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ローマン -Between Contracts-  作者: ヤス


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1/1

chap プロローグ 裏切りの夜

深夜のローマ。

豪邸では著名人たちを招いた華やかなパーティーが続いていた。

黒い背広を纏った男が、シャンパングラスを片手に廊下を抜ける。足音は早く、しかし異様なほど静かだ。


一室へ滑り込むようにして入り、扉を閉める。

電灯のない闇の中、あらかじめ隠しておいた白銀のアタッシュケースを開いた。

中から現れたのは黒光りする拳銃──グロック26。


男は無駄のない動作でサプレッサーを取り付ける。

迅速な動きでアタッシュケースを回収し、グロックを懐に滑り込ませると、男は通気口へ身を滑らせた。


金属の内部を這うように進み、息を殺したまま、標的のいる部屋へと向かう。


「では、ボス。我々は廊下で待機しておりますので、ごゆっくりお休みください」


「ああ、任せる」


警備の部下たちが廊下へ下がり、寝室には一人の男が残された。

ジョヴァンニ──今回の標的。

ソファにくつろぐその背後へ、暗殺者は音もなく降り立つ。

懐からグロック26を抜き、引き金に指を掛けた。


「随分と早い刺客だな、ローマン」


気配を殺していたはずの空気が、わずかに揺らぐ。

それでもジョヴァンニは、背後の殺気に気づいていた。


「伝説の殺し屋に暗殺されるのも、悪くはない」


命を握られたまま、彼は落ち着いた手つきで煙草に火をつける。紫煙がゆっくりと天井へ消えた。


「あんた、最初から分かっていたのか?」


「無論だ。お前を差し向けた連中の見当もついている」


「そうか……」


呟きと同時に、ローマンは静かに引き金を引いた。

サプレッサー越しの乾いた破裂音。


火薬の匂いが室内に広がり、薬莢が床を跳ねる。

──いつも通りの仕事。


ローマンはグロック26を懐へ戻すと、落ちた薬莢を拾い上げた。

そして迷いなくベランダへ身を躍らせる。


ローマンの姿は、深い夜の闇へと溶けていく。

暗殺現場から離れた先──森に囲まれた静かな公園。

そこには、一人の女コルヴィーナが待っていた。


「こんばんは、ローマン」


「コルヴィーナか。何の用だ?」


「仕事の報酬を持ってきたの。受け取って」


彼女は白銀のケースを軽く放り投げる。


ローマンは片手で受け取り、そのまま蓋を開いた。

中には、金貨が十枚。


「随分と受け渡しが早いな」


「早い方がお互い得でしょ?」


「そうだな」


報酬を確認したローマンは、ケースを閉じて背を向ける。


「じゃあな」


その瞬間だった。


「──ウチとの契約はここで終わり」


ローマンの足が止まる。


「ここから先は、お互い“何の関係”もないわ」


コルヴィーナは静かに口角を吊り上げ、細い指を鳴らした。

直後、森の闇から黒ずくめの兵士たちが姿を現す。


手にはUMP45やMP5といった短機関銃。

完全武装の一団が、ローマンを包囲していた。


「だから──ここで貴方を殺しても、何の問題もない」


「“死神”に楯突いて、生きて帰れると思うなよ……」


ローマンは小さくため息を吐いた。


次の瞬間、地を蹴る。

ベルトに仕込まれていた暗器ナイフが閃き、一瞬でコルヴィーナの懐へ潜り込む。


「かっ……!」


鋭い一閃で彼女の喉から鮮血が噴き出した。

不意を突かれた兵士たちが、慌ててUMP45とMP5をローマンへ向ける。

だが遅かった。


ローマンはグロック26を抜き、最前列の兵士の頭を撃ち抜いた。

倒れ込む兵士からUMPを奪い取る。


そして引き金を引いた。

銃声を鳴らし、 一人、また一人と兵士たちの頭部が正確に撃ち抜かれていく。

カチャリ──。


UMPの弾切れを知らせる乾いた音が響く。

その瞬間、ローマンは躊躇なくUMPを前方の兵士へ投げつけた。


怯んだ隙を逃さない。

懐から抜いたグロック26が火を噴き、兵士の頭部を撃ち抜く。


倒れ込む兵士の手からMP5を奪い取り、ローマンはそのまま銃口を次の標的へ向けた。


――15分後。

公園には、屍の山が築かれていた。

連戦による疲労で、ローマンの呼吸は荒い。


足取りも僅かにふらついている。

それでも彼は倒れない。


ポケットからスマートフォンを取り出す。

だが、銃撃戦の最中に被弾したのか、画面には大きな亀裂が走っていた。


電源も入らない。


「クソッ……!」


吐き捨てるように呟き、ローマンはその場を後にする。

向かう先はアジトだった。


アジトへ戻ったローマンは、机の引き出しから予備のスマートフォンを取り出した。

コール音が数回鳴る。


「もしもし」


「……アヤか。少し問題が起きた」


「どうしたの?」


「クライアントに裏切られた」


ローマンは壁に背を預ける。


「恐らく、もう警察も動いてる。ここもすぐ割れるだろう」


「なるほどね……なら、暗殺協会のルールに従って、アタシがアンタを保護しないといけないわね」


「そうなる」


「とりあえず、こっちで準備しておくから、すぐ日本に来な」


「助かる」







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