表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

テロのある日常で青春している


 僕たちは、テロのある日常を生きている。

 クラスメイトでテロで死んだ子は5人だ。それぞれ別々のテロで死んだ。

 終わった大人たちは、無敵な人として、よく学生を攻撃対象にする。僕たちには未来があるから、それを奪えるのが楽しいんだ。

 でも、政府は特に対策はしてくれなくて、テロとともに多様性のある日常を享受することを説いている。僕たちは、優しくないといけないから、テロリストを寛大に赦してあげないといけない。人の痛みが分かる人間になるように教えられている。


 ほら、今日も可哀想な弱いテロリストが、車で大勢の人たちに突っ込む、爆弾をまいて人だかりで炸裂する、一人の中年が刃物を振り回し、ガソリンをばらまく。

 こういう日常が、僕たちの青春の社会風景だ。


 

「暗い顔してんなぁ」


「また事件だ。ほら、近くの高校生が刺されたって」


「若いっていうのは、罪だからな。なんたって、若さは武器だからな」


 見た。それは論証の破綻だ。

 僕は、スマホを閉じて、グラウンドを眺める。

 運動会中に、車でも突っ込まれたら大変なことになりそうだ。

 僕は、そんな嫌なことを考える。

 なぁ、青春の暗さって、こういうものなのだったのか。もっと、ほら、死ぬのって怖いとか、自殺してみるとどうなのか、とか、ちょっと危険なことをしてみたいとか、退屈とか倦怠とか。


「人は他人が死ぬと気づいたとき、若さを失うんだ」


「なんだそれ」


「永遠の輝きという空想がなくなるんだよ。子供の全能感の最後のカケラが落ちるんだ」


「それでカンパネルラはーー」


「今日は早退する」


 僕は、学校をでた。

 出ていく場所は、近くの喫茶店。

 高校生が刺されたとニュースになっていた場所だ。犯人は逮捕されて、店は臨時休業している。

 ほら、非日常じゃないか。

 いや日常か。

 どちらにしても、死が一寸先にあったんだ。


 僕は、入れない喫茶店から少し離れた場所で、缶コーヒーを買う。

 僕たちは、どうして失い続けて、我慢を強いられるのだろう。人口規模が少ないからだろうか。選挙権がないからだろうか。稼いでないからだろうか。僕たちは、学校の檻に入れられて、たまに外に出て捕食されて、生きている。


 ああ、若者の怒りはテロにはならないから、無視されているのか。

 無力は罪だ。

 未来があるから、僕たちは、保身する。


「誰?」


「なに。サボってるの、ふりょー」


「お互い様だろう」


「わたしは先生に不良生徒を探してきますと、伝えてから行きました」


「許可おりなかっただろう」


「すぐに出てきたから、聞いてない」


 僕が、座っているベンチに彼女は腰かけた。そして、僕の缶コーヒーに視線を送る。

 僕は、しぶしぶ自販機でもう一個買って投げ渡す。

 彼女は危ないなぁといいながら、それを受け取る。


「僕は、社会という漠然としたものがよくわからないんだ。それの恨みがなんで僕たちに向かうのか。こんな暗い絶望にいるのに、なにが楽しそうに見えてるのか」


「若いと、いろいろそう見えるみたいだよ」


「楽しそうだ」


「そうでしょ。若い女性は愛嬌という武器を、嫉妬されながらも使わないと生きていけないんだから」


「さて、じゃあ、僕は、若者の特権をしてくるよ」


「なに」


 僕は、先に飲み終えた缶コーヒーをゴミ箱に捨てる。


「恋愛さ」


「ついていこうか」


「いや、いい」




 僕は、少し小高い丘を上がり、四角い墓標で手を合わせる。


「高校生の間までは墓参りに来るよ。僕の青春は、まだ終わってないはずだから。まだ、人が死ぬなんて認めてないから」 


 本当に、人の命の軽い時代になった。

 こんなに人は亡くなるのに、粛々と受け入れている。

 戦争という大量死を補うかのように。


「ああ、僕は、告白ぐらいすべきだったな」


 誰も、僕には、後悔のーー。

 

 ほら、まだ爆発音が響いている、駅の方で煙が上がっている。

 いつものことだ。小さい街の日常茶飯事だ。

 可哀想な無関係な人が、頭のオカシナ人間に殺されるだけの。つまらないストーリー。


 僕は、彼女への別れを済ませて、駅の方に向かう。

 願わくば、僕にーーーー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ