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推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について(連載)  作者: あかね
第二部が始まったようです?編

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結局の所おかしいって話です

 昼ぐらいにはクルス様も起きてきました。その間にゲイルさんは町に戻り、暇というユウリには薪割りを頼みました。

 あたしはジャスパー相手にブラシをかけたりとここ数日構っていなかった分のご機嫌をとってましたね。

 最初、髪を食べられそうになりました。

 鼻先で押されて床に尻餅もつきました。

 その結果、


「藁まみれ」


 などとユウリに笑われたので、早いですがお風呂も入ってきました。

 それから、昼食の準備なんかをユウリにパンケーキの作り方を教えながらこなしてました。そのあたりまでは普通な日のような気がしていました。


「たのしそうだな」


 ……急に背後から聞こえた声にびくりとしました。扉が閉まった音しませんでした。それほど集中していたとも思いませんので、なにかしたんでしょうか。

 振り向けば、クルス様がいるんですがとても機嫌が悪そうです。

 ユウリは気がついていたようで、のんびりとフライパンがあぶないとか言ってます。中身が心配なんですよね。


「あ、あとは出来るから。焦げてても文句言わないでよ」


 ユウリに見捨てられたと思ったのはなぜでしょうか。

 あとはあれよあれよと言う間にクルス様の部屋まで来てしまったわけです。え、どうしてここに?


 ベッドの端にちょこんと座っていますが、危機感があります。

 召し上がられます?

 などとおかしなことを考え出すくらいには混乱しているのです。すぐ側ではなく机に寄りかかって立っているので、今すぐに何かと言うことはないでしょうけど。


 落ち着かず見回して見ると数日前に来たときよりもちょっと散らかってますね。ここで作業とかはしないと聞いていたので、意外な気がします。


「どうしたんですか?」


 連れてきた人の方が途方に暮れてるようにみえましたので、聞いてみました。

 発作的な行動というのはらしくない気もしますけどね。ここ最近の動向から考えればおかしくはないんでしょうか。


 まあ、結局の所おかしいって話ですが。


「あの?」


 黙られると困るんですけど。


「さっきユウリと一緒にいたところを見て、自分の場所をとられたような気がした」


 ええと、ヤキモチを焼かれたんでしょうか?

 だからとても機嫌が悪そうだったんですか。ちょっと違う感じの理由はわかりましたけど。少々もにょっとしたのは、形式的ななにかがないせいかもしれません。

 曖昧にしてきた弊害です。


「ほっとくと誰かに外堀を埋められるんじゃないかと心配になる」


「え、それはないんじゃないですかね?」


 眉間にしわを寄せたまま首を横に振られました。

 あ、あれ? あたしの認識違いですか?


「知らない間に、仲が良いことにされて教会に申請されるに決まっている」


「……なに、この信用のなさ」


「油断とか隙がある。自分が、そんなに求められるなんて思ってもない」


「そんなにですか?」


 まあ、確かに実感はありません。後ほど嫌と言うほど思い知りそうですけど。

 何かを言いかけて、ため息をつかれました。なにか、ダメだなこの子みたいな雰囲気がするのが解せません。

 常識が違うのはわかっていても、実感はありませんよ。接した人数が少なすぎます。

 でも、そうですね。町での事を考えればもう少し危機感は持った方が良いとは思います。この先も同じようにできるわけではないのですよね。


「煙草、吸ってもいいか?」


「構いませんよ」


 聞かれるのは珍しいですね。あたしの前でも吸おうとはしないので。一人でぼんやりと吸っているところは見かけたりするのですけど。

 苦いようなスッキリとしたような匂いは嫌いではありません。落ち着くような気がしてきます。


「自分でもまだ、処理しきれていないのに、こんな事を言い出すのは最悪だと思うんだが」


「はい?」


「側にいて欲しい」


「いますよ?」


 居ていいって言われたので。いらないって、邪魔だって言われるまでは素知らぬ顔で居座るつもりです。

 ……あれ? なにか伝わってませんか? 難しい顔されたのですが。


「ああ、なんだ。その」


 歯切れがとても悪いですね。じっと見つめていると無理とか言い出されました。

 察しが悪いんでしょうか?


「そう言えば、指輪の話をしていないな」


 話題らしきものは残っていて良かったような気はします。

 言いたいことはそれじゃない気がしますけど。


「その指輪は対になっていて、片方の石を砕くと連動して砕かれることになる」


「異常を知らせるみたいな感じですか。どうやって使うんです?」


 やっぱり魔動具でしたか。

 綺麗なのに消耗品とか残念すぎます。まあ、理由もなく指輪なんて渡さないですよね。常時つけているものの方がいざと言うとき安心ですし。


「触れながら設定された言葉を発する。ウィラ。古い言葉で、助けて、とかそんな感じだな。普通使わない言葉だから誤って壊すことはないだろう」


「わかりました。エリックも使ってくださいね?」


「わかった」


 笑って言われましたけど、使う気はあまりなさそうです。そもそもつけてないのではないでしょうか。

 指輪が見あたらないですし、首もとに鎖も見えません。


 なんだか、少し、寂しい気がします。


「最悪の時に使うものだから、出来るだけ見せないように」


「はい」


 指につけてみたかったですが、理由が理由ですしいつもは大人しく服の下に入れておきましょう。それなら指輪の形ではなくても良いと思いますけど。


「一度、つけてみてもよいですか?」


 返答がありません。じっと見ていれば、落ち着かなさそうに、煙草の火が揺れました。ゆらゆらする煙が、部屋に溶けていきます。


 なぜ、そこで赤くなるんですか。

 この指輪になにかあるんでしょうか。そういえば、ゲイルさんが動揺してましたね。


「もしかして、これ、特別なものですか?」


「……ああ。一般的には婚約するときに送るものだな」


 観念したように、淡々と言われました。煙草を消すような仕草でそっぽを向いて。


 こんやく? ってなんでしたっけ?


 ……あれ?

 も、もしや先ほどの側にいて欲しいというのはそういう。


 両手で顔を覆ってしまいました。察しが悪いというレベルではありませんでした。完全スルーしてました。

 なんということでしょう。


 居心地の悪い沈黙でした。心底、逃げたい気持ちです。

 仕切り直しを要求したいです。しかし、台無しにしたあたしが言うのは違う気がして。


 ぽすっと頭を撫でられても、少しも落ち着きません。


「少し、急ぎすぎた」


「何で急に?」


「自分でもよくわかってない。本当は、戻ってから言おうかと思っていたくらいだからな」


 なんというか帰ったら結婚するんだとか死亡フラグ過ぎてどうしましょう? なんでそういう危ないことをしたがるのか……。

 いい雰囲気も甘いところも全くありませんけど、押し切っちゃいます?


 そのままクルス様が隣に座ったのでとても落ち着かないに変化しました。あ、うん。寄りかかってもよいでしょうか。いいですよね。

 少しばかりびくりとされたのが気がかりですけど。


「ユウリが、な。その気がないと言われても疑心暗鬼になるというか……」


 どこかにトラウマが埋まってるんでしょうか?

 まあ、あのユウリですし。


「好きな人が、ユウリを好きにでもなりました?」


 とかありえます。なかなかにトラウマを刻まれそうです。

 あのユウリは、ローゼ以外選びそうにありません。ちらとも興味を持ちそうにありませんから、無駄としか言いようがありません。

 それでも、好きになるというのは厄介ですね。もし友人がその状態になったら全力で止めますけど、聞く耳を持つかは個人差があります。


 クルス様には絶句されたので当たっていたっぽいです。まあ、ユウリに関するトラブルなんて女性関係でしょうよ。たぶん、当人は気がついてませんね。


 候補は考えつくんですが、誰なんでしょうね? 今でも気にしているということは心残りなのではないでしょうか?


 そして、知らない間に失恋の傷に付け込んだのでは? だとしたら、罪悪感を憶えます。


「今でも」


「ない」


 言いかけている途中ですが、強く否定されました。むしろまだなにも言ってないくらいでしたが。

 びっくりしました。

 ばつが悪そうにされましたけど。


「正直、好きだとかよくわかってない。ただ、他の誰かの隣りにいて欲しくない。ずっと側にいて欲しいし、出来れば同じように思って欲しい」


 それ、けっこう、重傷だと思いますよ?

 自分の感情について、あまり把握してないんですかね。だから、今、こうなんでしょうか。


「笑っていて欲しいとは思うが、無理してそう見せなくてもいいんじゃないか? 頼れないと思われる方が、嫌だ。多少は甘えてくれると嬉しい。そうするのが、嫌なんだと思うけどな」


 ……。


 紙装甲を抜けて致命傷なんですけど。

 うん。死ぬ。今日はあたしの命日になります。きっとそうです。

 どうしてこう言うことは照れずに言えるのか、謎です。


「も、もういいです。わかりました」


 どこが好きなのか述べたときに焦ったように止められた理由が今ならわかる気がします。これはいけません。


「それで、安心するなら、いいですよ。ただし、返品不可ですからね?」


 嫌だってあとで言われても、無駄ですから。

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