マリー「どれでもいいっ! 早く! ほら! オーガンが船に!」
多くの困難を乗り越え、難攻不落の水運組合に辿りついたマリー。
こんなにも近くて遠い所にあった真実とは。
「ああ、マリーちゃんだったね、ちょうど良かった、少し話があるんだが……」
ついにその建物に飛び込んだ私。入ってすぐのカウンターには、昨日あの男と話していた役人さんが居た。
「私も話があるんです!」
私はそのカウンターに飛びつく。時間がどれだけあるか解らない。誰が来るにせよ、追手はいずれここまでやって来るだろう。
「教えて下さい! まず、マリー号、リトルマリー号の今の所有者は誰なんですか!?」
役人は首をかしげた。
「聞いてないのか? 君だよ。フォルコンさんが、その……ああ、まだお悔やみを言っていなかったね、すまん」
「そういうの要りませんから! じゃあ、私があの船を売り払う事も出来るんですね!?」
「うん、今やってるんだろ? そう聞いているけど……」
「……あの。あの船の水夫が、あの船を売ろうとしてるんですけど」
「だから、そう聞いているけど」
話が噛み合わない。
「えっとですね、あの船を急いで誰かに売りつけようと、あの船の水夫がですね、街のあちこちでこそこそと……」
「そりゃ、買い手を捜しているんだろう。それとも君に買い手のあてがあるのかい?」
み。
みみみ……
耳まで真っ赤になって行く私……
「あ、あの……念の為お伺いさせて下さい……船の売却代金をですね、水夫がそのまま着服してしまうとか、そういう事例は……」
「ハハハハ、若いのに悪い事考えるもんじゃない。船の所有権は厳重に管理されてるんだよ、少なくともこの王国内ではね。水夫が船の代金を手に入れる? 無理無理。帆船は現金で売り買い出来ないよ。船の代金というのは然るべき役場の許可を得てから、有価証券で受け取るんだ。代金を受け取れるのは正統な所有者だけさ」
なんという事か。
魂が腐っていたのは私の方じゃないか……あの不精ひげは、私の代わりに船の買い手を探していただけなのか……
私はそれをこんな風に疑って……
でも! それならそうと言えばいいじゃない!!
そんな事すら説明せず、コソコソやってるから私もこんな誤解をする羽目になったのよ!
聞かなきゃいけない事はまだあった。
「あの船は、出港出来ないと聞きましたけど」
「そう。これも新しい王国令のせいだね……正規の船長がいない帆船は出港すら出来ないんだ。先日まではフォルコンさんが行方不明のまま船長扱いになっていたんだが」
「じゃあ、水夫の誰かが代わりの船長になればいいのに」
「そんな風に簡単に船が水夫に乗っ取られないようにする為の王国令さ」
「どうすれば船長になれるんですか?」
「船の所有者が承認すればいいんだ」
私はへたり込みそうになる。簡単過ぎる……
「じゃあ私があの人達の誰かを船長として承認していれば、何の問題も無かったんですね」
「私もそう勧めたけどね……水夫の総意だそうだ。船を売り払って代金を君に渡したいと。最初は君の様子を見ていたらしいが、君はあの船の事が好きじゃなさそうだからと」
心臓を素手で掴まれたかのような衝撃が走る。
「もう一つだけ! 教えて下さい!」
「な、なんだい」
「本当の事を教えて下さい! 父は! フォルコンは、オーガンさんとは仲が良かったんですか!?」
「おいおい、立場上そんな質問には答えられないよ」
私はカウンターから身を乗り出し、役人さんの肩を捕まえて揺さぶっていた。
「御願い!! 教えて!!」
「わ、わかった、解ったよ……私が言ったって言うなよ……みんな知ってるけどね。仲がいいどころか目の上のタンコブだったとも、離島航路の独占を企むオーガンから見たらね、安い船賃でヒョイヒョイ請け負うフォルコンさんは……」





