4.テンプレ?
前回までのあらすじ
俺こと神木 空はギルドを訪れた。
そして、テンプレ街道を突っ走った!
以上です……
「おい、てめぇ。この俺様に喧嘩を売るってことがどういう事か分かってやってるのか?あぁん?」
「だーかーらー!なんで謝ってんのに喧嘩を売ってることになってるんだって言ってんだよこの脳筋野郎っ!」
「「「それが喧嘩売ってるとしか思えないだろうがっ!」」」
「正論ですねはい!」
綺麗に声をハモらせて俺に突っ込んでくる仲良しテンプレ冒険者トリオ。
こういうのって、主人公が簡単にボコしちゃって周りから注目集めるやつだよな。
……主人公。ぐへへ……
「悪い気しねぇなおい!」
いきなり叫んだ俺に対して、何言ってんだこいつ?みたいな目を向けるトリオ。
ごめん、いきなり叫んだのは謝るからそんな「なにこいつ?イタい子?」みたいな目で見つめないで。
「何言ってんだこいつ?ちょっと外でろコラ」
え?ちょ、おま、待てっておい、ちゃっかり心の声を漏らしながら外に連れてかないで!
てか力強くね?抵抗しても効果ないんだけど。
何なのお前?ゴーストタイプなの?俺の格闘が効果が無いようだなの?
そんな俺からの心の突っ込みをよそに、周りからはすごく縁起の悪い話が飛んでくる。
「おい、あいつら赤い三連星じゃないか?」
「嘘だろ?あのギルド破りで有名な?」
「もしかしたら、生でジェット・スクリーム・
アタックを、見れるかもしれないぞ!」
「あの普通より三倍早い技か!」
なんだそれは。なんでそんな入り乱れてんだよ。赤いのが好きな人とオッサン×3が混ざってるよ?だいたい技もなんだよスクリームって。そこは素直にスト○ームでいいだろうが。スプラッタなのか?そんなに威力高いのか?だったらなかなか上手いこと言ってるじゃねえか悔しいな!どうせここで何言ったってモザイク入るんだろうけどさ!突っ込ませてくれよおい!
「こいつら全部が半端じゃねえか……」
「んだとこら?誰が半端だ?」
「うるせえ!モブ!てめぇは大気圏で燃え尽きやがれ!」
「減速できません!……じゃねぇんだよなめてんのかクソがっ!」
「なんでそのネタ通じるんだよ!」
意外と世代の方かもしれない。何の世代とか言わないけどな。
と、突然真ん中になっていたリーダー格の男が腕をグルグル回しながら近付いてきた。
「もうこのままじゃ埒が開かねぇ。おい、ガキそこに立て。これから俺とタイマンだ。負けたら身ぐるみ俺によこせ。それじゃいくぞっ!」
「えっ、ちょおまっ!?」
なんか勝手に話して勝手に殴ってきたよこの人!?あぶねぇまじあぶねぇ。お前どこのRPGのイベントキャラだよ!
「なにが『それじゃいくぞっ!』だよ!それじゃってなんだよこらぁ!!」
「ぐだぐだ言ってんじゃねえ!」
「クワラバっ!」
思わずツッコミをいれてしまったせいで腹に1発痛いのを食らった。
「………いってぇ、地味にいてぇ」
「それもう1発っ!」
「うぐっ!」
「そしてオマケだァ!」
「ぐぁぁ!」
俺は地面に倒れ込む。いやまぁ、正直ゴブリンのやつより痛くないんだけど、それ言ったら殺されそうだから何も言わないことにした。まぁあの時は地面が土だったけど今回は煉瓦だから、その分のダメージはあるかも。
………あれ?フラグは?
初めてのギルドで喧嘩ふっかけてくる奴らって雑魚じゃないの?ねぇ。普通に強いよ?やっぱり主人公は強いから勝てるのかな?俺はどうせモブだよちきしょう!
「ふふふ、やっぱり雑魚じゃねえか。この俺様に喧嘩売ったことを後悔するんだな……さて、こいつの身ぐるみ剥がしてとっととずらかるぞてめぇら」
「わかったでやんす!」
「すたこらさっさい」
キャラ決めろや、とは突っ込む気力がなく、剥がされていく俺。
赤い三連星ことおっさんズを舐めていた俺が悪かったのだがな。
だが、俺はこの世界に来て、少ししか経っていないホントの新米冒険者。大したものなど持っているはずもなく、
「あれ?こいつ金目のモン持ってませんぜ?」
「ほんとだ。ホントに新人かよ!はっはっは!!」
装備剥かれた状態で笑われていた。
まぁパンツ一丁みたいなもんだからな。そりゃおかしな格好はしているでしょうね。
で、その変態お兄さんのところに駆けてくる女の子が約1人……
「おにいちゃん!?」
「え?」
「だいじょうぶ?すごくけがしてりゅの!」
「え、ああ。問題ないぞマシュー………余計な心配かけて悪かったな」
マシューが本当に心配している表情でこちらを見下ろす。その気持ちはすごく嬉しい。
その、顔だけで「だいじょーぶ?」って言っていることが分かる顔ね、すごい可愛いです……
「なんだ?このガキは?」
「……え?」
「おやびん、このガキなかなか見た目いいっすよ?多分奴隷売場に売ればそれなりの金にはなりまっせ!」
「ほぉ、確かにそうだ。このガキ連れてけ」
「へい!あにき!」
「え?まって!なにしゅるのおじしゃん!」
「!? てめぇら、マシューに何してやが…」
「雑魚は黙ってな!」
「グハッ!!」
止めようと頭は動くんだが、肝心の体が動かない。だが、そんなことしている間にも
「くそ、暴れんじゃねぇガキ!」
「やめてっ!はなちて!」
「このガキっ!!」
「ッんっ!?いた……い」
「ようやく静かになりやがった、ったく、手間かけさせやがって」
「時間掛けすぎだ。早く行くぞ」
やばいやばいやばいやばい。このままではマシューが連れていかれる。あんな、誰が見ても「あ、いかついですね(笑)」みたいな外見のおっさんズに連れていかれちまう。
「よし、いくぞ。帰る前に奴隷売り場によらなきゃならねえからな」
「「うす!」」
なにか、手段はないのか?マシューを助けられる力を、俺は持っていないのか?考えろ考えろ考えろ!何が最善だ?周りに被害を出さず、あいつらを殺さずに助けられる方法……
「いやだよっ!たすけておにいちゃん……たすけてっ!!!」
「!!?」
今の声はマシューの声。
明らかに嫌がっていた。
助けてって言ってた。
お兄ちゃんって。
「……!!!!!!!!!!!??」
いきなり立った俺に驚く3つのゴミ。
俺としたことが、何難しいこと考えてたんだか……
俺の思考回路はクリアになる。何も淀みがなくなり、目的は一つに決まる。
「てめぇら………俺のマシューになにした…………!?」
「!?」
「こいつ、さっきまで気絶してたのに!?」
「くそ、早く撒きましょグッはァァ!!?」
「トル!!!」
まず、1人目を蹴り飛ばす。トルと呼ばれた男は民家の壁に突っ込んでそのまま動かなくなった。民家の壁に穴を開けてしまったが気にしない。
「なんだこいつは!?さっきまでとはあからさまに違……」
「おい、もう一回聞くぞ?俺のマシューに、
何をした?」
「!!!?」
彼らは思わず、後ろに下がる。
俺の目的、それはマシューの奪還。最善?何をもって最善とする?街が無事であれば?奴らを生かせば?
そんなの違う。
"マシューの奪還"唯それだけが成功すれば、それが最善ではないか。
「てめぇ、さっきまで力を隠していやがったのか!」
「そんなことはどうでもいいだろう?早くその子を離せ」
「おやびん、逃げるが勝ちでっせ!行きやしょう!」
こちらに背を向けて走り出す。
戦闘において、それが何を意味するのか知って行っているなら、コイツらは三流未満だ。
「そうか、あくまで返す気は無いんだな?じゃあ────死ね」
もう面倒だ。マシューを消し飛ばさないようにするイメージをすればいいんだろ?簡単だ。俺は最善を尽くさせてもらおう。
「森羅万象のもとに全てを晒せ────存在消去……!」
「なんだこの魔法はっ!?」
そうだ、何も分からぬまま消えろ。俺のマシューに手を出すなんて許さない。
奴らのいる場所に座標が固定される。それ以外のものには決して影響せず、対象のみに作用する。既に魔法は放たれた。俺の魔法はどんどん奴らに近づいていく。さぁ、終焉の時だ。
────永遠に、消えてなくなれっ……!!
「はーい、ストーップ。僕の管轄内で殺しはさせないよ?」
「………んなっ!?」
奴らに魔法が当たる直前、出てきたのはフォードだった。
「馬鹿野郎っおっさん!そこに出たら死ぬぞ!」
俺は前回の使用で使い方を把握出来たので、今回の標的は「マシューを除いた奴らのいる空間」としてこの魔法を使った。
つまり、空間自体にかけているため、マシュー以外の第三者がその場所に入ればその人も消えてしまうことになる。
よって、フォードは絶体絶命どころかもう死んでると言っても過言ではないのだ。
だが、そんな状況であるにも関わらず、フォードは寧ろ余裕そうな表情で、こちらに向けて微笑んだ。
「禁断魔法をそんなに簡単にうってはいけないだろう?はっはっは!」
「…え?」
「森羅万象のもとに全てを偽れ────存在幻影」
白か黒か赤か青かそれとも黄色か、何色とは言い難い何かが、座標空間の間に割って入る。
そして、その何かはマシューとその他3人へと変わった。
「な、なに!?」
それを認知した時には、既に魔法が作用し、座標を消し飛ばした。
「お、おい、おっさん!今何をしたんだ!?」
「若いな小僧。はっはっは!いいから少し見ていな」
「見ていろって言ったって、俺の存在消去がアイツらを消し飛ばしただけ……!?」
話している途中で、俺は思わず驚いてしまった。
煙が晴れた先には、マシューと"あとの3人"がいたのだから。
「へ………ええぇぇぇ!!?」
「はっはっは!良い驚き方だな!対抗した甲斐があったってもんだ!」
やつら3人も「何があったのかしらん?」みたいな顔して周りをキョロキョロしている。
「俺の……魔法が、無効化された……?」
「そのとおりだ。正確には、君の魔法は作用しているがね。私が作用する先を変えさせてもらっただけだ」
俺は息を切らしながら尋ねているにも関わらず、フォードは顔色一つ変えずに話している。
「………というか、おっさん、さっき"存在"と口にしなかったか?」
「気付くだろうね。確かに言ったよ。だが、その話はまた後でしようではないか」
「は?なんで……」
と、聞き返そうとするとフォードが俺の後ろをチョイチョイと指さす。
その先を見ると、そこには半泣きになったマシューがいた。
「……………マ、マシュぅぅぅぅぅぅうううう!!!!」
「きゃぁぁぁぁ!!!」
俺は思わずマシューを抱き抱える。
「マシュー!怪我ないか?痛いところはないか?心に傷は負ってないか?元気そうでよかったぁぁ!!」
「まだなにもこたえてないむぎゅ……」
俺はもう一度マシューを抱きしめた。
「ごめんな、俺にもう少し力があれば……」
そう、俺に力があればこんなことにはならなかったのだ。あいつらをフルボッコにできるくらいの力が俺にあれば、マシューにこんな怖い思いをさせなくて済んだのだ。
だが、マシューはそんな俺のほっぺを持つと、
「……おちおきっ!!」
思いっ切り引っ張った。
「あいだだだだだだだだだだたっっ!!!」
「なにか、ゆうことはないんでちゅかっ!」
「ゴメンナサイ許して強くなるからイダダ!!」
「そこじゃないの!ちゃんとかんがえたの?」
「そんな事言ったって、俺がなにかしたか?」
というといきなり、マシューはしゅんとなって下を向いてしまった。
あちゃー、御機嫌斜めか?なにかいけない事言ったか?
「……………ったの………」
「え?なんて?」
「だから、その……………かったの!」
「はぁ?はっきり言えよマシュー」
「なんで、すぐにまちゅーのところきてくれなかったの!!」
「……へ?」
思わず変な声を出してしまったが、マシューの熱弁は止まらない。
「まちゅーしゅごいこわくて、でもおにいちゃんたすけてくれてうれしくて、なのにおにいちゃんはまちゅーじゃなくて、その……おっさんのところにいっちゃったでしょ?」
「あ、あ……」
そして、マシューは目に涙を浮かべ、手を強く握りながら俺にこう言い放った。
「まちゅーはかなちかったのっ!」
………確かにそうだ。俺はマシューを助けるためだけに禁断魔法まで打って、その癖それを止められたらマシューを放ってフォードの方に行ってしまったのだ。
それは………だめだなぁ…
俺はゆっくりとグスングスン泣いているマシューに近づいて、ポンッと頭に手を置いた。
「あ……」
そして、顔を近づけて、話す。
「マシュー、ごめんな。お前の気持ち全然考えてなかった。あの時、俺の魔法が止められたのが不思議すぎて思わず聞かざるを得ないと思っちゃったんだ」
「………あの、えっと……」
マシューは少しずつ顔を赤くしていく。
「マシュー」
「ひゃぃっ!」
「悪かったな」
「………………!!」
何故かマシューは顔を真っ赤にしていた。
「? マシューどうした?熱か?」
「ち、ちがうもんっ!こ、こんかいだけはゆるちてあげましゅ!つぎからきをちゅけてねっ!」
「お、おい!なにを怒ってるんだ…」
「べちゅにおこってないっ!」
と言うとマシューは超駆け足でギルドの中に戻っていった。
………?何があったんだろうか?
と、周りを見渡すとこっそりこの場から立ち去ろうとしている三人を発見。
「っな!?ちょ、てめぇら!!」
「うるせぇ!とっとと帰るんだよ!」
が、そんな3人に近づく一つの影……
「やぁやぁ、赤い三連星の皆さん。誘拐未遂でウチのギルドまで来てもらえるかな?」
と、満面の笑みで尋ねた。
「ひゃ、ひゃい…………」
彼らが返事と同時にもげそうなほど首を縦に振って答えた。
「ふぅ、これで一安心だな……」
その瞬間、俺の意識は暗闇へ飲み込まれた。
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「………という訳だ。分かってくれたか?」
「という訳ってどんな訳だよ分かるかっ!」
赤い三連星を引き連れギルドに戻った俺達。
散々ボコられた俺は残念ながら意識を失ってしまった為、フォードのベッドで横にさせてもらっていた。
意識を取り戻した俺は取り敢えず「知らない天井だ……」と呟いた後にフォードの所へ質問しに行った。
フォードは、先程使った魔法、更にこの世界で起きていることを話してくれたのだが……
「なんで一番大事な部分抜けてるんだよぉ!!」
時は少し遡る────
「さて、坊主。ここからは真面目な話だ。よく聞け」
「お、おう。分かったぜおっさん。ドンときてくれ」
俺らはギルドの中にある席に座り、テーブルを挟んで話を始めた。
「まず、確かに俺が使った魔法は、存在を司る魔法、禁断魔法だ」
「………そうか」
「だが、正直驚いたのは俺の方なんだよ。坊主、本当に駆け出しだったからな。まさかこんな奴が禁断、よりによって存在消去を使っちまうとは思わなかったからな」
フォードは、淡々と話を進める。
「いいか、坊主。最初に俺と一つ約束をしてくれ」
「………約束?」
「そうだ、約束だ」
いつもガハハと笑っているフォードだけに、こんな真面目なトーンで約束とか言われると思わず身構えてしまう。
しかし、そんな俺の心境を察したのか「そんな恐ろしいことは言わねぇさ」と笑いながら続ける。
「簡潔にいうと、存在消去という魔法をこれからはできる限り使わないで欲しい、という事だ」
「存在消去を使うな……か」
「あぁ。いいか?名前ってのはしっかりと考えられて付けられてるんだ。禁断魔法って名前も例外じゃねえ。危なくて、まさに"禁断"だからそんな名称で呼ばれてるんだ」
「確かに、言われてみればそうだな……」
大して危険性のない魔法をわざわざ"禁断魔法"とは呼ばないだろう。
……という事は、逆に何かあったから禁断扱いされているということでいいのか?
「なぁ、フォード。禁断魔法に分類される魔法はどんな共通点があるんだ?」
そう聞くと、フォードは「待ってました!」と言わんばかりの顔ですぐに答えてくれた。
「はっはっは!いい質問だな」
そしてドヤ顔で続ける。
「禁断魔法ってのはな、かつて"世界を滅ぼしたことのある魔法"の事を指すのさ」
「……は?世界を滅ぼした?」
「そうだ」
「ぽーんって?」
「ドッカーンもあったらしいぞ」
マジかぁぁぁ!!!?
やっばくねそれすごくね?
そりゃあの糞天使も焦るわ納得だよ!
「因みに聞くが、禁断魔法は全部で何種類ある?」
「俺らのものも合わせて6個だ!」
「6回も世界滅んでんのっ!?」
笑えないよそれ!なんでフォードは笑いながらこの話ができるの!?やっぱりあんたすげーよ!
俺が素直に感心していると、フォードはまた真面目顔に戻って話し始める。
「さて、これで禁断魔法についての説明は終わりだ。次に、坊主はこの世界のことが全然わかっていないと思うんだが違うか?」
「!……あぁ。全然知らねぇ」
この人やっぱり意外と周り見てるのな。最初あった時と印象全然違うわ。
「よし、なら説明してやろう………」
フォードの説明によると、現在、人間側と魔族側の間で争いが起きているとのことだ。
少し前までは戦闘回数がめっきり減り膠着状態だったらしいのだが、最近になって魔族の活動が盛んになり始めており、また以前のような状態に戻ることが懸念されているようだ。
偵察部隊からの情報によると、魔族を治めていた魔王、ディアボロスの死により魔族側に混乱が起きており、それに便乗した継戦派の魔族達が攻撃を仕掛けていること。また、魔族幹部達により"リバイブジュエル"が探し始められている為、相手にリバイブジュエルが渡らないように、こちらも探索を始めているらしい。
尚、リバイブジュエルというのは、所謂「生き返らせるアイテム」のようなものらしい。世界に一つのみ存在する超希少アイテムで、誰か1人だけではあるものの、その対象が例えどんな状態であったとしても効果は発揮されるらしい。
一度使用すると、ジュエルの持っている輝きが失われ、またジュエルも砕け散り、そして100年後に世界のどこかに現れるらしい。
ディアボロスというのは、魔族達をおよそ100年の間治めた魔王であるらしい。圧倒的な戦闘力と、そして最強の魔法「存在消去」を操り、民衆達の支持を集めまとめあげたという。
長い間人間と魔族で戦争が続いていたのだが、ディアボロスが魔族達を治めていたとされるその100年間、戦闘が殆ど起こらなかった為温厚な性格なのでは?と一部の者達が言っているそうだ。
それでも、そのディアボロスの生き返りを阻止するために人間側が動いているところを見ると、その意見は少数派であろうということが伺える。
因みに、糞天使からは「ディアボロスつおいお!」としか言われていなかった為、しっかりと聞いたのは今回が初めてだった。
「………分かるか?坊主。冒険者の目的ってのは、時代によって様々だが、今の時代だとこの"リバイブジュエル"を探し出すこと、そして魔族との戦争にピリオドを打つことが最優先事項になっているのさ」
そして、コーヒーを1口含んだ後に、
「まぁ人によっても様々だから強制はしねーけどな。はっはっは!」
と続けた。
話を聞いているうちにいつの間にか俺の膝の上にちょこんと座っていたマシューをそっと抱きしめながら、俺は話を聞いた感想を口に出したのだった。
「なんで一番大事な部分が抜けてるんだよぉ!!」
「………え?」
フォードは俺の言っていることがわからずキョトンとしている。
「まぁまぁためになりましたよ?確かに俺はこの世界のこと知らなかったし、冒険者になるって言ったって何すればいいのかわからなかったし?それは助かったぜ?でもな、俺の一番聞きたいことが聞けてないんだよ……」
俺はコーヒーを一気に飲み干して言い放った!
「結局アンタの使った魔法は何だったんだよっ!!」
「……説明したろ?」
「『禁断魔法さ、はっはっは!』みたいな事しか言われてねぇよ多分っ!」
「そ、そうだったか?はっはっは!」
あれで全部説明した気でいたのかあんたっ!?
「いいから教えろよおっさん!そこが気になって気になって……」
「そうか、そんなに気になるのか。なら仕方ない。少しだけ教えてやろう」
「よっしゃ!一体どんな魔法なんだ?」
フォードは、一度大きく息を吸った後に真剣な顔で俺に話した。
「俺の魔法、存在幻影はな………坊主……」
「ご、ごくん……」
「幻を作れるんだ……」
「あぁ、なるほどな…」
「…………………」
「………………………それで?」
「え?いや、終わりだけど?」
「あ、あーはい。ありがとうございましたー」
「ありがとうございましたー」
「ってなるかいっ!!!」
思わず突っ込んでしまった。
「ど、どうした坊主。今説明しただろう?」
「今の説明の情報量よりも名前からの情報量の方が多い件についてっ!?」
「落ち着け、大体他人の魔法について詳しく知るのは良くないことだぞ」
フォードはまたコーヒーに口を付けて話す。
ていうか、まだコーヒー残ってんのかよ。飲むの遅いじゃねぇか、体の大きさの割に。
「本来、魔法の知識というのは知りすぎてはいけないんだ」
「え?なんで?」
「そうだな、理由はな、えーっとね、ちょっと待って今考える」
「今考えるって言わなかったか!?」
「他人の魔法について知った時、同じような魔法を自分が使おうとした時にその他人の魔法が頭に浮かんでしまったせいで上手く使えず、命を落とす例もあるんだ!」
「本当は?」
「話すのがめんどくさい」
「今すぐ話せクソジジィ!!」
この後、俺は「おとなげないでちょ!」と、マシューに怒られてしまった。
4話でした。
まだ先は長いです。
頑張ります。