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少女マリーと父の形見の帆船  作者: 堂道形人
真の船長への道

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33/44

ウラド(皆も騒いでないし問題無いのか)アレク(ウラドが平然としてるし大丈夫なのかな)

新キャラクター! 仮面の貴公子フレデリク登場!?

 トライダーにはああ言ったけど、私は別にアイリの背後の事情を知らないし、知るよしもない。

 あのお姉さんの事だし、もしかしたら呑気に可愛いお店でお買い物でもしてるかもしれない。

 見つけたら……まず謝る。私のせいで気をつかわせちゃったし。それから、戻って来るように説得する。それでだめだったら、ちゃんとお別れを言って帰る。


 それだけだ。


 一応、午後7時のトライダーにも会ってはみるつもりだ。その後は……さすがに奴に関してはそれ以上の面倒は見れない。

 アイリの方も見つからないなら見つからないで仕方ない。ロングストーン行きの荷物も責任持って届けなくてはならないし、夜には出港かな……



 私は華やかな商店が軒を連ねる通りに出る。

 アイリの船内での行動を思い出してみよう。裁縫や料理が好きだったな。

 皆の服を私と互角の腕前で直していた……いや……裁縫もアイリの方が上だったな。


 私はアイリが興味を持ちそうな店を探す。


 材料店はどうか。お針子の血がうずくなあ。色鮮やかな絹の布、繊細な刺繍。

 金銀のボタン、華やかなリボン……ああ、一度思う存分お金を掛けた自分用ドレスを作ってみたい……着て行く所などないけど。

 お茶も好きそうだったな。通りには様々な茶葉を売る店もある。船に他にお茶好きは居ないし、私もたまにしか飲まないけど……立派な船長ならお茶くらい始めてみようか。

 そして仕立て屋さん! この街の仕立て屋さんは凄い。私が出入りしているような店と全然違う。私なんか入る事も出来ないだろうな……今の姿でも、誰かの紹介が無いと入れなさそう。アイリなら入れるのかな?


 港の方にも降りてみる。当たり前だけどここにはリトルマリー号の他にもたくさんの船が居る。アイリはとっくに南大陸行きの船に乗っているのかもしれない。


 ……


 この捜索って自分を納得させる為にやっているのかな……髪を切り落とした事も、けじめの一つでしかないのか。どうなんだ自分。

 結局の所、まぐれ当たり狙いの私の捜索活動は何ら成果を上げなかった。時間だけが過ぎて行く。



 港の公園で一休みだ。いい天気だなあ。

 ああ、悪のカジノ船が港を出て行く。ああいう船が色とりどりのバニーガールを乗せているのだろうか。どこへ行くでもなく、その辺りを一周して夜には戻るのだろう。

 私は懐から銀製の煙管を取り出し、無意味に振り回す。煙草は持ってないし吸わないので、ただの小道具だ。


「フレデリク!」


 後ろから誰かが呼ぶ。今その名前で私を呼ぶ奴は一人しか居ないので、


「ヨハン、君か」


 私は振り向きもせずに言い当ててやる。

 トライダーは私に並びかけると、私が眺めていたカジノ船を睨み付ける。


「君の言う通りだった! あれはブルーローズ号、ブルマリン……侯爵三男、ヴァレリアンの持ち物だ。そうだろう!?」


 は?


「彼は表向き裕福な出資者のように振る舞い、白金魔法商会の経営にも関与していた。実際には遊びが過ぎて借金塗れ、挙句に父君から勘当を言い渡された」


 はい?


「奴は表向きアイリ嬢に関わっていないように装っているが……白金魔法商会の前会長のトリスタン氏が、何度も彼女をヴァレリアンに引き合わせていた……密かにだ」


 そこまで話して、トライダーは私が何か言うのを待った。

 えーと……困った。うーん、適当な質問でもして誤魔化ごまかすか……

 密かにか、密かに。じゃあ。


「ヴァレリアンの奥方……何と言ったかな」

「カリーヌ夫人か?」

「そう、カリーヌ夫人……結論を出すのはまだ早いが……」


 だめだ……私何にも解んないってば、解ってトライダー。

 よし、褒めちゃえ。


「なにせ……この短い時間でよくそこまで調べあげたね、素晴らしいよヨハン」


 うん? でも……楽しい。

 この「謎の貴公子」ごっこ……超楽しい……不謹慎ふきんしんだけど……


「よしてくれ、君のヒント通りに動いただけだ……君の知らない情報が一つでもあっただろうか」


 むしろ一個も知りません。今聞いたけどそれでも知らないし……ブルマリン侯爵? そんなの居たっけ? ここ侯爵領? 一つもわかんない。


「それと……今あの船にアイリ嬢は乗っていない。それは請け負う」

「ヨハン! それは僕が今日聞いた中で一番の朗報だよ」

「そうなのか? 戯れに言ったつもりなのだが……」


 困り果てた私が適当な合いの手を打ったら、トライダーの顔がパッと輝いた。私以外の女ならコロッと落ちそうな笑顔だな、全く。


「僕の方は……あまりはかどらなかったよ。そうだな……」


 トライダーは凄く頑張ってくれたみたいだけど、私は結局ウインドウショッピングをしただけのような気がする。どうしよう。もう渡す情報なんか無い。


「彼女は一流の御針子でもある。彼女はある船でオーク族の水夫の服のボタンが取れかかっているのを見た。慎み深いオーク族の男は何度も辞退したが、彼女は食い下がり、そのボタンをつけなおしてしまった」

「……」

「ある時彼女はパエリアを作った。下人用の小さなかまどで、下人達に振舞うために。料理が好きなんだな。味も素晴らしく下人達は争って食べた。彼女はただ微笑んでいた」

「……」

「下らないだろ? 僕が見つけたのはそんなものだ。それから……彼女はとても()(れい)な土下座をするそうだ。パルキアでも怒り狂う債権者達にそうしたのだろうか」


「フレデリク」


 トライダーがつぶやいた。ちょっとふざけ過ぎたかな。まあまあ怒らないで。


「君のひとみはどうして、そんなにも次々と物事の本質を見抜いて行けるんだ……僕の目に見えるのは物事の上辺ばかりなのに」


 いやいや! そんな事は全然無いって! 私の今の話の何が本質ですか!


「僕は危うく国王陛下の名をけがす所だった。凡庸ぼんような僕にも君がくれたヒントのおかげで事件の輪郭りんかくが見えて来たよ。今から言うから、違う所があれば教えて欲しい」

「やってくれ」

「ヴァレリアンとトリスタン。どちらも身の程を弁えぬ借金を作った愚か者だ。だがトリスタンの手元にはアイリ嬢があった。アイリ嬢は大変な美人で才能も豊かだが、君の情報によればかなりの苦労人らしい。だから人に優しい」

「……」

「悪党共がどちらからそれを思いついたのかは知らない。だが奴らはアイリ嬢に全てを押し付け、借金を清算する方法を思いついた。人のいいアイリ嬢は、悪党共の罠に落ちてしまった。トリスタン氏は現在行方不明。逃げたか仲違いで始末されたかは今の所解らない」

「……」

「ヴァレリアンは……大変な色男で様々な浮き名を流していたが、グラナダ侯爵家からカリーヌ夫人を娶ってからは、誠実な夫として知られていた……表向きはな」

「ブルマリン……侯爵……」

「勿論そうさ、ブルマリン家は男爵だ、だが三男のヴァレリアンが侯爵の息女を娶ってからは侯爵三男と揶揄やゆされている……そのブルマリン家当主の男爵がそんな三男を勘当するというのは余程の事だ」


 すみませんもう本当に何も解りません。男爵だけど侯爵??勘当?

 貴方の話が全然頭に入って来ません……ヴァレリアンは色男? 誠実な夫?


「ヨハン。君は本当に素晴らしい」

「よしてくれ……本題はここからなんだろう?」


 ええっ!? そうなんですか??


「君は僕をブルマリンに遣わした人間に言及したね……何故僕はこんな簡単な事にも気付かなかったのだ。君のヒントが無ければ今も解らなかったろう。何故僕は手配書がついた翌日にブルマリンに居るのか。早過ぎるじゃないか。地元司法局も何も知らないのに。僕を派遣した奴は手配書が出回る前から今回の事件の舞台と背景を熟知していた! 僕は風紀兵団の活動資金欲しさのあまり、誰か邪な人間の走狗と成り果てる所だった……国王陛下の名を穢した上でだ!」

「……」

「……問題はどこまで深いのだろうか」


 トライダーが何言ってるのか全然わかんない。わかんないけど……

 楽しい……なにこれ!! 謎の貴公子ごっこ超楽しい!!

 もしかしてトライダーも解ってて言ってない? 謎の貴公子ごっこしてない?

 いやそんなまさか……だけど何でこんな!


「頼む、教えてくれフレデリク。この事件は……ヴァレリアンとトリスタンによる単純な横領事件ではなく……究極的にはカリーヌ夫人を、そしてグラナダ侯爵家をおとしめる為の陰謀なのか?」

「……何故、そう思う?」

「アイリ嬢に非がない場合、巡り巡ってそうなるのだろう? フレデリク。頼む。僕を導いてくれ。情けないが僕には運命を自分の手で選ぶ力が無い……君が居なければ、今も……誰かの手駒として動いていただろう!」

「それでは君は僕の手駒になってしまうよ。そんなのはお断りだ、ヨハン。僕らは自分が正しいと思う事をすべきなんだ。それが一つの道に繋がっていたならば、僕等は親友となり得る。そうだな……僕はカリーヌ夫人を当たろう。君はどうする?」


 うそです。カリーヌ夫人? 誰だっけ?


「フレデリク……僕は……いや……解った。僕はアイリ嬢本人の痕跡を探そうか……しかし……彼女がこの街に最後に来たのは、いつだろうか……」


 私がそれっぽく明かせる情報、まだあったよ! どうしよう……今のトライダーになら明かして大丈夫かな?


「ヨハン、今日だ。アイリ嬢は今日、港で目撃されている。入ったのが陸路か海路かは解らないが、間違いなく今日の午前中に港で目撃されている」

「フレデリク! 何故それを……」

「早く言わなかったか? 君がアイリを捕まえて終わりが良かったかい?」

「……その通りだ。君から先にそれを聞いていたら、僕は無意味にそうしていただろう……すまない。アイリ嬢が今潜んでいるとしたら、どこだろうか」


 それは私も考えていた。それでさっきまで商店街に居たけどハズレだったし。

 ただ、ここまでトライダーから情報を貰った後なら、私にも解るかも。


「彼女はヴァレリアンに接触したがってるのだろうな。ヴァレリアンの方は会いたくないのかもしれない」

「アイリ嬢は……ヴァレリアンに会いたがっていると!?」

「ああ」

「いくらなんでも……金貨7万枚の借金を押し付けられ、債権者に土下座をさせられ、逃げ出して手配され……トリスタンを消したのもヴァレリアンかもしれないのに、それでもヴァレリアンに会って……どうするのだ? 刺し違えるとでも……?」

「女ははかりで計れないよ、ヨハン。僕にも解らない。さあ時間が惜しいな、行くとしようじゃないか」

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シリーズ第二作
マリー・パスファインダー船長の七変化

シリーズ全体の目次ページ
⚓マリー・パスファインダーの冒険と航海

ご来場誠にありがとうございます。
この作品は完結作品となっておりますが、シリーズ作品は現在も連載が続いております。
宜しければ是非、続きも御覧下さい。
そして、ご感想を! ご感想をいただけますと大変励みになります!
短いものでも途中まででも結構です、ご感想をいただければ幸いです!

何卒宜しく御願い致します!



【アニメPV】『じゃがいも警察のコロンブス交換ラップ』
エンディングテーマ
⚓マリー・パスファインダーの冒険と航海EDテーマ
― 新着の感想 ―
適当だったのにwww 勝手に解釈されて尊敬されてしまった! でも出会えてよかったねお互いに⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝⋆*強運! アイリさんを探すぞーっっ!
めっちゃ有能そうなムーブ草 おもろいなぁw
適当に言った言葉を都合よく解釈してくれて、話を進めてくれる有能な存在。例えば、アインズに従うデミウルゴスみたいな? これでは、ますます本当の地は出せませんねえ。 万事解決、と行けるでしょうか。
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