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第75話 ジュースでいいって言ったのに

フラフラと秋月邸を目指し歩いている途中で腹が減っていること思い出した。このまま帰っても食うモンないだろうし、寄り道してぇ。きっと萌も弁当食ってないから腹減ってるだろ、何か食って帰ろうか?と、聞いてやろうか。


「ねぇ萌ぇ」


斜め前を歩く彼女は俺が声を掛けたのに振り向くことすらしない。スタスタ歩き続けている。

また俺は空気か、空気にされてんのか。一緒に帰る意味ねぇじゃんか。


「お腹空いたから何か食いたいんだけどぉ」


「…」


ちょいコラァ、そこまで俺と話をしたくないのか。可愛く「なぁに?」とか言って振り向いてみろってんだ。…もういいや、それじゃ俺だけこの道を曲がろう。


「…あ〜もう!」


前を歩き続ける萌に心の中で「バイバ〜イ」と叫んだ瞬間、勇樹の微笑みが頭をよぎっちゃったよ。死んでも連れて行かないと勇樹に怒られるかなぁ。あの純情少年にまた睨まれたくねぇ。


「萌!ハンバーガー食べに行きましょうよ!奢るから!」


「何で」


一応は返事をしてくれた。だか立ち止まったままで振り向いてくれない。 話しかけたんだから振り向けぇ!


「えっと、弁当くれたし、それに保健室まで…あっ」


ダメダメ!勇樹には内緒にしろって言われてたんだった。思わず男の約束を破るとこだよ。


「何が言いたいわけ?」


えっ疑問形?しかも微妙にコッチ見てる。ってか普通に見られないの?なぜそんなチラ見なの?


「いや、弁当のお礼というか」


とか言ってちくわしか食わせてくれなかったけど、今はそれを口に出したらマズい。


「ただ単にお腹空いてるからだろ」


「あっバレました?」


「…」


エヘッと可愛く笑った俺に嫌みな溜め息を漏らした彼女は無言で歩き出した。ズンズン進むのはいいけど、ハンバーガーショップの場所わかってる?



何も言わずに我が道を歩く萌について行くと、途中で辺りをキョロキョロと見回し始めた。まさかこの方、道がわかっていらっしゃらない?


「萌ぇ?ハンバーガーショップはあっちだけど」


俺の言葉に驚いたのか、彼女は肩を一瞬ビクつかせる。図星かい。


「早く言え。疲れるだろ」


「え、あっごめんなさい」


思わず謝ってしまった。もっと強い男になれないのかね僕は。言いたいことくらい言わないとストレスで胃が病むねこれじゃ。


どっち、と無言のプレッシャーを与えられた俺は今来た道を指差す。そうです、思いっ切り反対方向なんですよ。


「…イデッ!」


ドンと俺の肩にぶつかった萌は謝罪もナシに歩き去って……て待って!


「ちょっと萌待ってってぇ!」


そっちじゃない!右、右ぃ!





もうこのハンバーガー屋は俺の第二の我が家と呼んでも過言ではない。…言い過ぎました。


軽い気持ちで店に入るとやっぱりカップル多し。他に行くとこないのかまったく。もし俺に恋人がいたのならば、ハンバーガーではなくてスパゲ…パスタを食いに行くよ。


ごめんなさい、スパゲッティよりもパスタの方が響きがカッコ良さそうだったんです。


「あ、萌はどっかに座っててよ」


「何で。別にいいだろ」


一緒になってカウンターに来られたら何を注文されるかわかったもんじゃねぇんだよ。

ジュースでいい、とか言われたら店員さんに「なにこの男、ジュースしか飲ませないわけ?」とか思われる…人の目は気になるもの。


「何か適当に買ってくからさぁ」


「ジュースでいい」


だからダメだっつーに。俺のことも考えて…ムリだね。ちょ、隣りに来なくていい!店員さんをガン見するな!怖がってるって!

っくそ、こうなりゃ萌が何か言う前に強硬手段をとれぇ!


「ハンバーガー5つください!」


「なっ」

「かしこまりましたぁ!ハンバーガー5つですね?お飲み物は何に致しますか?」


萌の言葉を遮るように(可愛い)店員さんが笑顔で答えてくれた。グッジョブだよあなた!

チラチラと萌はふざけんなぁと肩ブルブル震わせているが、店員さんの前では俺に暴力を振るうことはできない。ヒヒヒヒ、俺の独壇場だ!


「え〜と、メロンソーダと、ウーロン茶?」


「…」


無言ということは異議なしだね。決めるわよ!?


「…ちっ」


舌打ちすんな!


それから店員さんは注文を繰り返している間、(この二人はどう考えても恋人同士じゃないよね)という視線を送ってくれた。それを見て無言で頷く。


「あ、えっと、おか、お会計は」


店員さんは(なんで今頷いたの?私の思考を読んだの?)みたいな顔をしたからもう一度頷いてみた。


「…出来上がるまでこちらでお待ち下さい」


俺ってすげぇ。女性の心がわかる!これなら勇樹に負けない!





微妙な顔つきの店員さんからハンバーガーその他が乗ったトレイを受け取り、萌が座る席を探した。ってか注文した後にさっさとどっか行きやがって。奢るとは言ったけど財布を出してみるとか小細工くらいしろよ。


えっとどこだ萌。あっ窓際じゃんか…誰か(晃)に見られたらどうすんだよ。ちゃんと考えて座って。

なんて言えない俺は笑顔でトレイを置いた。そして笑顔継続のままで座る。


「お待たせぇ」


ハンバーガー5つを目にした萌は俺を睨んでくる。食えよ、絶対に食えよって目です。言われなくても食ってやるよ!意地でも食う!

…食べられなかったら鞄に押し込んで家に帰ってから食う。


「さぁ食べましょうか!」


ちくわしか食ってないから早く食べたい!とハンバーガーを掴もうとした時、手を叩き落とされた。


「イッテェ!」


凄まじい音と俺の叫び声が店内に響く、のにも関わらずお客様は知らんぷり。これはこれで何か恥ずかしい!冷めた目で見られた方がまだ救われる!


「何すんのぉ!」


「…黙れ」


ボソッとそう呟いた萌は積み上げられたハンバーガーをジッと見つめた。普通のハンバーガーだよ、そんなに見つめてもギョーザバーガーに変化しねぇって。

それに悪いけど自分で食べられるからね!せっかくのハンバーガーを床に落としたくない。


まだガン見しているスキをついてハンバーガーを掴んだ俺はあっという間に袋を外し口に含んだ。

おいしい、とってもおいしいよ店員さん!


うんうん頷きながらハンバーガーを頬張っていると、まだ口をつけようとしない萌と目が合った。明らかに不満顔だな。


「食べないの?おいしぃよぉ?」


「ポテト」


「は?」


萌の口から出たことがない言葉が飛び出した。ポテトって、目の前にはハンバーガーが5つとジュース…ポテト?


「ポテトがない」


こここ、こんの性悪娘ぇ!お前さっきジュースでいいとか言っなかったか?なんでここにきてポテトを注文すんだよ!ハンバーガー食え!


「ぽて、ポテトはまた今度ぉ」


「…っはぁ」


仕方ねぇなぁみたいな顔すんな!奢ってあげたんだから「ありがとう」とか言って笑顔で食え!


なんてことはムリでございまして、無言でハンバーガーを口に運んだ。せっかくのハンバーガーもなんだかイマイチなのは目の前にいる女のせい。ジト目で見るな。





「っぐっふ」


うわ〜3つが限度だわ、4つ目に手が出ねぇよ。誰だよ5つも頼んだ美男子は…。


(ん〜誰だろう?)


てめっ悪魔。誰かわかっててやってんなこの野郎。


(野郎じゃねぇ女だ!)


そう言ってる時点で男だお前は!消えろ!


(お前が消えろ!)


反抗期ですか?!


悪魔と格闘しつつ、やっと3つ目を胃に入れた俺は1つ目をモグモグ食べている萌と目が合った。何でまだ1つ目なんだよ。どんだけ食うの遅いのよあなた。


ってかマジでキッツイ、もう入らない。


「残った1つはテイクアウトすっかなぁ」


メロンソーダを一気に飲み干してから辺りを見回した。カップルはまだいるけどさっきよりはマシになったな。早く帰らないとお外が暗くなっちゃう。


ってか何か返事くれよ。2人でいるのに独り言しゃべらせないで。


「持って帰れば」


…なぜ返事に遅れがあるのかは聞かない方が賢明ですな。


「萌はお腹一杯になった?それともぉ、胸いっぶぉ!」


わかっていましたよ、殴られることくらい。でもからかいたかったの!

しかしちょっとおちょくっただけで殴ってくるとは。一応は予想してたけど実際喰らうとやっぱり痛い。


「いちいち人の感情を逆なでするようなこと言うな、バカ太郎が」


やっとハンバーガーを食べ終えたセリフがそれかい。


「ごちそうさま!とってもおいしかったよ…ありがと」


くらい言え!……夢を見過ぎだね。天地がひっくり返っても萌の口から出るような言葉じゃない。


「じゃ、じゃあ帰るかぁ」


ウーロン茶を飲み続ける萌にそう尋ね、無言で頷いたのを確認した。さっさと帰って寝よ。


「ゴミはちゃんと捨てましょうねぇ」


よっこいせぇと立ち上がりゴミを集めていると、背後から元気な声が響いた。


「あっ太郎ちゃんだ!」


「はい?」


誰だ、俺をちゃん付けで呼ぶのは。って推理しなくてもわかるか。そんな可愛く俺を呼んでくれるのはあの子しかいない。

勢い良く振り向くと可愛らしい女の子が笑顔で立っておりました。


「あっ、美咲ちゃん?」


目の前には私服姿で立っている野代 美咲ちゃんがおりました。うんうん、やっぱり大人っぽくなったわねぇ。そのミニスカート、とっても可愛いわよぉ!もうマジでキミが高校生になったらいつでも迎えに行くからねぇ…誰かツッコんでぇ!

でもホントか〜わ〜い〜い〜、なんつったら萌にウーロン茶をかけられるからやめよ。


「あっ萌ちゃんもいる!」


美咲ちゃんは俺と向かい合わせに座っている萌に気がつき、走り寄って来た。いいねいいねこの感じ。そこで「太郎ちゃんは私の太郎ちゃんだよぉ」なんて言ってくれたら鼻血出る。


そんな有り得ないことをマジで考えていると、美咲ちゃんはテーブルの端に固まっているハンバーガーが入っていた袋を見つめた。


「2人でハンバーガー食べてたんだ?…4つも」


「全部太郎が食べたんだよ」


おいぃぃぃ!それじゃ俺が意地悪して萌に食ってんのを見せびらかしてるみたいだろ!もっと言い方を考えて!


「ってあれ?美咲ちゃん、一郎は一緒じゃないの?」


「あぁ………今何か買ってる」


おわっ一郎の名前を出した途端に態度が豹変したよ。


美咲ちゃんは思い切り冷めた目線になってカウンター辺りをチラ見する。

一瞬で顔つきがガラリと変わったな。そんなにイヤなら一緒にハンバーガー食いに来なきゃいいのに。


「ねぇねぇ、相席してもいい?」


「あぁ、いいよん」


俺達は4人用のテーブルに座ってたし、別に断る理由もないから笑顔で承諾しました。

もしかして美咲ちゃんと食べた方がハンバーガーも喜んだんじゃないか?


「あっそうだ萌ちゃん、伊藤 円って人知ってる?」


席についてから5秒足らずで地雷踏んじゃったぁ!お願いだからその名を口に出さないで!


「うん、知ってるよ」


慌てる俺を横目に、意外にも萌の返事は普通だった。今度から俺にもそういう返事を求む。


「さっきまで一緒にいたんだけど、キレーな人だよねあの人!」


「え?あっうん、そうだね」


性格上、萌はウソがつけないから否定は出来ない。でもイヤな空気が辺りを包み込みつつある。早いトコ退散した方がいいよな。


「美咲!お前勝手に…あっ太郎じゃねぇか!」


帰りたかったのにめんどクセェ奴が来ちゃったよ。


「…」


笑顔で近寄って来た一郎は断りもなく俺達が座る席に腰を下ろした。美咲ちゃんはというと一郎に目もくれずサッとケータイを取り出しメールを打ち始めた。


入力速度がハンパじゃねぇ。


「あっメールだ…バカ兄は帰っていい?」


うっわ〜可哀想。面と向かって会話する気ゼロなんだな美咲ちゃん。この前は電話で会話してたのに、より一層に待遇が悪くなったな一郎。


「…助けて太郎」


「ごめん無理だ」


「少しは考えてから答えろよ!…あっまたメール……うるさい?」


もうどうにもなんねぇなこりゃあ。一郎よ、泣かれても困る。


「お、おい太郎。何か言ってくれ!」


「申し訳ない」


「太郎ぉぉ!」


「うるっさいバカ兄!」


「えぇぇっ!?」


久しぶりに美咲ちゃんが一郎と会話を…会話と言えないが。


「うる、うるさいとか言うな!」


「…」


ハァと溜め息を漏らした美咲ちゃんは一郎と目を合わせようとしないで萌に何だかんだ話し始める。肉親にスルーされるのって結構キツイよな。


「太郎さん。俺、何かしたのかな?」


涙目で訴えかけてくる一郎は俺の袖をつまんだ。男にされても嬉しくねぇ。


「き、気にすんなって…そういや円さんとはもう話ついたのか?」


悲しげにポテトを食う一郎に好奇心で聞いてみた。

この時間に美咲ちゃんと2人だけでいるってことはもう話は済んだと思うけど。ってか話になったのかどうかすら微妙だ。


「あ?あぁさっきまで一緒にいたんだけど…」


話しづらいことでもあるのか、何やら口をモゴモゴさせながらチラリと美咲ちゃんに視線を移した。


「美咲がでしゃばって会話になんなかったんだよ。事情も知らないクセに一方的に俺が悪いんだから謝るなとか言うし」


今の美咲ちゃんを見てたらそう言いそうだな。何が何でもお前を悪者にしたいんだろう。


ひでぇよぁと涙を浮かべてポテトをむさぼる一郎の頭を撫でながら美咲ちゃんを見つめた。

ああやって見たら良い子なんだけどなぁ、何でそこまでして一郎を嫌うんだ?


「お前さぁ、過去に美咲ちゃんを怒らせるようなことした?」


便乗して一緒にポテトを食べていると、一郎の顔つきが変わった。

何をやらかしたんだテメェは。


それでも首をブルブル振った一郎は「俺は無実だ」と言いたげな視線を送ってくる。単に反抗期なのかしら?


それからボケッと美咲ちゃん達の会話を聞いていると、最後のポテトをつまんだ一郎は円ちゃんが俺達のことを気にしていたと申し訳なさそうに小さく呟き、ゆっくりとそれを口に運んだ。

野郎、俺によこせ。


「俺は別に何とも思ってないしぃ、萌も忘れてんじゃねぇか?気にしないでって伝えといて」


そう言いながらもポテトの恨みを晴らすべく、目の前にあったジュースに素早く手を伸ばす。

こりゃメロンソーダじゃねぇか…さっき飲んだけど飲んでやれ!


一気に飲んでいる俺の横で一郎は何も言わずハンバーガーに食らいつく。そして女性達は男共を無視して話に華を咲かせている。同じ席についているのに何だかせつない。


ごっふぅ、ハンバーガー3つ食ってメロンソーダ2杯も飲んだから胃がキツい。おトイレに行きたい。


トイレの場所を確認しようと辺りを見回していると、萌と話をしていた美咲ちゃんと目が合った。

パッチリ二重が全く一郎と似ていない。うん、一郎とは血が繋がってないんだよね?


「太郎ちゃんって、萌ちゃんと付き合ってるんだよね?」


なっ、面と向かってこの子は何てことを言うの?どうして笑顔でそんな怖いこと言えるの?ってか一郎!てめぇ美咲ちゃんに何を吹き込んだんだよ!


そうなんだよね!と俺達に可愛らしい笑顔で頷かせようとする。違うよ、それは絶対にないの。


「美咲ちゃぁん、勘違いはダメよぉ?」


チッチッと人差し指を突き出してそうたしなめたが、美咲ちゃんは信じてくれない。

本人が違うって言ってんのに。


「だって二人共、とってもお似合いだよ?」


お、お似合い…。俺にとってそれは禁句だよ美咲ちゃん。


「お、おい美咲。そういうこと言っちゃダメだろ」


恐る恐る言うな、腰が引けてるって。この前電話したときみたくデカイ態度とってみろ!


怯えた表情の一郎を冷めた目で見つめた美咲ちゃんはまたケータイを取り出した。

一郎君、マジで同情するわ。


「あっメール……帰れ?」


ケータイに目を落とした一郎はそれから固まってしまった。何か言ってあげたいけど思い浮かばない。こんな俺を許しておくれ。


「太郎、帰れって」


お前が帰れぇ!何で俺が帰んだよ!どう考えてもお前へのメッセージだろ!ってか一郎のケータイに来たメールでしょ!


半泣きですがるように俺を見る一郎を無視し、顔が赤く変異した萌に変わってはっきりと言ってあげた。


「美咲ちゃん、俺と萌は付き合ってるとかの次元じゃないのよ」


「じゃあ婚約してるとか?」


話が飛び過ぎぃ!言葉の使い方を誤った俺のせいか!?


一生懸命になって言葉を選んでいると、美咲ちゃんは俺と萌の顔を交互に見つめてきた。そして一郎をチラ見…じゃなくて睨みした。


「…いつまでも邪魔してないで帰るよ」


そう一郎に冷たく言い放った美咲ちゃんの目が怖い。


「え?だってお前が勝手にここに座ったんだろ?何で俺に…」

「それじゃ二人とも!仲良くね!」


もはや一郎と口をきくつもりのない美咲ちゃんはジュース片手に立ち上がりさっさと店を出て行った。

勘違いを正すヒマすらなかったよ。


「ま、待てよ!じゃ、じゃあ太郎に秋月!そのハンバーガー食っていいから!」


いつものアイツなら何が何でもハンバーガーを持っていきそうなのにそんな余裕はなかったか。


ってかハンバーガー3つ置いて行かれても困るよ!お腹いっぱいなのに!


「あぁもう、こんな食えねぇよ!」


俺が残した1つと一郎がくれた3つ、計4つ。絶対に食いきれない。


直秀にあげようかな。そしてピンクの手紙について語り明かそうではないか。まったく、アイツがちゃんと彼女をつかまえてないからあんな事になったんだ。浮かれてしまった俺に何かよこせってんだ。





ウーロン茶をゴクゴク飲む萌をチラ見しつつ、ふと視線を移すと外はもう暗くなりつつあった。そして街灯の明かりが直っていると信じて立ち上がった。


ってちょっと萌、腕組んで座ってないでハンバーガーを鞄に押し込むの手伝ってくれよ。教科書その他が入ってるから入れづらいんだって。

なんて思っていると、突拍子のない言葉が飛んできた。


「今日、泊めて」


「はいぃ?」


「一生のお願い」


い、一生のお願いって言われても。おわっなんだかお客さんの視線が気になる!見てないよね?こっち見てないよね!?


「またノブ君いるの?」


「違う、家に帰りたくないだけ」


意味わっかんねぇ。帰りたくないならあかねか高瀬の家に転がり込めよ。何で俺の家なんだ。


まっ別にいいけどぉ。


「ふぅん、あっまずは店出ようよ」


「わかった」


それじゃあテーブルを綺麗に片付けて…ってお前もやれよ!






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