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一粒の塩

作者: まねぎ

途中から先生の話のみになるので、鉤括弧がありません

ある教師が余命宣告をされた。不治の病と言われるその病気だった。未だ病状が出ていなかったが、医者の勧めにより、残りの時間を自分の意思で過ごす事にした。


そして最期の授業が今、始まろうとしていた。


教室にいる生徒達はなんとなくいつもより深刻な顔をしていた。少し俯き加減で、肩を揺らす生徒もいた。その教師は号令を促さず、授業を始めた。


「みなさん、僕のことを知っていますか?」


そう教師が生徒達に問いかける。皆声を出すことはほとんどなく、静かなまま頷いた。教師は目を細めて誰を見るわけでもない目をしながら頷いた。


「そんな暗い顔をしないでください。いつもの明るい笑顔を見せてください」


そんな前置きをして、チョークを手に取り、何かを黒板に書き始める。そこには


『一粒の塩』


と書かれた。


「さて、今日の授業はこれが題材です。いつも数学を勉強していましたが、今日はノートや教科書は要らないです。」


そういって教師は話を始めた。


みなさんはこれから先、今皆さんは高校生です。その先には大学、大学院、研究所、会社…など様々な行き先があります。勿論、ユーチューバーをしても良いかもしれない。しかし、どんな時でも勉強を怠っていては成長できません。もちろんそんな月並みな事を言っても意味がないのは分かっています。そして、先生として、あなた方に一番伝えたいことを考えた結果、それがこの題名の『一粒の塩』です。


勉強ができるとは何か、わかりますか?


知識を沢山持っている事でしょうか?


僕はそう思いません。本当に大事なことは、考える力です。それに付随するものが知識です。今日、この題名にしたのは、ある例え話がしたかったからです。


仮に、ビーカーやコップなどに水が入っていたとして、一粒の塩を入れて、味がするでしょうか。僕はしないと思います。それは勉強も同じです。一つの公式を言おうと、色々な例を出して、逆に公式の味を薄めているということです。勿論それを良いも悪いも言いません。薄めなくてはいけない時があるのはよく知っているから。でも、味を感じようとするあなた達にはべつの問題があります。それは、薄過ぎても分からないんです。だから、頭の中で知識の入った水溶液を沸騰させて、粒を取り出さなくてはいけないんです。つまり、ビーカーは頭の容量、水は例え、塩の結晶は知識の塊、それを沸騰させるのは自分たちの思考力で、燃えるガスはまさに情熱です。


いつか、大学の教授さんや、企業の偉い方々とお話しする場面があると思います。そんなとき、とても濃いお話を聞いて、とても自分の頭では理解できないもの、それはドロドロに溶かされた塩です。とてもその塩は熱く、到底飲めるものではありません。だからどうするか、水で溶かして飲めるようにするんです。


自分に合った濃さで、自分に合った温度でその知識の味を知り、知識の味覚を麻痺させ、知識依存症になってみてください。きっとその頃には周りの人に尊敬されたり、逆に妬まれたりします。それはいつの世の中も変わらず、まるで絶対値記号が付いたかのように同じぐらい羨ましがられ、同じぐらい妬まれます。様々な事がその時には起こるでしょう。その塩を、また誰かに飲ませてあげたら良いのではないのでしょうか。


そんなところで短いですが僕の話にさせて下さい。どうかみんな仲良く元気に過ごしてください。


生徒達は、この話に感動したのか、はたまた別れを惜しむのか、それぞれ泣いていた。


少々少ないですがお話はおしまいです。

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