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023 マイペースママ

 なにやらクロスケは思う所があったようだが、どうやらこの店の主人はロアンという女性らしい。

多分。どうなんだろう? 男性っぽい見た感じと差があるのは、失礼だし指摘しないでおこう。



「私はワイです。動画見ていただいてるなんて、嬉しいです!」


「あら? アナタ、本名で活動してるの? それじゃ、一応アタシも本名名乗っておこうかしら?」


「え?」


「ロアンは源氏名よ。本名はブラッド。いかつい名前でしょ?」


「え? ええ? あれ? ということは、男の人ですか……?」


「まさか、女だと思ってたの!? 嬉しいコト言ってくれるわね!」


(そうは言っとらんやろがいっ!!)


(押さえて! ツッコミ押さえてっ!)


「えっと、この店のママって言ってらしたので……」


「こういう店、初めてなのね? もうっ! 初々しい反応ねっ!」


「こういう店というか、街自体が初めてで……」


「嘘っ!? ってことはアナタ、モリナシ生まれなの!?」


「モリナシ?」


「あらー、ないのは常識の方だったのかしらね……」



 驚きで目を丸くしたり、今度は頬杖ついてため息ついたりと、ころころ表情の変わる人だ。

しかし常識がないとはひどい言われようだ。まあ実際、人間界の常識がないのは否定できないのだけど。



「この街にはね、見えないけど対魔物用結界が張ってあるのよ。

 そういう防御機構のない村を『守りのない場所』ってコトで、モリナシって呼んでるの」


「そうなんですか……。私は街に来るのも初めてだったので、知りませんでした」


「でもそれで納得がいくわ。魔界の植物を持ってたのも、モリナシ生まれだったからなのね。

 今どき魔王軍の侵攻も無いって言うし、魔界近くに住むのも悪くないもの」


「あー、あはは……。そうらしいですねー」


「ねえねえ、あなたの村のこと教えてくれない? どんなとこなのよ!?」


(やべえ、適当に話合わせるか?)


(いやいや、そのモリナシってのがどの程度あるか知らないですし、噓がばれると面倒ですよ)


(じゃあどうするんだ?)


(対魔王様用話術! 強制中断!)


「あっ、あの! 営業時間中なのに、私なんかがお邪魔してていいんでしょうか!?」


「えっ? ああ、暇だからいいのよ。どうせお客なんて来ないもの。

 ま、でもおかげで、日がな一日新着動画を漁れるんだけどね。それでアナタの動画も見つけたってワケ」


「そ、そうなんですか……。でも、大丈夫ですか……?」


「大丈夫……。と言いたいところだけどね、経営者としては厳しいわ。

 それこそ、魔王軍がいつ攻めてくるか分からないなんて時代だったら、この街にも勇者一行がたくさんいてね。そりゃもう毎晩カーニバル開催みたいなもんよ。

 でも今じゃ、そうやってこの街に人が集まることなんてほとんどないわ。おかげで……」


「おかげで?」


「イイ男も全然いなくなっちゃったのよっ!!」


(そっちかいっ!!)


(うん、これは押さえなくていいツッコミ)


「あはは……」


「だからね! 動画で出てた先生紹介してよっ!!」


「えっ……、いやーそれは……。あはは……」


「なに!? アンタ、先生とデキてんの!?」


「デキてねーよ」


(素が出てるぞ)


「ならいいじゃない! 減るもんじゃないんだから!!」


「いやー、ミー先生がなんて言うか……」


(いやそれ以前に、相手がミノタウロスなんですが)


(多分ミーさんの方が食われる気がする)


(それはそうかもしれないが……)



 必死に食いついてくるロアンママの圧がすごい。

がっちりと手を握られ、逃がさんという強い意志が、手の熱と共に伝わってくる。

これは対魔王様用話術では逃げるのも厳しい状況と評さざるを得ない……。



「いいじゃない! 会ってみれば、意外と相性いいってコトもあるわよ!?」


「相性って……」


「もちろん体の相性よ!!」


(おいやめろ)


「からだの……? まあ、先生の体格はいいですけど」


(お前もそこ掘り下げるのやめろ!)


「ちょっと! 今さらあざといわよ!! まあいわ、少し落ち着きましょう」


(荒ぶってたのはお前だけだぞ)


「ところで話は変わるんだけど、アナタ占いに興味ない?」


「唐突ですね」


「アタシもね、ママをやってる都合で手相占いができるのよ」


「話聞いてませんね?」


「で、最近は水晶を使った本格的なのに手を出したのよ。

 もちろんやり方は動画で覚えたから、間違いないはずよ」


「知識の仕入れ先から間違ってません?」


「ということで、ここに水晶を用意いたしました」


「料理系動画かな?」


「では、ワイちゃんのミライ、占っちゃうわよ」


「マジで人の話聞かんなこの人」



 諦め半分にケーキとお茶をいただきながら、ロアンさんの怪しい儀式を眺める。

動画知識での占いなど、当たるはずもないのは分かっているものの、まあ面白半分で眺めていよう。

ちなみに私は魔術を研究する身であるからして、占いというものにも……。



「見えたワ!」


「ひゃっ!?」


「アナタの未来、これは……。骨?」


「ちょわっとぉっ!?」



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