弌 ――旅立ちの日――
いつもの様に朝食を食べ、いつもの様に家を出て、いつもの様に学校へ行く……。というのは、毎日の事である。今日もまた、そのいつもの一時であった。いつもと変わらない何もない平凡な一日変わった事と言えば……一瞬で起きたあの事だろう。それは、昼放課だった。急に携帯が鳴りだした。他でもないこの僕、霊鬼龍夜や、僕の親友の水邊太貴クラス一の人気者早乙女凜華など10名ほどだ。携帯を出してみるとそれは自分のでは無く黒いスマホだった。[プルルルゥゥ]また鳴ってきてしまったので渋々、応答すると女性の声で≪助けて≫と聞こえて次の瞬間。
黒いスマホを持っている人の体が光りだして輝いて霧散した。残ったのはバックや机の上の勉強道具だけだった。
● ● ●
スマホを持っていた人達の体が光ってから何分たったかは、分からないけど龍夜は目を覚まして周りの風景を見て絶句した。
「なんだ‼ これ……そうだ、携帯は? ……圏外……」
周りを再度見渡し、さっきまだ教室だったのに今は草原の真ん中にいるという現実を見直した。その前は気が付かなかったことに再度見たことで気が付いた。それは、真横にクラス一の人気者早乙女 凜華が倒れていることだ。少し焦ったが早乙女の体を揺さぶると目を覚ました。
「ここはどこ?」
「草原の真ん中ですよ。早乙女さん」
そう、今どこにいるかという質問に答えると凜華は少し頬を膨らまし睨んできた。
「凜華」
「え?」
「凜華でいい」
そう、照れ臭そうに言うのを見ると幾らかこれまで見る完璧すぎて近寄りにくいという印象はなく可愛く見えて、少し見とれてしまった。(いかん、いかん)自分にそう言い聞かせて再度、凜華の方に向き直った。
「で、凜華さん」
「凜華」
また訂正されてしまいでも初めて話すこともあり喋りにくくどうしたらいいか悩んでいると……。
「凜華ちゃんでいいよ」
「もっとハードル上がってません?」
「良いから言って」
「凛花ちゃん」
「良くできました」
良くわからないことで頭を撫でられてしまいちょっと恥ずかしいけれども話を続けた。
「ここら辺を探したほうがよくない」
いまは夕日がここら辺に当たって雲行きも怪しいため早く雨風を凌げるところ探そうということだ。
「そうね。私は北に行って来るから霊鬼君は東に行ってくれる」
「いいけど、僕の事も龍夜でいいよ」
「じゃあ、龍夜君宜しく」
北へ向かおうと体の向きを変える時、不思議と頬を赤く染めているように見えた。そして風にたなびく黒い長い髪の毛から鼻孔をくすぐるいい匂いがしていた。少し無意識に見とれてしまったが自分は東に向かった。
少し行くと斜面になっていてそこを下ると洞窟がありその近くに看板が掛けてありこの先……その先は苔むしたり腐ったりしていて読めなかった。
「戻るか」
そう一言、自分自身に言うと来た道を戻って行った。
● ● ●
戻ると凜華が待っていた。
「遅いよ。龍夜君」
「坂道で」
「言い訳はいいから、成果を教えて」
見つけた洞窟の話をした。
「そう見つけたのね」
「そっちは何か見つけた」
聞くと凜華は手を振って誰かに合図を送った。すると自分たちと同じ服を着た学生が出てきた。しかも半分は怪我をして歩けず運ばれている者もいた。しかし一様に全員傷だらけだった。その中に親友の太貴がいた。太貴は足を怪我していて肩を貸してもらって立っている状態だった。龍夜は、太貴の元に駆け寄り声をかけた。
「太貴、何があった」
「龍夜か」
「それは、私が話す」
傷が深く出血も多い太貴には、無理だと思ったのか凜華が口を出した。
「龍夜君こっちに来て」
呼ばれるがままついていくと四角い石があった。凜華はそれに座った。龍夜もその石に座ると凜華があの皆の傷の事を口にした。
「私が北に行くとね。少し段差があってね。それを超えると崖になっていてね。その下でね。皆が大きい犬に角を生やした尻尾が蛇の生物に追われていて追いつかれると地面にたたきつけられたり爪で切り裂かれたり蛇に噛まれたりして皆が殺されて。そのときね。近くに岩の山があってそれを蹴ってね。落としたの、計算通り犬の化け物に当たってね、動けないようにできたの、そうすると下に続く道が見えたの、そこを降りていくとね、地面に血が飛んでいてもう怖くて吐いちゃって、そしたらね、私の親友が来てくれたの、名前は紫雷霞っていうの、親友が来てくれて元気を取り戻してこれまでの事を聞いたの、内容は、同じ様にこっちに来た皆はさっきの犬の化け物に出くわしてそれから襲われてあんなことに……」
声がだんだん小さく薄くなっていく中で一つの疑問が浮かんだ。
「ならなんで、僕たちは同じところに。皆と違うところにいたんだろう?」
不思議そうに、疑問を出すと凜華は龍夜と同じ様に不思議そうにしていた。すると、想わぬところから返事が出てきた。
「それは多分あんまり意味はないと思うよ。それと考えても意味はないしね」
凜華の後ろから凜華の親友の紫雷 霞が出てきた。
「霞何でこんなところに……。それと傷の方は」
二人の座っている石に座ると足を見せてくれた。その足は擦り傷だらけでいろんなところが腫れていて見るも無残な有様だった。
「ひぃ」
それを見た凜華は余りにもひどい傷で涙目で口を手で塞いで大分ショックを受けている。龍夜は酷いだろうとは思っていたので堪えることは出来たが結構ショックを受けた。
「私は軽傷の方だよ。他の皆は足がなかったりもう動けなくなっていたり全身骨折していてもう死にそうだったり、酷いんだよ」
深刻な状況に全員の口が閉じてしまって静かになると急に雨が降ってきた。怪我人があまり濡れると良くないので龍夜は見つけておいた洞窟付近へ凜華と霞は他の皆を呼んで洞窟に向かうよう決めて龍夜は北、凜華と霞は南に向かって走り出した。
それから龍夜は洞窟の前で看板の様に立っているとあることに気が付いた。それは奥が明るいのだ。行ってみると石が発光していて一つ外すとそれは中に緑色の火が宿っているような物で擦ると光が緑になった。これは良いと持って外に行くと掲げて位置を知らしていたらすぐに皆を連れた凜華がそれに気がついて洞窟に向かって走ってきた。
「中は確かめた?」
「さっき確かめたぞ」
「皆この中に入って」
凜華が指示をすると皆洞窟の中へ入って行った。
龍夜と凜華は入りきったことを確認すると奥に向かって調査に向かった。
「何でわざわざ奥を見に行くんだよ」
「また、あの犬の化け物みたいのがいないか確認するために。そういえば何で龍夜君もついて来ているの?」
「それは凜華の事が心配で…」
小さくはっきりしない言葉でそういうと聞き取れなかった凜華が聞き直したが答えてくれなかった。
● ● ●
二人が並んで奥に向かって進んでいると急に目の前に池が出てきた。池の底にはあの光る石が大量に落ちていて神秘的な風景で二人は余りにも、さっきまでと風景が違い過ぎて立ったまま動けなくなってしまった。先に行動をしたのは龍夜だった。水に手を入れた。すると池から光が出てきて眩しくて二人とも目を閉じてしまった。光が落ち着いて目を開けると一人の女性が池の上に浮いていた。目を丸くしている二人をしり目にその女性は池を平行移動して近寄ってくると二人の手を握って目を閉じた。触れられてやっと我に返ってのか今の状態を見て慌てながら手を無理やり振りほどいて少し距離を置いた。
「何するんだ」
「何って適性検査」
初めて声を出した女性は良く見ると背中から羽が生えていて全身緑の葉っぱの装飾の入ったまるでお姫様のような服装をしていた。そして何より美女だった。
「適性って何の」
「何って魔法の、そんなことも知らないでこんなところに来たの」
「龍夜君どういうこと」
「それは、分からないがちょっと話を聞いた方がいいかもしれないな」
二人はうなずき合うと女性の方に向き直って頭を下げてお願いをした。
『実は何も知らなくて、教えてくれませんか』
女性は悩んでから良いよと言って更に奥についてこいと言って道を示すとその先に消えていった。
「ついていく」
「そうするしかないだろ」
二人は池の横の道を通って先に向かって進んでいった。
数分すると扉が7つある異様な空間に出た。扉は左から赤色、青色、緑色、黄色、茶色、白色、黒色に色付けされていて緑の扉の前にさっきの女性が浮いていた。
「こっち~」
呼ばれるままに行くと緑の扉を開けてその中に入れられた。
中に入るとありとあらゆるものが緑一色の部屋で緑の椅子に座らされて一人奥に行くと[ごおぉぉぉ]という音がして緑色の飲み物を出されて飲めと促され二人は決死の思いで飲み干すと以外にも美味しかった。
「で、何が知りたい」
「ここのすべて」
女性は真剣なまなざしで二人の目を見ると人にとって一番大切なことを提案した。
「その前に、自己紹介をしよう」
「そういえばなんやかんやでして無かった」
「では、私から。私の名前はグリーン・ナリアという再生をつかさどる妖精だ」
おそらくここで凄いなどの驚きの声が出ると思ったのか自慢げに胸を張っているのだが龍夜が胸を張った時に見えた大きい胸に釘付になっているだけでほかに目立った反応はなかった。その初めて見た反応にショックを受けながら次に凜華を見て、やるように促した。
「私の名前は早乙女 凜華です。宜しくお願いしますグリーンさん」
「ナリアでいいいつもそう呼ばれているので……」
ナリアは最後に龍夜に目を向けるとやるように促した。
「僕の名前は霊鬼 龍夜です」
「全員が自己紹介を終わったことだし、本題に入ろうか」
ナリアが真剣な目をして二人を見つめて二人の手を握りながら。
「もう一度適性検査をしていいかな。あの時は後少しのところで手が離れてしまって」
「良いですよ」
「僕も良いです」
「では」
ナリアはあの時と同じように目を閉じると数秒経って手の周りが光りだした。10秒後には光も落ち着いてナリアは手を放した。しかし手にはまだ光が宿ったまんまだ。
「ナリア、これ」
「始まる……」
そうナリアが呟くと宿っていた光が変色しだした。凜華はどんどん透明になっていき龍夜は消えてなくなった。それを見てナリアは驚いていた凜華にも龍夜にもどちらかと言えば龍夜の方が驚き方が凄かったが……。
「ナリア今のは何だったんだ」
「そうよこれは何なの」
「これは、イレギュラーで……。ちょっと待ってここにそのままいて」
そう言い残すと皆が来た扉に入って行った。
そうして無言で同じ体制のまんまナリアを待っていると3分ほどで戻ってきた。しかし、後ろに引っ張られながら山の装飾が施された茶色の学者のような服装をした子供が来た。
「その子は誰なんだ?」
「この子は土の妖精ブラウン・サリア見かけは子供なんだけど本当の歳はね~せ」
年を言おうとした瞬間どこからともなく土で出来た手をだしナリアの口を塞いでしまった。
「歳の事は言わない」
そう少し怒り気味にサリアが言うとナリアは頷いた。すると手は消えてどこかえ消えていった。
「最近の若い者は……」
サリアがいろいろ愚痴をこぼしだしたのでナリアはサリアに向かって砂を渡した。するとサリアは理解したのかこちらに近づいてきた。
「手を見せろ」
言われるがまま見せると凜華の方を向いて一言【七属性】と言って龍夜の方に向き直って【七属性と一属性】と言って帰って行った。そこで帰り際に袋を二つ渡して出て行った一つの袋絵を開けると中から風が吹いてそれをナリアは掴んでサリアと同じように何かを理解したように頷くとこちらに近づいて言った。
「凜華は七つすべての属性に適性があって龍夜は七つの属性ともう一つ何か新しい属性が備わっているそうです」
二人は訳が分からなくて質問をした。
『七つの属性ってなんですか?』
二人まったく同じ事を同じタイミングで聞いてナリアはため息をつきながら説明を始めた
。
「そういえば、まだここの事も話していなかったね」
『はい』
まったく同じように言うのだからだんだん気にも留めるのも、めんどくさくなったので説明を続けた。後ろから黒板の様な板が出てきて、そこに白い石で絵や文字を書いて話絵を始めた。
まず始めに一番高い位置にある城を指した。
「ここが全ての国の中で一番大きい国ローライヤス=アビージェ国。皆はアビージェ国と呼んでいる。他の国はいいとしてこの国は……まあ国ではないのだが妖精の深林というところだ。そしてこの場所は、妖精の七大門だ。ここでは妖精の中でも1つの事を極めた妖精がそれぞれの色にあった扉の中にいて、一つに入れば他の場所にはいかずとも適性のあるところに試練を受けに行けるという様になっている。質問はあるか?」
そう突然振られて考え込んでしまった。そして一つ大切なことに気が付いた。
「七つの属性ってなんですか?」
そう聞かれてやっと説明してないことに気が付いてまた板に絵を書いて説明を始めた。大きい五角形と一本の線を書いて属性の話に移った。五角形の一つの角を指さしながら。
「一つ目が火属性、火を出したり、その火を操ったりできます」
そのあとに五角形のさっきの角の下の角を指さしながら。
「二つ目が木属性、木を出したり、癒したりできます」
そのあとに五角形のさっきの角の下の角を指さしながら。
「三つ目が水属性、水を出したり、操ったりできます」
そのあとに五角形のさっきの角の隣の角を指さしながら。
「四つ目が土属性、土を操ったり、物の強度を高めたりできます」
そのあとに五角形のさっきの角の隣の角を指さしながら。
「五つ目に雷属性、雷雲を生んで雷を落としてその雷を操ることが出来ます。ここまでで質問はありますか?」
まだ二つの属性が残っているのに忘れているのかと思った龍夜は返事を返した。
「後二つの属性は?」
「あっ、それは……」
言いかけで凜華が龍夜を叩いた。
「ここまでと言ったでしょうが、ここまでと」
その強い言い方で龍夜は腰が抜けて床に倒れてしまいナリアも口を開けたまんま動かなくなってしまった。
「痛、そんなに強く叩かなくてもいいだろう」
「あっ、力の加減を間違えた。ごめんにゃ」
凜華は舌を噛んでしまい猫の様な風に行ってしまった。それを聞いて龍夜は内心可愛いと思っていたが顔には出さずただボーっとしてしまった。
「痛、舌噛んじゃった。龍夜君どうしたのボーっとして?」
頬を赤く染めながら龍夜は手を出して小さく「起こして」というアクションを起こした。
「なに?起きれないの~」
ちょっと龍夜の顔にいら立ちが見えると真剣に龍夜を起こした。
「大丈夫?」
「あぁ」
龍夜が起きて周りを見るとサリアが棒立ちしていることに気が付いた。
「あの~、ナリアさ~ん。大丈夫ですか~?」
そう呼びかけるとナリアは気が付いた。だがまだ状況に脳が追い付けていないのか、辺りをキョロキョロと見まわし、5秒後に脳が追い付けたのか辺りをキョロキョロと見まわさず二人の顔をじっと見ていた。
「大丈夫ですか?ナリア」
「あっ、はい。大丈夫です」
「ナリア、さっきの話の続きをお願いします」
「あっ、はい」
言われてやっと思い出して板の横に立ち、再び説明を始めた。
「上は闇、下は光でそれぞれまぎれたり操ったりできるの。次に属性の不利、有利ね。これは、さっきまで言った属性の力関係ね。火は木に強く、木は水に強く、水は土に強く、土は雷に強く、雷は火に強い、闇と光は力か技量が高い方が強くなる。ただし、この力を操る力の魔力が少ないと有利の相手でも勝つことはできないそしてこの魔力量は訓練すれば器が大きくなり魔力量も多くなる。ここまでで質問は?」
聞かれた瞬間、凜華が冷たい視線を向けてまるで『もう間違えるな‼』と言っているようだった。その目に気が付いて内心もう怒らせない方が良いと直感が言っていた。
「火に水をかけたら火が消えるんだから水は火に強いんじゃないか」
「強い火に少しの水を入れたらどうなる」
「それは……」
「水蒸気になるのよ。そんなこともわからないの」
「分かるよ。それくらい。それで何で水は火に強くないことになるんだよ」
龍夜があまりにも理解が出来ていなくて場は静まり返ってしまった。
「なんでそうなるのか教えてくれよ」
『はぁ~』
二人は同時に深い溜息を吐いて龍夜の理解力に低さを嘆いていた。
「闇と光の関係と同じです。火が強ければ水は蒸発し水が強ければ火が消えるだから同じなんです」
「そうゆうことだったのか」
「じゃあ、雷が火に強いのは何で?」
さっきので、疲れたのか一言で済ませた。
「雷が火を貫くから火元が吹き飛んで鎮火されるから。他に質問は?」
さっきまでとは違い静かに冷たく言ったので二人はまるで別人を見ているようだった。
「で、質問は」
『ありません』
二人はそう答えるしかなかったかのように言った。
「もうこんな時間」
ナリアは黒い石を見ながら話しの区切りをつけた。
「ごめんけどもう夜の10時だから寝ないといけないの、ほんとごめんね。今日あなた達はどこで寝るの外は暗いし雨も降っているのよ」
二人は顔を見合わせた。そして頷きあうと二人同時に同じことを言った。
『この洞窟の入り口付近』
「そんなところでは風邪をひくよ。そこで寝るのであればこの部屋に泊まればいいじゃない」
「いいえ、ここには全員は入りませんしこれ以上迷惑はかけられません」
「迷惑だなんてそれに全員とは何人くらい」
「120人くらいです」
「そんなにはさすがに入れないわね。でも、外で寝ると風邪を……あっ、そうだ」
何かを思い出したのか後ろの床を触り板を数枚外すと空間が開いてそこから大きい箱を取り出してその箱のカギの部分に息を吹きかけると鍵が開いた。その中身は無数に穴の開いたボールのようなものだった。
「それは?」
「火の妖精からの贈り物で周りを暖かくしてくれて上の少し大きい穴からは火が出るこれで少し明るくなるそれと料理にも使えるます。これを持っていくといいわ」
「そんな、良いですよ」
「良いのよ。代わりに二人の潜在能力は素晴らしいので訓練をしてどんなものになるか見てみたいわ、それを飲んでくれるなら貸す。それならどう」
「良いじゃないお言葉に甘えて借りれば、訓練して強くなれば今度あんなことがあっても何とかできるし」
「じゃあ借ります」
箱ごとボールを借りてそれと小さい赤い玉ももらった。箱は意外に軽く球は重くもらった時、手を下に持って行かれそうになった。
「その球を入れて、息を吹き入れれば点くから。それと訓練は適性がある全員にするからこっちも他の妖精に伝えておくから今日の事をそっちの人にも伝えておいてね。訓練は朝の6時、日が昇り始めたら開始。食事は朝全員で取りに行きましょう」
「はい分かりました」
二人は扉を開けて元来た道を戻った。戻るといつまでたっても帰ってこないのを心配したのか霞が凜華のところに駆け寄ってきた。
「凜華、これまでの状況説明は頼んだ」
「いいわ、設置はよろしくね」
「あぁ」
二人は短くそう会話すると同時に別々の方向に進んでいき、龍夜は洞窟の中央に行き箱を置いて球を入れ、息を吹きかけた。すると火が少し出て周りが暖かくなっていった。凜華は怪我人以外が固まっている所に行きこれまでの事を話した。龍夜はしっかり点いたことを確認すると怪我人達のところに行き凜華の話と同じことを話した。
「まさか、フャンタジーみたいなところにいるなんて……」
「太貴はどう思う」
「何が」
「これからだよ」
怪我で立てないが喋れるようになった太貴と龍夜はこれからの事について話している。
「妖精を信じるしかないだろう……」
「今日は寝よう。明日は早い」
「そうだな」
龍夜は深い眠りについた。それから間もなくして全員が床に着いた。
● ● ●
外が白み始めたころ龍夜と凜華は起きた。龍夜と凜華はそれほど体力も使っていないから『パサパサ』という小さな音で目が覚めた。起きた二人は他の人達の間を歩いて音の聞こえた入り口に向かった。
「何の音だろう」
「さぁ、何だろうな」
「取り敢えず見てみましょう」
「そうだな」
二人が洞窟の外に出ると前いたところとは違うところにいた。そこは、丘の見える平地から、森の見える崖になっていた。
『なんだ、これ‼』
二人が口を開けた状態で動けなくなってしまっていた。するとその状態に構わず横から声が聞こえた。
「おはよう。龍夜、凜華」
その声は羽が生えてはいるがナリアだった。しかも空を飛んでいた。他にも6人同じく羽が生えた人がいた。やはり空を飛んでいた。
「あの、ナリアさんですよね」
「ええ、そうよ」
「空を飛んで……。それに後ろの人たちは?」
「私は妖精なのよ。あの子たちは微妖精まだ成長しきれていない妖精で、訓練の準備をしているの。二人とも悪いけど他の人たちを起こしてそこの崖に集めておいて、怪我人もそろったら呼んでね。全員集めてくるから」
指示をもらい二人は起こしに行った。
それが終わると崖に並んで行った。そして、凜華がナリアを呼んだ。上から他の妖精が下りてきた。全ての妖精が下りきるとナリアからまず自己紹介が始まった。
「私の名前はグリーン・ナリア。私の隣はブルー・スリア」
スリアは雨粒が装飾された水着に濃い色の水を全身に纏ってサリアと同じような服みたいになっている。
「その隣はレッド・ファリア」
ファリアは火を全身に纏っていて学生のような服装をしている様に見える。
「そのまた隣はイエロー・イリア」
イリアは雷が装飾されたドレスを着て体から時々光が見えている。
「そのまたまた隣はダーク・クリア」
クリアは全体的に真黒な魔女の様な服装をしていて下の影が時おり勝手に動いている。
「そのまたまた隣はシャイニング・シャリア」
シャリアは眩しくて見れない。
「そして最後に今作業中でこっちに来れないブラウン・サリアの7人です。次に属性について……」
龍夜と凜華にしたのと同じ話をしてナリアが最初に使ったのと同じ方法で並んで属性を言われた。
「太貴は何属性だった」
怪我人達はナリアによって回復したのだ。
「雷属性」
「じゃあ、雷……良いじゃないか」
「その間は何だよ。龍夜は何属性なんだよ」
「全て」
「もう一回」
「全ての属性」
太貴は驚愕のあまり動けなくなってしまった。
「まじか」
「あともう一つあるとも言っていたな」
「お前の方が凄いじゃないかよ」
二人が楽しく話し合っているとき、妖精から声がかかり龍夜と凜華は呼ばれた。二人がナリアの前に来ると紙を一枚渡された。
「これは?」
「妖精の女王に会うことが出来る切符で、事情は知っておられるから色々教えてもらいなさい」
『はい』
言われた通りに紙を半分に切って手にしっかり握った。そして崖の切っ先に立たされた。
「あとはどうすれば……」
「落ちなさい」
「えっ」
二人が青ざめた顔でナリアを見るとその顔は微笑んでいて少し怖いほどで、すぐにその顔は見えなくなった。ナリアが二人の背中を押して突き落としたのだ。
「なっ……」
龍夜の刹那の叫びは聞こえることなく二人は霧散した。
二人が目を覚ますとそこはさっきまでいた崖ではなく森の中にいた。そして、周りの木よりも大きい木が立っていてその木の根元から少女が出てきた。少女は露出の多い純白の服を着ていた。
「すみません、ここらへんに妖精の女王はいませんか?」
「はい、私がその女王です」
「えっ」
「だから、私がその女王です」
「それにしては小さ……」
龍夜の声は途中で途切れ、気付けば後方に飛んでいた。凜華はまたやったと残念そうに頭を抱えて、龍夜は心の中で(この人に小さいとかは禁句なのか……小学生くらい?)などと思っていた。
「二人がナリアの言っていた者か……ついてこい。それと」
女王が急に止まり二人の顔を見た。
「私の事は名前で気軽にレイラでいいよ。それと身長は小さいが歳はナリア達の5,6倍程だから、もし次小さいなんて言ったら吹っ飛ばすだけじゃすまないから覚悟しておけ……」
二人は必死に頷いてレイラの後について行った。木の根元に入って行き暗い階段を下りていくと急に視界が開けた。下が全て土、周りが木で覆われていて、木をつたい水が流れていて堀の様なところに溜まっている。天井は眩いほどに光っている。
「ここは?」
「魔法訓練場1もう一つあるから付いて来て」
二人は言われるがままついていきその奥の部屋に入って行った。次に見えてきたのは、真っ暗な部屋で光は上に浮かんでいる炎が五つ、下は固い岩の様な物で覆い尽くされている。
「ここは?」
「魔法訓練場2これで最後だからこの次の部屋で訓練を始めるよ」
『はい』
二人は返事をしてナリアの後ろについていき更に奥へと進んでいった。そして、最後の部屋に入ると床が砂そこから木が生えていて所々に小川が流れ一本大きい川が流れている天井から光が射している。
「ここで七つの魔法の基礎訓練をします。まず貴方達はどこまで魔法の事について知っているのですか?」
それに答えたのは凜華だった。
「炎、木、水、土、雷、闇、光があって火は木に強く、木は水に強く、水は土に強く、土は雷に強く、雷は火に強い、闇と光は力か技量が高い方が強くなる。で合っていますか?」
「はい。付け加えるなら複数の属性を組み合わせることで他の属性を作れる」
そう言い終えると手を少し上げ砂の塊を作り出した。
「この土と……」
次に土の塊を消して水の塊を出した。
「水と……」
また、水の塊を消して火の塊を出した。
「火を混ぜると……」
全てを消して、鉄を出した。
「土と水と火の魔力を混ぜると鉄属性の魔力が出来る。このように出来た属性を合成属性変化という。他にも……」
また水の塊を出した。それを二つの手で潰すようにすると氷の塊になった。
「これが圧縮属性変化、水を固めると氷となる。他にもいろいろな属性を圧縮できる。これでほぼすべての属性を知ったわけだが、最後にもう一つの龍夜の属性について話そう。まず一つ目に分からない、出来てみるまでは分からない、しかし一つ方法はある。七属性の魔力を一気に流すそうすると危険を察知して力が開花すると思う。痛いけどやる?」
「あぁ」
返事をするとすぐに床に座らされ背中を思いっきり強く押された。体に激痛が走った。そしてそのまま気を失った。
だがすぐに目が覚めた。すると周りには凜華もレイラも居なくていつの間にか体も浮いていた。
「うわぁ」
光が眩しく前から降り注いだ。薄目で前を見ると人影が見え女性の透き通った綺麗な声が聞こえてきた。
『妖精をあまり信じてはなりません、人も信じてはいけません、ただ凜華さんを守り私を救ってくださいそして……』
最後の声は聞けず遠ざかって行った。
「あなたは」
微かに聞こえたのは『待っています』という言葉だけだった。
そしてまた、龍夜の意識は暗い水の底に沈んでいった。




