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カナンは芳子と仲良くなりたい

おまたせしております。

*今回はカナン寄りの第三者視点です。

 カナンこと、ナナ・ロールは、高校卒業後、魔王城に就職した新人だ。

 覚えることはたくさんあり、毎日てんてこまいだったが、生来の前向きな性格と周囲のサポートのおかけで、五月病になることもなく、楽しく仕事をしている。


 何よりも、アーネストの存在が大きかった。


 アーネストは、自分を最弱の魔王と口にするが、そんなことはない。

 ナナたちからすれば、最高クラスの魔力を持っているし、その強さは底が知れない。

 でも、魔王としての絶大な強さより、ナナは彼の人となりが好きだ。

 就活の時に助けてくれたあの時から、ナナの中では、アーネストが最高最強の魔王なのだ。




 アーネストが部屋を出て、ヨシコのことを周知するために城内を奔走し始めた頃。


 客室で、カナンは、ソファに座るヨシコを観察していた。


 アーネストのマインドヒールや自分のお茶で落ち着きを取り戻した彼女は、滞在先の客室に通されてから、ソファに座って、ぼーっとしていた。


 自分よりも幼く見える、彫りの浅い独特の顔立ちをしていて、見たこともない材質の衣服を着ている。

 だが、それ以外は、普通の人間だ。

 突然のことに怯え、ちょっとしたことに一喜一憂する、普通のヒューマン。


 自分より少し年上の、可愛い感じの人。


 それに、アーネストや自分のことを受け入れてくれた。

 この時点で、カナンはヨシコのことを好意的に見ていた。

 それも、かなり。


 だから、カナンはヨシコのことを知りたいと思った。

 とはいえ、色々あって疲れているだろう彼女に、余計な負担をかけたくない。

 じろじろ見ているのも気を散らすだろうと思い、入り口に近い場所に立って、静かに、それとなく観察している次第だった。


(あり?)


 ふと、ヨシコがジャケットの内側から、何かを取り出した。

 白っぽい、手のひらより少し大きいサイズの板のようだった。

 ヨシコは板に目を落として、右指で幾度かその表面をなぞり始める。

 しかし、一分もしないうちに、鼻から小さく息を吐いた。

 落胆に近い感じがしたが、それほど深刻でもなさそうだった。


 ジャケットの内側に板を戻し、顔を上げたヨシコと、バッチリ目が合った。


「あの、何か……?」

「な、なんでもないでーす!」


 目が合っただけではなく、声もかけられるとは想定していなかったカナンは、声を上擦らせながら答えることになってしまった。

 なんでもない、わけがないことは、カナン自身でもわかる。


「そう、ですか?」


 しかし、ヨシコは深く追求してこようとはせず、小首を傾げながらも退いてくれた。


 内心で汗を拭いたい気持ちにかられるカナン。


(あ、危なかった〜!)


 危機一髪の状況(カナン主観)を乗り越えたものの、他にやることもないので、再びヨシコの観察に戻るカナン。

 今度は、先ほどよりも慎重かつ、それとなく、自然に。


(綺麗だけど、やっぱり可愛い……かな? 私よりもお姉さんなんだよね。それに、会社で働いてるって言ってたし……人生の先輩さんだぁ)


 そして、目をキラキラさせ始め、しっかりガッツリ、ヨシコのことを見始めたことに気付かない。


 カナンこと、ナナ・ロール、十九歳。

 魔法道具課勤務の新人で、アーネストや課の皆から妹のように可愛がられている魔族の少女は、初めて出会う異世界のヒューマンの女性と、友達になりたいと思った。


 そこに大した理由はない。

 強いて言うなら、アーネストや自分のことを受け入れてくれたこともあるが、仲良くなりたいと思ったからなる。

 それだけだった。


 それに、仲良くなることができれば、アーネストが居ない時でも、ヨシコが少しは安心できる。

 ヨシコが拒絶してくる、という考えがなかったわけではないが、多分、それはないとカナンは考えた。


 なんとなく、だがヨシコとはきっと友達になれる。

 そんな予感に胸をときめかせ、カナンは心の中で気合を入れた。


(タイミング……そう、何気ないタイミングで、ちょっとお話できれば……)


 イメージするのは、猫獣人の友人たちが、気になる何かを見ている時の目だ。


 それはどっちかっていうと、狩人が得物を狙う目では?

 もしアーネストがこの場に居て、カナンの心境を知ればそんなツッコミを入れたかもしれないが、残念なことに今はいない。


 カナンこと、ナナ・ロール、十九歳。

 本人に自覚はないが、喜怒哀楽がはっきりしているだけではなく、考えていることも表に出やすいタイプの魔族の少女。


 話しかけるタイミングを見計らうも、そのキラキラした表情と熱烈な視線、そして好意的な雰囲気は、しっかりとヨシコに届いていたのは言うまでもなく。


「あの、カナンさん、で良かったですか?」

「へ? あ、はい!」


 またも突然声をかけられたことに驚くカナン。

 しかし、ヨシコは気にした様子もなく、遠慮がちにだが、目をちゃんと見て話を続けてきた。


「喉が渇いたので、お茶がほしいんですけど、キッチンってありますか?」


 来た!

 カナンは願っていたチャンスが早速到来したことに内心で歓喜しながらも、表には出さないようにして(実は顔に出てる)答えた。


「ありますよ。ですが、ハナオカさんはお客様なので、座っていてください! 私が淹れてきますね〜!」

「ええと、それじゃあ、お願いします」

「はい! 紅茶と、魔滋茶(まじちゃ)と、ドクダミ茶がありますけど、どれがいいですか?」

「えと、さっき、飲んだのと同じお茶でお願いします」

「わっかりました!」


 早速、カナンは室内のドアの一つを開けてキッチンに入ると、常備されているお茶セットの中から、紅茶の缶を取り出して、手際よく用意した。

 そして、トレーに載せて運び、ヨシコの前に置いたカップに注いだ。


「おまたせいたしました!」

「ありがとうございます。あの、それで、もう一つ頼んでもいいですか?」

「はい! 何でしょう?」

「カナンさんも、一緒に飲みませんか? 一人で飲んでいるのは、落ち着かなくて」

「わっかりました!」


 望んでいた展開に、カナンは一も二もなく頷いたのだった。

設定の見直しなどをしておりまして、停止しておりました。すみません。


〜簡単用語解説〜

魔滋茶(まじちゃ):魔力を込めて育て上げたチャノキの葉を使った茶。魔力回復効果もあり、魔族の国ではポピュラーな一品。ヒューマンの国々にも存在するが、魔族国産の方が味も香りも効能も格段に上。魔族の一般家庭で飲まれている魔茶でも魔族国があまり輸出してないため、ヒューマンの国々では希少価値が高い。べらぼうに高い。あと、マテ茶ではない。

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