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α’集落と化け物と謎の人《ゾーイ》

 俺はゾーイ。

 今年十三になる。

 親はいない。

 母さんは俺を産んですぐ死んでしまったらしい。

 父親はそもそもどこのだれかでさえ知らない。

 母さんがこの集落に暮らし始めた頃にはもうすでに俺は腹の中にいたらしい。

 母さんと仲が良かったらしいみんなのおかげで今日まで生きてこれた。

 正直、よそ者だった母さんを良く思わないやつは多い。

 ……母さんを良く思ってる人が少ないのは寂しいとか思ってないからな!!

 少し、ほんの少しだけ寂しいとか思ったかもしれないが少しだからな!!

「ハイハイ、この意地っ張りのツンデレマザコンめ。」

「うわっ!?シェ、シェリフ姉いつの間に。ってどこから聞いてた!!」

「そうね~、母さんを良く思ってる人が、あたりからかしら?」

「重要なとこ全部聞いてんじゃん!!」

 この人は本名シェリフリア、略してシェリフ姉。

 俺を養ってくれてる人の一人のグレイおじさんの一人娘。

 この人には昔から世話になってるせいか、逆らえない。

 ただでさえマイペースなこの人に逆らえる人は少ないし、当然かもしれない。

 近くに他の集落がない上に森に囲まれたここはめったに人がこない。

 つまり、女でも簡単な農作業なら駆り出されるし、当然家事もする。

 それなのになぜかシェリフ姉の手は荒れないでいる。

 仕事をサボっている訳でもないのに手荒れ知らずのシェリフ姉の手は集落七不思議の一つに見事?入っている。

「あ、そうそう、父さんがちょっと話あるってゾーイ呼んでた。伝えろって念を押されてたの忘れるとこだった。」

「……シェリフ姉……」

 この人はいつもこうだ。大切なことをすぐ忘れる。

「ついでにいえばなるべく急いでくれって「それ先に言えよ!!」言われてた。」

「あら、いっちゃった。」

 後ろの方でシェリフ姉が何か言ってるけど無視、無視。

 っと、いた。

 グレイおじさんだ。

「遅かったなゾーイ。……もしかしてまたシェリフか?」

「ま、まあ、な。」

「走ってきてれば疲れてるだろ。いつも家の娘がすまないな。それで、悪いんだが、ちょっと森でキノコ取ってきてくれないか?量は小袋2つ程度で。最近忙しくて気づいたらかなり減ってたんだ。」

「そんぐらいならお安いご用さ。小袋2つだろ?小袋2つなら大袋持ってって半分くらいまで取ってくるのでいいか?」

「ああ!小袋2つより多い分はお前のでいいからな。」

「まじで!!サンキュー!!」

 本当に嬉しい。

 俺があんまり迷惑かけたくないって思ってんのを知っててこういう事をよく頼んでくれる。

 これなら俺が取ってきた物なんだからと取ってきたのを少し渡してくれる。

 小袋2つ分といいつつ、ちょっと少なめに取ってって、あまりを俺にくれるんだ。

 キノコが足りないというのも嘘という訳じゃないし、さっさと取ってこよっと。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 おかしい。

 よく森にくる俺だから分かるんだろうけどいつもよりいろんな食べれる植物が減って、毒性のある植物だらけになってる。

 奥に入れば何か掴めるかもしれない。

 何にせよ、様子が確認できる内に見ておいた方がいいに決まっている。

 今日は奥に行く気はなかったけど、俺に行けるとこまで行って、引き返そう。

「うわっ」

 あれ?今何につまづいたんだ?

 気が付けば空気が変わっていた。

「どうなってんだ、これ……」


 ウォーーーーーーーーーーーーーーーン


 空気を震わせる鳴き声が轟いた。

 その鳴き声は上から聞こえていた。

「あれ、なんなんだよ……」

 鳴き声の持ち主は化け物だった。

 ワケわかんない。

 あんなデカイのふつう集落からでも見えるだろ。

 よく見ると、¨それ¨は地面に触手を這わせていた。

 さっき俺がつまづいたのはあれだったのか。

 なんて考えてる場合じゃねー!!

「に、逃げなきゃ。」

 は、速く逃げねーと、集落にいっちまう。

 そのまえに、あんなデカイんだ。

 押し潰されるに決まってる。

「あ、あ、あ、あ」

 声が声にならない。

 逃げなきゃいけないのは分かるのに動けない。

 どうなってんだかわからない、わかるわけない。

 このままじゃ、確実に死ぬ。

 そんなのいやだ。

 怖い。

 そうか。俺、怖いのか。

 納得すれば、思考は落ち着いてきた。

 死ぬなら、最後に化け物の観察でもしとくか。

 ¨それ¨は透明な緑色をしている。

 50メートル以上はある木より大きいのだから、最低50メートルはあるのだろう。

 何だか、前に見させてもらったクラゲみたいだ。

 クラゲのような触手が縦横無尽に敷き詰められている。

 顔……はあるんだろうか?

 遠目で見ても見当たらない。

 近づいてきた。

 さっき触手に当たったから気づいたんだろうか。

 ……怖い。

「………イヤだ」

 今、俺は何を言った?

「イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…死ぬのは、死ぬのはイヤだ!!死にたくない!!」

 気が付くと、俺は叫んでいた。

 すると、何かが風を切る音がした。

 恐る恐る目を開けると、化け物は、目の前にいた。

 ……切り刻まれた状態で。

「え?」

 ガサガサ

「こ、今度は何だ!!」

 俺の声は掠れていたが一応叫んでいたようだ。

「あっと、驚かせる気はなかったんだ。すまない。」

 そこにいたのは男か女かよくわからない見慣れない服を着た子供だった。

 年は俺とあんまり変わらないように見える。

「えっと、突然悪いんだけど、ちょっと話いいかな?」

「あ、ああ。」

 金色の髪をしたそいつは話を切り出した。

どうでもいいかもしれませんが。

大袋1つ=小袋4つ

小袋1つ=大人の両手いっぱいに入る程度

という設定です。

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