第2話 いざダンジョンへ
新宿ダンジョンは、日本にあるダンジョンの中で最大で、最も危険でもあるけど、取れ高を意識するならやっぱりここしかない。
危険を覚悟で挑んでこそ、良い画が取れるものなのだ。
……なんてことを考えていたら、新宿に着いた。
この街は、昔はたくさんのビルがそびえ立っていて、多くの人々が暮らしていたらしいけど、今は廃墟ばかりだ。
ダンジョンの出現で治安が悪化したり、戦争の時に空爆もされたとかで、今ではボロボロになったビルや崩壊した建物が立ち並んでいる。
目に映るものは灰色ばかりで、ところどころで不法居住者が起こした焚き火の明かりと、その煙が上がっているのが見える。
「今日も焦げ臭いね」
私はルーシーに言った。この街はいつ来ても何かが焦げたようなにおいがする。
「そうだね。私はこのにおい、嫌いじゃない」
「変なの」
ルーシーの好みはよく分からない。
私たちは廃墟まみれの道を歩いて、ダンジョンに向かった。
ダンジョンの入り口に近づくと、「ダンジョン管理局」の建物が見えた。
管理局なんて名前がついているけど、たいそうな施設じゃない。
彼らの主な仕事は、誰がダンジョンに入ったのかと、誰がダンジョンから出てきたのか(あるいは出てこれなかったのか)を管理すること。
あと、魔物から取れた素材を買い取ってくれたりもする。
ダンジョンの入り口にはゲートがあるけど、管理局の人に探索者免許を見せると、私たち二人はすんなりと通ることができた。
ダンジョンに入ると、体がぞわぞわするような特有の感覚に襲われた。「魔素」だ。
魔素というのは、ダンジョンの内部に満ちている不思議な粒子で、これのおかげで探索者たちは固有の武器を具現化させたり、スキルを使うことができる。
「ダンジョン入った時のこの感覚、いまだに慣れないんだよね……。ルーシーはどう?」
「私は慣れたよ。飛行機が離陸する時のフワッとした感覚みたいで、ちょっと好き」
「変なの」
ルーシーの感覚はよく分からない。
そうこう話していると、身体中に魔素が入り込んだ。
「顕現」
私はそう呟くと、右手から光の粒子が現れて、何かを形作るように集まりはじめた。
そして、粒子の塊がパッと光ると、右手にはリボルバー式の拳銃が握られていた。
これが私の固有の武器だ。
探索者たちは、このように一人一人が固有の武器を持つ。
武器の種類は、その人の性格や人格に影響されて勝手に決まるらしいけど、詳しいことはよく分からない。
私の拳銃は、魔素で作った弾丸を込めて撃つことで、敵を攻撃することができる。
ちょっと苦手だけど、仲間や自分に使うための、回復用の弾丸を作って撃つこともできる。中々に便利だと自分でも思う。
「アリサのそのピストル、カッコいいよね」
「ルーシーも早くしなよ」
「うん」
同じようにルーシーも武器を具現化させた。
彼女の右手には、鞭が出現した。
ルーシーの鞭は、彼女の意思で自由に動かすことができる。攻撃はもちろん、相手を拘束したり移動にも使える。
「それじゃ、始めようか」
そう言って私は、リュックから撮影用のスマホを取り出して、ジンバルに付けた。
「ルーシーこっち寄って」
「うん」
私たちは顔を寄せ合って、カメラの画角に収まるようにした。
暗い赤色の髪の女と、銀髪の美女が映っている。
私と並ぶとルーシーの顔の良さが目立つ……。
私は前髪の調子が気になって少し直したけど、ルーシーはそんなことせずとも、いつも通り完璧だった。
「いくよ」
「うん」
私は手元のスイッチを押して、配信が始まった。
RECの赤いサインが、私たちの顔をいつもより赤く照らした気がする。




