国内は少し混乱中です
警備兵詰め所にて
「え、いやだな、見間違い、ですよ。見間違い」
「そ、そーです。そんな人、きてませんって」
「……あれで何人目よ?」
「さあ。みんな暇だよね。暇。あー、副隊長もどこか呼び出されたし、俺たちに出来る事ってなにもない」
「……でも、そういえば、俺、黒い目見たことあるんだよな」
「は? どこで?」
「結構前に門番してたときにあのかわいい……」
「そうだっけ? 俺も遠くからしか見たことないし。最近全く見ない。いいけど、良くない」
「え、口説く気あんの?」
「フェイちゃんにもイザベラちゃんにも振られたから、こう癒し? なんか困った顔しても挨拶くらいはしてくれそうじゃん?」
「イザベラちゃんは副隊長一筋だし、フェイちゃんはお見合い決まったって噂。婿に行くってとっとと言えばよかったんじゃね?」
「いや、うちもねーちゃんしかいない。でもな、うーん。どこかに良い婿は落ちてないかな。ねーちゃんが気に入るようなの」
「あぶれた男は一杯いるんだけどな。あんまりおすすめできそうなのはいない」
「お、そういえば、おまえ独身かつ、恋人もいなかったな」
「は? やだよ。おまえんちのねーちゃん、ものすっごく気が強いし」
「一回くらいデートしてみない? うん、話通しとくからさ」
「は?」
「なんですか、ご婦人。黒髪の格好いい兄ちゃんがいるかと? いませんよ。やだなぁ。見間違いでしょう」
「イケメンなら副隊長だけで十分なので」
「……ほんと、なんだろうなぁ。変な情報網でもあんのかな?」
王宮にて
「ユウリが見つからない。どこに行ったんだか」
「ん。ローゼがきちんと見張ってないから」
「は? なによ、同室は不可とかなんとか無理にユウリに同意させた人たちの言いぐさとは思えないわね」
「いえ、私は式前になにかあっては、ちょぉっと困るのではないかと愚考したまでです」
「……ほんと、迷惑。ユウリ連れて故郷に引きこもるわよ。面倒ごとばっかりで良い事なんてこれっぽっちもないのに、付け込んでやらせてるんだから」
「それは独占欲。よくない。あと、別にもうユウリはいい」
「フラウ?」
「よく考えれば、浮気しない男の方が良いし、優しい方がいい」
「……別にユウリ浮気しないし。誰彼構わず優しいだけ。男も突っかかって来るの本気で勘弁して欲しいだけど。何が似合わないだ、ふざけるなと言いたいわ」
「まあ、そんな迷惑も受けない相手を思い出した。うん、わたしは好きだからきっと大丈夫」
「誰よ」
「フィラセントはディレイがどこに行ったか、しってる?」
「ユウリに聞いたらいい。それは極秘ってことになってるから」
「そのユウリがいないから困ってる」
「なんでそんな自信たっぷりなのよ?」
「魔導師は打算ない好意にものすごく、弱い。ただし、落としたあとがとてもめんどくさいし、心変わりを許さないから誰も積極的に選ばないだけ」
「そのあなたも魔導師よね?」
「だからわかり合える。リリーもがんばったらいけたと言っていたし、きっといける」
「……ダメな気がするわよ。たぶん、もう興味ないんじゃないかしら?」
「ん? ずっと優しかったよ?」
「そーね」
「じゃあ、他をあたってくる」
「あまり頑張らないでほしいものです」
「そうね。許さないのよね。次なんて、基本的にない。でもあれはなんでかしら?」
「半分人ではないからなどと言われてますが、どうなんでしょうね。欠けたものを求めるように、などとは言われますが」
「育ちによっても強弱変わる程度なんだから、やっぱり特性なんでしょうね」
「まあ、なんにせよ。ユウリを探さねばなりませんね」
「……そのうち帰ってくるとおもうのだけど」
「ほっといても良いですが、ローゼが矢面に立たされますよ?」
「わかりました。あとで、埋め合わせさせてやる」
某魔導協会にて
「お祖母さまっ! ようやく見つけましたよっ」
「おやおや、慌ててどうしたんだい?」
「お手紙、見たんですよね?」
「見たよ。ユウリからも探されていたし、急用だと思ってね。戻ってきたんだ」
「……そのわりに遊ばれてきたようですね」
「あちこちで、老人だと思ってからかってやろうという小僧が多くてね。ついね、遊んできてしまったよ」
「まあ、あちこちの町から感謝されてましたけどね。ちょっと損害与えすぎです。燃やしすぎです。というか火事になってないだけありがたいと思えとか暴言はいけないと思います」
「この老人を叱るためによんだのかい?」
「いえ、来訪者が見つかったので後ろ盾になっていただきたいのと魔導協会との仲介と国との折衝をお願いしたいのです」
「……本人を見て決めることにするよ」
「は? いい子でしたよ。魔導師の資質があるようなので、お祖母さまに見ていただいた方がいいと思いますけど」
「良くない知らせも受け取ったからね。ディレイにも会わないといけないから」
「そうですか。では、お任せしますが、ゆっくり遊んで行かないでくださいね? 魔導協会が色々うるさいんですよ」
「奴らの仕事は魔導師を働かせることだから、口うるさいだろうさ。ひとつ小言でもいってくるかい? かわいい孫娘の頼みなら叶えるのもやぶさかではないよ」
「やめてくださいね? その分の苦情もやってきますから。お年なんですからというのは嫌なのですが、十分に気をつけてください」
「わかったよ」
「あ、それから食料庫。封印して、忘れてたって聞いたんですけど、大丈夫なんですか?」
「……そ、それはどうかね……。なにか沸いていないといいね」
「いっそ、先送りにします?」
「それも別の所からなにか出てきそうで怖いものだね」
「お祖母さまも怖いものあるんですね……」
「焼き払って真っ黒にして、旦那様に怒られたね」
「ああ、だからあの家、虫除けが強固にしてあるんですね……」




