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推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について(連載)  作者: あかね
第二部が始まったようです?編

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変ですよ?

 細身に見えてあんがい筋肉ついて引き締まってましたね。骨っぽいところもありますけど。

 え、抱きついた感想ですが、なにか。ちょいと不埒なことをしたがる気持ちを押し込めておでこを肩あたりにくっつけました。

 全身熱い気もしますが、しばらく、このままでいた方がいいんでしょうか。変な事を言い出したり、したりしないような自制心が残っていることに期待しましょう。

 いえ、でも奴ら裏切りましたからね。


 へろっと変な事言い出さないといいのですが。

 好きだとか言うのはもう言った気もするので、そこは安心していられる気がします。どこが好きとかも言いましたし。

 あれ? 言って困るようなことはあまりないのでは?


 ダメな行動は山ほどありますけど。


「……足りました?」


 そろそろいいかなと聞いてみましたが、うろうろしていた手がようやく背中に回されました。きつくはないですが、逃亡防止に思えて苦笑してしまいます。

 見上げればまだ狼狽えたままではあるようで、視線が合いません。どこ見てるんでしょうね?


 かなり踏み込んでくると思いきやこういうところで狼狽えられるとどうしていいのかわかりません。

 いないから充電したいとか言い出すようなことってかなり好きなのでは? という疑惑は宙に浮いたままです。

 好意はそのままで無自覚だった部分が自覚に切り替わったような印象があります。自覚した分、行動が直接的になったといいますか……。そして、それに慣れてないからやらかしたあとがこうなのかなと。


 きっかけは眠り姫なんだろうと思いますけど。でも現状がおかしい感じなのは、それだけでもなさそうなんですよね。それとは別に理由があってこうなんだと思います。あたしからは見えない理由。


「どうしたんです? ユウリが来てから変ですよ?」


「しばらくしたら落ち着くと思う」


 普通、とか返ってこなかったので、変だという自覚はあるのでしょうね。

 ただ、しばらく、といってもですね。居なくなってしまうわけで。クルス様が落ち着いたかどうかもわからないままというのも不安です。


「本当ですか?」


「たぶん」


 とても自信なさそうですね。何か出来ることがあればいいのですけど。うっかり色々して余計悪化しそうなんですよね。

 昼間のあれこれで悪化している可能性も否めないのです。


 ただでさえ、意識しているところにたたみかけたような出来事だったかもしれませんね。ちょっと色々考えなしでした。

 あたしも全くどこも冷静さはありませんし、正気? とか言い出しそうな事ばかりでして。

 知らない間に煮詰まってたんでしょうか……。


「ところで、そろそろ離してもらってもよいでしょうか」


 理性の限界がやってきそうなので。少々、刺激が強いですよね。うっかり色々ねだりそうで怖いですよ。

 額だけじゃなくてこめかみとか頬とか首筋とかいいですよね。


 ……。

 こ、これだけは駄々漏れしたくありません。逃げますけど、嫌じゃないんですよね。不可解かもしれませんけど。恥ずかしいんですって。


 クルス様が離してくれたのは良い事です。ちょっと寒いような寂しいような気がするのは気のせいですよ。いつもの距離感からすれば、近すぎるくらいなんですから。


「ここは片付けておきますから、もう休まれてはどうでしょう?」


 空白に耐えかねてそう言えば、クルス様に面白くなさそうな顔をされてしまいました。


「あんなに寂しいなんて言ってたのに」


「それはそれとして、独りになったときに浸りますので」


「浸る?」


「そういうのも恋の醍醐味かと思いまして」


 クルス様はよくわからないと言いたげに少し首をかしげました。

 今まで側にいないということもなかったですからね。放置されたことはありましたけど。あれは寂しいの種類が違う気がします。あれこそ、構って欲しいけど我慢するというものでしたね。


「いつから」


 不自然に切れた言葉は、本来なんと続く予定だったんでしょうか。

 その続きは、全く出てきませんでしたけど。ちょうどよい話ではありました。


「この世界に来る前から、好きは、好きでしたけどね。この二年のことをユウリの視点からしか知りませんよ。そういう物語でしたから」


 軽く聞こえるとよいのですが。

 それで、イヤな顔とかしてないともっといいとおもいますけどね。確認する勇気はありませんね。床とか見つめちゃいますよ。


「そうか」


 聞こえた声は素っ気ない、全く気にもしていないような風に思えました。


「文献の通りなんだな。気にしないわけでもないが、そこまで思い詰めて言われるほどでもない」


 普通の声で、なんでもないことのようにそう言われました。

 それにどれだけほっとしたのかわかりません。それでも、まだ見上げる勇気は出てきませんね。


「気持ち悪いとか思いません?」


「……少し、面白くない」


 面白くないって、なに?

 思わず顔を上げてしまいました。確かに、とても眉が寄ってますね。クルス様がが不快ってのは感じます。

 ただし、あたしに対してではないようですが。


「その話の俺ってそんなに良い男にみえたわけ? 最初からあんなに安心するくらいに」


「え、その、ちょっと、舞い上がってましてそこまで考えてませんでした」


 大変、恥ずかしい気がします。推しなので無条件に信頼したというのがちょっと重たいでしょうし。そこはそこはかとなく流していきましょう。


「こう、とても、好きだったので」


「なんかあったら、どうしたわけ?」


 へらりと笑って誤魔化しました。ま、それは、それで、ねぇ?

 クルス様もなにか察したみたいですけど、詳細は追及はしないようです。喜ばしいのかどうかはわかりません……。


 呆れたように頭をぽんぽんしないでください。ついでのように髪を弄らないでください。な、なんかその触り方ちょっとこう……。


「付け込んでおけばよかったな」


 低く笑いすら含んだその声が色気過剰なんですけどっ!

 そんなのおいしいかどうかはわかりませんが、一瞬で食べられてしまったでしょうね。現実感なくてふわふわしてたので、今ほど抵抗感は感じない気がします。

 半歩ほど、距離をとりましょうか。ぐらぐらします。言っちゃいけないこと言いそうです。


 それでも、まだ、手を伸ばせば届く距離。


「……お茶、もらってもいいですか?」


「ああ」


 その返答は、いつものようでほっとしたような気がします。

 渡されたマグカップの中身は完全に冷えてます。いっきにぐいと飲み干して冷静さを取り戻したい気がしますね。ついでに離れた距離に安心します。それなりに理性が帰ってきたようで幸いです。

 至近距離で寂しいとか言い出すのは正気とは思えませんね。


 ふと見ればクルス様はさっさと飲んでしまったようです。


「じゃあ、あとは頼んだ。また、明日」


「おやすみなさい」


 と言っても全く動かないんですけど。

 どうしたんだろうと見上げれば、小さく笑われました。


「キスしていい?」


 ……聞かれるのも恥ずかしいです。

 このあたりの匙かげん、どうすればいいんでしょうか?


 黙って肯く以外の選択肢はありませんでした。


 場所は慎み深く、頬でした。

 でも、頬って言っても唇の端とかかすってるんですけど。だから余計に妙な期待が……。


 ちょっと落ち込みました。やだなぁ、あたしったら。

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