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森の娘と最後の騎士  作者: OWL
第二章 森の娘
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第1話 帝国騎士改め辺境領主

~まえがき~


ある山奥で暮らしていた少女ノーファは人さらいに遭い、紆余曲折の末ある海岸に漂着し優しい養父母に拾われた。だが、そこは故郷から遠く離れ言葉も通じない所だった。

漂着する際に負っていた怪我から回復しどうにか普通の娘イルンとして生活を始めた彼女だったが、彼女の持つ異国の知識と養父母の経営の才覚から短い年月で莫大な資産を得てしまう。


それに目を付けた領主によってイルンは再び攫われ居合わせた帝国騎士エドヴァルドにより救出されたが、東方経済に損害を与える事を危惧した者達によって養父母と引き離されエドヴァルドが代わって彼女を養育する事になるのだった

イルンスールには王族に紹介するまで老師の研究室に案内し好きに使ってよい旨を伝えた。


「老師はどちらへ?」

「少しやることがあるそうだ、それが済んだら戻ると。トレイボーン、悪いが研究室の扱いについては君に任せる」


そろそろ初老になろうかという老師の助手にして秘書に頼む。


「お任せください。イルンスール様、薬品には危険なものもありますゆえ、何事も行動する前にお尋ねください」

「わかりました」


私は錬金術については門外漢なので、トレイボーンのいうことを聞くように彼女に念を押し、彼女も素直に頷いた。


「老師が戻ってから私の家族に引き合わせるから、それまで常にレベッカかアルミニウスを側に置くように。パラムン、以前話したように落ち着いたら君の姉上に王都での振る舞いについて教えて頂けるようお願いしてくれ」

「はい、殿下」


パラムンの母は王の妹であり、ティーバ公に嫁ぎ三男二女を儲けた。

娘のひとりは夭折したが、もう一人は王都に勤める貴族に嫁ぎ王都で暮らしている。

長年祖国を離れていた私にとって頼みやすいのは彼女くらいなものだ。

パラムンには兄がいるので、家を出て私に仕える事を選んだ。


「それとイルンスール。フッガー商会からオイゲンの友人が代表者として君の所に来る。君とヨハンナが付けてくれた針子は衣装づくりが得意と聞いたがお披露目衣装は専門の職人に任せた方が良いから相談するように」


間に合わせで彼女にはすまないが、顔合わせだけしたらすぐに領地に戻るからそれほど大仰なものは必要ない。ヨハンナが付けた職人にまで転移陣は使わせられないので到着に時間がかかる。


「ユリウス、他に忘れている事は無かったかな?」


ユリウスはこれから戻る自分に与えられた領地から来た私の従士でやはり遠縁に当たる。まだまだ幼さの残る少年のような年頃で騎士への昇格を目指して鍛錬中だ。


「はっ、ええ、といいえ。思いつきません!あっ、そうだ。姫様は今まで寒い北方圏近くに住んでおられましたが、こちらは年間通じて気温が高くなります。1年分の衣装や身の回りの品も検討されてはいかがでしょう」


ふむ、これから暑くなるしな、少し涼し気なものも揃えておかないと不便なエッセネ地方では困るかもしれない。

私も子供の世話などしたことが無いので特に思い浮かばないが、やはり年の近い女性の小間使いが必要か。

トレイボーンに後を任せて、魔術師の塔を立ち去った。


防衛用に入り組んで中々中心部に辿り着けない構造になっている王城を通り抜け、父王が待っている広間へ向かう。

今の時間は朝議を終えて、大臣達と歓談しているという。

先行するパラムンが守衛に来訪を告げ、扉を開けさせる。


「只今戻りました父上」

「よく戻ったエドヴァルド、久しぶりだな。そなたももう二十三になったか」

「はい、ご無沙汰して申し訳ありません」


十八で帝国騎士の叙勲を受け任務についてから五年が過ぎた。転移陣を利用して帰還することもあったがもう二年も帰っていなかったな。


「軍務ご苦労だった、以降はエッセネ地方に戻るがよい。統治を委ねる。そなたの代官が苦労しておったぞ」


癖の強い伝統に固執する貴族たちを統率しなければならない、と思うと暗澹とした気分になるが、父の負担をそろそろ和らげねばなるまい。

私の代わりにアルカラ子爵に留守を任せておいたが、実のところ丸投げにしてしまっていたので、彼にも実に申し訳ない。

かなうならこのまま代官を任せてアルヴェラグスのように遍歴の旅に出たいものだ。


「エドヴァルド、良ければ戻る前に猪狩りでもどうだ。ギュスターヴも今は王都に戻っている。儂が衰えていない所を見せてやろう」


父上と来たら相変わらずだ、来年には五十の大台になろうというのに。


「喜んで、父上。ですがあまり張り切らないでくださいよ」

「ふん!猪ごときに心配はいらぬ。ついでに養女も連れて来るがいい」


猪といってもオルステンド男爵領や周辺地域を荒らしていた魔獣のような個体もいるからな。家ほどの大きさもあり、並の騎士では歯が立たぬ。

街道巡回中でも各地で巨大化した獣を狩ってきた。

単に巨大化しただけなら、構わないが中には南方の火鼠ムシニスや巨猪アープのように地元で災厄の小神とまでいわれるような魔力を溜め込んだ個体もでてくる。


「父上、確かに近いうちに一族にはお披露目をするつもりでしたが、他の貴族達にまでは会わせるつもりはありませんでした。平民の子でしたからこの国の貴族とはそりが合わないでしょう」

「かもしれぬ、だが私もその娘を老師からそなたの子とすることを許して欲しいと頼まれたのだ。下級貴族であれば資金援助の為に豪商の娘を娶ったり、平民の子を養女にして上位の貴族に献上したりすることもあるがいきなり王族に迎え入れるというのは外聞が悪い」


そなたの評判にも傷がつこう、と父も懸念しているようだ。


「それで父が申し付けた、という形にするのでしょうか」


気に入った子供に高度な教育を与えて育てさせ、いずれ妻に迎える、ということは古来から稀にあるが今度は父の評判に傷がつくではないか。


「儂の事は良い、城内で披露目を行うより巻狩りの場で貴族達が他の事に気を取られている内になし崩しに終わらせた方が目立たずに済む。儀礼がどうのとうるさい連中も狩りの場では多少は静かになろう」


なるほど、それもそうか。


帰還後は時々イルンスールの様子を見に王城の敷地内にある魔術師の塔まで行く他は、大臣達に近隣の最新情報を聞いたり、昔馴染みの騎士達と練習試合に付き合っている内に王都の近隣領主も招いた狩りの日となった。

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2022/2/1
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