じ時間内に出る量は水圧に依存するんだから。
、蛇口の大きさをどう変更したって勢いは水圧高い方……元の量が多い=出す時の圧力が高くなる方が有利って大前提はひっくり返せないんだよね。
――どうしてもひっくり返すなら、どっかで溜めておいてそこで再圧力を掛けないと。
それが神核剣なのかもだけど、神核そのものに神力が溜まってる様子はないんだし。
――いっぺん、ここら辺クルルに問い質した方がいいのかも。
ただ、なんか引っかかるってか、これはクルルにもまだ言ってないけど……、『この疑問を聞いていいのか』っていう不安なんだよな。
これ、たぶん世界の根源に関わる疑問で。
この世界の住人のひとりなクルルにも思考制限みたいなもんがあって、それで数千年も根本システムに疑問を持たない状態――RPGの中のNPC状態なんじゃないか、って)
そこまで考えて、タクミは空恐ろしくなって思考を中断した。
自分の肩に乗って後ろの面々と雑談を交わすクルルや、その後ろの仲間たちもNPCで、もっと上のゲームマスターが設定をいじるだけで瞬時に消滅するのではないか、という発想にたどり着いたからであった。
(やめやめ、そんなことより、目先の問題に集中しないと)
「つーかさ? クルルが一緒だったのなら、みんなで地竜くらい退治出来たんじゃないの? ドラゴンスレイヤーってかっこいいじゃん、やっちゃえば良かったのに?」
などと努めて軽快に話しかけたタクミの言は、ギュゲス、リッティ、ミリアムの白い目で返されたのだった。
「これだから人外の人は……、団長たちは不老不死だから判んないかも知んないっすけどねえ、あっしらは死んだら生き返れないんすよっ?」
「ほんとにぃ、団長はもうヒトの心は忘れてしまったんですねっ? いくら団長たちが付いてるって言っても、怖いものは怖いですーっ」
「強敵と戦うことは騎士の誉れ、と言えども、やはり魔物最強の生物とされる竜種と戦うことはこのミリアムも恐怖であります!」
「えー? そうかなあ? 人間なリュカでも行けるって言ってたよねクルル?」
「ええ、そうですね? リュカちゃんが来てればたぶんソロで退治出来たと思いますけど……っと」
三人の言葉に疑問を浮かべるタクミと軽く会話を交わした後に、クルルはしまった、という表情を作った。
「どうして、リュカさまは来れなかったのでしょうか? タギツが尋ねてもシェリカおねーさまは教えてくれないのです。不思議なのです?」
――見た目は少女に成長しては居ても、ヒトと接する時間が少なすぎた中身が幼女然としているタギツであり、またリュカが対処中のエルフ少女が狂気に陥りつつあるためタギツの情操教育に悪いだろう、ということで詳細はシェリカの命によりタギツには秘匿していたのだった。
タクミ、クルルは鉄都ローンドーフの出発前に念話にてリュカに別れの挨拶と激励を済ませていたが、故意にタギツを通話圏内から除外したことも不審に拍車を駆けているものか。
「あーっと。タクミくんがキスしたそうにタギツちゃんを見ているので、応えてあげてはどうでしょうかタギツちゃんっ?」
「ほんとですかタクミさま?! ほんとですよねタクミさま!? ぴゃぁぁぁ、タギツは恥ずかし嬉しいのです、はいっ、どぞどぞなのです!!」
「……チョロすぎないかタギツ……」
目を輝かせて他を突き飛ばす勢いで先頭を歩くタクミに駆け寄ったタギツが目を閉じて待っているのを見て。視界の端に映るクルルが両手を合わせて拝んでいる様子にを横目に、タクミはタギツの柔らかい唇に口づけたのだった。
――――☆
『はいー、ギュゲスさんは続けて青のマーキングに沿って弾幕展開ー。今度は的が大きいのでどこに当ててもいいんですけど、なるべく鋭い痛みが発生するように弾頭は細く硬く絞って、一回の射撃がかなり小範囲に纏まるように調整して下さいー。
リッティちゃんは白マーキングの数値がゼロになったらそこに撃ち込んで下さいー、単発で威力高めでお願いしまーす。一発ごとに場所が移動しますから気をつけてっ』
昨日の露払い任務にてマーキングの効果を実感したことを聞いたタクミが、それなら念話中継と同時に展開させた方が利便性が高いだろう、という提案を行ったことにより。
いつもの全体念話網と同時に、タクミほどの高い集中情報集約・反映戦闘画面ほどではないにしろ、指示と目標位置を表示させる視界画面をタクミの無尽蔵に近い神力を元に、タクミ内部から全員の視界に共有展開させているのがクルルである。
それでいて、そこそこに神力を消費する、と言っていたミニクルルの仮実体はいつもの定位置であるタクミの頭上にちょこんと正座しているのだから、どれだけの同時処理能力を持つものか、まるで底が見えなかった。
「クラミツハさんより全然ちっちゃいじゃん? 子供以下のサイズだし。そこそこ動きは速いけど、天井も壁も床もあるし前のときほどは苦戦しないなあ」
そんな感想を述べながら、タクミは全長10メートルに達しようかという眼前の地竜が大きく振り降ろした皮膜つきの右翼も兼ねる右腕を、軽く自身の左腕を添えつつ左後ろに半身のステップ――三才歩で躱した。
ついでに、振り抜かれた腕に添えた自身の腕で化勁を使用した纏を使うことにより、振り抜く動きを更に加速させるように腕の向きに逆らわない方向へ自分の力を足すことで、黒地に黄色のまだら模様の龍鱗を煌めかせる地竜のバランスを崩し、つんのめらせることに成功する。
それにより無駄な力を殆ど使用せずに労せずして地竜自らが眼前で半回転してしまった隙を逃さず、タクミは地竜が無防備に晒した横腹に大きく飛び込み、地割れを発生させるほどの強烈な踏み込み音を伴う震脚と同時に、目にも留まらぬ速度の三連の打撃、迎門三不顧を撃ち込んだ。
苦悶の声を上げてタクミから距離を取ろうと動く地竜の背に、リッティが撃ち放ってあった強烈な威力を持つ魔力弾頭が地竜のよじられた背骨に沿って正確に着弾する追い打ちが発生、更に苦鳴の絶叫を洞窟内部に響かせる。
背に着弾した大砲弾の痛みに激しく表情を歪め、思わずよろけた身体を支えるために左腕を地に着けた――、その瞬間。
薄青く揺らめく光を発するミスリル鋼の全身軽鎧を身に着けたミリアムが、鎧と同じく青光を煌めかせる宝剣を、さほど力を込めた風には見えないながらも残光しか見えないような瞬速の一撃で振り抜き、地竜の左腕は大量の出血を伴いながら容易く両断された。
追い打ちで、身を捩り顔面を振った地竜の口から生えた牙を片手で掴んだタクミが、その牙を持つ片手を起点としてあらゆる打撃を連続で叩き込むことにより、周囲を真っ赤な噴血で染め抜きながら、徐々に地竜の顔面が押し潰されていく。
『あー、そろそろ皆さん正視しない方がいいかもですー、タクミくんがもうノリノリになっちゃってますので』
クルルの警告の通り、既に戦意を喪失し逃げ腰になりつつある地竜の顎元から喉、胸下と移動しながらもしっかりと地竜の全身を、無尽蔵の神力で常に超重力を発生させる重力渦展開で捕まえたままのタクミは、普段の模擬戦でも見せたことがないような終わることのない連続技を全く途切れることなく繰り出し続けており。
その技のひとつひとつを受けるごとに、肉が弾け骨が砕け、牙も折られ、唇は裂け、目も潰された地竜が泣き喚きながらも絶対に逃げられない、という状況は。
「なんっつーか、えぐい、っすよね。魔物戦やってる団長は初めて見やしたが、容赦がないというか」
「っていうかぁ、ものすごい楽しそうですよねー、手加減が要らないのを喜んでるっていうかー?」
「なるほど、これが連綿と途切れることなく続けられる連続技の極意! 眼福であります!!」
「ぴゃああ、タクミさま、母様のお伽噺に出てきた魔王みたいなのですぅ」
「……ちょっと待って待って? 魔王はなくね?」
最後に掛けられたタギツの言葉に、びくり、として瞬時に全身を止め、既に絶命していたのであろう身動きしなくなっていた地竜の体躯を放り出し、おもむろに振り返ったタクミはそのようにのたまったのであったが。
全身と顔面を数多の肉片と鮮血の返り血でまだらに染めたタクミの姿には説得力というものが欠片も存在せず、タギツは更に涙目で逃げ惑ったのだった。
――――☆
「しまったな、水魔法使えるエルフに同行願うんだったなー。血を洗えないんだった。久々に手加減無用で全力でぶち込めるサンドバッグだったからちょっとやりすぎちゃったなあ」
と、そのように苦笑つつ再度先頭を進むタクミを、全員が恐怖の目で見つめていた。
全身をそろそろ一部は固まりつつある血塊で汚したタクミは、ヒト族が神族以外で最も恐れるという竜種を今しがた、『ほとんどただの一人で、魔力で圧倒しつつ一方的に殴り殺した』という実績をまざまざと見せつけた後であり。
「魔王タクミさまー、魔王タクミさまー。ちょっと血の匂いがきっついのですー」
「魔王タクミさま。――なんか団長よりもしっくりする気がしやせんか? あっしはなんか、そっちの方が通りがいいような気がして来やした」
「魔王タクミさま、ですかー。リッティも、ギュゲスの言う通り、なんだかハマってる感じがびんびんですねえ?」
『魔王タクミさま。うーん、いい仇名ですねえー? いっそ定着させてみるのはどうでしょうっ?』
「お前ら揃いも揃って全員で一斉に魔王呼びすんなっつの! だいたいなんで俺が魔王なんだよ、殆ど魔法とか使ってないだろ!! そして。うーん、血の匂いは仕方ないかなあ、やりすぎちゃった自覚はあるんだけど。洞窟抜けた先に水場あるといいんだけど、ないなら究極は水脈掘るかねえ?」
地竜の棲家を抜け、更に奥に進む一行の進路は下り坂が終わって入り組みながらも、道筋は上方に伸びる坂道に変化しつつあり。
「あっ! 魔王タクミさまっ、上の方に光が見えるのです?!」
目ざとく、行き止まりかと思われた暗く細くなる通路の終端からほぼ垂直の上方、天井付近から闇を切り裂くように差し込む日光の光芒をタギツが発見し、大きな声を上げた。
「いい加減魔王呼びは……、うん、タギツ偉いっ。クルル、どうよ繋がってる?」
『はい、タギツちゃんお手柄です。繋がってますねー。位置的にも、あそこから「神国の北部領土」に抜けられると思いますっ。ちょっとあそこに到達するまでの直接足場が足りませんし、洞窟経路のマッピングは終わりましたから、足場構築の建材取りに戻りましょうか?』
「あー、そうだな。ここら辺もかなり狭いし、どうせなら先にここら辺の拡幅もやりたいな。あと、もともとは金鉱脈って話だったし、ムギリさんたちにも地竜退治終わったって知らせに戻らないと」
「……魔王タクミさまの一方的なタコ殴りでしたねえ……」
「うるせっての。お前らも一応ドラゴンスレイヤーなんだからな? そういうことなら俺だって、拠点戻ったら俺の貴族の地位をフルに使って全力で拡散してやるからな?」
『魔王タクミさまについてはちゃーんと次の奥様会議で周知しておきますから心配御無用ですよっ♪』
「リッティちゃん全然お役に立てた実感がないんですけどー、これでドラゴンスレイヤー名乗れちゃうんですねえ……。なんだか詐欺の片棒担いでいるような不思議な罪悪感みたいなものがふつふつと」
「確かに、クルルさまの教え通り、あの強烈な強度を持つ龍鱗ですらまるで紙のように切り裂いたこの宝剣の価値は計り知れぬもの! クルルさまの教えと初代国王の創始した剣技に恥じぬよう、今後もこのミリアム、修練を続ける所存であります!」
「帰ったらまたキスして貰うのですー!」
目標を全て達成した安堵感もあり、軽く掛け合いを行いつつ、一行は洞窟を引き返し始めたのだった。




