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始めての依頼

 冒険者になれば誰もが受けるであろう依頼(クエスト)。その依頼には、基本的に2つのパターンがある。

 一つは、普通の依頼だ。朝に、ギルド掲示板に掲示され、それを見た冒険者たちがその依頼書を受付嬢に出し熟すパターン。因みに、依頼に失敗すると、罰金として達成報酬の1割をギルドに収めることが義務付けられている。なぜなら、ギルドの信用問題にもなり得るからだ。また、一定数以上、依頼をこなせなかったりすると、ランクを降格されることもあるらしい。ギルドランクには、実力はもちろんのこと、ギルドからの信頼性も含めて評価されている。そのため、降格処分があったりするのだ。

 そして二つ目は、指名依頼。これは、名前の通り依頼主から冒険者を指名して行われる依頼だ。また、ギルドの建前上は、依頼は強制ではないものの実質的には半強制な依頼だ。そのため、依頼に失敗したとしてもペナルティは存在しない。また、指名依頼は通常の依頼よりも高額になるケースが多い。そのために、指名されやすいよう、冒険者側も依頼主の目に止まるよう、より一層の努力を励むのだ。

 それにしても……。



 「いい感じの依頼が中々見つからないわね……。」



 ギルドのルール上、自分のランクより一つ上までの依頼しか受けることが出来ない。そのため、私は現状、Cランクまでの依頼しか受けることが出来ない。それに加え、自分のランク以下の物はなるべく取らないようにしなければならない、という暗黙の了解のようなものが存在する。その理由は、上のランクの者達が下のランクの依頼ばかりこなして、楽してランク昇格しないようにするためや、適正ランクの者が逆にランク昇格をしやすくするなどの意味がある。

 そう考えると、私が選ぶのは基本的には、DランクかCランクの依頼が私には適切だ。なのだが、C,Dランク相当の依頼が中々見つからないのだ。今、掲示板にあるのは、



〜村の近隣の森に大量に湧き出てくるスライムの討伐をお願いします〜

達成条件:特になし(最低30匹の討伐)

クエスト報酬:スライム一匹につき、銅貨1枚

討伐の証:スライムの魔石

推奨ランク:E


〜ポーション用の薬草を取ってきてください〜

達成条件:薬草×20本

クエスト報酬:銅貨8枚

推奨ランク:F



 「う〜ん……適正ランクの物はないか…し……ら? この依頼って……」



〜魔物の群れの調査〜

クエスト内容:最近、増えている魔物の調査

達成条件:調査内容次第(細かな情報からでも可)

クエスト報酬:調査内容次第

推奨ランク:Dランク以上



 「すいません、この依頼って?」



 私が受付嬢に持っていくと、彼女が分かりやすく説明してくれた。どうやら、ここ2,3ヶ月ほど魔物の出現率が今までより増えてきているらしい。その原因は、全く分かっていないらしい。この依頼も1ヶ月くらいずっと出してあるが、受ける冒険者はいる。だが、まとまった報告が無いのだ。というのも、肝心の発生原因自体が誰も分かっていないからだ。現状、一番の有力説は魔物の増加により縄張り争いから敗れた魔物たちが少ないところへなだれ込んできたため、一時的に数が増えたという説。だが、一時的にしては期間が長すぎるのだ。魔物たちの生息域の変化には基本的に3つのパターンがある。

 1つは、強力な上位種の出現だ。分かりやすいのだと、ドラゴンとか。竜や竜種などと呼ばれるほどのものではないが翼を持ち強大な魔力を備えたドラゴンは、人間には勿論のこと魔物からしても天敵だ。そのため、ドラゴンは一匹でも危険度Aランクの相当の魔物とされている。

 2つ目は、縄張り争いだ。魔物の増加や他から流れてきた可能性などはあるものの、縄張り争いに敗れた魔物たちが、安全なところを求めて、魔物の比較的少ないエリアにくる。そのため、魔物が増加することがある。

 最後に3つ目は、魔物の獲物がなくなってきた可能性だ。稀に魔物たちの食べ物が不足し、人里に降りてきて人間が襲われたり、農作物が食われる被害が起こるらしい。とはいえ、現状はそのような依頼は来ていないため、その先は薄い、となると……



 「上位種の出現か、魔物同士の縄張り争いってわけね……」



 そういうこと、と受付嬢は返す。そのため、ある程度の実力があるDランク冒険者にも調査依頼が来ているわけだ。因みに、この依頼は実は元々Cランクから受けれるようにしてあった。しかし、情報量が少ないのと、そもそもこの依頼を受けれる冒険者も少ない理由から、特例でDランクからになったらしいのだ。



 「なら、この依頼だけど私が受けてもいい?」

 「えっ!?でも、確かにこの依頼はDランクからだけど成り立てホヤホヤのリンちゃんにはキツイんじゃないかな〜って思ったり?」

 「大丈夫よ、私、これでもそこそこ魔法には自信あるし!」

 「で……でも……「行かせてやれ」ギ、ギルマス!?」

 「コイツの実力は俺が保証してやる。これがただの(・・・)魔術師なら止めたが、お前さんは違うだろ?」



 私は、笑って頷き返す。ついでに、今集まっている情報についても教えてくれた。ギルマスも、個人でデータを収集していたらしい。それによると、色んな魔物たちが何ヵ所か束になって何かから怯えるようにしていたことから、上位種に追われたパターンだと予測していたらしい。それだけ情報があるならギルドからの討伐部隊を出せばいいと思うが、このギルドは強力な冒険者がそこまでいないらしい。それこそ、ドラゴンが相手となるならCランク以下はハッキリ言えば足手まとい。死体が増えるだけだそうだ。このギルドでまともに戦えそうなのはBランクのギルマスと自由奔放なAランク冒険者が一人。Aランクの方は何時ふらりと来るか分からないし、ギルマスは立場的にそれほどギルドからの離れるわけにもいかない。そして、あくまで予想だけじゃ他のギルドからの応援を呼ぶわけにも行かない。そのため、私に白羽の矢が立った。



 「今回の依頼をこなし、原因を排除できたなら俺の権限で、お前を特例としてCランクに昇格させてやる!」




 かくして、ギルマスの後押しもあり私はこの依頼を引き受けることになるのだった。

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