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Fighter  作者: 99人目の刺客
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第二話 伯爵との会談




 「生きろ!」


○○はそう言っていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「どこだ、ここ?」


少年は目を覚ました。そう言って少年はあることに気づく、この場所が分からない、ここにいる理由も分からない、そして自分の名前すら、分からない。


即ち、自身が記憶喪失であることに、だ。


だが、自身が記憶喪失であることを即座に判断できるのは評価するに値することだろう。


そのことを判断し、少年は次に自分のするべきことを考えた。


そしてベッドから立とうとして、


「ウワッ!」


ドタァーーーーーン


自分の体が、恐ろしいほどボロボロになっていたのだ。立とうとした慣性のまま、あまりの痛みに体を制御できず、バランスを崩して、ベッドから転落したのだ。


「イッタアアアァァァァァァ!!!」


そのまま体制を戻すことができなくなり、凄まじい痛みに耐えていると、だんだんと意識が遠のて来て………


目を覚ますと夜だった。ベッドから落ちていたハズなのにいつの間にかベッドの上に戻されている。 


体の痛みもあまり感じなくなったように思えたので、次は慎重に体を起こす。


立ち上がると少年は、自分の体にたくさんの包帯が巻かれていることと、部屋が変わっていることに気付いた。


(さっきの部屋よりも結構豪華だ。

足音?誰かくるな…)


ガチャ


一人の女性が部屋に入ってきた。まだ少年は寝てるのだと思っていたようで、立っている少年を見ると少し驚いたが、


「お目覚めになられましたか?」


と、丁寧に尋ねてきた。


それから少年が自分は記憶喪失なのだということを説明すると、


その女性(メイドのスーリアと名乗った。)はしかし考えるそぶりを見せた後、


「少々お待ち下さい、自分の雇主と話してまいります。」


と言って去って行った。


スーリアが出て行った後、少年は自分がスーリアの言葉が分かったことに驚いた。


少年にとって、スーリアが話していた言葉は間違いなく普段使っていた言語でないと確信できていた。


それにも関わらず、少年はいとも簡単にスーリアとその言語を使って意思疎通ができたのだ。


いくら記憶喪失とは言え、それがどう考えても普通ではないということには少年は気づいていた。


じはらくして、コンコン、とドアが叩かれる音がした。


スーリアの使っていた言語で


「どうぞ」


と言うと、少しふくよかな、それでいて豪華な服装を着た男性と、剣を下げ軽そうな鎧を着た男性が入ってきた。


ふくよかな男性はベッドの前にある椅子に座ると、


「どうもこんばんは、私はドリリアン・ブル・アングレアここら辺で少しばかり顔を聞かせているものです。そしてこちらが、騎士ボーレク倒れている貴方を拾ってここまで連れてきたものです。」


最初ボーレクは自分の部屋に少年を置いていたのだが、冷たい雨に長い間打たれていたためか体調がどんどん悪くなっていくので、ボーレクがドリリアンに相談したところ、伯爵専属の医者に見てもらえたそうなのだ。


ただ、医者の見込みだとかなり酷く衰弱しているので当分は目を覚まさないだろうという話だったのにあっという間に目を覚ましてしまったので驚いたそうだ。


「ということはボーレクさん、ドリリアンさ、いや、様ありがとうございます。」


それを聞いた少年は素直に礼を言う。


「いえいえ、例には及びません、ボーレクなど、何を考えたか私にあなたを見せたら叱責をくらうのではと思っていたようでしたのでな、私はそんな器の小さな人間ではないというのに」


そうドリリアンが文句を言うと、


「申し訳ありません、自分の独断だったために下手に伯爵様に頼るわけにもいかず、次にこのようなことがあればしっかりと相談いたします。」


その答えに伯爵は満足すると、今度は少年の方に質問を投げかける。


「それで、君は自分のことを全く覚えていない、ということだったが、どうだね、何が少しでも思い出せたことはあるかね?」


「名前や、家族、これまでの生活については本当に何も覚えていません、ですが一つだけ分かることと言いますと…おそらく自分は人より、戦うのが得意だった、ということを覚えています。ですので、そういうことであれば、お役に立てると思うのです。」


と少年が返すと


「まあまあ待ちなさい、君は今起来たばかり、記憶もないのに恩を返そうなどと考えなくていいのだよ。今は少し休みなさい、そうすれば、思い出すかも知れないし、仮に本当に思い出せないようなら働き口の一つくらい用意してあげるからそんなに急かすことはないのだ。」


「けれど、そんなドリリアンさんの好意に甘えるわけには」


「少年、君は私に記憶喪失の子供を外に放り出すような人間だ、などという悪評を立てさせたいのかい?」


「いや、そういうわけでは…」


そう言われてしまうと少年は何も言い返せなかった。


「では決まりだな。」


すると伯爵は、身に付けていた呼び鈴を鳴らす。


少しして


「旦那様、何の御用でございましょうか?」


先程、少年が寝ているところに来た、メイドのアーリアが部屋にやって来た。


「アーリア、この子は当分ここで預かる、君はこの子の世話をしてやってくれ。」


「分かりました。それで、この子は何と呼べばよろしいのでしょうか?」


「ああ、そうだったな、名前を思い出すまで、仮の名前がいるな、君、何か名乗りたい名前はあるかい?」


「名前、ですか?うーーーん」


そこで、ふと少年の他の人よりとても小さな頭で聞こえる耳に遠くで嘶く狼の遠吠えが聞こえた。


「ウルフ、ウルフでお願いします。」


言ってみるとこれが本当に自分の名前だったんじゃないかというほどしっくり来た。


「ウルフさん、ですね。分かりました。」


「では私もウルフと呼ばせて貰おう。私は仕事がそれなりにあるのでそんなに会うことはないだろうが、もし何かどうしても伝えたいことがあればそこのアーリアに頼みなさい。それでは今日はもう寝なさい。」


それだけ言うと、ドリリアン伯爵はボーレクを連れて、部屋から去って言った。


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