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Strawberry soda☆苺炭酸革命!  作者: 依梨
a chapterⅠ* 悪趣味が悪い奴っ!
9/12

*05 憧れの愛しい人2


 二年生の授業が始まる初日。


 教室の外は、新学期の高揚感というよりも、ある特定の話題で盛り上がっていた。


「キャ~!楽しみぃ!今日に限ってメイクしてよかった!」

「さすがね!私もしてきたの!どう!?」

「すっごく似合うよ!」

「よかった!!!これで見てくれるかなあ!」

「うん!絶対可能性あるよ!私も負けないんだから~!」


 黄色い歓声が、教室の外からも響く。

 その中心にいるのは、水無月翼裟だった。


 彼は入学当初から注目を浴び、教師にも好かれるほどの優等生。

 成績優秀でスポーツも万能。

 淡い髪色に整った顔立ち、知的な雰囲気を際立たせる眼鏡。

 理知的で品のある振る舞いが、男女問わず多くの生徒を魅了し、憧れの的となっていた。


 「不良組のリーダー」という肩書を持ちながらも、品格と落ち着きを兼ね備えている。

 そのギャップが彼の人気をさらに加速させ、昼休みには、彼をひと目見ようと廊下に女子生徒が列を作るのも、もはや日常だった。


 毬奈も彼に憧れていた。

 だが、近づく勇気はない。


 彼の周囲にはいつも誰かがいる。

 話しかけるどころか、視界に入ることさえ躊躇われるほどに、彼は遠い存在だった。


 だからこそ―― 彼の話題についていくこともできなかった。


 彼のことを知る唯一の手段は、クラスメイトたちの会話を聞くことだった。

 どんな話をしているのか?

 何が好きなのか?

 間接的に知るだけでも、それで十分だった。


 そんな時、女生徒のひとりが興奮気味に口を開いた。


「ねえ、今日さ、見た? 櫂琉かいりゅうくん!」

「そうそう、似てない? 兄弟なのかな…? 一年生らしいんだけど!」


 初めて聞く名前だった。

 クラスの女子たちも「えっ、誰それ?」と興味を示し、一斉にその話題に耳を傾ける。

 毬奈も、思わず身を乗り出した。


「――と言う理由があったらしいよ!」

「っていうかさー、やっぱり翼裟くんのほうがいいよね?」

「うんうん、眼鏡には敵わないと思う!」

「やっぱり翼裟くんかっこいい~!」


 話題は、一瞬で「櫂琉」から「翼裟」へと戻る。


 あれほど盛り上がったはずなのに、結局それ以上の情報はなく、

 名前が出たのはほんの数分間だけだった。


 毬奈は、櫂琉についての情報がほとんどないことに気づいた。

 兄弟なのか? それとも従兄弟なのか?

 ただの噂なのか、それとも本当に「翼裟に似た人物」が一年生にいるのか。


 証拠がない限り、その存在はただの憶測でしかない。


 そんなことを考えながら、ふと二日前のことを思い出し、翼裟の席へと目をやる。


 ――そこには、誰もいなかった。


 机の上には何も置かれておらず、閑散としている。

 彼の姿がないことに、毬奈は違和感を覚えた。


 (今日は休みなのだろうか?)


 だが、周囲を見渡しても、誰も気にしていない。

 あれだけ彼の名前を叫んでいたのに、

 いざ彼がいないとなると、誰ひとりとして気にかけない。


 ――まるで、最初から存在していなかったかのように。


 その時、チャイムが鳴り、担任が教室に入ってきた。


 「みんな席につけ。朝礼を始めるぞ」


 静かに席につきながらも、毬奈は翼裟の不在が気になっていた。

 先生が教壇に立ち、出席簿を開く。


 「さて、新学期が始まったわけだが……」


 先生の話が続いていく。


 「二年生になったからといって、気を抜かずに……」

 「この学年での成績が今後の進路に影響することは言うまでもない……」


 教室内は、担任の話に集中するように静かだった。

 だが、毬奈はその話を聞きながらも、

 翼裟がいないことがどうしても気になっていた。


 すると、その沈黙を破るように、

 一人の男子生徒が恐る恐る口を開いた。


「……せ、先生……」


 担任が話を止め、その生徒の方を向く。


 「なんだ?」


 男子生徒は躊躇いながら、それでも意を決したように続けた。


 「水無月くん……来てません。」


 その言葉が、教室に 静寂 を落とす。

 

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