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少女マリーと父の形見の帆船  作者: 堂道形人
真の船長への道

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衛兵「てて、抵抗するなよ」トライダー「何もしてないだろう…」

見事アイリを連れ戻したマリー船長。

これが第三章最終話になります。

 あの時。私はまずウラドを追い掛け、行き先を偽って飛び出した事を謝罪した。

 ただ、その後はゴリ押しさせてもらった。正直ウラドを選んだのはアレクより押しに弱そうと思ったからだ。

 それでもウラドはかなり抵抗した。私は「船長命令」を20回くらい言ってどうにか芝居に乗る事を承諾してもらった。


 それからトライダーとも合流してまず三人でアイリが潜んでいそうな所を探した。

 トライダーが波止場の周りの人が隠れていそうな場所を全部マークしてくれてた事もあり、無事アイリを捕獲……と言いたい所だけど、これがまた大変だった。

 アイリがなかなか芝居に気付いてくれず、何度もマリーと言い掛けたのだ。その度にマルガリータとかマリモとかマロングラッセとか意味の無い言葉を被せる羽目になった。


 ともかくアイリを納得させて、色々危険がある事も言い含めた。

 近くに私刑団が集まっている事もトライダーが先に把握していた。アイリを待機させる場所、ヴァレリアンを連れ込むルート、私刑団が来た時の脱出経路、全てトライダーが手配してくれた。

 何であれだけの能力があって、お針子マリーごとき捕まえられなかったんだろう。


 首尾よくアイリを連れ戻し、リトルマリーに戻る頃には、ヴァレリアンもどうにか歩ける程度には回復していた。

 ヴァレリアンはとにかく憔悴(しょうすい)していたが……まあ彼は憔悴(しょうすい)するだけの事はしたと思う。たっぷり反省して下さい。

 アイリさんは……ていうか大人は何考えてるのか本当に解らん。アイリさんもカリーヌ夫人もこの男の何が良かったんですかねぇ。私はまだまだ一人でいいや。


 リトルマリーに戻ると、フレデリクの友人のウラジミール君ことウラドは、滅多に使わないリトルマリーのマリンベルをカンカン鳴らした。


 あ、やっぱりそうなります? そうなりますよね? ああ……この音を聞いて、皆が帰って来るのか……うん……


 私が戻った時、リトルマリーには誰も居なかった。いつも留守番のウラドまで出掛けてたんだもんね。無用心だなあ。誰のせいなんだか。ハハハッ。


 アイリとヴァレリアンは会食室でゆっくりと話していた。近づくだけで赤面ものの愛の言葉が聞こえて来るので、私は近づけなかった。

 それから、アレクが、ロイ爺が、最後に不精ひげが帰って来た。それぞれアイザックとかロビンとかニールとか名乗っていただく事にした。

 三人とも気持ち悪い程、何も聞かず、あっさりと承服してくれた。


 ヴァレリアンにお帰りいただかないといけないが、このまま帰すのは心許ない。ロビン君は年甲斐もなく走り回って疲れ果てていたようなので、休んでもらう事にして、アイザック君とニール君に送らせる事にした。


「フレデリク殿……本当に申し訳ない。君は若いのに、何から何まで私の上を行く男だ……妻と話してくれて有難う……アイリをどうか御願いします……」


 ニール君が先に行って、こんな遅い時間にどうにかして馬車と御者を借り出して来てくれた。それから、アイザック君とニール君に連れられて、ヴァレリアンは去って行った。何度も、何度も振り返りながら。

 アイリは、最後にもう一度何か言いに行きたかったようだったが、さすがに私が止めた。きりがないですよお姉さん。



 暫くして、ヴァレリアンを街で待つ馬車に乗せたア(・)レ(・)ク(・)と不(・)精(・)ひ(・)げ(・)が帰って来た。

 さようなら謎の貴公子フレデリク君。

 さて、と……帽子とマスクをとって。



 私は、なるべく体を小さくして、腰を一杯に曲げて、額を地面に擦り付ける勢いで、土下座をした。今日は言うべき言葉を思いつかないので三秒数えない。

 隣に誰か来た。アイリだった。アイリも私と並んで土下座をしたようだ。


「アイリさんはやめて下さい、私が勝手に追い掛けただけなので」

「結果的にこの船の船長さんを危険に晒したので、やらせて下さい」

「もうマリーでいいの?」


 土下座で並んだアイリさんが、目の前のアレクが、小声で呟(つぶや)く


「はい、マリーです、本当に申し訳ありませんでした」


「全くだ。俺のワインはどこだよ」

「僕の揚げパンも」

「港湾使用料が勿体無い、さあ、出そうじゃないか」

「ロイ、休んでいなくていいのか?」


 水夫達は船内の持ち場へと去って行く……


「あの! 皆さん、本当に申し訳ありませんでした!」

「船長、見張り御願いしていい? ここ夜でも結構ボート出てるから」


 私は立ち上がる。


「ちょっと待ってよ!」


 水夫達が本当に、やっていた事を止めて一斉に私を見た。

 アイリはまだ土下座をしていた。


「とりあえず、レーヤさんにそれを止めてもらってはどうじゃ?」

「リーヤです」


 私はとりあえず自分が言いたい事から先に言う事にした。


「みんなねえ! 何か言う事があるんじゃないの!? 船の上では! 勝手な事する奴が居ると皆に迷惑がかかるでしょう陸上の何倍も! それで船が沈む事だってあるんですよ、だめでしょう!? 勝手な事する奴を許しちゃ!」


 不精ひげが頭を下げた。


「面目ない」


「怒るべき時はちゃんと怒りなさい! あんた達、私が……私がどれだけ迷惑掛けたと思ってるの!?」


 私は……指まで突きつけて不精ひげにそう言ってから、


「本当に本当に申し訳ありませんでしたあああ!!」


 今度こそ、大きな声で爽やかに言って、三秒間、深々と土下座した。


「迷惑というがのう……こんなのフォルコンの迷惑の足元にも及ばんぞ」

「父のようになりたいのなら、今後も研鑽(けんさん)を続ける事だ」


 ロイ爺が、ウラドがそう言って持ち場に戻って行く。


「じゃ見張り行って船長」

「リーヤさんそろそろそこどいてくれないかな、俺の手拭いが下に……」


 アレクは事も無げにそう言った。不精ひげなどは(・)な(・)から相手にしてくれていない。



   ◇◇◇



 私が見張り台に座っていると、リーヤ……いいよもうアイリで、アイリも登って来た。


「アイリさん、スカートでこんな所に登るのはちょっと……」

「いいわよ減るもんじゃなし」


 ブルマリンの街も、パルキアに負けず劣らず夜が遅いようで、街の明かりが見事な夜景を作っていた。


「……その服も船酔い知らずだったんですね、やっぱり」

「あーあ……ねえ船長、その服は私にちょうだい」

「絶対に絶対に絶対に私のです! 私が作ったんだから私の!」

「魔法掛けたの私だもん……」

「知りません! これは私の! キャプテンマリーの服!」


 そう。水夫達に大笑いされたキャプテンマリーの服。長いブーツに半ズボン(オー・ド・ショース)、紺のジュストコール、スカーフに帽子……


 もう船酔いなんてしない! バニーガールにならなくても!

 これが本物の! 真の船長! キャプテンマリーなのだ!

 私は今! 真の船長になったのだ!


 ボートで私刑団から逃げる時。戦おうとした私をアイリは最初止めたが、私刑団の男が迫るに到り、覚悟を決めて……バニーガールと同じ魔法を、船酔い知らずの魔法をキャプテンマリーの服にかけてくれたのだ。

 あの瞬間、私はボートの上でも平らな地面と同じように動けるようになった。


 そうなると私刑団の大男達も取るに足らない。ボートに飛び移りながら戦うなんて本職の水夫でもなかなか簡単じゃない事で、増して鎧を着てでかい剣まで持って……あしらうのは簡単だった。

 トライダー驚いてたな。私の剣の技に? 使い手だって。ふふ、ふ……


「あははは……」


 私は笑っていたが……ふと見ると。アイリはまた塞ぎ込んでいた。


「本当に色々ごめんね」

「勘弁してよ、あいつらだって結局私に何も言わないのに」


 私は下を指差して言った。


「それから」


 アイリはそれだけ言うと、いきなり抱きついて来た。

 ていうか、痛い、痛い、ちょっと痛いですお姉さん……


「怖かった!」


 ……


「本当に本当に、怖くて怖くて怖ぐて、寂じくて寂しぐで……」


 アイリの声が濁ってゆく。嗚咽(おえつ)が激しくなり、私の耳たぶあたりにまで謎の液体が流れて来る。


「あ、あのう」


「何で?」


 アイリが私を放した……でもまだ両肩を持ってて、私に顔を近づけたままなんだけど……めちゃめちゃ泣いてる上に口をへの字に必死に閉じようとしてて……

 やばい、吹き出しそうだ……お姉さん勘弁して下さいッ……


「どう゛じで助げてくれだの? あだじ密航じゃよ? づいごない゛だ、出会っだばがりのひどよ?」


「そ、それは……」


 私は吹き出してしまわないよう、目を反らす。


「アイリさんって……助けての一言が言えないタイプの人でしょ……」


「……だんで私だんがの為に髪゛まで切っでるのばがあ゛ぁあ゛あぁ゛あ!!」


 アイリさんがまた抱きついて来た。もう……馬鹿はどっちですかお姉さん……

 よしよし……


「な゛んで女の子゛なのよ゛お゛ぉ、男゛だっだらぜっだい惚れでだのに゛……」


 女で良かった……ていうかお姉さん絶対惚れ易過ぎ!!

 ヴァレリアンさん、いい歳して頼りないばっかりで、どこにアイリさんが夢中になる要素があったのか……


「お望みなら下に目ぼしいのが四人おりますけど」

「ひっぐ……船乗りは……もう懲り懲りよ……わ゛たし……10年前にね」


 ……


「名前もよく知゛らない船乗りの男に……ぞれはもうごっ酷く……捨てられたのよ……あいつが教えてくれたのは、船乗りはあらゆる男の中で最低っていう事と……土下座の仕方だけ……爽やかにはっきり発音しながら頭を下げ心の中で三つ数えろって……」


 私は密かに、心の中で叫んだ。

 ぎゃああああああぁあああぁぁぁあぁああ!?

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シリーズ第二作
マリー・パスファインダー船長の七変化

シリーズ全体の目次ページ
⚓マリー・パスファインダーの冒険と航海

ご来場誠にありがとうございます。
この作品は完結作品となっておりますが、シリーズ作品は現在も連載が続いております。
宜しければ是非、続きも御覧下さい。
そして、ご感想を! ご感想をいただけますと大変励みになります!
短いものでも途中まででも結構です、ご感想をいただければ幸いです!

何卒宜しく御願い致します!



【アニメPV】『じゃがいも警察のコロンブス交換ラップ』
エンディングテーマ
⚓マリー・パスファインダーの冒険と航海EDテーマ
― 新着の感想 ―
アイリさん良かった!!! そしてバニーガール回避できてよかった!!! 実際、三半規管?船酔いって鍛えられるのかな??
え、まさかのオヤジ案件?w
なんというか、親の因果が子に報い?w
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