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推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について(連載)  作者: あかね
出かける前のいくつかのこと

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契約しました。


 昼過ぎにゲイルさんが戻ってきました。

 ハイテンション過ぎて引くレベルです。あれは寝てません。それで馬に乗ってくるってなかなか賢い馬ですね。あとでご褒美をあげましょう。

 なお、ゲイルさんの乗馬技術は落ちないから優秀という程度です。なんどか落ちかけたあたしよりはマシですね。

 だから、お馬さんが賢いのです。断じて人が優秀になったわけではありません。


 あたしはゲイルさんがお土産と持ってきたベリーをぐつぐつと煮ているのですが、少しも落ち着きません。

 ちまちまと練りパイを折るという荒技に挑んでいるせいもありますけど。


「できたー?」


 ユウリが一々覗きに来ます。おっやっつーとか言ってますけど、今日出来るとは言ってませんよ。


 先ほどまで真面目に話しをしていた人とは思えません。真剣な表情は確かに格好良い気はします。好みじゃありませんけど。


 さて、そんなことをしている余裕があるくらいに今後の話は軽く済んでしまったらしいです。王都からの迎えを待たねばならないためあと数日は逗留ということのようです。

 少々ユウリがまだいるのかと言う気はしています。


「大人しくしていろ」


 そんなユウリを呆れたようなクルス様が引っ張っていくみたいな様式が出来上がってる気がします。

 なんなんですかね? 仲良しですか? すこし妬ましいですよ? あたしも構ってもらいた……。いえ、なんでもありません。


 ゲイルさんも呆れてますけどね。困ったような弟でも見るように二人を見送ってます。

 さて、そのゲイルさんもキッチンで何をするかと言えば。


「師弟契約条件はこれな。先にしておかないと相当ごねるぞ、あれは」


 重要書類のような気がしますけど。軽く渡された紙に目を通す間、時々ベリーを煮ている鍋をかき混ぜる仕事はゲイルさんに託します。


「もう少し余裕あっても良さそうな気がするんですけどね」


「むりむり。完全に自分の感情持て余してる。あんまり自分の気持ちに向き合って来なかったからお手上げ」


 ゲイルさんは楽しげですね。いつもは言わないような余計な事も軽く言い出すくらいには、自制心がお留守ですよ。

 人のこと言えませんけどね。


 まあ、あたしの場合に持て余しているのは欲望リビドーのほうですけど。


 師弟契約。

 基本的に指示に従うこと、許可なく魔法を使わないこと、主張が違う場合には言葉により解決を図ること、許可なく修行内容を話さないこと。などだったんですが。

 一番重要なのはそこではなかったようです。


 基本的に共同生活をするので、恋愛関係を禁止しているのだそうです。契約魔法で恋愛感情が、友愛とか親愛に変換される、あるいは誤魔化されるそうです。

 なお、これは師弟関係で共同生活を何年もする場合の処理だそうです。複数の弟子も同居したりもするので、色々問題があったんでしょう。

 独り立ちすれば自由らしいですけどね。


 他の教育機関で育った魔導師というのはもうちょっと緩いかんじの契約なのだそうです。それでも独り立ちするまでは同居している弟子同士や師匠との恋愛関係は禁止。外では自由でいいそうですけどね。


 この理由から同じ師匠をもつ魔導師同士で結婚するものはほとんどいないそうです。契約が終了しても家族とか友人を越えていけないみたいで。

 ゲイルさんとリリーさんも相当珍しい組み合わせなのだそうですね。


 なお、クルス様は既に独立済みですし、あたしの師匠はゲイルさんになるので全く問題はないそうです。

 そう言われるといたたまれない気分になりますけど。


 そのリリーさんも良いところの生まれなのだそうですよ。極秘ですけど、ばれるからと先に伝えておくとか前置きされました。


 なんと、公爵令嬢でした。何代かに1人は王妃をやって、何代かに1人王子を婿にもらうようなお家だそうです。王族に何かあったときに代わりを出すような血統を保っているんだそうです。

 は? と思いましたね。なぜ、魔導師やっているのか。政略結婚とかしそうではないでしょうか。

 と思ったんですが、実際のところは2人の兄と1人の妹がいるので、特に問題はないんだそうです。

 魔導師は本当にランダムに出てきますね。

 その関係で、2人の子供たちは年の半分は実家預かりになっているそうです。野放しに出来ない血統というのも大変ですね。


 あたしの王都での滞在先もその公爵家の持っているお屋敷だそうです。きちんとした使用人しか使わないから多少は安心出来るはず、という伝言をいただきました。

 多少で、はず、ということに不安が出てきたのはなぜでしょうね。


 契約書を念入りに確認してから名前を書いてゲイルさんに返します。契約期間は半年。基本で応用は他の魔導師の意見も入れたほうがいいということのようです。驚異的に短いのですが、その理由が試し打ちさせたい魔法が山ほどあるから拘束するなと言う理由で。 何をやらせるつもりなんでしょうね? 表情が引きつりますよね……。


「あとな、魔導協会と教会に顔を出しておけと言われた。任意だが、ついでに遊んできたらどうだ? 俺は留守番してるし、ユウリも置いていっていい」


「領主様の方はいいんですか? ユウリは町の方にいた方が良いような気がしますよ」


「ほんとは領主館に滞在という話だったんだが、拒否された。恐れ多いと言っていたが、あれは本気でびびってたな。英雄になんか悪い思い出でもあるんじゃないかというくらい全力逃亡直前だった。面会は断りたいとか言ってたから相当だぞ。

 魔導協会の支部長ですら、英雄、会いたいとか言い出してたのに断るって」


 逆に興味が出てきましたよ。その領主。何かあるんでしょうか。


「そうそう。教会ではなにか書くように言われても拒否しとけよ。じゃなければ、きっちり説明させろ」


「はい?」


「俺は嵌められた。事実に気がつくのに二年かかった」


 重々しく言われたんですけど、何事ですか。思わず、見返してしまいます。


「あれは俺が16のときだったんだよな。そのころは独立したてで右も左もわからないって感じで日々を何とか過ごしてたわけだ。

 そんなときにリリーに書類に保証人がいるとか言われてさ、お願いとかされた。本名を書けと言うのは疑うべきだった。

 二重写しだったね。その下に婚姻許可証、しのばせてた」


「……悪辣」


「だろ。しかも前日寝てなかった」


 そこまで狙ったんじゃないかってくらいですね。

 必死な感じが見受けられます。


「あとで聞いたんだが、断れない系の縁談がねじ込まれる寸前だったんだと。先に説明しろと言いたいが、俺が逃げると思ったとか泣かれるとな。

 ちなみに俺がそれを全部知ったのが、その二年後。その間、向こうの実家にひどい男と誤解されてたんだよ」


 苦い感じに笑われましたけど、中々の修羅場ですね。


「師匠は知ってて黙ってたみたいだけどな。というわけで、魔導師が追い詰められるとろくなことをしないから気をつけるように」


 もう、遅い気がしますね。合意はあったので、困ってはいないのですが。

 さらにご自身が魔導師なのにそんな事言い出すってどうなんでしょうか。


 それはともかくとして、現在は仲がよさそうではあるので問題はなかったんでしょうね。ただ、背景を聞くとそりゃあ、逃げ腰になるわと思いますけど。

 相手は王族と張るくらいの血統のお嬢様で師匠の孫。聞いてると魔導師としてもそれなりに名のある、魔導協会でも次期幹部と目されると。

 言ってはなんですが、ゲイルさん、わりと普通ですよ。一部を除き、安心する普通さ。釣り合い取れないとか考え出すような常識を持ち出してきそうで。


「というかあいつ、この話知ってるから同じことやりかねん」


 声を潜めてゲイルさんに耳打ちされました。断ったらやらかしたかもしれませんね。

 なお、あたしの苦笑いをどう思ったのかはわかりません。


 ゲイルさんも契約書に名前を書いて、師弟契約は成立したようです。あっさりしたものですね。その後は全然、あっさりしてませんでしたが。


「豪奢だな」


 ゲイルさんが呟いていましたが、なぜにキッチンに光の粒がキラキラ降ってきますかね? この世界の神は暇なのでしょうか。

 それとも別の存在がやらかしているんでしょうか。

 そもそもこの家、神もどきからみれば鉄壁ガードとか言っていたようなきがしますが、これらは別なんでしょうか。


「ところで、リリーさんのことお好きだったんですか?」


「ものすごくめんどくさい」


 それなのにつきあってるから、お好きなんですね。

 によによしてたらおでこ叩かれました。


「焦げる。これはそれぞれ保管することになっている。あとで封印して渡す」


 ゲイルさんは去って行きましたけどね。

 向こう側で、これで文句ねーだろとか言ってます。俺はもう寝るとかなんとか。

 お疲れ様です。


 その隙ににゅっとユウリが現れたんですが。


「お昼はミートパイ」


 ……うん、ちょっとユウリは自重しようか?

 その隙をついて、味見とかするのやめようか?


「無理です。普通にポトフで我慢してください」


「愛しいお肉様は?」


「原料を寄越しなさい」


「わぁい」


 なんでしょうね。まあ、仕方ないか、みたいな気分にさせられるの。なんか魅了系のチートでも持ってるんじゃないでしょうね?


 しかし、領主様はユウリが怖いんですか。なにかありましたっけ?

 ぼんやりと見ているうちにユウリが引きずられていきました。あれは学習してないんでしょうか。


「よろしく~」


 ひっそり、肉だけ置かれました。

 ねぇ、何の肉なの?

 あたし、まだ、牛にお会いしてないんですけど。実はミルクも果実の絞り汁と知った時の衝撃。なお、砂糖の原料も木になるそうです。そして、樹液を煮詰める方法あって黒糖っぽいものができるのだそうで。

 豚はイノブタみたいな野生種を家畜化しているようです。

 鶏は考えないことにしました。


 で、これって何の肉? 赤身っぽいですけど。塊の肉って困ります。

 塩こしょう振って、香草も刷り込んで、よく焼きましょう。オーブン欲しいですね。


 そういえば、ゲイルさん気になること言ってましたね。


「……あれ?」


 町に行くって、これってデートでは?

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