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転生したら神になれって言われました  作者: 澪姉
第三章 王国篇
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31話 粉物こそ至高

ひさびさの日常回。

【2017/3/1追記】タクミくんがフープ兄の過去を知らなかった理由を変更しました。

「えっと……、どちらさま、でしょうか?」


 ――うん、解ってた。そうだね、ものすごく見た目変わっちゃったもんね、俺。


 でも、実の姉とまで思ってもいいくらい親しくしてたティース姉の口からそんな言葉が出て来ると、やっぱちょっとツライ。


 ティース姉たちが泊まってる宿屋を見つけて、扉をノックして。出てきたティース姉のそんな一言に、まぁちょっとだけ凹んだんだけど。


「もしかして……、タクミ、か?」


「なんでアカの他人なリュカの方が先に気づくんだろう……。

 そうだよ、俺、オキタ・タクミ13歳。――いや、外見的には17~18歳くらいになっちゃったんだけどさ」


 びっくり仰天、ってな具合で大きな目を見開いてぽかん、と口を開けて、俺を『見上げてる』二人のおでこを、ちょんちょん、と両手の人差し指で突いてみる。


「あっ……、ツクヨミさまの神力で成長した、とかでしょうか?」


 驚きは収まらないながらも、事態をだいたい把握して来たらしいティース姉がドアの前からどいて中に俺を通そうとしたけど。


「あなた、私たちにも紹介して下さいませんか?」


「ととさま、紹介!」


「お父様、紹介して下さい!」


「父上、挨拶します!」


「……あなた? 父? ――タクミさん、どういうことか説明して下さいますか?」


 俺のすぐ後ろに居たクシナダたちの発言に、ティース姉がびきっ、と額に青筋立てるのが見えて。ああ。やっぱりこうなった。


『タクミくんが鈍感すぎるのがいけないんですよっ』


 ――ンなこと言ってもいろいろありすぎて忙しかったんだし仕方ないだろ? あー、この脳内会話もなんか慣れないっつか思考ダダ漏れで恥ずかしいっつか。


『深い思考までは読めませんよー、思考シールドも張れたりしますけど、教えませんー』


 ふっふっふ、なんて不敵な笑みを浮かべてそうなクルルの声が脳内に響き。


 俺は苦笑しつつ状況説明のために後ろの四人を引き連れて、さして広いとは言えないティース姉とリュカの女子部屋に入った。



――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――



「ぼっ、暴神スサノオっ?!」


「うん、だいたい三分の一くらいね」


「フープとは体格ちょっと違うけど、いい筋肉だよなあ」


「フープ兄は全身ガッチリな持久力型だもんな。俺はひょろ長細身で割と瞬発力に偏向してる感じの筋肉の付き方してるから」


「ふぅ。いろいろ驚きましたけど、だいたい分かりましたわ」


 と、もう驚きすぎて心臓止まるんじゃねえの、って感じで目まぐるしく表情変えまくったティース姉とリュカに一通り説明が終わって。


「もうどうやらバレちゃってるみたい、ですから、こうなったらわたくしも遠慮してる余裕はなさそうですわね?」


『正妻の座は譲りませんけどねっ』


 ――妙な対抗意識出してんじゃないの。てか聞こえてないでしょ、それ。


『窓や床に文字描くとかで伝える方法はありますよっ』


 ――ただのホラーじゃん! やめなさいっつーの!!


「ってか。ライバックさんはお出かけ中? 一応保護者やって貰ってるから一番に報告しなきゃ、と思ってたんだけど」


「ああ、ライバックさまは昔馴染みの傭兵団のツテでいろいろ探ってみる、って」


 戦時で街中が浮ついてるから退路確保も兼ねて、と俺の疑問にリュカが答えて。さすが大人だなあ、先まで考えてるや、と感心しきり。


 と、そういえば。


「ティース姉は知ってるかな? ここら辺まで来ちゃうと、冒険者ギルドってどうなってるんだろう?」


「ああ、ギルド情報で何か調べものでしょうか?

 ここら辺ですと開発が進みすぎて冒険者が冒険するようなダンジョンもありませんから、普通に戦闘傭兵団の傭兵ギルドに変わってると思いますわよ?


 一応、名目上の冒険者ギルド本部がありますから問い合わせはしてみますが、お望みの情報があるかどうか?」


「ああいや、冒険者ギルド通して路銀稼ぎとか出来るかな、って思っただけなんで。俺自身が飲食不要なんでまるっきり忘れてたけど、リュカたち、路銀辛くない?」


 そう。中に入ったクルルに言われて初めて気がついたんだけどさ。


 そういえば、エイネールを出るちょっと前くらいから、あんなに好きだったお菓子食べるのも数日おきになっちゃってるみたいだし。


 ここも浴室ない質素な狭い部屋取ってるし、もしかして、節約生活に入っちゃってるんじゃないかな、って。


 図星だったのか、リュカが服の匂い嗅いだりとか、ティース姉がささっと俺から距離取ったりしてるけど。


 いや、臭ったりはしてないから大丈夫よ?


 でも女の子を旅に連れ出してる手前、清潔快適は保証してやりたい我儘がだなあ。


「父上、神殿の方にお連れしてはいかがでしょうか?」


「……ん? タギツは気にしないの? ってか、ヴァルキリアがまたうるさそうだけど……」


「でも、あなた。神殿から離れると男神の策敵に入るようになりますし、全員が神殿の聖域内に居た方が何かと便利かもしれませんね。

 それに。神殿は水が使い放題ですよ? 山脈越えで水道を引いてますから」


 ――ガタッ。山脈越えで水道と言えば。思い当たる土木建築構造物はただひとつ。古代ローマで有名な水道橋! なにそれ見たい!!


『タクミくん意外なところで建築物に興味あったんですねっ?』


 ――いや俺もともと建築物や構造物オタクよ? 原理解ったらすぐ作りたくなるし? 地球でもめちゃくちゃいろいろ自作してたじゃん、風力発電のプロペラとかさ。


 まあ自分でも分かってる欠点としては、作ってる最中が楽しくて出来上がったら割とおざなりになっちゃう目移りの早さかなあ。


「お話を聞くに、タクミさんの半分にも満たない部分がスサノオなのですわよね?

 それで『あなた』呼びは少々気が早いのではないですか?」


「あら、赤の他人に言われる筋合いはありませんでしてよ? ねえ、タキリたちもととさまはととさまって思うわよねぇ?」


「「「思うのですー!」」」


『ねえ、タクミくんっ。あっちは放置しておいていいんですかっ?』


 ――クルル、地球には偉大な諺があった。「君子危うきに近寄らず」ってな。


 ……というわけで、俺は全力スルーする、異論は認めない。


 目に見える勢いで相互にばちばちと火花を散らしつつ、表情だけを見ればにこやかな談笑、とも取れる女の戦いを背後に捨て置いて、俺はそっと女子部屋の扉を閉じ、足早に神殿への道を戻った。



――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――



「リュカがくっついて来ちゃったらライバックさんが戻ったときに困るんじゃないか?」


「バカヤロウ、あんな修羅場に置き去りにされる方がよっぽど怖ェっつーの」


「なんか今の言い方、シェリカさんに似てたな?」


「そ、そうか? お嬢さんは尊敬してる姐御だからな、ちょっと嬉しいかも」


「――尊敬してる兄貴はフープ兄?」


 びしっ、と空気が固まった気配が。地雷だったか?


 でもずっと気になってたからなあ、リュカと二人っきりって意外とない時間だし、ちょっと聞いてみたかったんだけど。


 神殿の屋根のてっぺん、なんてまず間違いなく他の邪魔が入らない立地だしなあ。


 遠くに見える、山を繋いでる水道橋がマジ絶景。


 クルルが神力調整でハンパない距離まで映像化してくれるんで、元々眼球あった頃の裸眼とは比較にならないくらいの超遠距離視界だし、これは感動的すぎるなあ。


 下からなんかヴァルキリアたちが降りてこいとか不敬とか怒鳴ってる気がするけど聞こえない。


「……ふっ。玉砕したての女子に怖いもんはねェんだぜタクミ? 売られた喧嘩なら買ってやんぞ??」


 失恋ってか玉砕しちゃってたのか。悪いこと聞いたかな。まぁフープ兄とマンツーマンの時間結構取ってたみたいだし、そのときかな?


「てか、あのヒトのどこが良かったの? 言っちゃ何だけど、戦闘以外じゃどっか飄々としてて掴みどころがないってか、本性が見えないって感じなヒトだけど」


「――って。もしかしてタクミ、知らないのか? あの人『鷹の目フープ』だろ?

 西方最強の戦士で軍指揮官じゃん、憧れないわけないだろ??」


「……えっ??」


 なんで弟が知らないんだよ! って逆に驚かれてしまったけど。


 いや。冒険者でずっとシルフィンと一緒に旅してた、ってのは知ってたけど、軍指揮官とか初耳すぎるんだけど。


 でも、そういえば、クラミツハの神殿でトーラーさんも最初からフープ兄に指揮権全部丸投げしてたっけ。トーラーさん自身もすげえ強い忍者で首領やってたのに。


 もしかして、そういう知名度が最初からあったせいか?


「……あっ。もしかしたら、冒険者として知り合ったから教えなかったのかも……、過去は詮索しないのが冒険者の不文律だし」


「冒険者の不文律ってそんなんあるんだ? 傭兵の不文律と似たようなもんなのかな?

 でも鷹の目フープつったら、敵対者は徹底的に皆殺しにする冷徹で冷酷な戦略取るけど、味方はどんな策略使ってでも生きてる限り絶対に助ける、つって。


 あちこちで雇われ指揮官やっててめっちゃくちゃな有名人だぜ? どんなに劣勢でも鷹の目を雇ったら絶対に負けない、みたいなレベルで。

 引退して冒険者やってたのは知らなかったけどさ」


「なにそれ絶対俺の知ってるフープ兄じゃない。って、鷹の目、って仇名はなんで?」


「まるで空から見てるみたいに見えないとこまで把握して細かい指揮して、なんでかその予測が絶対外れないからだ、って聞いてる」


「あ、それ俺の知ってるフープ兄だわ」


 どっちだよ、と突っ込まれつつ、俺は急傾斜している屋根の最先端部までとことこと歩いてって。


「なんか久しぶりにこういう高いとこ登った気がするなあ。身長伸びて目線が前世に近くなったから違和感ぐっと減ったし。

 ティース姉も連れて来たら喜ぶかなあ。ああ、後で模擬戦しようかリュカ」


「ティースをここに連れてきたら怖がるんじゃねェの? オレらみたいに高所慣れしてねェだろ」


 苦笑しながら、隣にリュカが並び立つ気配。


「綺麗だよなあ、ほんと。――この先でばりばりの戦争やってる、とか信じられないよなあ」


 あ。やっぱ気づいてたのね。さすが、踏んだ場数が違うだけある。


 ……そう、水道橋も見たかったのはほんとだけど、南の国境でやってるっていう戦場が見えるんじゃないかな、って思ってさ。


 あれ、俺ってそういえばこの世界の地理も知らないぞ?


 ――クルルー。そういえば俺、世界地図とか知らないんだけど?


『あっ。そういえばそうでしたねっ、ちょっと待ってくれれば衛星写真撮りますけどっ?』


 ――は?? 人工衛星とか打ち上げちゃってんの???


『いいえ? 神々が作ったので神工衛星ですけどっ? あと、直接周回軌道に置いたので打ち上げでもないですねっ』


 ――なんかもう、突っ込む気力も失せたので、それ、後でよろ。


 クルルに思念で答えつつ、深々とため息。


 地平線が空に溶ける光景に見入ってたらしい隣に立つリュカが、んっ? てな風情で俺を見上げてきた気がしたけど。リュカに言ってもわからないだろうし。


「リュカなら知ってるかな。南の国境が戦場になってる、ってことはさ。もしかして、通り抜け出来ない、ってことかなあ?」


「ああ、だろうなあ。戦場かわして無理くり通過しても、今度は着いた先で敵国人か密入国者かスパイ扱いで面倒事になるのは目に見えてるし」


「ぐぁー、それ、考えてたし。そっかー、ダメかあ」


 ぐしゃぐしゃと頭をかき回して、その場にうんこ座り。八方塞がりだよなあ。


「どれくらい続く戦争なのか、予測つく?」


「無茶言うなよ、オレは戦場の場数は踏んでる、つっても指揮官経験なんざねェよ」


 立膝にひじを置いて、面長になった顔を手に乗っける変なしゃがみ姿勢のままでリュカに聞いてみたけど、まあそうだよなあ。


 てか16歳の女の子が――見た目はボーイッシュってかまんま痩せ気味の美少年だけど言うまい――戦争の指揮官やってたら逆に引くわ。


「そこら辺も含めてライバックさまが情報集めて下さってるんだろうから、ライバックさまの帰りを待ってみたら?」


「あ、そうか。傭兵団を当たってるんだったらそういう情報も当然入って来るのか。

 ――ライバックさんに頼りっきりで申し訳なくなって来るな。なんか贈り物でもして感謝の心を伝えたいとこ。


 ……リュカ、ライバックさんの好物って何か知ってる?」


 で、聞いた話によれば、粉物に目がないそうで。


『粉物こそ至高』とかよく熱弁してる、なんていうものすごくイメージに合わない情報まで貰った。


 あのしっぶーいナイスガイな外見で、粉物について熱弁してる姿が全然想像つかなかったんだけど。


 しかし、こっちで粉物なんて単語を耳にするとは思わなかったけど。たこ焼きとかお好み焼きでいいのかな。っつーか、この世界にタコなんか居るのか??


 とかなんとかいろいろと疑問は尽きないながら、リュカが身体冷えて来た、って言うんでとりあえず降りることにした。


 もちろん、うるさいヴァルキリアさんたちはそっこー撒いた。


 ありゃ付き合っても何一ついいことない、と思ったので。悪しからず。



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