表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について(連載)  作者: あかね
日常編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/263

気がつかない方が……

 お片付け後、洗濯したい服などを持ってきてお風呂の小屋までやってきました。同じ場所に洗濯機もあるんです。二層式って感じですが、洗濯板とかじゃなくて本当に良かったです。


 先に来ていたクルス様に使い方を教えてもらったんですが、ボタンを押すだけでかってに動くようです。とても便利です。


「裏手にいるから」


 そう言って一人にしてくれました。まあ、下着類はさすがに洗濯機に放り込むのは不安ですし、手洗いしたかったですからね。側にいられると落ち着きはしません。

 まあ、こういう気遣いをしてくるのは、同居していた人には女性もそれなりにいたんだと思います。少しだけ聞いた話によれば、師匠が女性なこともあって兄弟弟子にはそれなりに女性もいたそうですし。


 なにも言わないで気がつく男性もいるとは思いますが、少数派のような気はします。あたしがいても兄弟はあまりぴんと来てなかったようですし。兄に彼女ができたあたりで、口うるさい妹をやったおかげで少しはましになったんですけどね。

 そんな兄の家に生まれた甥っ子を、見に来い、次の休みはいつだっ! みたいなことを言っているうちに半年ほど経過し、今は異世界です。


 ……うーん。日本ではあたしはどう言った扱いになってるんでしょうね?

 失踪になるでしょうか。惨状が惨状だけに、やばい失踪な感じに勘違いされそうです。明日朝片付けようと思った缶チューハイが何缶ありましたっけ?

 兄弟はさておいて、両親的に娘の失踪とはかなり重たい事件ではないでしょうか。


 うっかり死亡していたりした方がマシですが、どうなんでしょう。親不孝ですが、確認しようも連絡しようもありません。

 仕事が急がし過ぎて近年実家に帰ってませんので、家に帰りたい願望は薄めです。兄弟も兄に弟です。しかももう成人済みです。普通に日本にいても場合により数年あわない可能性すらあります。

 兄のところには甥っ子を見に行くのであって兄に会いに行くのではありませんし。結局、写真しか見てませんね。

 弟は就職祝いにはお高いバーに連れて行ったのですが。それもええと一年くらい前でしたか。完全武装のあたしと連れて行かれた先にぽかんと口を開けておりましたよ。詐欺などといわれましたが、女は化けるのです。

 あれはとても楽しかったですね。


 そんな色々もありましたが、基本的にしょっちゅう連絡取り合う仲ではありません。お互い忙しいですし。両親にすらあんた生きてたのとか言われますからね。活動時間がかぶらなくて連絡しないのを嫌味で返されたとショックでした。悪いと思ったのか実家から来る宅配便の中身がグレードアップしていたのですが……。


 これが永遠の別れなんでしょうか?

 ……それは大変取り乱しそうな気がするので、今は考えないことにします。帰れる帰れないに関わらず、今は生活できることが大事です。今のうちに色々覚えなければ。


 色々、片付けて、あとは洗濯機にお任せです。見られたくないものは部屋干ししたいので、カゴに入れて上にタオルを掛けておきます。

 終わったらすぐ干そうと思って表側を見てきましたが、物干しのようなものが見あたりません。

 もしや裏手にあるのかと行ってみたんです。


「はぅ」


 ……後悔しました。確かに裏手にいるとは聞いてました。

 夢に見たものが、現実にそこにあったら卒倒しそうになりますよね?

 煙草の匂いに気がつけばよかったんです。


 壁により掛かって、物憂げに考え込んでるような横顔。

 長い指に挟んだ煙草。

 あたしに気がついたのかこちらを見て微笑んで。


「どうした?」


 クルス様に怪訝そうな声で問われるくらいには挙動不審な気がします。

 思わず建物の影に隠れてしまいました。どきどきが治まりません。これで、年下ですか。実は弟よりも下なんですか。

 気が遠くなりそうです。


「なんでもないです」


 シャツのボタンは閉めてください。腕もまくっていたので暑かったんですよね。ただ、もう、色気駄々漏れなのでやめてください。言えませんけど。

 心構えなく見れば瀕死の重傷です。


「そうは見えないけど」


 笑ったような声にからかわれているような気分になります。

 気を取り直して、再び顔を出します。未だ直視出来ていないことでダメージの残りを感じるんです。

 あー、ダメですよ。あんな首筋のラインとか、腕もそれなりに筋肉ついてるわぁと思います。頼りがいあると思うんですけどね。いろんな意味で。


 なぜ、これで、恋人の一人もいないんでしょうね? まあ、本編中で言えば、総取りしたのは主人公なんですけどね。

 クルス様となんとなく仲よさげな人もいたのですが、そこはお約束のように主人公に惚れるわけですよ。

 ……主人公を刺したくなりましたね。おまえは女の敵だ。


 ……おっと。ブラックなあたしは仕舞っておきましょう。


 あ、でも、主人公のハーレム解散なら、彼女なら、いいんじゃないでしょうかね。


「用があったんじゃないのか?」


「洗濯機を回してますので終わったら干したいんですけど、どこに干すんですか?」


 どうにか用件を伝えます。

 考え込まれてしまいました。どうだったかなと呟きながら煙草を吹かしていますが、一々格好いいですね……。

 近づいたらやられそうな気がするので、今も微妙に距離を空けたままです。


 視線を逸らして裏手を観察します。

 乾燥させている薪が壁に沿って並べられていますが、そんなに多くはないですね。あまり薪割りはしていないようです。

 放ってある斧とかみると既に飽きたあとのような気もします。


「最近、乾燥しかかけてなかった。どこかに紐があった気がする」


 ……魔導師っぽい発言ですね。ちまちま干しているのは確かに想像出来ませんけど。


分解シリー


 そう言ってぽいと煙草を放ります。え、ポイ捨てするって危なくないですかね? と言う間もなく、一瞬で煙草が消えました。

 煙の匂いだけが残っています。


「えっと、なにしたんですか?」


「魔法。小さいのは範囲指定が曖昧でこうしないと少し皮とか持ってかれる」


「普通に捨てませんか?」


「灰皿忘れた」


 悪びれもなく言いますね。そこら辺に捨てられるよりは良いんでしょうけど。無駄に高等な技術を使っているような気がしますよ。

 あ、でも、原作のほうでも直前の場面で吸ってたはずの煙草が次の場面でないシーンとかありましたね。作画忘れかよと思っていましたが、ああして処理してたんでしょうか。


「表側だった気がする。どこだったかな」


 独り言のように呟いてこちらに歩いてきます。

 ……ええ、あれから距離を詰めることもなく話してたんですよ。あたしが近づくのも無理ですし、クルス様も煙草吸っているせいかこちらに来ることもなくて。


 すれ違いざまにぽすっと人の頭を撫でてかないでほしいんです。

 思わずに同じ場所を撫でてしまいますけど。距離感、おかしくないですか?


 お風呂の小屋よりも少し離れたところに棒が2本立っていました。一本の方に紐が巻き付けてあったので、ここで干していたようです。

 日当たりは良くもなく悪くもなく、風通しが良いようです。


「どのあたりがいい?」


 紐を片手に聞かれましたが、首をかしげてしまいました。


「干すときに手の届く範囲も違うだろう? しばらく使うんだからあわせてやるよ」


 ありがたいんですけど、すごく気を使われている感はありまして申しわけないといますか。こんな事、面倒とかそんな顔しそうな人のような気がしていたんですよね。

 違和感。とでもいいましょうか。


 このあたりと棒のあたりで示して紐を張ってもらいます。

 邪魔かなと少し離れてみていました。


 しかし、本当に現実なんですかね? まだ夢かもと疑う気持ちもあります。だって推しと同居ですよ。なんかこう、うぎゃーって感じです。


 クルス様には多大なるご迷惑をかけているんですが。

 嫌そうとかしぶしぶとか、そんな感じがしないのが困惑します。仕方ないなと言うような雰囲気に甘えまくってますけど。


「できた。じゃあ、またあとで」


「ありがとうございます」


 そうお礼を言えば、とても満足そうな態度なんですよね。機嫌が良いといいますか。

 その背中を見送って、ふと気がついたんです。


「あれ?」


 ものすごく、恐ろしいことに気がついたんですよっ!

 もしかして、ものすごく、好感度、高いのでは? と。


 嫌な相手にあれこれ世話焼かないですよね。そういうキャラじゃないです。

 主人公相手でも雑な対応してましたし、特別興味も持ってなさそうでした。


「うそぉ」


 頭抱えたくなりました。嫌われるのはもちろん嫌なんですが、好かれるのも困ると言うか。


 ばたばたとして落ち着きも冷静さもありませんでしたが、思い返してみれば、それなりに好意なりなんなりないとここまではしないのではないでしょうか。

 いえ、はっきりと認識してなかっただけで、好意は感じてましたね……。あとは、その、下心的な何かとかも。

 その種類まではわからないですけど。出来れば特定したくないです。


 一体どこで好感度を稼いだのかわかりません。

 本当にいっぱいいっぱいで。


 気がつかなかった方が幸せだった気がしますね……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ