第11話 エゴサーチ&クリップ
家に着いた私は、SNSでエゴサーチをした。
評判によって活動方針を変えるつもりはないけど、視聴者のことを知っておいて損はないと思った。
SNSには、私たちに対して多種多様な意見があった。
『倫理?数字が正義でしょ』
『早く活動再開してほしい #ルーシー事件』
『マジで頭おかしい #アリサ配信やめろ』
『あれは人としてどうなの』
『ダンジョンは無法地帯なんだから批判する方がおかしくね?』
『無法なら何してもいいと思ってる奴多すぎ』
『ていうか配信サイトはBANしないの?』
『D-Leakはエログロ何でもありの配信サイトだから基本BANはないぞ』
『配信辞めちゃったの? アリサもわりと可愛いからまた見たい』
『活動再開はよ』
『もっとヤバい映像見せろ』
よかった。あれから一週間くらい配信してないけど、配信再開を望んでいる視聴者も結構いるみたいだ。
わりと厳しい言葉で批判もされてて心が痛むけど、我慢するしかない……
とにかく、これで心置きなく活動を再開できる。
まず私は、通販サイトを開いた。
そして、撮影用の自動追従型ドローンをカートに入れて、迷わず注文した。
価格は500万円ほどした。さすがに普通の大学生の収入で買うのは難しい値段だったから、私の両親の死亡保険金からお金を引き出した。
私の両親は、私が五歳の頃に交通事故で亡くなっている。その時の保険金2,000万円は、本当に生活に困った時に使うべきお金として、今まで手を付けずに貯金してあった。
でも、今こそこのお金を使う時だろうと私は判断した。天国の両親に感謝だ。
新しいドローンが届くまでには数日かかるから、その間に、活動再開を知らせる強烈なメッセージとして、私はあることをすることにした。
それは、切り抜き動画の作成と投稿だ。
切り抜き動画というのは、長時間の配信アーカイブから、見どころだけをピックアップして切り抜いた動画のことだ。有名な配信者には、そのアーカイブを切り抜くファンが大勢いたりして、その動画も盛り上がったりするらしい。
私は、ルーシーが死んだ時の配信アーカイブを、自分で切り抜いて編集することにした。
数日間の編集中、私は何度も泣いてしまった。アーカイブ映像には、元気な頃のルーシーがありありと映っている。
でも、ルーシーのことを思い出す度に、むしろ彼女のためにこの活動を続けなくてはという義務感にかられた。
そうこう苦労して、切り抜き動画が完成した。
冒頭、ダンジョンに入った二人組の女性配信者が映り、動画テーマを説明する。
第三層の攻略動画ということで、何度か魔物と戦闘するシーンが入る。
雰囲気が変わるのは、謎の扉を見つけて中に入るところからだ。
ドラゴンとの遭遇。苦戦する私たち。トラブルで一瞬途切れる配信映像。
そしてクライマックス。重症のルーシーが映るシーンだ。この辺りはもちろんノーカット。
最後に彼女が絶命し、動画は終わる。
動画タイトルはこうだ。
『【閲覧注意】美人ダンジョン配信者がドラゴンに襲われて死亡』
我ながら、良い出来だと思った。ルーシーの生き様を記録した一本の映画のように感じて、少し誇らしい気持ちさえあった。
動画の概要欄には、しばらく活動できてなかったことを謝る旨と、これから活動再開する宣言を書き込んだ。
そして、はらはらした気持ちで、投稿ボタンを押す。何かを投稿する瞬間はいつだって緊張するものだ。
しばらくして、アカウントへの通知がいくつも来はじめた。確認したい気持ちもあったけど、時計を見るともう深夜だ。おまけに一日中ぶっ続けで編集作業をしていたせいでフラフラする……。
私はスマホの電源を落として、眠りについた。
次の日の朝、妙にはっきりと目が覚めた。
そうだ、あの動画はどうなった?
私は部屋のカーテンも開けず、薄暗い部屋の中でスマホの電源を点けた。
あの時のように、おびただしい量の通知が来ていた。
[通知]あなたのチャンネルの登録者数が90,000人を超えました。
[通知]あなたの動画に100件のコメントが届きました。
[通知]あなたの動画に1,000件の高評価が付けられました。
[通知]あなたの動画に500件の低評価が付けられました。
[通知]あなたの動画の再生回数が50,000回を超えました。
「やっぱり、コメントすごい来てる……」
私は、恐る恐る動画のコメント欄を開いた。
案の定、混沌としていた。
◆◆◆
[野戦病院]
・動画キター!! 待ってました
[煮卵ホールディングス]
・あれ切り抜くとかヤバすぎ
[chang]
・倫理とかないん?笑
[ヤピタン]
・こういうのが見たかった。活動再開してくれてありがとう
[匿名希望です。]
・ルーシーの死に顔かわいい!
[KKK]
・ライン超えすぎww登録したわ
[yakisoba]
・何考えてこの動画編集してたんだろ、イカれてる
[みかん屋]
・見てないけど低評価押した
[友達0人]
・こういう動画があってもいいと思う
[ポーション中毒]
・友人の死でバズって頭おかしくなった? 登録解除するわ
[山田の肝臓]
・悔しいけど臨場感あってもっと見たくなる
[内藤孝文]
・このような動画は、不謹慎で、よくないと、思います。
[ルーシーだいすき]
・ルーシー死んだのアリサのせいだろ。許さない
◆◆◆
反応は上々だ。
やっぱり意見は賛否両論だけど、数字は嘘をつかない。
再生回数は一晩で10万回近くに到達している。この調子なら20万は余裕で超えるだろうし、50万回だっておかしくない。
動画の影響で、チャンネル登録者数も9万人を突破した。もうすぐ大台の10万人に行くんじゃないだろうか。
やっぱり、みんな刺激的なものを求めているんだ。
その時、頭の中でルーシーの最期の言葉が思い浮かんだ。ねえ……バズるよ、と私に話しかける。
「そうだね、ルーシー」
私はルーシーに返事をした。




