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γ’謎の人と能力者と家族《ゾーイ》

「君にも手伝ってもらうよ。」

 俺は呆然として、言葉を失った。

 沈黙が重く感じる。

「手伝うって化け物退治を?」

「…化け物退治か。うん、確かに。まあ、そういう事だよね。」

「何でそうなるんだよ。というか、俺、お前の名前聞いてないんだけど。」

 そう、それだ。言われた事に呆然としていて気付かなかったけど、俺はこいつの名前を知らない。

「ああ、化け物の事以外の詳しい説明もないまま、すまない。よく考えてみれば名乗ってすらいないね。僕の名前はφ。」

「ふぁい?」

「どちらかというとφって発音かな。」

「ファイ?いや、何か違うな。あ、φ、か。」

「そうそう。そんな発音。細かいけど、その辺気になっちゃうんだよね。」

「というより、φとファイなんてほとんど変わんないんじゃないか?」

「変わるんだよ、感覚的に。」

「そういうもんか?」

「そういうもんだよ。ってそれも大事だけど今は説明だったね。忘れる所だったよ。」

「忘れないでくれよ。というか俺早く家に帰んねえとまずいんだけど。」

 周囲はすでに赤く染まっている。

 こんなに遅くなって怒られないわけがない。

 下手をすればこのままここで話していて日が暮れて真っ暗になってしまうかもしれない。

 そんな事態はどんなことがあっても避けたい。

「あれ、いつの間にこんな時間に。」

「ああ、もう!!続きは俺ん家でにしてくれ!!一応門限あるんだよ。間に合わないと集落に入れない!!」

 そこなのだ。

 他の集落がどうかは知らないが、俺のいる集落は門限がある。

 間に合わないと門をきっちり閉められて中に入れなくなるからかなり危ない。

 夜の森で野宿とか危険過ぎる。

「いいのかな?自分で言うのもあれだけど、僕かなり怪しい人だよね?」

「目の前の怪しい奴を集落に入れるのと、門限アウトで野宿なら当然の選択なんだよ。……俺にとっては。」

「そ、そうなんだ。なら急がないと日が暮れるよ。ここ森のかなり奥みたいだし。」

 言われてみれば普段より奥に来てるんだから、もうまずいかもしれない。

「……走るぞ!!」

「え、ちょっ、ちょっと、引っ張らないで!」

 咄嗟にφの手を掴んで走り出す。

 今の俺に何を言っても無駄だ。

 門限に間に合う事が最優先なのだから。

「見えた!!門だ!!」

 しばらく走っていると集落の門が見えた。

「ゾーイ!!急げ!!」

 今日の門番はイルスのおじさんだ。

 正直、俺の事を嫌ってる人じゃなくて良かった。

 俺の事を嫌ってるとこの時点で門を閉じられる。

 ラストスパート。

 急ぎに急いで門の内側に飛び込む。

「ギリギリセーフ。あと少しでも遅くなってたら間に合わなかった。」

 振り向けば門が閉じられるところだった。

「今日は遅かったな、まあ間に合ったからいいが。……隣の誰だ?」

「森で拾った。」

「おいおい。危険じゃないならいいが。大丈夫だよな?」

「多分。まあ、家に連れてくから。大丈夫だよ。」

「多分て、大丈夫かよ。気を付けて帰れよ。」

「わかってる!!」

 さあ、家に帰ろう。

「君は集落の人に好かれているんだね。普通こんな急に現れた得体の知れない怪しい奴、集落に簡単に入れてもらえないよ。」

「あの人だから、だ。俺の母さんを最初に受け入れたのもあの人らしい。ほら着いたぞ。」

「君のお母さん?っとここが?ちょっと狭くない? 」

「一人で暮らすには十分だ。その辺に座れ。」

 適当に座れそうなところを指さしといて飲み物をだす。

「ああ、ありがとう。それで、説明させてもらうと協力してもらうっていうのも一応、いくつか理由があってね。」

「理由?」

「うん。まず、君は今、化け物が見えるようになっているという所。あと君が能力者っていうのも重要だ。」

「俺が能力者?」

「さっきの化け物は君の能力で倒された。能力も千差万別。化け物を倒せるような能力、ただでさえ能力者は少ないから。ぜひとも味方に引き入れたいんだよね。」

「能力者ってそんなに少ないのか?」

 さっきの話を聞いて、俺は勝手に能力者ってのは大勢いるんだと思ってた。

「能力者だと100人に1人。化け物を倒せる能力者になると能力者100人に1人ってくらいには。」

 よく考えてみれば、それってかなり少ない。

「お前の能力は何なんだ?」

「ちょっと光を操るくらい。だから本来、化け物退治は無茶なんだよ。能力者は少ないし使い勝手もわりといいから別にいいけど。」

「……怖くないのか?」

「そりゃ怖いよ。下手をすれば死ぬんだから。でも、僕がやらないとって思うし、いわば、これは僕なりの復讐なんだ。」

「復讐?」

「僕のいた集落ってさ、化け物に襲われたんだ。」

 急に空気がしんみりとしたように感じる。

「なんか、悪い事聞いてすまない。 」

「いいんだ。気にしないで。」

「…でも。」

「じゃあ、君のお母さんの話を少しでいいから聞かせてくれない?」

「…………俺の母さんはよそ者だから、あんまり受け入れられてないんだ。俺もどこの馬の骨とも知れない奴だから、グレイおじさんとか、イルスおじさんとか、シェリフ姉さんとか、パラド兄さんとか、ボタン姉さんとか。…とにかく、受け入れてくれる人のおかげでなんとかなってるけど、俺を追い出したい人なんて大勢いる。」

 母さんの事といいつつ、これじゃほとんど俺の事だ。

「そっか。受け入れてくれる人がいて良かったね。」

「ああ。」

 本当に、まったくだ。

 受け入れてくれる人達のおかげで俺は生きている。

「その人達は君の家族みたいなものって事かな?」

「…家族か。ああ。あの人達は俺の大切な

 家族だよ。」

「僕にとっての家族は組織の人達かな。」

「組織?」

 また聞いてない事だ。

 化け物退治をする組織なんだろうか?


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