ζ’人間関係とコードネームと変わり者《ゾーイ》
「僕のφもコードネームだからね。」
え?
「本名じゃなかったのか?俺てっきり本名なんだと思ってたんだけど……。」
思わずそう呟いた俺の声はφにも届いていたらしく、即座に怒鳴られた。
「いや、φってどう考えても本名にはならないよね!?」
「そう言われても分かんなかったし仕方ないだろ!!……変わった名前だなとは思ったけど。」
「ほら!何でそこで気づかないかな!?」
「俺の集落にシェフって名前の人いたし!!ありなのかな、みたいな感じに思ったんだよ!!」
「みたいな、じゃない!!あくまでも¨φ¨はコードネーム!本名じゃないから!!」
「じゃ、本名なんなんだよ!?」
「えっと、それは……」
そんな俺たちの様子を見ていたボス?が声をあげて笑い、口を開いた。
「はははっ。φ、君に任務終了を宣言する。」
「はいっ!?でも僕まだ……」
「かまわないよ。私の権限でもって許可する。」
「……分かりました。それじゃ、ゾーイ君、改めまして自己紹介を。僕の本名はフォース。コードネームがφだよ。間違えないでね。」
「ちなみに言うとね、私のコードネームはΔだ。もっとも実働隊のボスだからボスと呼ばれることが多いけれどね。」
「とはいっても、本名にボスって入ってますよね?もうそっちがコードネームみたいな扱いじゃないですか。 」
次々に明かされる新事実に俺は呆然とするしかなかった。
「おや、今誰かが扉をノックしたような気がしたんだが……」
「……………聞こえてます?勝手に入りますよ?」
「気のせいではなかったようだ。聞こえているから、入ってくれ。」
「失礼します。これ、先月の報告書のまとめです。」
ボスの言葉がきっかけで知らない人が登場した。
30~40歳くらいのきれいな女の人だ。
「なあ、あの人って誰なんだ?」
気になった俺は隣のφ、いやフォースに小声で尋ねた。
「彼女はパラセナ。コードネームはΠだよ。変人揃いで有名な実働隊一の変わり者だね。」
フォースがさらりと口にした言葉に俺は目を丸くした。
そのとき、俺たちに気づいたのか件の彼女が話しかけてきた。
……正確にはフォースに、だけれども。
「あれ、帰ってたんだφ。」
「ボスの権限で任務終了になってるからフォースでいいよ。」
「OKりょーかい!そっちは新入りくんかな?」
「うん。後で¨見て¨もらっていいかな?」
「わかったー。覚えとくね。……ところで、今しがた私の事変わり者って言わなかったかな?」
「言ったよ?事実だからね。」
「あら、女性には敬意をはらうべきじゃないかな?まあ、いいけどね。……それじゃ、ボス、失礼いたしました。」
嵐のような人、それが彼女、Πことパラセナに対する初対面の印象だった。
このとき、俺はこれから彼女と切っても切れないような付き合いになるとは思ってもいなかった。
ましてや、俺と彼女に意外な繋がりがあるなんて気づけるはずがなかったのだ。