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第70話 恐怖の連鎖ってあるよね

「た、太郎。元気出せって」


やってらんねぇ、マジでやってられねぇよ。悲しくて泣きたい、できることなら誰もいない世界へ飛んでいきたい。


一時限目の授業は身に入らなかった。ってか、いつも身に入ってないかもしれないけど。今日はトクベツ、全く見に入らない。

それもこれも、あの呪われたピンクの手紙のせいだ。




保健室で一郎とドキドキでラブレターを開けた俺は、内容に愕然とした。そして一郎は開いた口が塞がらなかった。


『突然のお手紙すみません。あっ突然ついでに宮田先輩の好きな食べ物を教えてください。』


ボケェェェェェェェ!


晃の好きな食いモンなんて知らねぇよ!もう知ってても教えたくない!逆に嫌いなモノを教えたい!ってかそんなこと手紙じゃなくて口頭で言え!しかも「あっ」ってなんだ!今思いついたような脚色すんな!

しかも何で俺?晃とクラス違うのに!同じクラスの子にお願いしろよ!



机に突っ伏し生気を失った俺があまりにも可哀相に思えたのか、一郎が優しく肩に手を置いてくれた。


「お、お前の良さは俺が知ってるよ。そう気を落としなさんな」


「い、一郎!」


なぜだろう、一郎がとてもたくましく見える。出来ることなら抱きつきたい!いや、抱きつくよ俺!


「一郎ぉ!」


「来い太郎!」


「おえっぷ!」


きっついマジで!食べるのはいいけどちゃんと歯磨きしろよ!教室中が行者ニンニクだよ!


抱きつきたい衝動に駆られたけど、何とか思い留まった俺はふと隣りの悪魔とメガ…もとい目が合ってしまった。そしてその瞬間、悪魔はニヤリと微笑む。こえぇ、笑顔とかじゃないよそれ。


「やっぱり不幸の手紙だったか」


「ち、違うわ!不幸はなかった!」


「ある意味不幸だったけどな」


いらねぇこと言うな!全然たくましくねぇよお前!傷口を広げるな!


「やっぱラブレターじゃなかったんだ?ザンネンだったね、一条!」


だから元気良くそういうこと言わないで!ってか話聞いてたのね高瀬さん。キミにミス地獄耳2号の…もうどうでもいいわ。


「あ〜もぉ。俺って不幸者だわ」


ついに言ったよ、言っちゃったよ。もうどうにでもなれ!


「あ、そうだ高瀬…」


杉なんとかのことを聞こうとして止まった。ちょ、何で俺を睨んでるのあかねさん。僕が何を言うかわかってるよみたいな目で見ないで。俺は直秀に頼まれたんだよ。


…今はやめておこうか。一郎もいるし。


「え?なに?」


「あ、いや何でもない」


「?変な一条」


「恭子、それいつもだから」


「ヒドイわ萌!あなたってもしかして、人の皮を被った悪魔なの?尻尾とか生えてるの?」


「…」


「す、すいません。調子に乗りました」


「じゃあ黙ってろ」


「はい」


お前から話しかけてきておいてそりゃねぇだろが。でも素直に謝る俺って本気で弱い。


ピンポンパンポン。


おわっチャイム鳴っちゃったよ。便所行くヒマなかった。ってあれ、これ授業開始のチャイムじゃない。


『え〜』


「ターナーだ!」


そう叫んだ八重子がスピーカーに釘付けになった。『え〜』って言っただけでターナーとわかるとは、お主もなかなかよのう。

なんて軽く考えていた俺は、倍疲れることになった。


『え〜次の2年A組の授業ですが、え〜グラウンドではなくえ〜体育館へ集合してください。え〜繰り返す。2年A組の次の授業は、え〜体育館へ来い。みんな大好きドッジボールをする!』


やっぱり最後は命令形で終わるのか!ドッジボールはカンベンしてくれぇ。本気でイヤだ!絶対にイヤだ!


「ほらみんな!ターナーがああ言ってるんだから!早く体育館に行くよ!」


気合いが入っているのはキミだけだよ八重子さん。他のみんなを見てみなよ、誰一人として喜びを表に出してるヤツなんていないよ。


「ほら行くぞ太郎」


「え、何でそんなやる気がみなぎってんだよお前」


いつになく燃えている一郎の目を見た。ドッジボールでそこまで燃える男も珍しい。どうせ高瀬に良いトコを見せようとか、そんな不純な動機だろどうせ。


「おら行くぞ!」


「わか、わかったって!だから放せ!匂いがキツイ!」


さっさと立たない俺に業を煮やし、至近距離で殺人級の匂いを発した一郎が不気味な笑みをこぼした。てめっ!マジでキツイ!でも俺にも分けてくれ!食べてみたくなった!





「あっあかね。調子はどうですか?」


嫌々ジャージに着替えて体育館へ行くと、準備運動なのか屈伸をしているあかねと目が合った。

さっき落胆したまま教室へ戻った俺はあかねのことを忘れるわけがない、ちゃんと酔い止めの薬を持って来た。でももう治ってた。


「あぁもう大丈夫。…それより太郎」


最後にそう小さく呟いたあかねは俺の腕をグイと引っ張り、萌にバレないようヒソヒソ話を始めた。頼むから聞こえる音量でしゃべってね。


「手紙、読んだの?」


やはりそうか。キミも気になるのかい?大丈夫だよ、心配には及びませんぜ。


「それがさぁ、晃の好きな食いモン教えろって催促の手紙だった。サイアクでしょ」


「…そ、そっか。う、うん、よかったよかった」


よくないからね!何でそこで満面の笑みを見せてくれるの?今は一緒に「それはザンネンだったね」って俺の頭を撫でてくれるとこでしょ!


「それ、送り主の名前とか書いてあったの?」


「う、うん、まぁ…」


「え、なに?あたしの知ってる子?」


「いや、多分、知らない」


送り主の名前…もうおわかりの方もいらっしゃるかもしれませんが、直秀ラブであろう鈴木 美奈さんでしたぁ!晃のことは諦めたと思ってたのに、ここにきて行動を開始した模様です。


「ってかあの子、俺ニガテなんだけどなぁ」


「あんたの知ってる子?」


「そうなのよ奥さん!実はかくかくしかじかで」


「いや、ちゃんと言ってくれないと」


通じるわけがねぇ。それはわかっていました。でもやってみたくなったんです、許してください。


「その子さ、直秀が好きだったんだけど…」


それから便所に行くのも忘れ、事細かに説明をした。




「へぇ、萌にそこまで言える子がいたんだ」


「そうなのよ!ビックリよねぇ、ワタクシだったら有無も言わずにダッシュで逃げるわよ!ってかあの時はマジで逃げ出したかった」


まだ屈伸を続けているあかねにつられて一緒に屈伸をしていると、さっきよりも不機嫌な顔が増した萌がやってきた。ジャージに着替えただけでそんな不機嫌になる人なんて見たことねぇ。


できるだけ萌の方を見ないようがんばっていた俺に、あかねは小声を継続させて耳打ちをしてくれた。一郎とは全然違う、もうなんだか夢のよう。


「ここに来る途中で宮田に会ってさ。ジャージ姿もサイコー!って言われてからアレ」


「あぁそうなの?…なんか八つ当たりされそうで怖い」


「おつかれ」


「ひでぇ!」


笑顔で俺の肩をポンと叩き、逃げるようにその場を去った彼女を恨めしく見た。逃げるが勝ちってか?俺も逃げたい。

と、異様な視線に気がついた。うわっこっち見てるよ、睨んでるよ。来るな来るな来るな!


「桃太郎」


「…」


「金太郎」


「…」


「バカ太郎」


「…バカじゃないです」


「バカ太郎」


「バカじゃないです」


「バカ太郎!」


「バカですぅ!」


コイツとは言い合うだけムダだと知っていました!でも戦ってみたくなったの!


「先生がボール持って来いって」


「ターナーが?ってまだ来てねぇじゃん」


「さっき廊下で会ったんだよ。そのくらい予想できるだろ、バカ太郎が」


ボケ、と足を踏みやがった。バカって言ったらバカを突き通せよ!ボケとか挟むな。

あ〜でもたしかボールって用具室にあるんだよな。


用具室は二つある。一つはグラウンドの隅っこ、そして体育館の隅っこ。どっちにしろホコリっぽいんだよ!俺に言うな!あなたは結膜炎とか鼻炎とかに縁がないよね?俺の為に一人で行って来て。


「取って来い」


「…はい」


くそが、体育委員は俺だけかっつうんだよ。お前だって体育委員だろよ、忘れるな!


「一郎くぅん!」


可愛さ100倍(キモさ1000倍)で笑顔を振りまいた俺は一郎の元へ乙女走りで近付いて行った。あなたは誠実で優しい方なのよね、だから一緒に来てぇ!


「断る!」


「えぇ!?さっきと扱いが180度違うんですけどぉ!」


「だって用具室の掃除、ついて来てくれなかっただろうがよ!だから俺は涙を飲んで拒否する!」


…ちっ、覚えてやがったか。それじゃあ仕方ねぇか、勇樹と一緒に行くしかねぇな。


「あれ〜?ワタクシの勇樹君がいなぁい!」


どこどこぉ?お姫様が捜してるってのに見つからない!まさか隠れた…いやいや、あの勇樹が隠れるなんて卑怯なことしないよね。


「あっいた!」


勇樹は友達数人と談笑中でした。でも俺と目が合うと少し困ったような笑顔を見せてくれる。うぉぉ!俺が女だったら今ダッシュで抱きついてる!


「どうかした?」


トテテと捕らわれの姫の元へ、か弱い走りで近付いて来てくれた彼にまず駆けつけイッパイ、思い切り足を掴んで持ち上げた。


「行きましょう王子!」


掴まれて身動きが取れなくなっている彼に、続いてお姫様抱っこを繰り出す。って俺が姫だっつってんのに、何で王子である勇樹を持ち上げてんだよ。立場がまるで逆だろこれじゃ。


「い、一条君?!どうしたの!?」


「愛の逃避行を開始したいのぉ!」


「えぇ?!」


萌が「やめろ!バカ太郎!」と遠くで叫ぶけどスルーだよ!勇樹を返してほしけりゃお前がボールを持って来い!キャハハァ!


「何やってる!もうとっくにチャイム鳴ってるだろうが!」


勇樹を担いで踊っていると、ターナーが現れた。なんだこんにゃろう、ちょっと女子に人気があるからって声を張ってんじゃねぇよ!庭田先生に言っちゃうよ?


「いや、ボール持って来ようとしたんですけど」


「ボールならここにある!早く並べ!」


一度ならず二度までもこんちくしょうが!自分で持ってきたなら萌に持って来いとか言うんじゃねぇよ!俺が苦労するんだからさぁ!


「ごめんね勇樹様。少しの間だけ離ればなれになってしまうけど」


「う、うん」


涙を潤ませて勇樹と離れた俺に対し、彼は微妙な笑顔で返答した。キモいよね、ごめんねぇ。


「早く並べ!」


「あいあいぃ!」


うっせ!


「マラソンからドッジボールに変更したので、ドッジボールをする!2列に並べ!はいチーム作り終了!」


早ぇ!ってかタンマ!ちょっと待って!


「先生ぇ!できれば俺、あかねと一緒のチームがいいですぅ!」


「断る!」


それこそ早いよあかねぇ!


(あんたあたしが言ったこと…)


断固として拒否したあかねはアイコンタクトを送ってくる。ち、違うよ!俺は萌と同じチームになりたくないだけで…。


「はいはい行くぞぉ!あぁそういえば一人足りないんだったな。…俺が入るしかないか!」


ハハハと不気味な白い歯を見せて笑うターナーを、恨めしそうに見つめる人物が一人…八重子。


「私、ターナーと離ればなれになっちゃった…」


お前も俺と一緒だな。できれば俺達二人、誰かとトレードしてぇ。


「いてぇ!」


ジャージを、というよりも腹の肉を掴まれた!いや、皮だ。肉じゃなくて皮を引っ張りやがった!誰…って考えるまでもねぇか!













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