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転生したら神になれって言われました  作者: 澪姉
第三章 王国篇
33/120

32話 いともたやすく行われるえげつない攻撃

今回はぶっちゃけ読み飛ばしても大筋に影響ないです。

挿絵(By みてみん)


『タクミくーん、地図、出来ましたよっ♪』


 なんて言ってクルルが脳内画像として提示してきた地図はまんま衛星写真で。


 どんだけ桁違っちゃってんの神々の技術レベルって、なんて疑問がもう脳内全開状態だった。


 ――これって、中世レベルな一般人の技術力から逸脱しすぎてない?


『特に技術制限とかそういうのはないんですけど、何しろ魔法が便利すぎるんで科学レベルっていうのを向上させる学問分野が日陰ですからねー。

 この世界が地球と同じレベルまで発展するのはまだ何百年も掛かると思いますよっ?』


 ――まあ、それは前にポンプ作ったときにも思ったけどさ。


 俺も物は作れても原理を説明出来ないから、何作っても「謎技術で作られたオーパーツ」になっちゃって、その先の技術発展性がないんだよな。


 そこんとこどうにかしたら、もっと便利になるんだろうに。


 と、そこまで考えたら、クルルがなんか懸念そうな気配に。


『うーん……。タクミくんが世の中をもっと便利にしたい、って考えてるなら手伝わなくもないですけどっ。

 技術を与えるならまずその技術が受け入れられる下地を先に作らないと?


 新技術ですぐに人が死ぬような争いが起こるのは地球よりも更に科学技術が発達していないこの世界では茶飯事ですからね?』


 ――うぇ。そう言われると、もうティース姉たちに銃の概念教えちゃったりとか結構やらかしてる気がするけど。大丈夫かな?


『あれは魔法の概念変えちゃうでしょうねー』


 クルルが苦笑する気配。だよなあ、俺は作るのに関わった側だから原理知ってて予測して避けられるけど、初見殺しすぎるよなあの弾速は。


 ……で、戦争とか争い事だったらその初見で一回死んだらもう終わりなんだよな、普通の人間なら。


 自分が地球の知識で作った武器や技術で人が死ぬことが起こるかもしれない、争いを拡大するかもしれない、っていうのは心に刻んどこう。


「タクミ……どの。そろそろよろしいか?」


「んあ? ああ! そっちはほんとに一人でいいの? 何なら全員で掛かって来てもいいけど」


 クルルに呼びかけられたんで挙動不審になっちまってた。傍から見てたら物思いに耽ってるように見えたのかな。


 ていうか目の前に完全武装なルシリアが居たことをころっと忘れてたわ。


 今は、ツクヨミさんに「慢心と増長の頂点にいるヴァルキリアを鍛え直してくれ」って言われたんで、不承不承ながら、神殿の中庭で戦闘訓練やることになって、それで代表者の騎士団長ルシリアと一対一でタイマン張る流れになったとこなんだけど。


「ツクヨミさまの命にて模擬戦を行うことになり申しましたが、一人に対し全員で掛かるなど騎士団の名折れ、故に私が正々堂々お相手致す!」


 ……心意気は買うんだけどなあ。まあ確かに一番マシなレベルではあるんだけど、なんというか「試合」レベルで「実戦」には程遠いというか。


 負けたら次はないんですよ、戦場って。不老不死の俺に言われたくはないだろうけど。


 ――俺は、負けても死なない代わりにずたぼろのぼっこぼこにされたけどね。主にクラさんに。思い出すだけで身震いがしてくる。


『じゃあ、次に会ったらクラオカミはぼっこぼこのずたぼろにして二度と現世に出て来れないように封印しましょうっ』


 ――やめて!? 何ものすごく酷いこと考えちゃってくれてんのクルル?!


『クルルの最愛のタクミくんにそんな酷いことするなんて、あれは敵です、クルルは決めました』


 ――決めちゃだめだから!! 一応戦闘技能の師匠なんだからね!?


 むぅぅ、とか納得行かない様子だけどクラさんになんかしたらマジ許さないぞ?


 世話になった、って一言で片付くレベルじゃないくらいの恩師なんだし。ってか。


「……掛かって来ないのなら、こっちから行くけど……?」


「まだ開始の合図がないではないですか?」


 ぉぉぅ。そこからか。どんだけ箱入りだったのあなた。


「ええと。じゃあ。開始っ!」


 合図したら、抜剣して一礼して、ってとこから動き始めてやりづらいことこの上ない。


 今の動作中に三回は殺せたな。いや殺さないけど。


『反魂蘇生は出来ませんけど、首と胴が離れたとかじゃないなら手足の一本程度千切っても再生出来ますよっ?』


 ――何物騒なこと提案してくれちゃってんの?! グロすぎんだろ!!


 ……あ、でも、それでもいいかもな。死に繋がりかねない深刻な負傷もしたことないだろうし。


「ええぃっ! とぉぅっ!」


 とか、なんか一本調子に大振りで打ち込んで来るんで構えもせずに適当に交わしつつ、決着方法を考える。


 ほんとに女子だけのお飾り騎士団なんだな、ヴァルキリアって。


「どうしました!? 大口を叩いておきながら、本物の剣を前にしては手も足も出ないではないですか?!」


 はい? 昨日あんだけティース姉たちにぼこぼこにされといて。って、ああ、そうか。


 ティース姉が手加減して俺を勝たせたとか、タキリたちのお陰で勝った、とかなんか都合のいい勘違いしてやがんな?


 つか、武器の優劣で強さが決まる系の勘違い全開か。


「んー。じゃあ一発だけ入れるんで。……頑張れ?」


 言うなり、半身で後ろに置いた左足を主軸に軽くステップ踏んで。


 目に見えるゆっくりな速度で、右手を、兜を被ってないルシリアの顔面付近に当てる寸前まで伸ばして。


 慌てて顔をそむけて目をつむったのを確認して、右腕をくの字に曲げていちばん分厚い装甲になってるはずの胸甲の中央部に震脚込みで肘の一撃。


「きゃあっ?!」


 年相応の可愛らしい悲鳴を上げて、ルシリアが衝撃を殺せずに、数歩分の距離を身体を浮かせて吹き飛んじゃって。


 それでも倒れずに両足で踏ん張る気合はまぁ頑張ってるなあ、と思うけど、追撃したら殺せるよな。


 うーん、どの程度手加減していいのか判らん。


「苦戦してんじゃん、タクミー? 交代すっか?」


 ニヤニヤ笑いしてる完全武装のリュカが横合いから冷やかしてくる。


 そう、ほんとはリュカと模擬戦やる予定だったんだよなあ、俺の手足伸びたし若干義手と義足の装甲圧変わったんで慣らしとこうと思って。


「あー、リュカ、代わりにやってくれる? どの程度手加減していいのか判らんくて困ってる」


「格下に稽古つけたことないんだろ? すげえおっかなびっくりでやってるから可哀想に見えてたとこ」


 お見通しか。ここに居る中じゃライバックさんを除けば戦闘経験最長だもんな。神さまたちの経験は参考にならんけど。


『参考にならないと思うのはどうしてですか?』


 ――だって、クラさんもそうだったけど、基本的に攻撃で受ける損傷予想が再生可能範囲だったら傷つくのお構いなしで特攻しまくるじゃん?


 無限の再生力前提の特攻戦術はただの人間には教えられないでしょ。


『一応、ちゃんとした武術も教えられますけど……、百年ほど時間くれたらタクミくんを全武術マスターにして差し上げますよ?』


 ――他のみんなが死んでしまうわ! いいからちょっと黙ってなさいっ。


「稽古も途中で、私とまだ対戦中でありながら格下などとは、たかが神器の座を得た程度で増長しすぎなのではないですか?」


 びきっ。なんというか、堪忍袋の緒が切れるとはこのことか、的な。そうですか、じゃあ全力を見せて差し上げよう。


 クラさんに二百回以上も斃されたのは伊達じゃないんだぜ?


『神力0.2パーセントまで開放しますね♪』


 ――うん、ありがと。領域は左側だけに絞って。


『了解ですっ』


「じゃあ、ちょっと大人げないけど全力の『0.2パーセント』ね。当てないけど動くと危ないよ」


 言いながら、やっと剣を構え直したルシリアに向けて、渾身の左正拳中段突き、冲捶ちゅうすい


 ――神力を乗せた一撃は震脚をした床面に無数のヒビ割れを発生させ、撃ち抜いた拳はその延長線上にあったルシリアの右腕を掠めて中庭の壁面を貫通。


 風圧だけでルシリアをふっ飛ばして尻もちを着かせ、更に内壁の向こう側に何枚もあった外壁も全て貫通しちゃって。


 更に、奥の山頂の岩肌を粉砕して大きな煙が上がるのが見えた。


「……相変わらずえげつない威力だよな。全力出したら神殿ごと吹っ飛ぶんじゃねェの?」


 俺と大穴の空いた壁とを視線往復させるルシリアを横目に、心底呆れた、って感じで両手を頭の後ろで組んだリュカが声かけてくるけど。


 俺は真顔でその質問に首を横に振った。


「いや。全力出したら大陸が割れる」


「……は? ――マジで?」


「マジも大マジ。なんで、神族は地上じゃいいとこ全力の5パーセント程度までしか使用しちゃいけないってことになってる。今のは俺の0.2パーセントね」


「もし全力使用したら?」


 ――それは聞いてなかったな。そこんとこどうなのクルル?


『星が壊れる大惨事になるので全神族結集で時間を巻き戻して「全力を出した瞬間に介入して、なかったことして消しちゃう」感じですねえ? 今のところ二回しか前例がないですけどっ』


 ――……参考までに、誰と誰が?


『炎神カグツチと暴神スサノオですよ?』


 ――……スサノオって起こさないままの方が平和なのでわ?


『今更すぎますねっ? そこのところは本人と解決して下さいー、クルルは知らないですっ』


 笑ってやがる。まあ、スサノオはこっち側だしクシナダやタキリたちが居る地上を破壊する恐れは少ないか。


 何考えてるか分からないカグツチの方も調査したいけど、神国の首都に居るらしいし男神アマテラスとグルなのかもなあ。


 ……それはまた後で考えよう。


「ってなわけで、人外の化け物なタクミには退場して貰って『か弱い美少女』のオレが交代でちゃちゃっと指導すっからさ」


「誰が化け物だよ、っつかさっさと終わらせて俺と模擬戦やってくんねえと困るんだよ練習相手居なくて」


 腰を抜かしたらしいルシリアの顔を上からリュカが覗き込んですごい失礼なこと言ってるけど。


 ライバックさんの調査が長引いてるんで俺の練習相手が目下不在なんだよなあ。


 いっぺん帰って来たときにお手製のお好み焼きもどきを手渡したらものすごい喜んでたのが印象的だった。また作ろう。


 王国が緒戦敗戦で情報錯綜してるから王都まで出かけてみる、つって旅支度整えて出てっちゃったけど。


 全員で移動しても良かったんじゃないのかな? ここで待ってた方がいい理由があったんだろうか?


「タクミさんっ! もう一度、挑戦させて頂けますか?」


「ほえ?」


 考え事してたら、マント羽織ったティース姉が入り口の方から真剣な顔で迫って来て。


 クシナダさんとの修羅場はどうにかなったのかな?


 ってか、後ろににんまりしてるそのクシナダさんが居るのがものっそ嫌な予感しかしないんだけど。


「大丈夫です、欠点は克服しました。一瞬で終わらせますから!」


 ちょっと待って、ねえ、なんでそんな自信満々なのよ。あんだけボロ負けしといてさあ?


 分析力の塊なティース姉が自信満々ってなんかすげえ怖い。


 で。ティース姉と再戦する流れになったんだけどね。


 ……いや。えげつなかったわ。



――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――



 ――まともに相手する気にならないってか、対決する相手に同情してしまう。


『まさか、クシナダさんと協力するとは思いませんでしたねー』


 ――ほんとにね。てか、クシナダさんって神力使えるのね?


『いいえ、あれは魔力変換ですよー。クシナダさんの変換効率は100%ですからねっ』


 ――?? なんで?


『え? だって、クシナダさんって魔法そのものを作った神ですよ? この世に伝わってる魔法の殆どがクシナダさん開発魔法ですし?』


 ものすごい情報を得てしまった。


 あ、そういえば前に誰かが『アマテラスが魔法を作った』って言ってたっけ。クシナダさんのことだったのか。


『一般の魔力効率が低めなのは安全弁みたいなもので、神力に届く力をヒトに使わせると何やらかすのが分からないから、ってことらしいですね』


「クルルさんと脳内会議中ですか?」


 ティース姉に声掛けられて、また脳内会議に没頭してたことに気づく。


 なんかこれもう少し対策考えないとな。傍から見てすぐに気づかれちゃうのはいろいろ問題あると思った。


 戦闘中とかならもっと分かりやすくなっちゃうはずだし。


「あ、うん、そんなとこ。で、今の『いともたやすく行われるえげつない攻撃』を考えついたのはどっち?」


「そんな、ひどい」


 あ、これはティース姉の方だな。言いながらめっちゃしてやったりな顔してるし。そう。ティース姉がやらかしたのは。


 八本の銃棍を宙に浮かせて回転させつつ、どれから撃つか分からない状態を故意に作って見せて。


 撃つときは各銃棍のずらし射撃で上方向から撃ち下ろして回避されても弾かれてもとにかく相手の至近距離で炸裂するように射角を調整して。


 それで、連続射撃で『弾幕』を作っちゃったんだな。


 ……怖すぎて近寄れねえよそれ。鬼の正確度だったし。


 そら『一瞬で終わる』って自信満々なわけだわ、ヤバすぎるもん。


 世界で最初に鉄砲を多人数で同時に運用射撃する『範囲攻撃』を始めたのが織田信長だって言うけどさー?


 なんでこの世界に銃の概念伝えてたった数ヶ月で弾幕の概念まで辿り着いちゃうの。天才すぎ。


「タクミの拳技の方は、なんかコツとかそういうのはないの?」


 って声かけてくるのはリュカ。足技だけでルシリアを圧倒しちゃったのねリュカさん。


 仰向けでぜーぜー言ってるルシリアが遠くに転がってるし。トンファー使用せずに。


 それって伝説の『トンファーキック』なのでは、と思ったけど言うまい。ネタ元分からないだろうし。


「あー。あるにはあるんだけど。ああ、リュカになら伝わるかなあ?」


 いま一人相手に組手終わらせたのに全然余裕でステップ踏んだり飛び跳ねたりしちゃってるリュカの前で、軽く半身で中腰立ちから。


「これは神力も魔力も何も使わないでやるけど。分かる?」


 脱力姿勢から自由落下みたいに瞬間で腰を落として、それから全身の力で踏ん張って着地すると同時に両手を広げて左右に突き出して、背筋を全力でぴーんと張って。


 ずどん! って震脚の音が響く。ああ、やっぱいいわあ筋肉のある男の身体。こうでなきゃ威力乗らない。


「あ。解った」


「解った?! 解ってくれる!?」


「うん、オレの技とは全然違うけど。

 オレは力弱いから遠心力や重力利用するけど、タクミのは重力落下を踏ん張ると同時に、身体の中の力を、全部一撃に結集する体当たりだろ?


 だから、自分の体重や重力が利用出来ない空中の蹴り技が極端に少ないんだ、と思った」


「ぉぉぉぉおおおお!!! そう、その通り! たくさん技あったりするけど基本全部そう!!」


 まさかこんな異世界まで来て要訣を理解してくれる人間が居るとわ?!


「真似しないけどな。それめちゃくちゃ近距離しか使えないだろ? 利点ってのが、たぶん拳や剣を振り回せないような超至近距離で自分だけ一方的に撃てる連続技、と見たぜ?

 だから、やたら相手を捕まえる関節技技法や体勢を崩す足技が多いんだろ。


 遠距離ヒットアンドアウェイなオレと絶望的に相性悪いのに、なんであんな普通に戦えてるのかますます不思議に思えてきたぜ」


「んー、いくつかは中遠距離技あるけど俺が苦手なんであんまし使わないだけ。てかある程度以上離れたら魔法使った方が威力出るし?」


「てかそれ、防御とかどうすんの? 攻防一体なのは分かるけど」

「ある程度は手足で受けるよ」


「受けられないときは?」


「全力で我慢する」


「我慢する」


「ひたすら耐える」


「」


「そしておもむろに反撃」


「」


「最後に勝つ」


「なんでオマエそんな脳筋思考なの」


 ものすごい呆れられました。あるぇー?


 そんなこんなで、二ヶ月ほど武術訓練と魔法開発で、残りは今後の話し合いとか組手三昧を神殿で過ごしてた。


 知り合いっていう傭兵団の人を連れてライバックさんが神殿に戻ってきたのは更に一ヶ月後だった。



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