ミゲル「かのマリー船長の親友にして!(キリッ)貴女の、ミゲルです」ホステス「キャー渋い」
第一作はこれにて最終話となります!
御付合いいただきまして誠に有難うございます!
海軍の兵士や士官が辺りに大勢居て、船のそこらじゅうに索具を張っている。どうやらリトルマリーは、どこかに連れて行かれるらしい。
「どういう事ですか!」
私はリトルマリーが拘束されている波止場へと駆け出す。
船の荷物は海軍の作業員によって手際よく運び出されていた。船長室の私の私物、バニースーツが入っている箱も……
私の水夫達も。皆船から降ろされていた。
ウラド、アレク、ロイ爺、不精ひげ……皆ぼんやりとその様を見ていた……
「何で黙って見てるのよ! ウラド! 太っちょ! 私達の船よ、何で!?」
「いや……船長、海軍で何があったの?」
「あったのじゃないわよ太っちょ、何で……」
アレクが、桟橋の先を指差した。
甲板の長さは20mを超えるくらいだろうか……勿論リトルマリーよりは大きいがそこまで大きな船でもない。
マストは1本だけ。この大きさの船にしては少ないかもしれない。
決して大きくはないが船尾楼がついている。速さを重視した船なのか、上甲板の凹凸はなるべく減らしてある感じだ。
塗装も真新しく船体もスマートで美しい。よく解らないけど、リトルマリーと違い、高価で丈夫な材料をふんだんに使った船のように見える。
これが、何よ?
「海軍がどうしちゃったのか聞きたいのはこっちだぞ……気持ち悪いだろう? リトルマリーは海軍がドックに入れて整備するんだと。で、代わりにそのスループ艦を使っていいと」
不精ひげが珍しく困惑顔で腕組みをしている。
「おお! 貴女はマリー船長!」
後ろから誰かが呼ぶ。振り向くと……誰だっけ? 口髭を丁寧に整えた海軍艦長、赤毛の……
「ここでお会い出来るとは! 貴女の! ミゲル艦長ですぞ! ワハハ……ブルマリンで一暴れなさったそうで、さすがあのフォルコン船長の後継者ですな!」
ミゲルおじさん……はそう言って私の両手を取りブンブンと上下に振り回す。ああ、この握手をする人。思い出した、バトラ港に居たボルゾイ号のミゲル艦長だ。
あと……ブルマリンで暴れたのは私じゃないんです、謎の貴公子です、
「もう御覧いただきましたか! アイビス海軍の新造スループ艦、フォルコン号ですぞ! 聞いて下され、命名は私の案が採用されました。ハハハ! ま、同じ案を出した者が二十人は居たそうですが」
は?
「武装はまだ済んでいませんでしたが、貴女が乗るのならちょうどいい! フォルコン号船長、マリー・パスファインダー! 何と素晴らしい響きでしょう。ハハ」
「ちょっと待って下さい!」
「ええ、勿論。何なりとお申し付け下さい」
「どういう事なんですか!? 何でリトルマリーを取られるんですか? 何でフォルコンを押し付けられるんですか?」
「船長、失礼を言ったらいかん、こんな立派な船……」
ミゲルおじさんに矢継ぎ早に質問する私を、ロイ爺が一言たしなめる……そうだよ、確かに立派な船……だけど! リトルマリーは私の、父の船だ。
「リトルマリーはどうなるんですか!?」
ミゲルおじさんは懐から樫か何かのパイプを取り出し、口にくわえた。火はついていないようだけど……何なの、その間は!
「では……御存知無いのですな……? リトルマリー号はかつてタルカシュコーン事件に関わり、先日はブルマリン事件に関わった、曰く付きの船……その事に……我等が敬愛すべき国王陛下が、深く興味を持たれたのです」
……
「遠からず陛下はリトルマリー号に御上船あそばされるでしょう。それ故、この船に間違いがあっては困ります。乾燥ドックで徹底的に整備した上、塗装や補修も施さないと。破れた帆や継ぎ接ぎマストなどもってのほか」
……
「御安心下さい。陛下の御気が済めばリトルマリー号は帰って来るでしょう……おそらく……」
「え」「ええ」「えええ」「ええええ」「えええええ」「ええええええーっ!?」
国王陛下の気まぐれに始まり、国王陛下の気まぐれに終わるのか?
さっき中将閣下が言いそびれていたのはこの事か。
海軍が介入した、本当の理由。
国王陛下が、リトルマリー号に乗ってみたいと言い出したから……
◇◇◇
私達は新しい船に荷物を運び込む。うわー。新しい木の臭いが凄い……
これは借り物なのか? それとも貰えるのか? それはミゲルおじさんも知らないらしい。
そもそもこんな立派な船、6人で動かせるのか? マストは一本だけど……
はぁ……
こんな船……
嬉しくない訳がないッ……! 船長室、いや艦長室も広い! なんか速そう! かっこいい! あっちもこっちもぴっかぴか!
しかも……名前はフォルコン号? そんな事言われたら……まるで私の船みたいじゃないか……!
☆☆☆
ロイ爺「信じられん……本当に出航許可証が出たぞい……スループ艦フォルコン号、マリー・パスファインダーを船長とし出航を許可する、と……」
アレク「すごいよ船長! 海軍からこんないい船巻き上げて来るなんて!」
不精ひげ「船員室も広いし士官用の個室まであるぞ。会食室も普通に全員入れる」
アイリ「ちょっと見て、調理室があるわよこの船! 私ここ使っていいよね?」
ウラド「舵が軽い。ギアが贅沢に入っているのだな。物足りないぐらいだ」
マリー「参ったか! さあ皆出航よ! そうだ、まずレッドポーチに行こう! オーガンにこの船を見せつけてやるのよ!」
不精ひげ「いいなそれ、それならオレンジをたっぷり仕入れて南大陸へ行くのはどうだ! 船長が風を操れば三日で着くぞ、この船なら」
マリー「よーしやっちゃえ! その調子なら金貨1万枚の借金なんかすぐ返せるわよね!」
アレク「じゃあ東に100kmだね、肩慣らしにちょうどいいや、何時間で着くかな」
ロイ爺「風も5時方向、順風じゃな……ホッホー! なんと加速の鋭い船じゃ!」
ウラド「この舵なら……何なら船長が持ってみるか? 出来るんじゃないのか」
アイリ「船長に出来るなら私にも出来るかな!? いっぺん持って見たかったの」
不精ひげ「ちょっと待て、どさくさに紛れて船長、大変な事言わなかったか?」
「船長」「船長……」「船長?」「船長!」
「マリー船長!!」
もうバルシャ船でもバニーガールでもない!
だからこのタイトルはおしまいっ! ※
次章「マリー・パスファインダー船長の七変化」に続きます。
マリーの冒険はまだまだ! ぜんぜん! 終わりません! 続きます!
どうか続きも御覧下さい! 下の方の「マリー・パスファインダー冒険と航海」のリンクから飛べます!
※
「何でもありの大航海時代ファンタジーだからってバルシャ船の船長がバニーガールはないと思う」
公開当初の旧題は本当に↑これでした……







