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臨戦態勢

 「見えない………」



 そう、見えないのだ。

 ここは、木々が鬱蒼としており、街らしき物が見つからない。

 魔法の力で少し空を飛んでみたりも下が、近くに街らしいものがなかった。

 もっとも、街は街でも町の方ならあった。あと、村と呼ぶか集落と呼ぶべきか微妙ではあるが、それは、何ヶ所かあった。

 確かに、色んな魔法実験やら何やらやるのにはこの場所は非常に良かった。町中でそんなことをすれば大惨事である。が、もう少し近くに街は、ないものだろうか。

 色々考えた結果、私は村ではなく「町」の方に行くことにした。

 理由は簡単だ。少しでも規模の大きい方が身になる話や情報も多いだろう。村とかだと、外とのやり取りを経っていることもありえるからだ。




 「はぁ、一先ず町まで向かいますか………」



 少し大きなため息を付きながら再び歩き始める。町までどのくらいあるかといえば、多分このペースで行くなら、一泊程野宿が必要ということくらいだろう。

 近隣の村を回れば野宿は、避けられるかもしれない。

 が、その代わり宿を借りるならお金を取られる。そんなことは、日本でもコッチでも同じこと。ついでに、幾ら取られるかも分からない。

 それに、回り道をすると日数的に二泊必要になる。時間もかかるし、金もかかるわけだ。

 一瞬、


(前に作った家に転移しちゃえば問題解決!!)


 何て考えたが、よく考えたら、戻ったはいいが、再びあそこからスタートなのだ。転位魔法の本質は、「指定した空間への転位」だ。

 なので、家はともかくこんな森の中を指定したところで、ここと似たような風景の場所にエンカウントする羽目になる。それが、目的に近ければ儲けものだが、同様に、遠い場所に飛ばされる羽目になるかも知れない。

 要は、ギャンブルじみたことはやりたくないのだ。

 そういうわけで、今は、地道に歩いてるのである。

 この体の便利な点は、何故か疲れないことだ。オマケに魔法練習してたときもだが魔力切れも一度も起こしたことはない。

 確かに、疲労は目に見えずとも知らず知らずのうちに貯まるのでこまめに休憩は取っていた。しかし、少しずつ負荷を増やしてもその兆候は見られない。

 一体、どうなっているのやら。

 まぁ、そういうわけで今は、身体強化をして走りながら、時には魔法で飛びながら、時にはテクテク歩きながら進んでいるわけだ。

 だが、ここで気づくのだ。



(これ、案外早く着くのではないか?)



 と。あくまで、体感だが進み始めてからおよそ二時間くらいはたったのだ。しかし、時々空を飛んだりするからわかる。



(何か距離が残り半分くらいになっているのではないか?)



 

 実際、身体強化を使って走ったり、魔法を使って飛んだりしてるので、歩くだけより断然早いとか思ってはいた。いたのだが、想像以上に早い。これなら、もしかしたら明日になるどころか日が落ちる前に着きそうである。

 すると………



 「ガサガサッ!!」



 近くの草むらが揺れ動く。



(動物?いや、魔獣?でも………)



 どちらにしても何故か獣臭さがない。

 私は、早速剣を抜き構える。鬼が出るか蛇が出るか?近くに転がった石を掴むと、それを目いっぱいの力を込めて投げつける。



 「グワッっ!!」




 当たったらしい。が、ついでに怒ったらしい。草むらから棍棒を持った20匹程のモンスター………いや、魔物が現れる。見た目からして、



 「ゴブリン?」



 ゴブリンは、一見バカそうに見えて、案外そうでもないのだ。それもそのはず。群れをなして生活する生き物バカなわけがない。

 そして、私のゴブリンの知識が間違いでなければ色々いる。

 普通のゴブリンに、稀にいる魔法使いのゴブリン。そして、「ゴブリンロード」と呼ばれる、簡単に言えばゴブリンの親玉のようなやつで並のゴブリンより何倍もの力を持っている。

 また、「ホブゴブリン」とかいう、ロードほどの力は持ってはいないが、かなり頭の回るといつ特殊なゴブリンがいる。

 最も、今私が相対してるゴブリン達が何なのかはわからないが、恐らく「ゴブリンロード」とか言うのはいないと思う。何せ、そのような大柄なやつはいないのだから。

 それなら、討伐は可能だろう。サバイバル生活で、狼やら熊やら猪やら、色んな動物や魔獣やらを狩って暮らしていた。その最中にも、スライムやゴブリンとかとも戦ったことがある。少し数は多いが負ける通りはない。ならば、



 「やってみますか!」



 呟きながら、ゴブリンたちへと剣を向ける。今回は、魔法主体で戦わない。あくまでも、物理でだ。一様、身体強化魔法だけはかけておこう。いくら勝てるといっても、調子に乗りすぎて死にましたはお話にならない。

 だが、余裕がありそうなら少しずつ強化魔法を解いて、体の具合を見よう。私の体の身体能力がこの世界の人々基準だとどのくらいか知っておかないと、色々面倒かもしれないしね



 「ウギィッ!!」



 叫びながらゴブリン達が一斉に襲い掛かる。かと言って、魔獣と違ってちゃんと知能はある。だから、軽い連携とかなら合わせて攻撃を仕掛けてくるのだ。

 大半は、近接戦をしにきているが後方に二匹だけ待機してる。ということは、あの二匹が恐らく魔法を使えるタイプのゴブリンだろう。ただ、回復魔法とか使われると少し面倒だ。出来るなら早めに消しておきたいが、今回は私も近接戦縛り。なので、さっさとこいつらを蹴散らそう。

 私は、まず一匹目を仕留めにかかる。回復魔法は、確かに使われると厄介だが、勿論死者は回復できない。要は、絶命させればいいわけなのだ。ゴブリンは、棍棒で私の剣を防ごうとするが止まらない。私が、今回は縛ったのは攻撃魔法のみ。なので、近接戦とかで使う、身体強化や付与魔法などに制限はかけていない。

 今、私がかけているのは「身体強化」と「付与魔法」だ。といっても、身体強化はそれほどかけていない。一様、気持ち程度つけてあるが、その強化率的には、通常の1.5倍位しか強化してない。まぁ、転生特典で体が普通の人より丈夫だったり、怪我もすぐに治るようにはしてもらってある。最も、転生してこの方、一度も怪我をしてないのだから、どのくらいまで治るか分からないのだが。

 それと、付与魔法の効果は、何をかけるか悩んだが、無難に「強化魔法」をかけた。何せ、これがなくなれば私は素手でこいつらとやらなければならない。それは、衛生的にやりたくなかった。なので、剣にはそこそこ強力な強化魔法をかけた。

 その結果、ゴブリンはアッサリと真っ二つに割れ、後ろにいたゴブリンまでオマケで死んだ。これで、二匹撃破だ。



 「グギギッッ!!」



 ゴブリン達の警戒心が一段階グレードアップする。

 すると、後方から魔法攻撃が放たれる。見た目からして「ファイヤボール」なのだろうが、



 「ちっさ!」



 思わずそう叫んでしまう。飛んでくる炎の玉は拳大くらいの大きさだ。それに対して、私が練習で使った「ファイヤボール」は、頭一個分くらい。要は、サイズが全然、違うわけだ。それに、



 「威力も弱い?」



 咄嗟に避けたものの、そのまま地面にぶつかり地表が少しだけ、こんがり焼けただけだ。やはり、威力が低い気がする。いや、絶対低い。私の魔力量の多さ故なのか、はたまたゴブリンには魔法を使えても扱う技術が皆無なだけなのか分からない。

 これなら、後方からの攻撃を警戒する必要はなくなった。最も、今のは私の油断を誘うための罠という可能性も考えられる。なので、注意は怠らないのに越したことはない。

 なので、先程までと同じように後方へと気を払いつつ攻めていく感じだろう。



 「せやっ! もう一丁!」



 掛け声に合わせてゴブリンを一匹。また一匹と、切り捨てていく。

 感覚的ではあるが、半分近くは片付いたと思う。でも、ゴブリンの闘争本能はちっとも下がっちゃいない。それどころか、寧ろより躍起にさせてしまったようだ。敵を追い詰めるとこうなるのは分かってるが、安易に攻め入らない様子を見ると、冷静に判断をしているらしい。

 すると、二匹のゴブリンが私に向けて棍棒を投げつけたかと思うと、そのまま突進していく。恐らく、体勢が崩れたところを一気に仕留める算段だろう。だか、思い通りになどなるものか。

 剣で棍棒を切り落とし、襲いかかる瞬間にその勢いのまま、剣で斬る。

 新たに二体撃破。だが、



 「くっ!」



 がら空きになった胴体目掛けて茂みに隠れ潜んだ、ゴブリンが奇襲を仕掛け、死に体の私に、ゴブリンが突撃をしてくる。



 「痛っ………くない?」



 何故か痛みが一向にこない。同じことをやろうとしたのか、ゴブリン達はまた突撃をしてくるが、そう何度も同じ手をまんまと食らってやるほど甘くはない。突撃してきたところに、剣先を向けて串刺しにし、そのまま勢いでまた仕留める。

 そんなこんなで、ゴブリンは残り五体。魔法使いのゴブリンは倒してないから、魔法使いのゴブリン二匹と通常ゴブリン三匹。こちらの体力はオールグリーン。ケガもなし。それなら…



 「身体強化魔法、限界までかけてみますか!」



 先程までも少しはかけていた。但しそれは、通常時に少し毛を生やしたレベル。そして、最後の方はほとんど無しでやっていた。なら、身体強化魔法はどのくらいまでかけることが可能なのか。単純に興味が湧いてくる。

 この状況なら万が一にも私が負ける心配もない。あとは、彼等には私の実験台になっていただこう。

 そうして、私は身体中に流れる魔力を体の表面へと移しこみ、そして、腕力・脚力にも強化を施す。そして、体表を鎧のように硬化させていく。それを、魔力の限界まで行う。

 私のやっていることをゴブリン達は眺めている。が、勿論なにをやってるかなど知る由もない。なので、彼らは、私に色々な手札で攻撃を仕掛ける。が、先程まで出さえ効いてなかったのだ。より強化に強化を重ねていけばどうなるのか言うまでもないだろう。

 その様子を見ながら私は、強化と硬化をし続けるが、強化には限界があるのか、止まってしまった。まだ、魔力的には、たっぷり余裕がある。恐らく、身体強化には上限があるのだろう。硬化の方は、まだ行けるがゴブリン相手では意味もあるまい。



 「じゃあ、始めますか。」



 向かい合って拳を構える。



 第2ラウンドスタートだ。

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