2.監視役のロドリゲス
毎週日曜日更新と言いつつ、少しきりが悪かったので今日も上げます。
次こそは日曜7時です
「はぁ、はぁ…うわっ!っと、アブねぇ!転んだら"死ぬ!"」
俺、現在逃走中。
「ガゥゥ!ギャウッ!ウガァァァ!!!!」
ドラゴン、現在追跡中。
「なんでそこまで根に持つんだよぉ!図体デケェくせに器は小せえんだなっ!」
「グギャァァァァァァ!!!!」
「前言撤回スンマセェェェン!」
俺は今、ドラゴン(あと子ドラゴン)に追いかけられている。
キッカケは、俺がこの世界に転生した瞬間にこのドラゴンの卵を割っちゃったこと。
チラッと後ろを振り向いたときに小っちゃいドラゴンがでっかい方の肩らへんに乗ってたから無事に生まれたんだろうけど、親ドラゴンは許してくれない。ちっちぇなほんと。
「コマンドオープン!」
「走った先が崖でしたw」みたいな事は絶対にしたくないから、地図を見ながら全力疾走する俺。顔の前に表示されるのだが、動いているときは半透明になってくれるため、走っていても視界の邪魔になる事はない。ご都合主義万歳。
地図を見る限り、この方向に走っていけばずっと陸が続いていそう。
と言うわけで俺はその方向に走り続ける。
「おんどりゃぁぁぁ!!お前に殺されてたまるかってのぉ!」
「ウガァァァ!!!!」
「もういやぁぁぁぁぁ!!」
本当に、これは体験しないとわからない怖さだね!前には木がめっちゃ生えてるからそれを避けながら走るしかない。ドラゴンの方は走ってりゃ木が吹っ飛んでくから(比喩じゃなくてマジな方で飛んでるから)なんの影響もないみたい。
「くそ、どうすりゃいいんだよ⁉︎どうすれば生き残れる?どうすれば逃げ切れる⁉︎」
マップを見て、道を間違えないように進む。
「うわっ⁉︎しまった!」
ずっとマップを見ていた俺には足元が見えていなかった。木の根っこに足を取られて俺は転んでしまった。膝を擦りむいたが、そんな事はマジでどうでもいい。後ろを振り返れば当然のようにドラゴンが迫ってきている。
「畜生!立ち上がれねぇ!」
アニメとかで、足が動かねぇとか言うことあるじゃん?あれってほんとにあるんだな。力が入んねぇよ……
「……は、ははは………」
こんな所で2度目の人生終了かよ。結局俺は、くだらない死に方しか出来ねぇのか。ま、ドラゴンに喰い殺されるんなら武勇伝位にはなるかね。せめて自分の死亡時刻くらい確認しようかとコマンドウィンドウを開く。あれ?時計って何処にあるんだろ……?なかなか探しても出てこない。まぁそんなの見てたって何にもならないけどな。…せめてスキルだの魔法だのあったら良かったんだけどな………魔法?
俺は必死で自分のステータス画面を見直す。
「存在消去…」
そう、ドラゴンから逃げることしか考えていなくてすっかり忘れてたけど、前魔王…えーと、なんだっけ?名前忘れた。とにかく、そいつが使っていたこの魔法、[存在消去]を俺は使えるのだ。
俺の中に急に自信が湧いてくる。まだ死なない。生き残れる。
そうか、俺にはこの魔法がある、なら…!
「ドラゴンッ!かかってこいよぉ!!」
俺は必死で戦闘態勢を取った。幸い、生前に武術の類も一通り習得していた俺は、ある程度なら体を動かせる自信があった。
「ギャァァァァァア!!」
ドラゴンが近づいてくる…あと50メートル…30、20、今だ、これなら殺れる!
俺は魔法を詠唱した。
それは全てを消し去る魔法。
禁断と呼ばれ、恐れられた魔法。
何も残さず、それは塵とすら化さない。
「森羅万象のもとに全てを晒せ────存在消去っ!!!」
「ガウッ!!?」
その瞬間、俺の目の前は眩い光を放った。まるで全てを隠すかのように。そして、その光が一気に凝縮され、「ズパァン!」と砕け散る。一応言うと、通常魔法と呼ばれる魔法に関しては詠唱が必要ないらしいのだが、禁断魔法に関しては詠唱が必要らしい。詠唱は、なんか「この魔法を使う!」って思ったら勝手に頭にでてきたのさ。まぁいいじゃないか!ロマンだからさ!
「殺ったかっ⁉︎」
光のあった場所には何も残っていない。魔法は成功したのか?
「へへ、ザマァみやがれちっちゃいのっ!!」
と粋がったのも束の間、俺は大きな勘違いをしていた。
「魔法が使える」ということは決して、「魔法を使いこなすことが出来る」とはイコールにならないのだと。
そう、そのドラゴンは無傷だった。
俺の真上を飛んで、まるで何もなかったかのように。
「ヴゥゥゥ…」
「…え?……」
「ゥヴァァァ!!!」
「にげ、なきゃ……」
やばいヤバイヤバイ。こいつはヤバイ。周りに放っているものが違う。覇気なのか分からないけど、全てを圧倒する、それが出来るだけの圧力がこいつの咆哮には乗っかっていた。
「グハッ⁉︎」
俺は理性ではなく、本能的に逃げようとしたのだが立ち上がれなかった。左腕がない事も理由ではあるかもしれない。しかし、それよりも体が言うことを聞かなかった。
「グゥッ⁉︎ハァ、ハァ、ハァ…」
息は上がり、心臓は今にも弾けそうなくらい動いている。
「嘘…だろ……?」
俺にはもう動く体力すら残っていない。きっと威圧されている効果もあるだろうが。
と、ここで俺はあの糞天使の言っていたことを思い出した。
『貴方の存在消去はその名の通りの魔法です。まぁ恐らく体力の消費が激しいので最初は打つことすらままならないでしょうが……』
……なるほど。つまり、俺はまだ全く慣れていない状態でこの魔法を使ってしまったわけなんだな。どうりでこんなに疲れるわけだ。
そして、ふと見上げると上にはドラゴンがいた。
……喰われるな。まぁもういいじゃねぇか。人生最期にこんな死に方。多分喰われるんだから即死扱いだろうし、もう一回人生やり直し、なんて事は出来ねぇんだろうな。さぁ、ドラゴン、俺を喰うなら頭から喰ってくれ。
「────空……」
だから早く喰えって……へ?今なんとおっしゃいました?
という言葉が俺の口から漏れる前に、
ドガァァァァ!!!
と地面が崩れた。
「なっ⁉︎」
理由は、多分あのドラゴンだろう。地面が緩い所だったのかもしれない。
というか、落ちる。
「なっ⁉︎うわぁぁぁぁ⁉︎…『グシャ』痛ったぁ!!」
骨折れた。内臓潰れた。他の器官も逝った。
つーか『グシャ』って聞こえたよな今。かるく放送禁止だぞあんな効果音。
よく死ななかったと心から思うよ。ハッハッハ。
……なんて現実から逃げていても痛みは引かない。異世界に転生したらドラゴンに追いかけられて勝手に動けなくなって、地面から落ちて。
ホント散々だな、俺。
まぁ、嘆いていてももう遅い気がするけど。
でも落ちたおかげで、あのドラゴンからは逃げることができた。今頃奴も、俺のことを探しているのだろう。
そうだ、"ドラゴンから"逃げれたんだ。きっと俺ならどんな困難も乗り越えていけるはず!
でも、このままでは喰われる前に普通に死ぬ。
それだけは何としても避けたい俺なので、何か解決法を探す。
例えば、こういう世界なら[薬草]くらいその辺に生えていてもおかしくはないと思うのだが────────
「あったいぇーい」
いや、正確には薬草かは分からないけどなんかそれっぽい草見つけた。まぁ周りを見渡せばそれらしきものは沢山生えていた。
なんとかそこまでほふく前進で向かう。そして、引っこ抜く。残念ながら[鑑定]のような便利スキルは持ち合わせていないようなので、恐る恐る口に放り込んで見た。
「…苦い」
苦かった。まぁ、良薬は口に苦しというし、良いものだったのでは?
と、その時何か音声が流れた。
『アイテム情報が更新されました』
…アイテム情報?なんじゃそりゃ?
まぁ、恐らくコマンドウィンドウの何処かにあるんだろうな。と言うわけで
「コマンドオープン」
そこから10分かけて(別に機械音痴じゃない)[アイテムリスト]という所を見つけ出した。
そこには、[サラ草【NEW】]の文字。
早速この草の情報を見てみた。
[サラ草]
口にした者は暫くの間、行動不能になる代わりに回復効果(大)を得る。
主に尋問に使用される。
「素直に喜べねぇよっ!」
確かに、さっきより体は楽になったし、痛みも薄れてはきたけどさ?「さぁ、ドラゴンから逃げるぞ!」って時に"行動不能"とか、ほんとやめて下さいよっ!なんなの?イジメ?あと、尋問用とか言うのやめてほしいかな?尋問用を自分から服用するとか周りから見たら唯のドMだからね!周りに人いないぜ!悲しいなおい!
説明文の通り、たちまち体が動かなくなってしまった。
する事もないから諦めてコマンドウィンドウを見ていることにした。
どうやらこの世界はすごく広いよう。地名もたくさんあるようだ。
…ここから、一番近いのは「グレン王国」という所のようだ。取り敢えずこの硬直が治ったらそこへ向かうとしよう。
他にもたくさんのことをコマンドウィンドウから学んだ。本来ならあの糞天使に教えて貰えば良かったのかもしれないが。
例えばレベル。
敵を倒す、クエストを達成する、などのことで得ることができる経験値で上昇する、「自分の強さを証明する値」だそう。RPGゲームであるあるな、「レベルを上げれば強くなる」ではなく、「レベルが高いから強い」という事であり、レベル1の冒険者がレベル100の冒険者よりも強い、ということがあり得るようだ。だが、レベルが高いということは、それだけ多くの敵を討伐、多くのクエストを達成しているという事であり、やはり周りからの信頼は厚くなるらしい。また、武器に関しても、特に装備制限がある訳ではない。ただし、店などで購入する場合にはやはり、レベルは重要な判断基準になるようで、「お前のような低レベル冒険者にやる武器はねぇ!」みたいなことがよくあるのだとか。そのため、結局自分のレベルに合わせた武器を使う事になるらしい。良くできていると感心してしまった。
例えば体力。
この世界では明確に「体力」という数値は存在していない。そのため、それに関しては自己管理が非常に重要な事であり、またそれができる冒険者は強者であるということになるようだ。
体力は「すべての行動」で、減少する。そして時間経過、もしくは睡眠によって回復するようだ。体力減少でのデメリットは、「魔法使用不可(効果衰退)」「行動の制限」「スキル効果の減少」となる。なお、体力が0になると"死"となるらしい。
体力を上昇させる方法は、「自己鍛錬」「装備アイテムの効果」「スキル」の3つ。数値では表示されないため、確認することはできない。
と、ここまで読んで体を動かせるようになった。説明回だぜ。
「よし、じゃあ『グレン王国』に向かうか」
と、歩き始めたの瞬間に、背中に激痛が走った。
「グギャギャ!」「ギュッ!」「ギェッ!」
「うがぁ⁉︎」
突然の攻撃に、俺はなす術もなく倒れる。
攻撃の犯人はかの有名なゴブリンだった。
「ケケッ!」「ウギャ!」
愉快そうに笑うゴブリン達。数は全部で10といったところ。戦闘に入ると、その対象の敵の名前とレベルが表示されるようで、レベルは俺と同じく1だった。
「イッテェ……ッ畜生!舐めんじゃねえぞぉ!」
俺は後転して立ち上がり、一番近くにいたゴブリンに飛びかかった。
「うおりゃぁぁ!!」「ケケッ!」
だが、ゴブリンは俺の攻撃を難なく避けて、俺の背後へ回り、棍棒を叩きつけた。
「キャキャキャ!」「グハァ⁉︎」
俺は前へ倒れながらも何とか態勢を立て直し、目の前で追撃を試みていたゴブリンを掴んでぶん投げた。
「クソがぁぁぁぁぁぁ!!」「ギェッ⁉︎」
柔道もやっていた俺の投げ。当然完璧に決まり、一体は動けなくなっていた。
だが、ゴブリン達の連携は侮れるものではなかった。
俺が接近戦しかできないと見るや否や、2体が突撃、その他が遠くから石や火のついた木を投げるというフォーメーションに組みなおした。
「「キャッキャ!」」「くそっ!どきやがれ!」
2体に気を取られると他の遠距離攻撃をくらう。逆に遠距離攻撃に気を取られれば、突撃してきている奴らに致命傷をくらう。
戦況は最悪だ。
だが、その時突撃してきているうちの一体がふと視線を逸らした。俺はそれを見逃さない。
「殺し合いの時に目ぇ逸らしてんじゃねえよぉ!!」
首元を掴んで、ミゾに入れようとしたその時、急に足元からズボンの裾を引っ張られた。
「うわぁぁ⁉︎」「キャッキャ!!」
それは、先ほどぶん投げたゴブリン。動かなくなっていたからてっきり死んだのかと思っていたが、そのフリをしていただけのようだった。
つまり、俺は最初から────
「こいつらの作戦に引っかかっていた…って事かよ…」
明らかに場数か違う。きっとこいつらは何度もこの生存競争をして来たのだろう。殺さなければ自分が殺される状況を何度も味わって、それを乗り越えて来たのだろう。
足を引っ張られた俺はそのまま転ばされた。
掴んでいたゴブリンに逆に掴まれ、首元を締め上げられる。
「ウグッ⁉︎…っんあ…………」
周りにいるゴブリン達も棍棒で俺の体をボッコボコにしていく。
『バシッ!』「グハッ!」『バスッ!』「グァッ⁉︎」『ドバン!』「ウッ……」
遂に声も出なくなってきた。まさかゴブリン相手に手も足も出なくなるとは思わなかった。
身体中が痛い。散々ブン殴られているのだから当然なのだが。
「はぁ……くそがぁ…クソっ…ゴブリンにすらかッ……勝てねぇのかよ、俺は……」
一匹のゴブリンがまるで俺の独り言を聴き終えたかのようにゆっくりと近づいてきた。その手には刃物とみられるものが握られている。
……俺の解体ショーの始まりってか?
だが何故だろう?他のゴブリン達は俺の方を見もせずに皆、明後日の方向を見ている。
「…ど、どうした?…今になって……俺が殺せなくなったとでも言うのか…?」
と、突然一匹のゴブリンが叫ぶ。
「キャッキャ、ギェッギャッ!!」
それを合図に、ゴブリン達は一斉に走り出していった。俺には目もくれず、必死に。それはまるで、ドラゴンから逃げ出していた時の俺のようだった。
だが、俺が意識を維持していられたのはここまでだった。視界が黒に染まって……
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「グギャッ!!」
ゴブリンは驚いた。何故こんな奴がここにいるのか?まぁニンゲンがここにいることも相当珍しいことなのだが。だがそんなことは今となってはどうでもいいのだ。
どうして、こんな"忌み種"がこんな所にいる⁉︎
てめぇらはてめぇらで生きてろよ!!
お前らはこの世界全てから嫌われた存在、こっちに干渉してくるんじゃねぇ!
憎むなら俺らじゃなく先祖様でも憎め!なんてったってアイツらは世界を……
残念ながら、ゴブリンの思考はここまでしか辿り着けなかった……
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────我が主様に何をしてくれた?下賤の生物共よ────────
────力無き者よ、憎むなら己の力の無さを憎め。恨むなら己の生まれを恨め。僻むなら己の運命を僻め────────
────今の景色を見よ、踏んでいる大地に感謝せよ、己を包む空を見上げよ、この森を見納めよ────────
もう貴様らに、残された道はないのだから
"失われし未来"
ドラゴンが口を開くと、そこには赤と黒の混ざったおどろおどろしい色をしたエネルギーのようなものが見える。
それは、ドラゴンの咆哮と同時に口から放たれ、周りにある木、草、土を巻き込みながら、逃げ出したゴブリン達を永遠の闇へと連れ去った。
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気がつくと、見たことのある景色が広がっていた。
「ん…?ここは……っ!痛たたた!」
全身が痛い。見れば傷だらけである。
えーと、周りはっと……木、木、木。上を見れば空が広がり、下を見ると地面がはるか下に。
そして、気付いた。ここは"最初に転生した時の景色である"と。
つまりここは、ドラゴンの巣であるということ。
「待てっ!ということはまたドラゴンに追いかけられるということじゃねえかっ!」
「落ち着け、我が主よ」
「ひぎぁぁぁぁ!!!?」
「そんなに大きな声を出すな。こちらが驚くではないか」
「ギャァァァァァア!!!!」
「あの〜、話聞いてます?我が主様?」
「ドドドドドラゴンが、しゎべっっはぅた⁉︎」
「我が主よ。頼むから我の話を聞いてくれ」
「なんで⁉︎どうして⁉︎食べられると思ってたのに⁉︎本当になんで⁉︎」
「だから説明すると言っておろうに、全く我が主は人の話が聞けない性格のようだな」
「この状況で人の話聞けるほど精神育ってねえんだよぉ!」
「わがあるじちゃま〜!」
「ウワァ⁉︎な、なんだ?こいつ?…可愛い」
「わがあるじちゃまはわがあるじ。わたちはどらごんのまちゅー。おとなになったらちゅよくなるの!」
「なんだこいつは……可愛すぎるっ!」
「ようやく落ち着いてくれたか、主よ」
「おう、バッチリ落ち着いたぞ。もうどんな現実でも受け止められるぞ」
「うけとめりゅ!」
「そうか、なら良い。まず自己紹介からさせて貰おう。我はロドリゲス。見た目通り、勿論ドラゴンだ。因みに言うとバハムートだ」
「バハムートっ⁉︎それって、すげぇやつなんじゃねえのかっ⁉︎」
「さぁ?そんなことは知らん。まぁ一応この世界では我らの種族は忌み種とされているようだがな」
「忌み種⁉︎やっぱりやばいじゃねぇか!」
「そして…この子は我が娘のマシュー。見た目は幼いがもう立派に一竜前だから安心してくだされ」
「一竜前ってなにっ⁉︎」
「よろちく、ごちゅじんちゃま!」
「おう、よろしくな!」
「主様はわかりやすい方なのだな…」
「そんなことどうでもいいだろ?それより、あのゴブリンから助けてくれたのはお前だろ?なんで助けてくれたんだ?その前はめっちゃ怒って追いかけてきたくせに…」
「怒った?一体いつの話をしている?我が貴方様に怒りという感情を持ったことは一度もないのだが…」
「へ?だって、あの時、卵割ったから怒ったのだとばかり……」
「あれは我の卵ではない。我が夕食用に狙っていたものだ。従って、食事こそ妨害されたものの、そんな起こるほどのことではない」
「え、そうなの?じゃあなんで追いかけてきたんだよ?」
「そりゃ、追いかけるに決まっているだろう?だって我は貴方様の"監視役"なのだから」
「監視役……?…あ、あー、あ…」
俺は糞天使の言っていたことを思い出した。
『神木空…第8世界での貴方には監視役1名をつけさせて頂きます』
『第8世界で最初に会った者を監視役とします。そのおつもりで』
最初に会った者…あぁぁぁ!!
「理解して頂けたようで幸いだ。と言うわけで我は監視役なのだが、それと同時に貴方様に忠誠を誓う謂わば下僕、下僕が主を助けるのは当然のことであろう?」
「すげぇ下僕手に入れたなおい!」
「まちゅーはパパといっちょがいいの!だからあるじちゃまともいっちょなの!」
「そぉかぁ、俺と一緒が良いのかぁ、よしよし可愛いなぁ」
「ふふ、マシューも主様を気に入られたみたいで良かった。それではこれから宜しくお願いする」
「よろちくおねがいもうちあげまちゅ!」
「ああ、よろしくな。ロドリゲス、マシュー!」
こうして、俺の異世界での冒険は始まったのでした。
おまけ
「あ、因みに我は忌み種であるが故、あまり町などには寄りたくないのだが…」
「アレ⁉︎グレン王国無理じゃん!もう予定変えなきゃダメ⁉︎」
「やはり寄るつもりだったよな、そうだよな…」
「しょうがねぇだろ?なんとかして寄るんだよ」
「まちゅーもあんまりよりたくないよ?」
「よし、スルーしてくか!」
「主様っ⁉︎」
2話でした。
少しでも多くの方に読んでいただければ……