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推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について(連載)  作者: あかね
出かける前のいくつかのこと

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実は少し違います

三話くらいで軽く流すつもりが、けっこう続くことになりました……。

糖分増量(当社比)です。

原因は某領主の抵抗。


 異世界生活36日目です。


 いつも通りの時間に起きました。

 昨日は色々ありましたねと毎日振り返っています。


 なんと人妻になりました。

 途中経過どうしたと言いたい気もしますが、それは追々でもいいですかね。そこを反芻すると暴れたくなるこの気持ちは何でしょう。

 夢とか妄想とかじゃないですよね?

 指輪を撫でてその存在を確かめてもちょっと不安になります。現実感がありませんね。


 まあ、指輪をもらったことは現実です。


 少々気持ち悪い笑みが浮かんできてダメですね。少々で済むか疑問ですが、平常心を捕まえておくことにしましょう。自制心は、あいつはもうダメです。無意識と結託して、やらかそうとしてます。


 それにしてもユウリが来てから色々ありすぎてそろそろ落ち着きたいです。

 そんなユウリも数日もたたないうちにいなくなるんでしょうけど。クルス様も一緒に。


 ……一人で帰れと言いたいですが、ぐっと堪えています。この場合のデメリットの方が大きいです。

 そもそもクルス様では、王城には出入りできないそうです。出入りには相応の身分とか肩書きとかがいるそうで。

 通常ではユウリが護衛もいらないと言い張っていたため、その言い訳も使えないようです。


 なので、例外的に今回、送ってその先も同行予定というかたちでしばらく逗留するそうです。

 少なくともあたしが王都について半月くらいはいれるようにはしてくれる、らしいです。


 予定外がなければ、ですが。


 まあ、ほぼ、他人のふりになるそうですがいざと言うときは呼ぶようには言われています。


 揉め事なく王都での用事を済ませてここに戻ってくるのが目的なので、余計な事はしないようにと言われています。

 ……なにか変なフラグが立った気がしますけど気のせいと思いたいです。


 クローゼットから今日の服を選びます。リリーさんからのお下がりは華やかなんですが、クルス様が微妙な顔したんですよね。似合うとかそれ以前に着ていた時期を知っているようで。ゲイルさんには懐かしいとご機嫌でした。素っ気ないふりしてますけど、リリーさんのこと大切に思ってますよね。


 仲良いですねとクルス様に聞いた時には微妙な、そうだな、をいただきましたけど。昔色々あった系ですかね?


 まあ、そんな感じなのでもらってもあまり着る機会がないですよね。色的に春先とか明るい感じなのでこれからの季節どうしようかなと思いますし。

 地味なモスグリーンを手に取りかけ、一番端に追いやっていたものを思い出しました。


「そういえば着てないなぁ」


 最初に買った淡い小さな花柄のワンピースは汚したくないと日常には着てませんでした。結果、あれから一度も着てないんですよね。せっかくですから着ておきましょうか。ふと思い出したように着ないのかとクルス様に聞かれることもありましたし。

 一枚だけでは少し肌寒い気がして、カーディガンでも羽織りましょう。

 ダイニングで過ごすなら膝掛け代わりに厚手のショールも出しておいた方がよい気がします。リビングだったらそこまでいらない気はしますけど、今は使えませんし。


 本当に、朝と夜は冷えるようになりました。冬の足音が聞こえます。


 着替えて、椅子に座って髪を梳かします。先日、入手した卓上の小型の鏡を机の上に置いています。贅沢品ということで現在はあまり流通していないそうです。

 やっぱりどこかぼんやりしている様な気がしますが、精度はこんなものが普通らしいですね。それでも浴室とか洗面台よりもだいぶましです。


 鏡の中から見返すあたしは少しばかり変わってしまっています。最初はちょっとした違和感だったのですが。自画自賛ですが、可愛く修正された感じがします。左右のズレを直されたとか、各パーツの微妙なサイズ調整されたとか、そんな方向で。

 その上で、ちょっとだけ若返りました。今や十代後半ですよ。


 ただ、ゲイルさんもユウリも違和感を憶えていないようなんですよね。

 見慣れたはずの自分の顔ですら最初は小さな違和感だったのですから、そんなに会ってない人ならわからなくても仕方ない気がします。

 でも、クルス様は最初に少し変わったと言ってましたから、違うということはわかっていて。


 それに気がつくほど見てたのかと思いましたけど、逆だったらすぐにわかりそうなあたし自身にブーメランが返ってきました。

 違ったらすぐわかりますよ。ああもう、本当に……。


 そ、それはともかく、異世界トリップ系ヒロイン出来そうな年齢に近づいてますね。やるんですか? やらされちゃうんですか?

 王都にいくと顔と地位と権力有りの優良物件に口説かれるお仕事があるそうなので、それってなんて乙女ゲーと言うところでしょうか。

 なにもしないで逆ハーレム確定とか言われると白目剥きそうですね。あははは。


 ……嫌だ。


 鏡の向こう側のあたしが眉間にしわを寄せています。


「がんばりましょ」


 ご褒美は冬中の引きこもりです。

 人には言えない妄想が頭を駆け巡りましたが奥底に押し込めておきました。昨日の色々でさらに過激さを増している気がします……。

 欲望が、呼んだ? とか言い出してもう。呼んでません。


 そこからは無心に髪を梳かし、いつものように結びかけてやめました。

 つやつやの髪はクルス様に染められました。大層ご機嫌でしたね。あたしには新手の拷問かと思いましたけど。

 触り方が、ちょっとえろいんですけど。あれなんとかなりませんか。なりませんよね。指摘したら、何が起こるかちょっと予測不能です……。さ、さすがにちょっと場所とかなんとかあると思いますが、いや、しかし。


 うん、ちょっと、ぐらついている自分もどうかと思います。あれはダメです。

 その上、一番可愛いとかなんですか。死ぬかと思いましたよ。どうなんですか。あれで、なぜ好きとかよくわからないとか言えるのでしょうか。

 誰にでもするのかと逆に問いただしたい気持ちがもたげてきます。


 その後、平常心と唱え続けて、どうにか夜までやり過ごしたあたし偉い。少々、ユウリ邪魔だなと思いましたけど。

 疎外感が割り増しされたとぼやかれたのでなんか感づいてはいるのでしょうね。


 いなかったら簡単に箍が外れそうな予感がするので、いた方が良いんですけど。


 夜にベッドの上で転がって身悶える程度で我慢しました。指輪見てにやにやしていた顔なんて誰にも見せられません。


 そして、寝落ちしました。


 夢も見ない爆睡に少々思う所はあります。負荷がかかりすぎて脳はお休みしたかったのでしょう。

 そういうことにしています。


 にやついているのを鏡で見ていると心がそげていくような気がしたので、鏡をぱたりとひっくり返しました。


 立ち上がって下に持っていくものがないか確認します。今日は持ち込んだ本もありませんし、強いて言えばユウリとの情報交換ノートでしょうか。結局お互いに書き込んだだけで、交換してません。

 リリーさんとの連絡ノートも今朝は白紙のままでした。


 さて今日は、何事もないといいのですが。まず、なにをしましょう? やることが山積しているような……。


「……べったり甘えるってのはどうでしょうね」


 自分の考えが無意識に口から出てました。あまりにもあんまりな言葉に失望します。ああ、なにか、今まで抑圧していたものが出てきてますよ。念入りに奥に押し込んでおきますけど、許容量越えて来てる気がしますね。

 溢れたら困るので少々発散した方がよいでしょうか。


 そもそもの問題としてどうやって甘えるのだという話ではあります。意識してそれをするのはとてもハードルが高いです。越えられずに足ぶつけて悶絶しそうな予感しかしません。


 それにばたばたとろくに準備も出来ずに行くこともないと思うので、ユウリはともかくクルス様はお忙しいでしょうし、お邪魔するのもね。


 昨日もユウリとあたしが書き物をしている横で魔銃の手入れとかしてましたし。そのあとにちょっとした魔動具をちょこちょこ作っていたようなんですよね。流れ作業でつまらなそうな顔でした。

 その結果出来たものをいくつかユウリにも渡していたようです。あたしももらいましたけど。


 髪留めの形をした少し印象を誤魔化す魔動具だそうです。まじまじと見られると効果はないけど、一瞬くらいなら根本が黒いなんて意識されないそうです。

 ほんとさらっと作るレベルの魔動具じゃない気がするんですよね。


 驚愕という顔をしたユウリが印象的でした。え、何でそんなさらっとつくんの?などと突っかかっていってましたけど。

 クルス様的に消耗品も日用品も作っててつまらないのだそうです。


 確かにものすごく、つまらない顔してました。飽き飽きすると言った雰囲気さえ漂っていましたね。

 でも、呪式、頭が痛くなりそうなくらい入り組んでましたけど。おそらく、同じものをいっぱい作る、ということが嫌なんでしょう。


 才能の無駄遣いとユウリが呻いていましたが、ゲイルさんも似たような事言っていたような……。あれは真似しちゃいけない類だからと念押しされましたね。


 エプロンとショール、ノートを抱えて下に降ります。

 普通に階段を下りるように注意をします。変に足音を立てないようにするとぎしぎしと鳴るんですよね。この階段。

 不気味です。

 直せるかゲイルさんにダメもとで聞いてみたんですが、直すなら大工を呼ぶ話になるそうで大事になるならと諦めました。

 不気味ですが、そこまで困っているわけではありません。


 この家自体、ホラー映画に出てきそうな雰囲気がどことなくするので1カ所直したところで、とも思いましたし。

 朝のしんとした廊下とかどきどきします。幽霊出てこないですよね? ゾンビとかお断りですよ。


 階段を下りて、玄関の方でごそごそと動くものを見てびくっとしたのは仕方ないことです。基本的に、この時間に動いているのはあたしだけでしたし。


「おはよ」


 眠そうな顔のユウリと遭遇しました。玄関から外に出るところのようです。タオルを首から下げてもおじさんっぽくならないのは美形補正でしょうか。

 眠たげでもイケメンだなこいつと思うのはなぜでしょう。


「おはようございます。今日も鍛錬ですか?」


「毎日するものだからね。僕が外にいるからって油断していちゃついてないように」


「しませんよ」


 ユウリは生き生きと楽しげですね。そもそも起きて来る時間じゃあありません。


 ああ、朝のクルス様のあれは可愛いし、目の保養だし、ちょっとあたしの自制心がっと思う日もありましたけど。平常心と心で唱えているのできっと何とも思ってないように見える、はずです。寝ぼけているので憶えてもいないかもしれません。

 是非とも、記憶の消去をしていていただきたい。


「あ、朝はとろとろオムレツが食べたい。よろしく」


「え、いいですけど」


 ぱちんとウィンクしていきましたね。

 しれっと勘違いされそうなことしていきますよね。天然ものめ。



 いつものように洗面台で顔を洗ったりしましたけど、やっぱり曇っている鏡にはぼんやりとした顔しか見えません。拭いても洗剤もつけてみてもかわりませんので、別のアプローチが必要なようです。いっそ買い直し……。


 どうやって説得したものかと考えながら廊下を歩いていれば、扉がひょいと開きました。

 あれ? いつもと違うところ?


 今日はクルス様に、誰、という顔はされませんでした。眠たげにおはようとは言ってましたけどね。そのまま自分の部屋に戻られましたけど、あれ?


 ……まあ、なんて言いますか、優しい笑みにフリーズしてなにも言えない間の出来事でした。

 いえ、それだけじゃないんですけど。だから、ボタンは閉めてくれと……。言ってないですけどね。目の保養なので、そのままにしてました。朝から刺激がありますよね。

 で、パジャマではあったんですが、寝てなさそうだったんですけど?


「あれ?」


 寝起きって顔じゃあ、なかったんですよね。昨日のことで寝れなかったりしたんでしょうか。

 ……追及はしないことにしましょう。問い返されたら困ります。とても困ります。

 でも、まあ、朝食はいらないかもしれませんね。


 朝食の準備をしているとユウリが戻ってきたのですが、ちょっと困った顔をしていました。


「んー。手伝うと怒られそうな気がするから手伝わないけど、それも感じ悪いよね?」


 クルス様が他の所は譲れてもこれはダメっぽいんですよね。昨日の夕食の時もユウリの手伝いは断ってました。まあ、焦げたパンケーキの影響もないとは言えませんけどね。


「自分の分を用意する分にはいいのでは?」


「そうする」


「用意が出来たら言いますね」


「よろしく」


 出来た朝食を食べながら今日の予定を確認していきます。

 まあ、いついなくなるかわからないので、相互の認識のすりあわせというのが必要になってきています。正直めんどくさいです。

 まあ、このあたり雑にしてあとで面倒が起こるのも嫌なのでしますけど。


「いちゃいちゃしてべったりしていたかった」


 ついつい真顔でぼやきました。ええ、駄々漏れですね。

 まあ、当然、ユウリに白い目で見られました。正気か、みたいな表情が痛いですけどね。


「本音が漏れすぎてどうかと思うよ」


「いいじゃないですか。最低、半月ですよ、半月。ああ、もう、無理です。我慢しますけど、ご褒美いりますっ!」


「なぜ、僕に言うのか」


「なんとなく?」


 そう言って誤魔化しておきましたけど。

 クルス様に言うと乗り気じゃないので取りやめそうで不安になるんですよね。なにか過剰に準備しているように見えるのもその原因です。


「好きにねだれば用意してくれんじゃね?」


 雑な返答です。そのくらい取り合わないから言えるんですけどね。


「まあ、それは冗談なんですけど。

 まずは無事に返してくださいね? 頼みましたからね。本当に何かあったら、恨むくらいじゃ済みませんからね?」


「重たい。すごく重たい。わかってるって」


 軽く返されました。軽すぎませんか。優先度が違うでしょうし、仕方ないのでしょうか。

 引き留めようかなとちらりと過ぎりましたよ。後々に響きそうなのでするつもりはないですけど、少しぐらいなら……。


「人のコトいいから自分のことを守りなよ。自分が傷つくより、辛いもんだよ」


 そう言うユウリが妙に大人びて見えて目をぱちぱちと瞬いてしまいます。

 大口を開けて食事を平らげている姿からは想像もつきませんね。食事の速度が違います。既に食べきっているとかなんでしょうか? あたし、半分くらいまだ残ってますよ。


「さて、腹ごなしに薪割りでもしてこようかな」


「……嬉しいんですけど、なにか、別の生物見ているみたいです」


「ゲイルはぎっくり腰やったんだって? そんなのに任せるのも、アーテルちゃんにやらせるのも不安過ぎる」


「よろしくお願いします」


「うむうむ。それからこれ渡しとく」


 機嫌良くユウリは部屋を出て行きました。うん、食器は下げような。と言いたいですが、薪割り相殺しておくことにしました。


 食器の片付けや朝のやることをいつものように終えても。


「起きてきませんねぇ」


 ちょっと寂しいですよ。


 うーん。ユウリからの情報交換ノートでも見ればいいんですかね?

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