テロのある日常で青春している
僕たちは、テロのある日常を生きている。
クラスメイトでテロで死んだ子は5人だ。それぞれ別々のテロで死んだ。
終わった大人たちは、無敵な人として、よく学生を攻撃対象にする。僕たちには未来があるから、それを奪えるのが楽しいんだ。
でも、政府は特に対策はしてくれなくて、テロとともに多様性のある日常を享受することを説いている。僕たちは、優しくないといけないから、テロリストを寛大に赦してあげないといけない。人の痛みが分かる人間になるように教えられている。
ほら、今日も可哀想な弱いテロリストが、車で大勢の人たちに突っ込む、爆弾をまいて人だかりで炸裂する、一人の中年が刃物を振り回し、ガソリンをばらまく。
こういう日常が、僕たちの青春の社会風景だ。
「暗い顔してんなぁ」
「また事件だ。ほら、近くの高校生が刺されたって」
「若いっていうのは、罪だからな。なんたって、若さは武器だからな」
見た。それは論証の破綻だ。
僕は、スマホを閉じて、グラウンドを眺める。
運動会中に、車でも突っ込まれたら大変なことになりそうだ。
僕は、そんな嫌なことを考える。
なぁ、青春の暗さって、こういうものなのだったのか。もっと、ほら、死ぬのって怖いとか、自殺してみるとどうなのか、とか、ちょっと危険なことをしてみたいとか、退屈とか倦怠とか。
「人は他人が死ぬと気づいたとき、若さを失うんだ」
「なんだそれ」
「永遠の輝きという空想がなくなるんだよ。子供の全能感の最後のカケラが落ちるんだ」
「それでカンパネルラはーー」
「今日は早退する」
僕は、学校をでた。
出ていく場所は、近くの喫茶店。
高校生が刺されたとニュースになっていた場所だ。犯人は逮捕されて、店は臨時休業している。
ほら、非日常じゃないか。
いや日常か。
どちらにしても、死が一寸先にあったんだ。
僕は、入れない喫茶店から少し離れた場所で、缶コーヒーを買う。
僕たちは、どうして失い続けて、我慢を強いられるのだろう。人口規模が少ないからだろうか。選挙権がないからだろうか。稼いでないからだろうか。僕たちは、学校の檻に入れられて、たまに外に出て捕食されて、生きている。
ああ、若者の怒りはテロにはならないから、無視されているのか。
無力は罪だ。
未来があるから、僕たちは、保身する。
「誰?」
「なに。サボってるの、ふりょー」
「お互い様だろう」
「わたしは先生に不良生徒を探してきますと、伝えてから行きました」
「許可おりなかっただろう」
「すぐに出てきたから、聞いてない」
僕が、座っているベンチに彼女は腰かけた。そして、僕の缶コーヒーに視線を送る。
僕は、しぶしぶ自販機でもう一個買って投げ渡す。
彼女は危ないなぁといいながら、それを受け取る。
「僕は、社会という漠然としたものがよくわからないんだ。それの恨みがなんで僕たちに向かうのか。こんな暗い絶望にいるのに、なにが楽しそうに見えてるのか」
「若いと、いろいろそう見えるみたいだよ」
「楽しそうだ」
「そうでしょ。若い女性は愛嬌という武器を、嫉妬されながらも使わないと生きていけないんだから」
「さて、じゃあ、僕は、若者の特権をしてくるよ」
「なに」
僕は、先に飲み終えた缶コーヒーをゴミ箱に捨てる。
「恋愛さ」
「ついていこうか」
「いや、いい」
僕は、少し小高い丘を上がり、四角い墓標で手を合わせる。
「高校生の間までは墓参りに来るよ。僕の青春は、まだ終わってないはずだから。まだ、人が死ぬなんて認めてないから」
本当に、人の命の軽い時代になった。
こんなに人は亡くなるのに、粛々と受け入れている。
戦争という大量死を補うかのように。
「ああ、僕は、告白ぐらいすべきだったな」
誰も、僕には、後悔のーー。
ほら、まだ爆発音が響いている、駅の方で煙が上がっている。
いつものことだ。小さい街の日常茶飯事だ。
可哀想な無関係な人が、頭のオカシナ人間に殺されるだけの。つまらないストーリー。
僕は、彼女への別れを済ませて、駅の方に向かう。
願わくば、僕にーーーー。




