フェザーの町はやや混乱中です。
ある配達人の兄妹
「はあっ!? 中入った?」
「いなかったら探検……じゃなくて、荷物悪くなるかなって」
「探検言った。この子探検言った。魔導師の家探検とか馬鹿なの?」
「ええっ! 普通のお屋敷だったよ。クルーさんのお家くらい」
「そりゃ、豪邸だな。……じゃなくて、なんでそんな事すんだよ。割増料金がっ! 文句言わないお得意先だってのにっ!」
「悪い魔法使いなんでしょ?」
「どこでおぼえてきたかな。あの人はそんなんじゃないよ。怖くない怖くない」
「兄ちゃんもなんか最初念じてたじゃん」
「うるせぇ。だいたい、なにもされずに帰ってきたじゃねぇか」
「それがさ、居候ってえらい綺麗なにいちゃんがいたんだけど。すんごい怖かった」
「え、噂によると女の子って」
「探したら、いるのかな、かなっ!」
「わくわくした顔すんな。そういえば、相棒はどうした」
「んー? シスターのトコに行くって。兄ちゃん行く送っていく用事なくなって残念だねっ!」
「ふざけんなっ! 俺にも癒しがいるんだっ! なんだよその英雄ってっ! まれに見るイケメンとかみんな噂しているって暇なんか」
「……あっれー? イケメン?」
「えらく綺麗な顔した兄ちゃんって……」
「……」
「うん、気がつかなかったことにしとけ」
「うん」
ある町の(いるだけ)領主
「僕って、消極的にひっそり生きてきたと思うんですよ。思いません? セバス」
「旦那様、私はギュンターという名前が」
「いいじゃないですか。あだ名で親愛を込めてますよ」
「なんですか。流行なんですか。皆がなぜかセバスと言い出すのですか」
「……いや、執事探偵セバスっぽいから」
「……版元潰してくればよいですか?」
「やめてください。恨まれます。
まあ、それはともかく。引きこもりで、政治的介入もしない言うがまままにはいはいと流されてきたのですよ。処刑されるの嫌だから」
「旦那様の処刑の夢、まだ続いてるんですか」
「続いてますよ。なんなの、僕に恨みでもあるの? 英雄」
「ドラゴンの羽ばたきは遠い異国でもそよ風となりますからね」
「読んでるんじゃないですか」
「おや、弟子には教えているような古い慣用句なのですが。そうですか」
「……。うん、ご冥福を。あれ、じゃあ、魔銃とか使い出すんですか? サーベルで二刀流とかっ!」
「旦那様がそれを見るときは死ぬときですね」
「……わかった。それで、英雄を捜さないといけないみたいなんですよ。魔導協会に連絡を取ってください」
「役人どもではなく?」
「そっちは勝手にやっているのでしょう? 黙っているつもりなんでしょうけどバレバレなんですよ。警備兵の賃金だけこっちに寄越してこき使うとか抗議しておきましょう。時間外労働がかさむし、なんなら予備で登録している者たちまで使うとかふざけてますよね。それでばれないとか馬鹿にされているにもほどがあります」
「承知しました」
「ふしぎそうですね」
「英雄一人に大騒ぎすぎませんか?」
「ほっとくと行方不明になるみたいなんですよ。英雄が。それで初動をミスった僕が責任を取って首と胴がお別れです。せめて毒杯を寄越せ」
「人道的な方だと思いますけどね……」
「領主の名誉的には最悪ですね。というわけで、魔導協会に連絡して、英雄の行方を捜させて、いないことを証明することが先決!」
「かしこまりました」
「……ところで、ムチはつかうんですか?」
「……現実と本の中身をごっちゃにしないでください。私にはギュンターという名前があります」
魔導協会にて
「え、何で俺のトコまで招集かかってんの? つか、なんでおまえまで呼ばれてんの?」
「しらん。けど、いるヤツ全部出てこいって、その上、知り合いの魔導師、魔法使う神官問わず引きずってこいってさ」
「意味がわからない。言われりゃ行くけど、教会の連中まで引っ張ってくるって大事今までなかったけど」
「俺ら、規約は知ってたけど実際呼ばれたの初めてなんだよな。強制力あるって初めて知った」
「で、なに、ドラゴンでも襲ってくるわけ?」
「英雄がさ、行方不明なんだと」
「……は?」
「昨日、いたらしい。信者のお嬢さん方がきゃいきゃい言ってた。そんで、出ていった形跡もないし、どこかに泊まった風でもない。他の目撃も無し。
役所の方で慌てて王都に連絡つけたら、そっちは箝口令をしいてたって話」
「え、結構前からいなかった、みたいな?」
「そうらしいね。
いつもつきあわせている婚約者も騎士も魔導師も物理的に近くにいなかったから確かに一人で行動中っぽい。王都的には目撃情報があったのは、ここが初めてでどうにか行方を知りたいみたい。という極秘情報」
「拡声器なおまえが知っている時点で町中に広がるな……」
「え、褒められてる?」
「貶している。単独行動しただけでこんな探されるなんてな」
「それな。で、妙なのは領主様が魔導協会に要請を出している」
「あの方が妙なのはいつものことじゃないか。なんか時々びびってるし」
「王都からの要請にしては、早すぎない? 役人たちも理由はわからないけど、秘密にしてたみたいだから伝わってないはずなんだよ」
「……時々、おまえの情報網怖いと思う。え、なに、あの秘密も」
「えー、ゲイルがリリーさんに実はべた惚れしてるってこと?」
「……殴っていい? いいよな。俺はいつも困ってる」
「とか言って喧嘩すると全面降伏なくせに」
「ふざけんな。何で知ってんだ」
「……あとあの黒い子、英雄と一緒のトコ見られるとまずいんじゃない?」
「あ?」
「ここら辺でさ、知り合いって言ったらディレイくらいでしょ。気軽に誘いにきたんじゃないか? じゃあ、遭遇してもおかしくない」
「行動力ありすぎてないか。そしてなんで知ってる」
「情報源は極秘にする契約です」
「おまえとの付き合い本気で見直したい」
「そーゆーなよ三十年来の友人だろ」
「とかいう知人」
「ひどいっ!」
「ま、冗談はさておいて確認しといてやるよ」
「……ね、本気で、冗談? ね、本気じゃなかった?」
「あははは。どーだろなー」
配達人→少年と少女
引きこもり領主→未来視系現地人
セバス→セバス




