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推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について(連載)  作者: あかね
主人公編(仮)

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理由2

 人の習性というのはなかなか変わらないらしい。

 いつもの場所でいつものように煙草に火をつける。


 朝と変わらないように紫煙の行方を視線が追う。


 怪訝そうな表情をされながらも彼女とユウリを置いてきてしまった。

 情報過多で、少しばかり動揺している。なにか普通に話しているだけでも邪魔したくなってきて、困らせることは想像するまでもなかった。

 離れる方がましではあるが、気にならないわけでもない。ユウリがいる間に、なにか予定通りのことを済ます事は諦めた方がいいだろう。


 感情を持て余している。


 整理されていない道具箱から何かを取り除こうとしても意図しないものが出てくるか、よけいぐちゃぐちゃになることに似ている。

 何が入っていたかがわからないとなれば、一つずつ取り出してみるしかない。


 そう思うのに。


「好みってなんだよ」


 思いっきり翻弄されている。怒りが潜んではいたが言葉には裏はなさそうなのに、意味がわからないというか、どこが良いのかさっぱりわからない。

 冷静でいろというのが難しい。


 どうやらこの顔が好きらしい、とは、うっすら感じていた。ぼんやりと嬉しげに見られていることは時々ある。視線が合えば、慌てたように他の所をみている振りをすることもあった。

 それに笑いをかみ殺していたことを彼女は知らないだろう。


 髪切らないんですか? と最近言われた事を思い出した。

 いっそ伸ばします? と楽しげに提案してきたので、たぶんこれも好きなんだろう。


 部屋に籠もっている日以外は、午前中の仕事が終わって休憩するか彼女が聞きに来る。そこから、お茶を用意して、昼食までリビングで話をしたり本を読んだりするのが日課に近い。少しだけ距離を空けて座って過ごすのも嫌ではないらしい。


 昼食後は夕食あたりまで顔を合わせないことが多いが、時々、おやつ食べませんかと誘いに来る。

 邪魔しちゃったかな、大丈夫かなと伺うような上目遣いにいつも否と言えなくなる。


 それらを見ない振りをしていたわけではない。ただどこか現実離れしたようなもののように感じていた節はあった。


 ユウリがこなければ、今もそうだったかもしれないと思うと来る前に戻って欲しいような気もする。

 これまでの日常は曖昧で緊張を孕んでいながら妙に心地良かった気がした。


 これからは変わってしまうだろう。

 よいか悪いかは、誰にもわからない。


 いい加減、言わずに済ませていたことを片付けてしまった方がいいだろう。それはとても気が重いが、他人から余計な事を吹き込まれる前に言ってしまった方がいい。


 今まで少しも思い出しもしなかったが、王都には面倒なヤツはそれなりにいる。


「行かせたくないな」


 ぽつりとこぼれた言葉は偽りない本音だった。それが無理だということも、王都に行くこともできないことも知っている。


 いつも去ったものは帰ってこない。諦めにも似たそれがいつ埋め込まれたのかおぼえていなかった。

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