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推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について(連載)  作者: あかね
主人公編(仮)

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魔導師が言うには

 あとは何かあったら日本語で手紙を送ろうとかそんな話をして、ユウリと一度別れました。

 1人でお風呂に入るには十分な量は貯まりましたので。

 使い方は大丈夫だと言ってましたので、ユウリはそのまま置いてきました。他の場所とも基本システムは一緒のようですね。


 さて、クルス様を捜しますか。まあ、煙草でも吸ってるんじゃないかと思うんですよね。数は減っていても禁煙まではする気はないようなので。

 暇とか落ち着かないとかそんな時に吸ってるようです。


 配達について一応、お伝えした方が良いと思うんですよ。

 この家で来客対応できるのは今はクルス様しかいません。さすがに黒いままでは、でれませんし、ユウリなんてでて来ちゃいけません。家まで来られたら困ります。

 それに待ちぼうけなんて相手も困るでしょう。


「終わりましたよ」


 いつか、星を見た場所にいました。階段に座ってぼんやりとした、心ここにあらずみたいな表情です。考え事でもしているのでしょうか。

 灰皿に煙草の吸い殻が何本かあったので、吸ってなかったというわけではないようです。


「ディレイ?」


 どの名を呼ぶかちょっと迷いました。まあ、どれもあたしは呼ぶのは照れまして、顔が赤くなる仕様です。

 慣れません。全く慣れませんよ。


 あたしの姿を認めるとなんだか嬉しげに笑ったんですけど……。

 あれ? いままで、なかったですよね?


「おかえり」


 ……。


 意識、息してるーっ!?

 ちょっとくらりとしましたよ。

 空白の間に石段にちょこんと座ってました。微妙に離れているところが、なにか無意識がお仕事してくれたのでしょう。


 理性はお留守番してくれて良かったです。自制心のほうはどうでしょうね。


「なんで、そんなとこに座るんだ」


 不満を言われました。背後から聞こえた音にものすごい緊張してきましたよ。

 な、なんですか。


「なにもしないよ。たぶん」


 さっきよりも近い声が、曖昧なことを言い出してます。たぶんってっ!

 振り返るのも恐ろしくてがちがちになったまま前を向いてますよ。そこにある感情が、なんであれ冷静さとか投げ捨てる気しかしません。


 なにか、この空気を打ち破りたいのになにを言えばいいのかが全くわかりません。これなら大人しくキッチンにでも行けば良かったような気がします。


「まだ、怒っている?」


 意外なことを聞かれました。


「いえ、怒ってはいませんよ」


 直前の出来事と言えば、ユウリに関することしかありません。まあ、確かに怒ってましたけど。あれで怒ってるってよくわかりましたね。


 ついでにものすごいこと言ったことも思い出しました。いやだわ。照れるわ。

 ……いえ、逃げ出したいです。うっかりなに言ってたんですか。ここに来たの明らかに失敗ですよ。


「忘れてください」


「俺のどこが良いの?」


 真顔になりますね。

 ……ついに本人からきかれました。なんか、散々言った気がするのは気のせいでしょうか。あと、さすが兄弟弟子な気がしました。ずばっと聞きにくいこと切り込んできますね。

 面と向かって言われないだけよいのでしょうか。


「全体的に」


 やっぱり、微妙に沈黙されました。


「それじゃ、わからないな」


「そうですか」


 曖昧ではなく、具体的に挙げるのはちょっとやり過ぎだと思ってたんですよ。でも、まあ、本人が知りたいって思うなら言いましょう。

 引かれるかもしれませんね……。


「……たとえば、少しタレ目ぎみの目とか、ちょっとだけ癖のついてる髪とか。陽の下で見たら金茶色な目も好きです」


 今までなら、言わなかったと思いますね。そうですか、なんて笑ったかもしれません。こんな事言い出したのは、昨日からの蓄積があったんだと思います。何度もユウリの方が良いのではとか言われるとさすがにくるものがありますからね。

 それを言う理由がどこかにあるんでしょうけど、それはあたしにはわかりません。それに苛立っても仕方ないんですけどね。


 まあ、少々、目が据わっていた気がします。


「え、ちょっと……」


「その声がとても好きです。楽しそうに笑う声も、眠たげにおはようっていうところも、少しだけ低くお話しするところも……」


「まて、もういいから」


 慌てたように制止されました。背後から口を押さえるとかどれだけ止めたかったんでしょうか。


「なんで、そんなところ見てるんだ……」


 疲れたような声なので、少々ざまあみろという気分です。口を押さえられているので、言えませんけど。

 これでもまだ一部なんですけど。もっとありますよ。とも言えないですね。それは確実に引かれそうなので言えなくてよかったのかもしれません。


「俺でいいなんて物好きにもほどがある。他にいくらでも選べるだろ」


 ……なにやら、その言い方、微妙ですね。言いたいことがあるとぺちぺちと口を押さえている手にアピールしてみます。

 慌てたように手を離されましたけど、それも微妙な反応ですよね。


「他の人なんていりませんよ」


 重たい話をしてしまいました。もうちょっと軽いことを言うつもりだったんですが。そんなことないですよとかなんとか。

 どこに消えたんでしょうね。自制心。困らせるだけだと言わないことをぺろっと。言葉にしないから否定されないという利己的な理由もぶん投げましたね。ついでに逃げるという退路もなくなった気がします。


「本当にさ……」


 呆れたような声はとても近くで聞こえました。

 言葉を探すように躊躇って。


「そんなにいいなら気が済むまで、ここにいればいい」


 耳元で囁かれるにいたって、意識が一瞬、どこかへ旅に出ました。

 な、なんで、そんな照れたようにいうんですかっ!

 それってなんて同居なの? え、今と変わらない? そうかもしれませんね。


 うん、なにも変じゃないですよ。契約とかありますし、そのあとでもずっと居ても良いとそんな話……。


 む、むりっ! この状態の日常ってどうすればいいんですかっ! そこまで考えてませんよ。

 考えていたら、なにも言わないで誤魔化して笑います。ぬるま湯みたいな時間の延長を謀ります。

 破綻するのはわかっていてもです。


 やらかしたことに目眩がします。ど、どうするんですか……。平常心、帰ってきて。理性も呼んできても良いのですよ。あと自制心どこに行方不明なんですか?


 離れる決心も、側に居続けることも決めれないのに。

 まったく、どこも正気じゃありませんっ!


「あ、あのっ! 今日は配達の日じゃないですか? 遅くなると家の方まで様子見に来るのでは?」


 焦って立ち上がって距離を取ってしまいました。

 変な言動を始めるまえに離れたいのですっ! すでにおかしいところはスルーしますっ!


「ああ、そうだった」


 面倒そうに言っているのはいつもの調子でひどくほっとしました。クルス様も立ち上がって伸びをしています。


「ちゃんと留守番をしているように」


「いつもしてるじゃないですか」


「それでも、心配」


 うっ。そんなに困ったなぁと言いたげに見られると言葉に詰まります。そこまでやらかした気はしないんですけど。


「気をつけます」


 項垂れて言えば良い子だとでも褒めるように頭撫でられました。これも不満ではあったりします。

 いったい、どこのカテゴリにいれられたんでしょう。


 まあ、好きでいてもよいし、いたいだけここにいてもよいと言ってもらえたことで満足しましょう。

 大変贅沢な状況ですね。


 ……ただし、精神的平穏からは遠い気がします。どーすんの、この状況って頭のどこかで考えてます。答えはでません。


「あの」


 遠くりんごーんと音がしました。


「あれ?」


 思わずクルス様と顔を見あわせましたね。お客さんがきたようですよ?

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