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7.ゴダ森林深部

遅れてすみません!

「マリーが、攫われた……」


フォードからこの話を聞いて既に30分が過ぎただろうか?


俺達3人はグレン王国城下町に戻ってきていた。


「おい、フォード!どういう事なんだ!?……いや、違うな……何が起きたんだ?」

「何が起きたのか、か…………そうだな。簡単に話すと、この街が攻められた、という事だ」

「せ、攻められた!?」

「そうです、お嬢様。あなたは城暮らしですからよく分からないでしょうが、意外とよくある事ですよ?」

「そ、そうなのか……やっぱり僕は世間知らずなのかもしれないな……」

「フォード、攻められたって、何に攻められたんだ?」

「ふむ、これは少し驚いたんだが……魔族なんだ」

「魔族………」

「そうだ。魔族だ。魔族の話を聞いたことはあるか?坊主」

「……いや、ないな。ちゃんと聞いたことは無い」

「そうか、まぁこれは一般人でも詳しく知ってるやつはあまりいないから仕方ないだろうな。簡単に説明してやる」

「あぁ、助かるよ…」

「まず、魔族っていうのは魔王の配下の者達のことを指すんだ。正確には、魔界に住むヤツらのことなんだけどな」

「魔界?」

「うむ、魔界だ。まぁ魔界と言っても別の世界にある訳では無い。普通にこの世界にある。まぁ、地下だったり逆に上の方だったりするんだけどな」

「なるほど……」

「そして、魔族と人間は戦争状態にあるんだ」

「……それが今回攻められた理由じゃねぇのか?」

「いや、こんな駆け出し冒険者の集まる街を攻めたところで奴らにはそこまでメリットはないだろう?それに、そもそも……」

「そもそも?」

「今はほぼ休戦中だったんだ。魔族と人間はな」

「そ、そうなのか?それはいつから……」

「今から100年程前だと聞くが……そもそも、この話はさっきギルドの中でした筈だぞ?」

「あ?そういえばそうだな。忘れてたぜ」

「おい、少し待て!という事は、この街が攻められる理由は一つもないじゃないか!」

「そうです。だから驚いたんですよ自分も……」

「アグネーゼ、今はそれじゃなくて魔族の情報が先だ。フォード、続きを頼む」

「あぁ……それでだな、魔族は見た目は基本的に人と同じなんだが、あちらは怖いくらいの階級社会でな、同じ魔族でも立場とかそこら辺が全然違うんだ」

「サタンとかルシファーとかか?」

「バカタレ、あんなお偉いさん方はもう少し違う次元だよ。あそこは神みたいなもんだよ………そうだな、例えていうなら生まれた瞬間からギルドマスター会議の中の立場を争っているようなもんだ……はぁ行きたくねぇなぁ今月…」


言いながら上を向くフォード。その目には光る何かが見えた。


うん、なんとなく察したよ、ギルマスはギルマスで大変なんだね……


「ま、まぁとにかく、あっちはあっちでまた大変なんだよ。あ、あと、魔物と魔族はまた別だぞ。魔物は魔族でも人間でも襲うからな」

「へーそうなのか?てっきり魔物は魔族側なんだと思ってたよ。使い魔的なのはないのか?」

「それは確かにいるが、魔族に限らず人間にもいる。そこに異なる部分はない」

「うーん、じゃあそこまで違いはないのか?俺らと魔族には」

「その通りかもしれないな。……いや、大きな違いといえば一つあるぞ。魔族の奴らは……正しくいうと幹部レベルの力を持つ奴らは獣化できる奴らや、魔法関係なく火を吹くヤツ、翼生えてるやつらとか、人間とは全く違う力を持つ奴らもいる」

「おぉ…結構違うんだな……」

「そこはな。あと、基本的に闇属性の魔法を使う奴らが多いんだ。個人差はあるけどな」

「色々あるんだなぁ…」


アグネーゼが途中から話を聞かずにギルド内を彷徨いていたものの、魔族に関して俺はある程度の知識を得ることが出来た。


「それで、魔族の奴らはどこにいるんだ?場所は把握出来てるのか?」

「あぁ、それなら偵察舞台が今やっている所だ。場所が分かり次第すぐに向かう事になっている」

「じゃあ、それまでは準備でもしてるか…」

「そうしてくれ。すまんな、折角の初クエストなのにこんなことになってしまって………」

「ふっ、フォードらしくないな。いちいち謝らなくてもいいだろう?マリーさんの方が優先だよ」

「ほぉ、言ってくれるじゃねぇか坊主のくせに……」


俺らは顔を見合わせて笑い合う。周りから見たら師匠と弟子ってところだろうか?そんな関係も、アグネーゼとフォードを見ているといいなぁと思う。アグネーゼは嫌いだけどな。


「ところで、あの、坊主………なんかあそこに美幼女と美少女が戯れてる素晴らしい景色があるのだが…」

「おおお……本当だな。神のごとく美幼女と美少女(外見のみ)が戯れてる…」


「おねーちゃん、あぐねーじぇってなまえなのー?」

「そうだぞ〜。僕の名前はアグネーゼだ。よろしくな、マシューちゃん!」

「よろちくなの!」

「くはっ!か、かわいすぎる……」


あれうちの子なんですよ!みなさんっ!俺の子供なんですよぉー!(忌み種の可能性微)


「あぐねーじぇおねぇちゃん、どこにしゅんでるの?」

「教えて欲しいか?そうかぁ〜!僕はな、グレン王国の上の方に住んでるんだぞ〜!」

「うえのほぅ……?あ、あれだ!おっきぃ〜いえだねぇ!まちゅーもすんでみたい!」

「くはっ!いいぞぉ!いつでも来い!いや、寧ろ今日から来るといい!」

「じゃあおねぇちゃんのいえにあそびにいく!」

「はぐぅっ!!ハァハァ、かわいぃん…」


……やべぇぞあのガキ。顔が軽く放送事故なんだけど。

まぁ、分かるよ?俺だってマシューと話す時はあんな感じになるし、愛でてるよ?

でもさ、お前接点ねぇよな?なに人の子(違います)に手ぇ出してんだよ?許さねぇぞ。


「あれれー?アグネーゼちゃーん?俺と態度違いすぎませんかー?」

「なんだ黙れ下賎の者。マシューちゃんは僕の天使だ。文句あるのか?」

「お前は暴君ディオニスか。あと、マシューは俺の娘だ」

「ふんっ、嘘を吐くな!お前みたいなミジンコの細胞みたいなやつから、こんな神の子が生まれるわけないだろ!そんなこと、僕でも分かる!」

「1回しばくぞこら」

「まちゅーはぱぱのものだよ?」

「くはっ……ぱ、ぱぱのもの……」

「なんだよその目は。そんな目で俺を見るんじゃねぇ。何が言いたいんだ、この野郎」

「ふ、ふふ、幼気な少女の胸を汚しておいて、これ以上罪を増やすのか?貴様は」

「「「!!!!」」」


今の一言で、ギルド内にいた冒険者から一気に視線を集めたのだが、アグネーゼはそれにすら気付かないようだ……

ってか、やめろお前ら!そんな目で見るんじゃねぇ!その目はなんだこの野郎!


「あれは事故だ!そもそも、マシューの教育に良くないだろ!」

「事故って……15歳の少女の胸に触れるなど、最早犯罪だぞ!今からでも警察に突き出してやろうか!?そもそも貴様みたいな奴に教育なんて出来るわけないだろ!」

「ちゃんと教育してるわ!色んなこと教えてるわ!」

「そうだよ!さっきまちゅーにふくきせてくれたもん!はだかでさむかったけど、きてたまんとをぬいできせてくれたもん!」


「「「!!!!!!?」」」


「マシューさぁん!!!間違ってないけど!そうだけど誤解が生じるよねそれ!?」


ギルドの皆様ぁぁ!!やめてぇぇ!!そんな目で見ないでぇぇぇ!!!

それこそ事故なの!だって、竜から人になるとは思わないじゃんよっ!これ言えないけどさ!


「ぱぱも『なかだと(ふくの)あったかいな』っていってたもん!」


「膣だと温かい!!!!?」


「「「「「!!!!!!!!!」」」」」


「(まちゅーが)なかにいると、くちゅぐったいんだって!」


「神木そらぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」


「「「死ねぇぇぇこのロリコン野郎っ!!!」」」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!マシュ、マ、マシュ……………マシュュュゥゥゥゥゥ!!!!」


「貴様、本当に警察に突き出すぞ!!」

「やめろっ!誤解だし!!何もしてねぇよ!警察だけはやめてくれっ!悪い思い出しかねぇよ!」

「悪い思い出って……貴様、まさか既に前科が…」

「ねぇよ!なんもねぇよ!前科もねぇし今も何もしてねぇ!」

「何を言う!僕の胸をさわっ……揉んだっ!」

「脚色を加えるんじゃねぇ!揉んでねぇだろ!」

「……すみません、警察ですか?…はい、事件です…」

「これは記事になるぞっ!メモメモ……」

「首だ!賞金首にかけろ!値段設定!?最高にしておけ!」

「ハッハッハ!すごいことになったじゃないか坊主!」


やめろ、電話するなメモするな俺を賞金首にすんな!!

つーか店出ようとしてる人がたくさんいるんですけど?どこに向かう気ですかっ!?

そしてアンタは笑ってないで助けろやぁぁ!!


「それはそれはいやらしい手つきで僕の胸を揉みしだいただろうっ!おまわりさぁん!」

「やめろぉぉぉ!!!周りの人動いてるから!『俺は警察に伝えてくる…』とか聞こえてきてるからっ!やめてくれっ!俺の人生が終わるから!社会的な意味でぇ!そもそも、揉みしだくほどない────────ごめん」

「全く、何を言い出すかと思えば……最初からお前の人生など始まっていないだろう!」

「怒ってもいいところノータッチな上にすっげぇ失礼な事言ってる自覚あるかっ!?」

「ノータッチではないだろ!バッチリタッチだろ!」

「な、なんのはなしちてるの?」

「「大人の話だからマシューは聞かなくていいんだよ!!」」

「な、なんか、2人とも……こわい…」

「だいたいな、今はシリアスムードだっただろうが!なんでそれをぶち壊してくるわけ!?今大変なんだよ!?マリーさん攫われてるんだよ!?」

「それよりも、僕の胸が優先だっ!!」

「こいつ言い切りやがった!!!」


周り見ても味方が1人もいないのでたすけてぇ、の意味を込めてフォードをチラッと見る。なんと、フォードはイライラを表に出すように足をパタパタさせていた。

そう、怒って────────


「いや、おかしくねぇ!?」

「うわっ!ついに変態が壊れた!!一人で話し始めた!?」

「なんでアンタがキレてるんだよ!元はといえばアンタがこっちを指差して『戯れじゃぁ』とか言ってたんだろうが!おかしいよなぁ!?」

「た、戯れ……僕を指して戯れとはなんだフォード!?」


……ふふ、孤立しない方法、それは共通の敵を作ることである。


って昔、俺のゲスイ友達が言ってた気がする。


「な、なんのことで!?い、いやぁ、とりあえず、マリーを助けに行かなきゃですなぁ!」

「そうなんだよ!こんなことしてる場合じゃねぇんだよ!」

「そうだよ、マリーさんが攫われてるじゃねぇか!!こんなロリコンに構ってられねぇよ!」

「行くぞてめぇら!マリーさんを助けて今度こそソープのサービスを追加さてもらうんだ!!」


遅ぇよ行動が!あとてめぇらは行動が不純すぎんだろ!なんだよソープサービスって!しかも今度こそって言ってたよな!?何回頼んでるんだよ!てかツッコミどころ多すぎだろ!!


「いや、実はな、かくかくしかじか前にもマリーが攫われたことがあってな…」

「これ初めてじゃないの!?」

「そりゃ、最初はビックリしましたけどね………

流石に3回目にもなると慣れが出てきまして……」

「マリーさん、不運体質なのかなっ!?」


なんだよ3回目って!?あの人すげぇな!眼鏡かけてる小学生探偵でも付いてきてるんじゃねぇの!?


「ま、まぁ、それでですね。そろそろ慌て始める時間でしてね…」

「なにそのゲームの仕様みたいなやつ。すごいメタいんだけど」


「「………………………」」


「────────やっべぇ!!!!マリー、攫われてるじゃねぇかぁぁぁ!!!??」

「お前、一回脳外科行ってこいよぉぉ!!!」

「ねぇ、どうしよう、マリー攫われてるよ?ねぇ、このままじゃ何も出来ないよぉぉ」

「何なのお前!?なんでそんなにキャラ変わるの!?離せっ!やだっ、ちょ、アグ、アグネェゼェ!!助けてくれぇ!」

「……いや、実は以前、僕もそれをやられたことがあって………1時間33分38.56秒の間ずっとそのままだったのを今でもはっきりと覚えているんだよ…」

「お前のカウントにも狂気じみたものを感じるんだが!?」

「とにかく、だから助けには行かない」

「この街って、普通の人は誰もいないのかよお!!」


シリアスって言葉お前ら知ってる!?

普通に考えたら、この状況はシリアスパート突入だよねぇ!?

なんで、この世界にはテンプレが通用しねぇんだよクソがァ!!


「早く離せや、この変態クソギルマスがぁぁ!!!」


……………1時間34分59.35秒。


俺はこの数字を一生忘れない。そして、次の被害者にこの事実を伝えるのさ……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いま、情報が入った。マリーはどうやらゴダ森林深部にある"漆黒の井戸"にいるらしい」

「漆黒の井戸?なんだその明らかに危なそうな場所は…」

「危なそうというか、馬鹿みたいに危ないぞ。……まさかとは思うが空、漆黒の井戸すら知らないとは言わないよな……?」

「ま、まぁ、そりゃ勿論……な?」

「………はぁ、ちゃんと聞いてろよ?」


アグネーゼの説明によると"漆黒の井戸"とは俗称であり、正確には"ゴダ水路入口"であるのだとか。ゴダ森林の深部にあり、その周辺に生息しているのはゴブリンだのスライムだの唯の低レベルな魔物であり、近づく分には何の問題もないのだそう。

だが、1歩その井戸を降りて中へと入ってしまうとあら大変。

新米冒険者の町といわれるグレン王国周辺には、いてはいけないような超極悪級の魔物がうじゃうじゃ歩き回っているらしい。

その、頭おかしい生態系から、漆黒の井戸と呼ばれているのだとか。


「ふむ、つまり俺らが助けに行くのはオワタ式だと思っていいのかな?」

「何を言ってるんだい?空。僕も君も充分強いんだ。いや、失敬。僕は充分過ぎるほど強いから問題は無い」

「うんそーだねところでフォード、そこのところはどうなんだ?」

「あぁ。俺がいるから何の問題もないぞ?はっはっは!」

「そうでしたね。999レベルですもんね!」


という訳で、絶対俺達が行ってはいけない場所に、最強の仲間と行くことになってしまった……




「────ここが、ゴダ森林深部か……」


ゴダ森林深部。


奥に行けば行くほど、どんどん木が生い茂る。

今いる場所の時点で、既に空がしっかり見えず、昼間であるにも関わらず結構な暗さである。


道中に出てきた魔物は全てゴブリンやスライムなどの低レベルなものだけであり、俺やアグネーゼだけで簡単に対処できていた。


景色はというとまぁ緑。

前を見ても緑、後ろも緑、下も緑、右も左も緑緑緑。緑以外の何があるの?って位緑緑。もう、俺は緑に縁があるのかなぁ?ってくらいの緑。


さて、緑がゲシュタルト崩壊した所でフォードが解説を始めた。


「よし、だいぶ奥まで来たな。ここら辺は既に"ゴダ森林深部"と言われる場所になる。まぁさっき言った"漆黒の水路"にさえ入らなければどんなに置くまで進もうとゴブリンやスライムしか出ないけどな。そんで、あそこに見えるのがマリーのいるであろう地下への入口、"ゴダ水路入口"だ」


フォードが指す先を見ると、井戸があった。


うん、井戸。


石で出来た井戸。その上には木製の屋根がついている。

そして周りの地面だけ円状で草が刈られており、井戸が強調されている。


「よし、マリーさんを助けに行こう!」


早速俺は井戸へ向かおうと歩き始めた。

が、その瞬間


グンッっ!!!


「っ!?」

「うわっ!な、何が起きたんだよ!」


俺とアグネーゼは謎の力で押さえつけられた。いや、正しくはそんな感触があった。


「はっはっは!この場所が危険だって事を体が無意識に感じ取ったんだろうな」


1人だけ平気そうな顔をしていたフォードがそう話し始める。


「こんな感覚、稽古では感じたことない………この場所が高レベル、危険地域だってことを表してるって事なのか…?」

「まぁそういうことですな。その井戸を一歩降りればそこは君達にとって異次元レベルの強さの化け物の住処になる…そういうことですよ」

「フォードが前に教えてくれたな……高レベルな魔物が放つプレッシャー……」

「そうですよ、お嬢。まぁプレッシャーを放てるのは俺も同じですがね」


────プレッシャー、か……


ここにいる魔物達が全く別物だと、俺とは比べ物にならないほどの奴らだと、それが証明しているのだ。

敵の姿を見ることすら叶わないかもしれない。

気付いたら死んでるかもしれない。

動けないかもしれない。

剣を抜けないかもしれない。


(────!!!?)


………なんだよ今のは……

心臓が締まるような、息が止まるような、そんな感じ。これは……恐怖…?


………そりゃそうだよな。なんかこの環境にすぐに馴染んじゃったけど、俺はこの世界に来て1週間も経っていないんだから。


今まで闘ってきた奴らもみんな低レベルの雑魚。俺はそれでも死にそうになったんだ。

あの時は覚悟できたけど、今回は違う。


"自分から"死に場所にいくんだ。


それはもう自殺と同義語。


死と隣り合わせ、いつ死ぬかわからないなんて環境で生きたことなんか一度もなかったのに。

相手の強さは未知数。分かってるのは自分より強い事ただそれだけ。


────どうしよう、行きたくなくなっちまった。


もし死んだらどうなるのだろう?もう生き返れないだろうな。


─────行きたくない。生きたい。生きたい生きたい生きたい行きたくない生きたい行きたくない行きたくない行きたくない生きたい生きたい生きたい生きたい行きたい生きたい生きたい生きたい────


嫌だ死にたくないまだ生きたい死ぬのは嫌だ!


「うぁ、うっ、うぅ………うわ…うわっ………」

「おいどうした、空?空っ!?」


(死にたく、ない…………)



──そんな時だった。


(安心しろ、我が主様。我がいる限り、其方が死ぬ事は決してないのだからな)


っ!……この声は……ロドリゲスか?


(そうだぞ。我は監視役なのだ。主様に死なれては我は"監視役兼忌み種"から唯の忌み種に戻ってしまうからの。其方を殺させるわけが無かろう?)


そうだろう!?だから俺は行きたくないっ!死にたくない!


(話を聞け、主様。其方は強い。我の力を持つのだぞ?竜の、それも忌み種のな)


……俺には使えないだろう…?宝の持ち腐れだよ……


(ふぅ、全く情けないのぉ。この会話はマシューも聞いているというのに、そんなんで良いのか?)


なっ、マシューも……?


(ねぇ、おにいちゃん?おにいちゃんはそんなよわいひとなの?ちがうでちょ!まちゅーのことたすけてくれたじゃん!もっともーっとちゅよいでちょ!)


───マシュー……………


(全くその通りじゃ、主様よ。あの時マシューを助けてくれたではないか。あの時の勇気はどうした?覇気はどうした?怒りはどうした?あのマリーとやらにも世話になっているだろう?その恩を返さずにいいのか?フォードとやらに恩を返さなくていいのか?………それに"行きたい"だろう?)


俺でも、できる……のか………?その言葉を………信じてもいいのか……?


(勿論じゃ。誰の言葉と心得る?伝説の忌み種であり、最強の竜、バハムートであるぞ?そして、其方は我が主にして眷属、忌み種(神木空)であるのだから!)


──────忌み種、バハムート、ね……

いつもキャラ崩壊してる癖に無駄にかっこいいこと言いやがって………


笑わせてくれるじゃねぇか、なぁ?


「おい、空!聞こえているか!?いつまでそこにいるつもりだ?さっさと井戸の中に入るぞ。あ、もしかして怖くなっちゃったのかなぁ?」

「ふんっ、そんな訳ねぇだろ?俺を誰だと思ってやがる?」

「ゴブリンの夕飯だろう?」

「殺したろか?」

「殺れるもんなら殺ってみな!早く来ないと置いてくよ!」

「へいへい……」


もっと自信をもっていこう。ありがとな、ロドリゲス、マシュー。おかげで目が覚めたよ。


俺は、もう立派に忌み種なんだから。世界から恐れられる存在になったんだから。


俺に、怖いものなんてねぇだろ!


「じゃあ、行こうか……」


こうして俺達は、井戸にかかっている梯子を下っていった。

1000アクセス突破しましたね!ありがとうございます!これからももっと頑張るのでいうも読んで下さる方は応援して下さい!


さて7話、初めてのシュール回!

まだしばらく続きますシュールモード。

ギャグ回好きな人はすみません……



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