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016 動画鑑賞会



「そうそう、動画流すとそのタイミングでされたコメントも下に表示されるんだけど……」


「うん、色々書かれてると思いますけど、その話は動画見終わった後にしましょうね」


「ああ、そういうことだ」


「ん? よくわがんねぇけど、了解だべ」




 ◆ ◇ ◆ 




『はーい、みなさんこんにちは! 投稿主のワイです!

 このチャンネルは、私の興味のあることを色々教わっていくチャンネルです!

 気に入っていただけたら、お気に入り登録と評価をお願いしま~す!』



“1コメげっとー!”

“↑こんな過疎チャンネルの1コメで喜んでる男の人って……”

“ワイちゃん女なのね……。男の子かと思ったワ……”



『では今回やっていく内容なんですけどー、最近素敵なお庭を見つけたんです!

 それで、そのお庭の手入れされてる方にお願いして、お花を譲ってもらったんですね!

 でも私、お花の生け方分からなかったのでー、生け方を教えてもらうことにしたんです!

 みなさんも私と一緒に、お花生けてみませんか?』



“お花に喜ぶワイちゃんカワイイ”

“↑女ならなんでも許すタイプっぽくてキモい”

“あざといわねこの女。バッドボタン連打よ!”



『では、先生をお呼びしますね! ミー先生、お願いします!』


『…………。(よ、よろしくお願いしますだ……)』



“声っちっさ! しかも顔見切れとる!”

“↑ほんそれ。字幕助かる。しかしなぜ上裸……?”

“あらやだ! イイ男来たじゃない! 体しか見えないけど!”



『えっと、先生は恥ずかしがり屋さんなので、顔出しNGなんです。

 そのかわり、私のことたっくさん見ていってくださいね!』



“ワイちゃんカワイイから最後まで見るね!”

“↑きっしょ”

“あざといわよ! んなコト言ってないで、顔も見せなさいよ!!”



『では、先生の紹介も済んだところで、今日活けるお花の紹介です!』


『…………。(色々用意したで、並べておいたべ)』



“うわぁ……。なんてーか、うわぁ……”

“↑わかる。なんだろうこの花……。高熱出した時に見る夢に出てきそう”

“花はどうでもいいから、先生を映しなさいよ!!”



『…………。(生けたい花を選んで、好きにやってみてけろ)』


『えー? 私初めてで、センスないんですよぉ~』


『…………。(細かい直しは後でやるで、まずはやってみでけれ)』



“これ嘘字幕じゃないだろうな?”

“↑わかる。いろんなトコの方言混ざってるよね”

“アタシはもちろん、この中なら先生をいただくワ”



『では、これとこれと……。あとこれも!

 えーっと、生けるのに使うのは、ただのコップですね』


『…………。(んだ。どの家にもありそうなのでやってみるっぺ)』


『とりあえず束ねて、メインのこの花を……』


『…………。(いい感じだべ。茎を切る時は、水につけた状態でハサミを入れるんだべ)』


『へー、それはどうしてですか?』


『…………。(切り口の乾燥を防いだり、茎に気泡が入らないようにするためだべ)』



“なんだろう……。マジメに解説されてるはずなのに、画ずらのせいで頭に入ってこない……”

“↑体調が悪いなら休め。このどぎつい花の映像は、精神を侵食するぞ”

“はー……。アタシも、先生に手取り足取りレクチャーされたいワ……”



『うん! こんな感じかな! どうですか先生!』


『…………。(いい感じだべ。初めてにしては上出来だっぺ)』


『やったぁ! でも、なんかちょっと違和感あるんですよねー』


『…………。(んだな。飾る場所によっては、向かねえかもしれんべ)』


『と言いますと?』


『…………。(後ろひっくり返してみるべ。こう見ると、後ろ側は壁みたいに……)』


『どこ見てんですか! 私の胸元見てたでしょ!?』


『…………!? (んなことねえっぺ!? ほら、花がんだな!?)』


『もうっ!』



“俺はサイズより形重視だ!!”

“↑復活したようでなにより”

“なに壁にズームしてんのよ! アタシはおっぱいよりっぱいが見たいのよ!!”



『…………。(とっ、ともかく、こういう時は小さい花を多く付ける、ボリュームある花を……)』


『小さい……。ボリューム……』


『…………!?(そっちの話はしてねえっぺ!?)』


『どっちの話なんですかねぇ?』


『…………。(勘弁してけれ……)』



“まったく、なんて失礼なオッサンだ!”

“↑お前も人のこと言えねえと思うんだが”

“あぁん、アタシも先生の太い指で生けられたいワ……”



『…………。(と、ともかく完成だべ)』


『わぁ! 素敵になりましたね! これならどこから見ても綺麗です!』


『…………。(食卓の真ん中に置くと良いと思うべ)』



“最後の晩餐かな?”

“↑それ。これはもはや、ヤバいクスリやった時に見るヤツ”

“ワタシは先生に食べられたいワ”



『では、今回はここまで!

 次回は、生けたお花が枯れてきた時の再活用法を先生に教えていただきます!

 次の動画も、よろしくね~!』


『…………。(ありがとうごぜえましただ)』



“再活用法……。乾燥させて粉末にして吸引?”

“↑憲兵さんコイツです!”

“次回も先生が出るなら観るワ! お仲間にも紹介しないとネ!”




 ◆ ◇ ◆ 




「これはひどい」


「だろ? コメントがやばすぎる」


「コメントもですけど、動画の出来栄えもですよ!?」


「えー、結構頑張って編集したんだけどなぁ」


「まあ、ええ。それはそうかもですけども……」



 ちらりと様子を見れば、ミーさんは縮こまり、ふるふると震えていた。

そりゃまあ、この出来栄えとコメントではそうなるのも仕方ない。

そう思いつつ、私は逃げる準備を進めていた。

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