表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/125

瓶詰めの蝶々 第四十三回

(この赤が、画家の最後の仕上げなんじゃないか)

 波のように打ち寄せる戦慄を、懸命に振り払いながら、先を急いだ。地面も植物も乾ききっておらず、蒼い薄闇の底に、じっとりとうずくまっていた。

 おぞましい予感に駆られたように、竜也が腕時計に目を遣ると、午前四時五五分。

 昨夜は一本道のように見えた、母屋へ続く小路は、途中で二股に分かれていた。櫻井が先導していたため、気づかなかったのだろうか。あるいはまた、彼女が意識して、見せようとしなかったのか。

 獣道、という二文字が、竜也の脳裏で、まがまがしい遠吠えのように警告を発した。

「人が通った跡があるな」

 ぼんやりとした口調で、つぶやいたのは悟だった。示し合わせたわけではないのに、二人ともその場で足を止め、もうひとつの小路を見つめていた。

 幅は、辿ってきた道の半分以下。所々抜けた石畳は、執拗な蘚苔類に、ほぼ覆い尽くされていた。

 その上に、いくつかの真新しい足跡が刻印されていた。

「見ろ。蝶の死骸だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ