表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について(連載)  作者: あかね
異世界に来ました編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/263

推しの家の説明をされました

 とりあえず、昼食を食べることになりました。奥にダイニングキッチンがあるらしいです。

 最初にいた部屋はリビングとしてある部屋らしいです。入り口から通路と二階への階段があり、左右に部屋があるような構造となっていました。


 二階は全て客間らしく、あたしの部屋もそこにあります。クルス様の部屋は一階の外れだそうです。

 一階は色々部屋があるらしいですが、リビング、ダイニングキッチン以外は危険だから近寄らないようにと言われました。なにがあるんでしょうか。


 外廊下では繋がっていますが少し離れたところにお風呂があるそうです。ただ、毎日は使えないとは断られました。水は簡単に張れるのに薪で湧かさなければいけないそうで。

 水回りはそちらに集中してるようで、洗面台もトイレも同じ建物にあるという話でした。

 お風呂は改築予定のつもりが、色々あって頓挫してそのままの結果だそうで、そのうち何とかしたいとは言っていました。


 代わりにキッチン周りは直したばかりとは聞きました。ただ、十年くらい前を最近というのは、なんでしょうか。流れている年月が違うのか、世界の違いなのでしょうか。

 まあ、この家も築100年を越えているそうなので、十年くらいは最近かもしれません。


 そこそこ広いんですよね。この家。一人で住むというよりは家族用な感じがします。寂しくないんでしょうか。

 それこそ余計なお世話でしょうけど。


「あー、しまった」


 クルス様が小さく呟いたのが聞こえました。

 ついたダイニングの方は一人暮らしのずぼらな感じっていうんですかね。微妙に片付いて微妙に散らかっているような感じです。

 よく使う場所にモノはなく、使わない場所が色々ものが置いてあるようなといいますか。


 ダイニングテーブルとイスが5つ。食器棚を仕切りのようにして奥にキッチンが見えました。窓があるせいか明るいんですが、あのレースのカーテンいつ洗ったんでしょうね? 灰色な感じです。

 整えれば可愛い場所が作れそうな雰囲気はあります。

 台無しな謎物体が転がっていなければ、ですが。


「どこにでも転がってるんですね」


 謎の金属片とか。

 クルス様もちょっとばつが悪そうですね。いえ、別にお一人なら好きにされて良いと思いますよ。

 ただ、あたしはこれらの扱いに困るだけで。

 それを見るとどこかでぽんと音が鳴るんです。大体は一音、あるいは和音みたいな感じで。少し頭が痛くなってきています。

 おかげでちらとも見ないように気を付けるようになってしまいました。


「何年分なんですか?」


「先代から、かな……」


 素朴な疑問には衝撃の答えが返ってきました。

 魔導師って片付けしないんですかね? しなそうな気がしました。誰か雇ったりもしない気がします。弟子でもいれば雑用させそうですけど。

 独立したら反動でなにもしなくなりそうな予感がします。


「落ちているモノがないだけでも良いんですけど、触って良いものがわからないので教えていただけると嬉しいです」


「片付ける。どれも良くはない」


 座っててと言われるままに大人しくすわります。

 ……視界で動く推しを見るなと言うのがムリですよね。視線で追ってしまって、目があって慌てて逸らすみたいなことを数度。ため息をつかれました。


「そんなに気になる?」


「……あのぅ、今日の色々なことがあって、意識するなって方が無理では?」


 それに推しですし。

 いえ、鬱陶しいというのはわかっているつもりです。逆にやられたら嫌ですもの。いや、クルス様になら……いえ、全く落ち着けないですね。


 あたしは視線をそらしたんですけど。なんだか見られている感はします。なんか、こう、言い難い視線ですね……。

 上から下まで見られた、みたいな。


 気になってちらっと見れば、真っ赤になって顔を背けられました。……なにか反芻したのでしょうか。


「悪かった」


「いえ、不快だという話でもないので」


 だから困っているのですけど。

 複雑です。


 きまずい沈黙だけが残ったんですよね。いや、本当に困りましたね。距離感がつかめません。

 どなたか推しと適切な距離の取り方を教えてくれませんか?


 こう、血迷って一万賽銭につっこむくらいには、思い入れがありまして。この状況は混乱しているというか落ち着けるんですかね?

 うーん。いっそなにかをしてしまえば良いんですか?


「茶でも飲むか」


 落ち着きたい気持ちは一緒みたいですね。


「はい」


 視線が一切、交わらないままですけど。

 キッチンにお湯を沸かしに行きました。背中を見るのはレアかもですね。案外、肩幅広いですね。細身に見えますけど、一般の人よりは厚みがある感じで意外です。


 かたかたとお茶の用意の音が聞こえます。

 平和そのものです。

 しみじみと良かったなぁとかみしめます。


 しかしながら、推定エンディング後の世界であたしはなにをすればいいんでしょうか?

 身一つで異世界に放り込まれ、推しにご厄介になっているという俺得状態なんですけど。クルス様は、良い事あったんでしょうか?


 気まぐれに拾った、とも言い難い気がします。理由はある、けど、言うつもりはないってところでしょうか。


 目が黒いと問題でもあるとかですかね。情報がすくないわりに、聞く勇気もないんですよ。嫌われたり、嫌がられたりするのが怖いんです。


 原作知識っていうものも偏ってますからね。主に主人公の目線で進むので、王都周辺やら戦況ってのは覚えているんですが、終戦後では役に立つような感じではありませんし。


「どうぞ」


 ことりとマグカップに注がれたお茶がやってきました。香ばしい匂いが、紅茶とは違うと知らせてきます。珈琲に近い色でしょうか。

 ほのかにレモンのような爽やかな匂いもして、今まで飲んだことのない飲み物のようでした。


「ありがとうございます」


「一つ、約束して欲しいんだが」


「はい?」


「夜は部屋を出ない」


「は?」


「色々実験とかしていたりするから」


 なるほど。夜型でしたか。了承を伝えれば、さらになにかを言いかけて、やめたようです。

 なんでしょう?


 お茶はそこそこおいしくいただきました。ええ、推しが入れてくれたらなんでもおいしいじゃないですか。

 ……正直、好みではありませんでした。なにか別の飲み物を探すか、慣れるかしないとダメみたいですね。


 眉間にしわが寄っていたようで、笑われてミルクを出されましたし。いえ、その、すみません。


 そこからちょっと食べ物の話をしたりとかしたんですが、やっぱり、目線はお互いにさけるぎこちなさ。


 昼食を作るのをお手伝いしようかと申し出ましたが、即断られました。代わりに本を渡されて読んでいるようにと。


 ……子供向けの教科書みたいなものでした。

 クルス様、あたしがどこか別の所から来たの勘づいてますよね? 言いませんけど。


 その本はありがたく読ませてもらいました。

 近隣の国の成り立ちなどを軽く説明するところから始まり、通貨やどの程度で食事が取れるとか一ヶ月の家賃ってこのくらいという具体的なものでした。奥付が有志一同となっていたので、あまり出回っていない本なのかもしれません。

 宗教や政治形態についても言及されているのが、意外とも思えます。そこら辺、微妙じゃないですか。主観というより実態をリスト化したような淡々とした表記でした。


「そこまで読めるんだ?」


 ……こう、試された的な感じですかね。ちょっと、嫌なトラップじゃないですか。と、思ったんですが、あたしのご機嫌斜めな顔をみて驚いたようでした。

 ……あれ?


「兄弟弟子でもそこまで理解しない人が結構いるんだ。半分くらいで脱落していく」


「興味深いですよ」


「それは良かった」


 クルス様が柔らかい表情で、言うから心臓にぐさぐさなにか刺さった気がします。ああ、底なし沼みたいですね。

 リアルな推しはやっぱりダメですよ。

 画面の向こう側が良いです。


 それからのミッションというのは、推しの作ってくれた昼食食べたり、片付けをどちらがするかでちょっと揉めたりしました。結果、お皿を拭く係になったんですが、子供の手伝いを見守る的な目線が辛かったです。

 ご褒美ですけど、ものすっごく、胸が痛いんですけどっ!


 その原因が、きっちりスキンケアしていた手にあったとは当時は気がつきませんでした。冬場はひび割れが出来やすくて念入りにしていたので、しっとりつやつやだったんです。

 それこそなにも家事をしたことのないお嬢様みたいな手でした。


 実は色々出来るとわかってからはやらされましたけどね。そっちの方が落ち着きました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ