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冬の始まり

 お年を召した秋の魔女が、そろそろ仕事がつらいと言っていつもよりも早く秋終いの準備を始めてしまいました。だから、ウィンテルは急いで冬の準備を始めなくてはいけません。ウィンテルはこの土地に住まう冬の魔女。ここら一体の冬の管理は、全てウィンテルが行っています。

「ああ、あの人もご高齢だからそういうこともあるだろうと思っていたけれど。でも、突然言い出さなくったっていいのに」

 グチグチ言いながらも、ウィンテルは準備を始めます。ウィンテルは若い魔女ですが、この仕事は三年目。突然の事態にも手早く対応できるようになりました。

 冬の魔女がまずはじめにしなければいけない仕事は、木枯らしを吹かせることです。木枯らしには、その土地の住民――人間や動物、植物たちに「冬が来るよ」と報せる重要な役割があります。住民たちはこの風で冬を越すための準備を始めるのです。

 秋の魔女と話し合って、木枯らしを吹かせる日を決めて。その前に、ウィンテルは青い空の色をした天の塔に上ります。天の塔は季節の魔女たちの仕事場、天候を操るための場所です。風は塔の上にある大きな魔法の輪で作られて、吹いていくのです。もちろん、むやみなことをしては大変なことになってしまいますので、季節を担当する優秀な魔女たちしか天の塔に上ることはできません。

 ウィンテルは魔法の輪の下に行くと、そこにある操作盤を弄ります。秋の間穏やかだった風の強さを強く。そして中の水分を減らしていきます。毎日少しずつこの操作を行って、木枯らしへと近づけるのです。突然やってしまいますと皆が驚いてしまいますので、微妙な調節が必要です。

 同時に、太陽の光の調節もしなければなりません。冬の太陽は、他の季節と比べて弱々しく。しかし、あまりに弱すぎると寒さばかりが残って、住民たちは苦労してしまいます。だから、これもまた微妙な加減が必要となるのです。ウィンテルは、毎日毎日風の輪のあるところよりもさらに高いところに上って、空を覆う遮蔽板を少しずつ動かし、太陽の光をだんだん弱めていきます。

 こうして徐々に変化する天候に住人たちが冬の訪れを感じ始めた頃、ようやく木枯らしが塔から吹き降ろされるのでした。


 木枯らしを吹かせたのならば、次は霜を下ろさなければなりません。

「さあさあ、あなたの出番よ」

 ウィンテルは白い梟に声を掛けます。ビノはウィンテルの使い魔、お仕事を手伝ってくれるお友だちです。霜を作るにはビノの力が必要なのでした。

「梟使いが荒いねぇ、冬の魔女さんは」

 彼は面倒臭がり、そして愚痴の多い性格でした。しかし、文句を言いつつも頼んだ仕事はきちんとしてくれます。

 ビノは普段は白い梟の姿を取っていますが、本当はどんな姿にもなることができます。今回の仕事は昼間にやらなければいけませんので、鳶の姿になりました。昼間に梟が飛んでいるのは、あまりないことですから。住民たちに気づかれないようにすることもまた、魔女の仕事の中で大切な事なのです。

 ビノは昼間のうちに空を飛び回り、霧のように細かい水を撒いて大気を湿らせます。それから、地面にもしっかりと水を含ませます。そうして夜を迎えると、ウィンテルがこれを凍らせます。すると、次の日の朝に屋根や植物の葉に白い氷の粒が付き、地面に霜柱が立つのです。

 次の朝には、パキパキと子供たちが霜を踏んではしゃぎまわる音が聞こえます。大人たちは作物が霜でやられてしまったことを嘆きます。

 こうして悲喜こもごもした中で、新しい季節は始まります。

 さあ、ウィンテルの冬作りの始まりです。

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