第12話 憎悪
その日のことはよく覚えていない。
憎しみの言葉と共に、本気で投じられた石はわたしの額を割ってたくさんの血が出た。
苦痛でのたうち回るわたしに近づいてきたエルバンに殺意を感じ、目に血が入って霞む視界を擦りながら慌てて逃げ出した。
投げつけられた言葉がずっと、頭の奥まで何度も何度も響き渡る。
お前のせいで弟まで巻き込まれて間引かれた、と。
その後、物陰から何度か子供たちの様子を伺って気づいた。
あの日、たまたまあの場にいた子供が少なかったわけではなかった。
子供の数がすっかり半減していた。もうフィオはいない、エルバンの弟もいない、残った子供達もふくめてわたしの友達はいなくなった、皆間引かれてしまったのだ。
増えすぎたから、とあっさり処分されてしまったのだ。
菜園の野菜のように、邪魔な雑草のように。
茫然自失として何が何だかわからなかったけど、ひとつはっきりしているのはわたしが余計な事をしてしまったからだ、ということ。
ずっと前から何度も教えられていたのに。
誰とも関わるな、成人するまで大人しくしていろって。
元気の無いわたしを見て一の姉様が心配そうに、抱き寄せて事情を聞いてきた。
わたしはまだ何がなんだかわからなくてうまく説明できなかったと思う。
お姉様は貴方のマナスが傷つき過ぎているわ、どうにもならないことは封じてしまいなさい、時間が解決してくれるまで、と長い時間をかけて慰めてわたしの心のなかで行き場がなく荒れ狂う感情を抑えつけるように背中を撫でてくれたけど、結局駄目だった。
三の姉様が何気なく、前の秋は植えすぎて、手入れも怠ったから収穫量低かったんでしょう?今年はちゃんと計画的に間引いて置きなさい、と手に持ったはさみで葉を根元からパチン、と切り落としたのを見たその時、感情が爆発した。
少しくらいなんだっていうの、必要ない、邪魔だ、余計なものだと、そんなに簡単に『処分』しちゃうなんて
大恩ある姉をさんざん罵倒し、最後に人でなしと罵り飛び出してしまった。
もうお社の向こうにも行けない。会わせる顔もない。
無知な子供の馬鹿げた八つ当たりで。
数が減ろうが、兄妹がどうなろうが、子供達は変わらない。
洗濯や家事手伝い、枯れ木を集め、春の新芽、野草を集め家計を助ける労働力となる。
役に立たない子供は間引かれる。
物陰からじっと遠くにいる麓の村の子供達を見つめ、手持無沙汰に枝で地面をつつく。
何かがのそのそと這い出てきたけれど、ぼんやりしながらつついてしまった。
動きが遅いので油断していたそれは、びゅっと跳ねてわたしの脚に噛み付いた。
蛇だ。
三の姉様は蛇は毒を持つものがいるので、迂闊に手を出さないようにいっていた。
種類によって毒は違うので、すべての解毒薬を準備するのは難しいから知らない蛇には近づない事、と。
五の姉様も蛙はいいけど、蛇は駄目です、神だって蛇には何度もしてやられてるんです、あれが出たら引き下がって距離を取りましょう、といっていた。
毒があるのかないのかもわからないので、しばらくじっとしていたが何も起こらないので山小屋に帰ろうと立ち上がった途端、ふらふらと意識が遠くなり始めた。
噛まれた所が蒼黒く変色し始めている。
焦りか、毒による熱か、額に汗をかき始めた時に、不意にガサガサと音がして見知らぬ男が声をかけてきた。




