α’集落と化け物と謎の人《φ(ファイ)》
サブタイトルが同じで《》の中のみが違うときは、同じ時を違う視点で書いているという事なので、内容がかぶる事があります。
僕の名前、というよりコードネームはφ(ファイ)という。
僕のいる組織の伝統で、組織の一員と認められると、かつて使われた言葉のギリシア語という言葉を使ったコードネームを与えるのだ。
僕の場合は、本名からつけられた。
本名?
スーツを着てるときは任務中。
任務中に本名は名乗れないね。
年は確か今現在、十二、三だったと思う。
誕生日なら覚えているけれど、自分が何歳だとしても、同じ事だと思うから覚えていないんだ。
ちなみに。
僕の性別を尋ねてくる人は数知れないけれどご想像におまかせするよ。
変わった人だと、『僕っ娘とかまじ萌え!!』と叫んでいた。
その時、僕は女の格好だったから女だと思ったらしい。
さて、そんな僕は今最大限の力を振り絞って走っている。
化け物が出た森は辺境の地。
盲点だった。
一番近い僕が急行しているけれど、間に合わないかもしれない。
唇をギュッと噛みしめる。
「考えるな、考えちゃダメだ。」
間に合わない時の最悪の事例を考えてしまい、あわてて振り払う。
突然、化け物は切り刻まれた。
「……能力者」
こんなこと、能力者にしかできない。
急いで現場に行くと、一人の少年が呆然と突っ立っていた。
声をかけようして草に当たってしまった。
ガサガサ
「こ、今度は何だ!!」
彼は掠れた声で叫んだ。
怖がらせてしまったかな?
化け物に遭遇してすぐじゃ怖いに決まってるか。
「あっと、驚かせる気はなかったんだ。すまない。」
彼の目が点になった。
大方、見慣れない僕の登場に驚いているんだろう。
ここは話を続けた方がいいとこ?
とにかく、話してみよう。
「えっと、突然悪いんだけど、 ちょっと話いいかな?」
「あ、ああ。」
僕は話を切り出した。