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森の娘と最後の騎士  作者: OWL
第二章 森の娘
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第6話 辺境領主の息子と馬上槍試合②

新任領主の紹介が終わった後、武芸大会の本番である馬上槍試合が行われる。

帝都ならさらに戦車を使った勝負や幻獣騎士達の勝負も行われるという、一度見てみたいものだ。

本来の理由を隠したまま元遍歴の騎士アルミニウスと筆頭騎士メッセールの試合が予定されており、我々の本番はそこになる。


出場する騎士達は中央に張られた綱の左右に分かれ槍を構えて交錯しその度にお互い位置を入れ替える。固定盾で防ぐ、躱す、兜を弾く、落馬させる、心臓部に当てる、槍の破壊具合などで採点が分かれる。3本先に取った方が勝ちだ。

頭を故意に狙うのは反則だが、怪我をさせずに兜をうまく弾いた場合は得点となる。

この辺りは審判や観客次第の部分があるので基本的に頭は狙わないもの・・・らしい。

昔と違って武器は木製で先端は丸く加工されたものが主催者により準備され、防具は各自で調達している重装鎧なので滅多に死人が出る事は無い。

鎧は馬上槍試合用に特化した装備にしているものも多い。面頬や襟に特殊な加工を施したり、左腕に盾を固定したりと様々だ。


仕官を目的に遍歴の騎士が混ざる事もあれば、このような野良試合の場合素性の知れぬものも参加を許されることもある。

今回は父上の騎士と近隣領主の騎士だけだ。


祝祭演出家は次々と現れる騎士達を紹介している、・・・凄い記憶力だな。

何処の誰だか鎧や盾の紋章でわかるらしいが、我が領地の演出家でもない流れの魔術師だというのに大したものだ。

さすがの演出家ももともと遍歴の騎士でろくな名声もないというアルミニウスには困ったようで、父上を慕って旅に加わったと観衆に紹介した。

続いてメッセールについては幼い頃から父を守り続け、領地を下賜されたにも関わらず帝国騎士として出立してしまった父を待ち、黒衣を着て影に徹し、代官を助け領地の治安を守り続けた最も忠実な騎士として紹介した。


両者の槍持ちが槍を渡し、一交錯目が始まる。

実戦とは違うので過剰に魔力を漲らせる必要はない、どうせ武器には自分の魔力石をはめ込んでおらず魔力を行きわたらせる事はできないのだから。

一交錯目はメッセールがアルミニウスを落馬させ勝利したが、2本目は盾で完全に防がれ、メッセールも防いだが押し負けて流れた槍が兜に運よく当たって弾き飛ばし得点となって1対1の五分となった。


貴賓席から降りて行ってメッセールに声をかける。反対側でもあの娘がアルミニウスに声をかけてやっている。


「やりますな。盾の扱いが巧みです」

「そなたの方が年長で修業をつんでいよう」


荒い息をついて弱気な事をいうメッセールに発破をかける。


「ええ、まだまだ若い物には負けません、体力は十分あります」


従士が兜を拾ってきて再開される。

メッセールもあんな兜でなく普通の騎士のような面頬のあるものを使えばいいのに、勇気の証だとか帝国から拝領したものだとかいって昔の物を使い続けている。

そんなことが理由で負けたら承知せんぞ!



今度はメッセールが先に肩に槍を当てられてバランスを崩し命中打を得られず負けたが、次は盾ごとアルミニウスを弾き飛ばして落馬させた。

メッセールは未だ落馬していないが、アルミニウスは既に2度落馬している。

魔術が使える騎士といってもさすがに疲弊していよう。

次が最後となる。

またメッセールを激励してやっていると、向こうもアルミニウスに激励してやっていたが、その時光が見えたような気がした。

む?付与魔術を与えたのではないのか、それは反則であろう。

今のを見たか、感じたか?と近侍に聞いたが誰も魔術の発動を感知していないという。

むう・・・マナの流れはこの場の騎士、魔術師達は誰にでもわかるからな、錯覚か。


祝祭演出家が最後の一戦を前にまた仰々しい演出をして観衆の喝采を煽り、いよいよ勝負が決まる。

疲れ切っている筈のアルミニウスとその軍馬は今までに無い速度で猛然と突撃を開始し、メッセールはその勢いに槍を合わせられず胸に激しく槍を命中させられ落馬した。


「反則だ!!!」


私の抗議の声は観衆の拍手と歓声に打ち消され誰の耳にも届かなかった。


くそう、くそう、くそう。ああああああ、腹が立つ。


「あのちびの小娘が、汚い真似をしおって絶対に何か魔術を使ったのだ」

「アルべルド様、そのようにおっしゃるものではありません。あの場にいた魔術師全てがそれを否定しています」


もうよい、出ていけ!父の騎士に戻るがよいといったらメッセールの奴、では御免とあっさり去りおった。ついでに父と娘だけで待っているから早めに済ませるとよろしいでしょうなどと、余計な事を言い残しおって!!


だが、決闘は神聖な掟だ。

二人の元へ向かい、膝をついて涙ながらに謝罪した。


「姉上、お怪我をさせて申し訳ありませんでした」


父は満足げに頷き、姉も笑って弟に許しを与えた。


・・・だが!

この屈辱は晴らす!!

この涙と怨恨と報復の女神アイラクーンディアの名にかけて!!

ぎりっと口を噛み、握りしめた拳で地面につきながら膝をつき神に誓った。


いつか力を得たら、あんな平民の娘など滅茶苦茶にしてやる、絶対にだ!!!

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2022/2/1
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