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職場で私が皆に愛された理由

作者: 頭山怛朗

ヤフーブログに投稿予定です。

 若い同僚がひどく落ち込んでいた。大きな受注競争でライバル社の新卒の新入社員に負けたのだ。

 で、私は言った。「勝つときもあれば、負けるときもある。それに今回、我がうちが負けたのはいろんな条件でM社の方が良かったからだ。君だけの責任じゃない」

 かれは私の顔をじっと見て(穴が開くほどじっと見て)言った。「そうですよね。ぼくだけの責任じゃない」

 彼は元気になった。

 私と話すと、職場の皆、何故か元気になった。これだけでも、私の存在価値があるのではないかと思った。

そして自分は職場の皆に愛されていると、毎日のように実感している。


 四十二年間勤めた会社を、無事、定年退職することになった。

 それで、異動の送別会も含め、皆、私の退職を祝ってくれた。宴会がほぼ終りかけたとき、急に便意を覚え個室に入った。

「それにしても残念です。頭山さんが辞めるなって……」あの若い同僚だ。

「どうして? 」と、声がした。私より十歳は年下の課長だった。

「おれはこのまま仕事が続けられるのだろうか? また、ミスった! ……と自信が無くなったとき、頭山さんを見ると“この人でさえ出来たのだから、このおれに出来ないわけがない! ”と思うんです」

「おい、おい。それは言いすぎじゃないか……」と、年下の課長が言った。しかし、彼が嘲笑っていることは確かだった。

「そう言えば、亀山君が言っていたよ」と、年下の課長。亀山君は決して“イケメン”ではないが好青年だ。

「あぁ、あのお見合い七連敗の? 」

「八連敗だ! 」

「“自分は八連敗したけれど、あの頭山さんが結婚できたのだからこのおれに結婚できないはずがない”と言っていた。そして九戦目でゲットした。なかなかの美人だ……」

 暫らくの沈黙の後、年下の課長は言った。「亀山君は言っていた。“頭山さんが居なかったら、途中で諦めていた”。頭山さんは我がうちの太陽だ。太陽が退職するのは残念だ」

 そう言うと、二人はトイレから出て行った。


“我がうちの太陽”だなんて最高の褒め言葉だけれど、額面通りに受け取っていいのか洋式トイレに腰かけたまま私は途方にくれた。


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