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推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について(連載)  作者: あかね
第二部が始まったようです?編

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寝返られました



「……ちょっとこれは予想してませんでしたね」


 ダイニングの方に戻ったら、ユウリが目をきらっきらさせてゲイルさんの話を聞いてます。そして、得意げですけどゲイルさん、お疲れだったんじゃないですか?

 一応、ソファを寝れるように整えたことは伝えました。上の空の返事でしたね。


 ……今夜、この二人は寝ないかもしれません。

 おそらく、魔動具の話だと思うんですよね。


「なんの話をしてるんですか」


 でも、2人に尋ねず奥のキッチンにいたクルス様に聞きました。迂闊に聞いてあれに巻き込まれるのはちょっと嫌です。


「魔動具の話。ほっといていい」


 クルス様は呆れたような口調なので、巻き込まれたくはないのでしょうね。

 お湯を沸かしている途中のようです。食器はきちんと元の場所に戻っていますので片付けてくれたようです。

 お礼を言えば、どういたしましてと当たり前の顔で返されました。


「お茶飲む?」


 そう聞く表情が柔らかい気がします。キュンとするような甘い感じが増えていると言いますか。そっと視線を逸らしますね。


「はい。お願いします」


 クルス様は昨日、やはりマグカップを壊したようで、見覚えのないでも青いものが新しく出てきています。本当に青が好きなんですね。


 後ろで盛り上がっている声が聞こえて思わず笑ってしまいました。


「余計な事を吹き込まないといいが」


 クルス様が嫌そうな顔をしています。ゲイルさんとは設計思想が全く違うらしいので、きっとクルス様が説明すると全く別の話になりそうです。


「あまり知らないみたいなので物珍しいのでしょうね。そういえば、頼まれたものってすぐ出来そうなんですか?」


「難しいから遅くはなると言ってあるから問題はない。それより、あっちが盛り上がって変なのを作り出さないかの方が心配だ」


「そ、そうですね」


 朝起きたら変な魔動具が出来ていないことを願いましょう。ゲイルさん、クルス様の仕事部屋時々占拠してますからね。

 こぽこぽとヤカンが不満を申し立てています。


 4人分いれたうちの二つをゲイルさんとユウリに、残りはここに。

 ほどほどにしろとか、早く寝ろとか、そんな小言を言ってからクルス様が戻ってきました。うん、たぶん、聞きませんね。


「明日は早めに出る」


「そうですね。みんな困ってるんでしょうから、早いほうがいいですよね」


 渡されたマグカップの中身を見ながら言うというのは、すこしばかり不審でしょうね。

 じっと見られたような気がします。


「王都への往復と色々片付けることにつきあうなら、半月以上はかかると思う」


「そうですか」


 妙に平坦な声になってしまった気がします。

 感情を抑え損なってしまうよりはましですけど。


「少し、寂しいです」


 どの口が言いますか。ぽろりも良いところではないでしょうか。

 平気とか、大丈夫ですとか、留守は任せてくださいとか、そんな格好つけをしたかったんですよっ!

 ものすごく心細い声出てますって。絶対に気にされるようなものです。


「早く戻ってもいいが、たぶんすれ違う。一月もあれば王都へ呼ばれるだろうから」


 言われて気がつきました。確かに戻ったユウリが根回しして、そのまま呼ばれる可能性もあるわけです。


「そうですね。じゃあ、待っててください。少しは使えるようになってきます」


「自衛以上、鍛えない」


「ええっ! せっかくなので便利な方に」


「しない」


 真顔で否定されました。上目遣いなどで訴えてみたら少し怯んだようです。


「やるならばれないように」


「はい」


 譲歩されました。使えますね。上目遣い。


「舐められるような態度は困るが、必要以上に有能に見せない。付け込まれそうな優しげな態度はしない方が良い。愛想笑いとか不要だ。あいつらに笑うな。嫌な事ははっきり断れ。その程度で傷つくようなかわいらしさはない」


「あの」


 なんだと言いたげに視線を向けられました。

 機嫌が悪いように見えますけど、少し違う気がしました。なんでしょうね?

 そして、やけに具体的ですけど。誰に縁談持ち込まれたり、口説いてきたりするか予想されているんでしょうか。


「もしかして心配してます?」


 無言で、マグカップが置かれて。ついでとばかりにあたしが持っていた分も取り上げられました。

 え? なになに?


「心配もしているし、出来ればいきたくない。むしろ、外に出したくない」


 少し屈んでわざと耳元で言われました。ただし、ものすっごい早口でした。

 え、えっと思っている間に、離れて顔を背けられてしまったのですけど。

 というか内容っ! スルーすべきか否かみたいなことを考えていましたが、ふと気がついたんです。


 ……向こう側が静かです。


 あちらの会話が聞こえたように、こっちの会話も聞こえるはずですね。先ほどのものは聞こえていなかったと思いたいですが。


 うわぁ。


 向こうからは見えないところにいるんですけどそれにしたって、羞恥心が消えるわけでもありません。


 かたかたっという音に続いてきぃぱたんという音も聞こえてきてですね。

 気を使われたんでしょうね……。

 普通の開閉はそれほど音が目立ちません。扉を閉めた音は聞こえるんですけどね。二人にされたと急に意識させるには十分な音でした。


 変に緊張してくるのが嫌ですね。なんの話をすればいいんでしょう?


「えっと、大丈夫ですよ。きっと。エリックも気をつけてくださいね」


「だといいが」


 少しは平常心が戻ってきた気がします。クルス様も半分くらいこちらを見て、ぽすっと頭を撫でてきました。


「今からそんな顔してたら、すぐに寂しくて泣くんじゃないのか?」


 ……よくご存じで。腹が立ったので渾身の作り笑いしてやりましたけど。


「どうぞ、お仕事頑張ってきてください」


「怒ってる……」


 うちの兄弟くらいの察しの良さですね。彼らの証言によれば薄ら寒いのだそうですよ。


「あたしだけが寂しいんでしょう?」


 拗ねたような物言いは、らしくありませんでした。恋人でもありませんし、言う立場にはないと思います。大変失言でした。

 意外そうに見られて頬に熱が集まってくるのを感じます。


「い、今の無しですっ!」


 慌てて打ち消したって言った事はなくなったりしません。

 な、なんでしょう。

 口元だけの笑みがとても物騒なんですけどっ! なにか危機を感じます。今までで一番やばそうなやつですっ!

 びくりとしたあたしを見て、少し目を細めてすこしだけ身をかがめて。


「平気だったら、行きたくないなんて言わない」


 ……。

 くらりとしました。み、耳元とかダメだとおもいますっ!

 理性が、いいじゃん、抱きつけよとくらい言い出してますけど、理性ーっ!

 全体的にぐだぐだのゆるゆるじゃないですかっ! どうしたんですか。正気ですか? 正気じゃない? やだなぁ昼から正気なんて投げ捨てたじゃないってどうしたの自制心っ!


 やつら寝返りましたよっ!


 いいじゃない、少しくらい好かれているなら。無駄な抵抗はおよしなさいと優しい感じでそそのかしてくるんですけどっ!


 眠り姫の本なんて調べるんじゃなかったっ!


 表面的にはがちりと固まってしまっているようには見えると思いますよ。

 クルス様はそれを楽しげに見てますけどね。そこにちょっとした違いを見つけて、どこぞの神もどきに苦情を申し立てたい気分です。

 影響が抜けるんじゃなかったんですかっ!


「ちょ、ちょっとっ!」


 もうちょっと近づいたと思ったらっ!

 おでこを押さえて下がります。


 おでこにキスとか意味がわかりません。いえ、口にされなかっただけよいのかもしれませんけど、なにか、もう一度とかなんとか、うるさいですね、黙りなさい。

 ……絶賛、大混乱中です。全面降伏したい気さえしてきました。


「そういうところは逃げて行くんだよな」


「別に好きにされてよいと言うことではありませんので」


 とても可愛くない返し方をしてしまいました。

 少し考え込まれたのが逆に不安になってきます。


「わかった」


 いったいなにがわかったんですかっ!

 怖くてきけません。しかし、わからないのも怖い気がします。


「同意があればいいんだな?」


 ……そ、それはとてつもなく恥ずかしいヤツでは?

 羞恥心の板挟みになっている間に距離を詰められているのが、不可解です。


「触れていい?」


「だ、だめですっ!」


 ものすごく残念そうな顔ですけどね。これ以上は無理ですって。なんですか、なんなんですかっ! がっつり押されている気しかしませんけどっ!


「少しくらい」


「ぐいぐい来ますね……。ちょっと変ですよ?」


 きょとんとしたような顔で首をかしげられました。

 なんですか、かわいいじゃないですかっ! こんな場面でなければにやにやしたかもしれませんね。


「そうだな。明日会わない分の充電をしたい」


 ……変な事言い出しましたよ? 時々妙な物言いすることあるんですけど、もしやこれってユウリの影響だったりします?

 ヤツならいいそうです。そして、ひとまえで照れるローゼに鉄拳制裁されるのです。ありありと想像できました。隠れてイチャイチャしろと思ったことはあります。ええ、見せつけたかったんですよね。


「……わかりました」


 なにかぐったりしたような気分で、抱きついてやりました。慌ててましたけど知りません。

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