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メアは悪夢の女王様  作者: 三羽高明


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3/7

わたくしたちは似たもの同士(2/2)

「ヒュウ、そこの席にお座りなさい。手下になったからには、わたくしの話し相手を務めさせてあげてもよくってよ」


 ヒュウはアモンの隣に腰掛けます。アモンは先輩風を吹かせながら、「誠心誠意、女王陛下にお仕えするのだぞ」と言いました。


「それから、この旅の目的も特別に教えてあげるわ。わたくし、夢の門を潜って人間の世界へ行くの。それで、人間の友だちを作るのよ」


「人間の友だち?」


「さっきも言ったでしょう? わたくしは皆の嫌われ者。でも、人間ならわたくしを受け入れてくれるはずよ。だから人間を友だちにするの」


「そのためにわざわざドリーム・エクスプレスを乗っ取ったんですか……。何というか……メア様は行動力があるんですね。でも、もう少し穏やかな方法はなかったんでしょうか? たとえば、普通に『乗せてください』って頼むとか……」


「女王であるわたくしに頭を下げろと言うの? あのね、ヒュウ。人にはそれぞれ役割に応じた振る舞いというものがあるのよ。わたくしは悪夢の女王だから、とびきり悪い作戦を考えて、それを実際にやってのけないといけないわけ」


「は、はあ……」


「他人事みたいな顔して! じゃあ、もっと分かりやすく言ってあげるわ。お前はドリーム・エクスプレスの車掌なんだから、もっとしっかりする必要があるってことよ」


「でも、僕、落ちこぼれですし……」


 ヒュウはもじもじしました。


「僕がドリーム・エクスプレスの車掌になりたかった理由、メア様と同じなんです。僕も人間の友だちが欲しかったんですよ。車掌になれば、乗客の人間たちとたくさん話せるかな、って……」


「まあ、そうだったの」


 自分とは正反対の性格をしているヒュウとの間に共通点があったことが、メアには意外でした。少し彼に親近感が湧きます。


「人間たちとたくさんお喋りをするために、汽車も改造したんですよ。ほら、自動操縦にすれば、ずっと機関室にいる必要はないでしょう? 客車に行って、皆と楽しく過ごせるかなと思ったんです」


「汽車を改造? 特別ってそういうことだったの。お前、手先が器用なのね」


「そ、そんなことないですよ。むしろ不器用です。車掌になるための試験にも中々合格しなかったし……。それに、やっと車掌デビューの日が来たと思ったら、列車がハイジャックされて……。人間をたくさん乗せて楽しい汽車の旅をする予定が、初めてのお客さんが悪夢の女王とムーマたちになるなんて、想像もしてませんでした」


「本当ね。このわたくしを乗せられるなんて、想像もできないほど光栄なことだわ」


 メアは、ヒュウが喜んでいるんだろうと思いました。その割には、複雑そうな顔をしているようにも見えましたが、気にしないことにします。


「人間を乗せるのも素敵だけれど、わたくしたちがお客でも後悔はさせないわよ。さあ、楽しく過ごしましょう。お前、何かできないの?」


 メアはヒュウに無茶ぶりをしました。ヒュウはしばらく悩んだ末に、「そうだ!」と車両の隅に置いてあった「ご自由にお使いください」と書かれている箱を空けます。そして、その中身を持ってきました。


「何、これ?」


 メアは不思議な顔で出てきたものに手を伸ばしますが、アモンが「いけません!」と止めます。


「この奇妙な形状……恐らくは魔法具に違いありません! どんな恐ろしい魔術が込められているやら! 者ども! 陛下をお守りするのだ!」


 女王に危機が迫っていると思い込んだムーマたちが騒ぎ出しますが、ヒュウは「平気ですよ」と言いました。


「これはそんな怖いものじゃないです。人間たちの遊び道具ですよ。確か名前は……こっちがすごろくで、こっちがトランプ、それからこれは……」


 ヒュウは、遊び道具を空いている座席に次々置いて紹介していきます。メアは目を丸くしました。


「ふぅん。人間って、こんなものを使うのね。ちっとも知らなかったわ」


「陛下、これは中々愉快ですぞ! 白と黒の丸い駒を使って、マスの上に絵を描くお絵描き道具です!」


「違いますよ。それは相手の駒を自分の色に変えるゲームです。で、こっちのすごろくは、その四角いの……サイコロを転がして、出た丸の数だけ進んでいくんです」


「詳しいのね、ヒュウ」


「僕、夢の国に来た人間のことを、いつも影からこっそり見ていましたから。人間がどんなことをしているのか分かれば、いつか彼らと友だちになって、仲間に入れてもらえるようになるかなと思って」


 メアにはヒュウの言いたいことがよく分かりました。彼はきっと、夢の国ではのけ者扱いされているのでしょう。でも、別の世界に生きる人間たちなら、自分を好きになってくれると思ったのです。


 やっぱり自分たちは似たもの同士だとメアは感じました。ますます彼のことが放っておけなくなります。


「ほら、ヒュウ。わたくしはこれで遊びたいわ。早くルールを説明なさい」


 メアは近くにあったボードゲームをヒュウの方に差し出しました。


「言っておくけど、手下だからってわたくしを勝たせてくれなくてもいいのよ。女王たる者、負けたときも潔くなくてはね。わたくしがお前に要求するのは一つだけ。思い切り面白おかしく過ごしなさい!」


 自分は人間ではないけれど、少しだけでもヒュウの役に立ちたいとメアは思ったのです。メアの気遣いが伝わったのか、ヒュウは顔を綻ばせながら「はい」と言いました。

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