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第3話 お昼ご飯はエビフライ

時は過ぎ、今は楽しい楽しいお昼ご飯の時間です!


結局は体育委員をやるハメになったけど、まぁやる事なんて体育祭のときに何かするくらいでしょ?深く気にしてたら伊藤センセーが言ってた通り、楽しい学校生活なんて送れやしない!さぁお昼ご飯を食べましょう!


俺は毎日、愛妻ならぬ愛母弁当を持参しています。母ちゃんいつもおいしい弁当をありがとう!と涙を流しつつ食べる、わけはない。あっ感謝はしてますよ?


でも私、見てしまったの。


1コ下の弟が俺よりいい弁当を持っていきやがったのよ!母ちゃんなぜあいつの弁当にはエビフライが入っているはずなのに、俺のには入ってないの?朝見たんだよ?母ちゃんが楽しそうにエビフライを揚げてるところ!弁当に入れるつもりだったんだよね?

ヒイキすんなよなぁ!何気に悲しみが込み上げるわ。


こうなりゃ今俺の目の前でうまそうに納豆巻きを食べてる一郎に八つ当たるしかないわ!


「イテッ!てめぇ、何すんだ!?」


あぁ少し、ほんの少しだけど心のキズが癒えた気がする。


「おい!無視か?無視なのか?いきなり人の頭を叩いておいて無視なの太郎君?」


「納豆臭ぇんだよ」


「じゃあ言えよ!態度じゃなくて言葉で示せよ!」


エビフライの恨みと納豆臭さと一郎のアホ面でイライラ最高潮!に到達しようとした時だった。


「あんた達昼ご飯くらい黙って食べな!」


隣りで静かに食べていると思ったら萌の罵倒。うっわ、ひどい言われ様。でも「あんた達」って?一郎だけに言ったのなら「あんた」でいいよね?僕は別にうるさくなんてしていませんけど?


「こっち見るな。ご飯がマズくなる」


「…」


ちくしょう、人が下手に出てりゃあ調子に乗りやがって。

でもいいの、一郎君の頭を叩いてスッキリしてるから……ってただ怖いからでしょ?そうさ、萌の逆襲が怖いだけなのさ。


「すいませんでしたー…あっエビフライだ!」


心のこもらない謝りついでにふと見ると、萌と一緒に食べていたあかねの弁当にエビフライが入っているのが見えた。

うん、とってもおいしそう。


やべっ、なんかよくわからねぇけど、食いてぇ!どうする?どうしたいの?もらう?

またもや俺の頭の中で葛藤が開始する。


(いただくがいいわ!あの優しいあかねの事よ?きっと、あぁいいよってくれるハズ。恥を忍んでもらうがいいさ!)


そう天使が囁く……ってか天使さんよ、なんか言葉使い変じゃないですか?それじゃまるで悪魔でしょう?もしかして悪魔のポジション狙ってんの?

ってあれ?悪魔?おい!寝てんのか?それともまだいじけてんの?このままじゃ天使の言う通り、エビフライをもらってしまいますよ?


「あかねさぁ〜ん!」


悪魔が仕方ねぇなぁ、と重い腰を上げたと同時に俺はあかねに土下座した。

それを見た悪魔、今度は俺の脳みそに蹴りを入れて帰って行く。あんた来るのが遅いのよ。


「あかねすわぁ〜ん!お願いです!そのエビフライ、僕に恵んでくださぁーい!」


「えぇ!?あんたって土下座するほどこれ好きだっけ?」


欲しい物の為ならば、土下座くらい何度でもしましょう。僕にプライドというものは皆無に等しい、あっはっはっは…自慢にならねぇ。

あかねは額を床に擦りつける俺を見て、可笑しいのか微かに笑っている。このチャンスを逃すなぁ!


「好きなのぉぉ!死ぬほど好きなのぉ!そしてそんなあなたも大スキなのよぉぉ!」


「わ、わかった!わかったから変な事言うな!」


ありがとうあかね様!僕の為に大事なおかずを分け与えてくださって、女神降臨!!…あっでも!


「ちょっと待ったぁ!」


エビフライを俺の弁当箱へ入れてくれようとしたあかねを見て思った、だから止めてみた。


「な、なに?いらないの?」


戸惑うあかねさん、ごめんね?惑わせて。いや、エビフライはとっても欲しいのよ。でも、でもね?そのエビフライをもらってしまったら、あなたの食べる分が減るのよね?今日も空手部に出るんでしょう?お腹が空いて力が出ない、なんてことになるかもでしょ?


「あかねぇ!俺の、俺の…!」


「なに?何なの?!」


俺達のやりとりを見つつ、萌は珍しいことに一言も言葉を発しない。呆れられてるのかしら?いや、今はそれどころではない!あかねの運命が俺にかかっているんだ!萌の事は一切忘れよう!そして一生忘れたい!


「俺の…弁当から好きな物を持っていけぇ!」


「は?」


「いや、だから交換を致しましょうってこと」


「え?い、いいよ別に。あたしそんなにお腹空いてないし」


そんなことは許されないの!わかってあげて!私のこの気持ち、わかってあげて!


「ダメェ!何でもいいから持って行けぇ!……あっ」


俺、おかず全部食べちゃってるよ、てへ。っじゃ済まねぇ!これじゃあ俺を悲しませない為にいらないって言うしか道がないよね!あかねって本当にいい子だよね!でもそれじゃダメなの!


俺は辺りを見回した。誰かまだおいしそうなおかずを残している奴・・・・萌は論外、だって絶対にくれない。くれたとしても、米粒とか?ダメだダメだ!もっと現実を見ろ!もしかしたらあかねの為に萌が俺に協力してくれるかもしれない!


「…」


「なに」


こわ〜い。絶対にあなたのおかずを分けてくださいなんて言えなぁい。もうこうなったら!


「…」


「なんだ?」


納豆臭ぇんだよ!黙ってたけど教室中納豆の匂いが充満してんだよ!ってかその前に納豆巻きってなんなんだよ!家で食え、家で!こいつもお話にならねぇ!ってことはこれしか方法はない!


「あかねぇ!ちょっと待ってて!今から購買行ってなんか買って来るから!それと交換しましょうね!」


「ちょ、いい!いいって!いらないから!」


猛ダッシュで教室から抜け出そうとした俺の腕をがっしりと掴まえたあかね。こ、この力、ハンパじゃねぇ。俺がビクともできないなんて、さすが空手部のホープ、恐るべし!


「食べていいから…」


疲れ果てた声でそう呟くあかね。部活の前にそんなに疲れたらダメじゃない。


「でもでもでもぉ!」


ブリッ子風に可愛く俺がそう言うと、それが悪かったのか萌が口をパクパクと動かし始める。なんか言われる予感がするよ。なんておっしゃるつもり?「ボケェ!」とか?


「…」


「あっ」


何を言われるのか待っていると、萌は目にも止まらぬ速さでエビフライを手で掴み、そして口に含んだ。とってもおいしそう、じゃねぇ!


「萌ぇぇぇ!」


「エビフライくらいでギャアギャアうるさいんだよ」


この子、ひどい!ひどいったらありゃしない!


「よくも、よくも俺のエビフライを!」


「別にあんたのじゃない」


「俺のだぁ!あかねが俺にくれたんだい!」


その場でだだっ子のように地団駄を踏む、けど萌はそれを鼻で笑いながら尻尾までバリバリと食べて、そして俺を鋭い眼光で睨む。恐ろしいよこいつ、まるで百獣の王。


「許せねぇ!わたくし、あなたを許しませんわ!」


「だからその話し方気持ち悪い」


き、気持ち悪い?


先ほど萌さんは『怖い』とおっしゃってましたよね?気持ち悪いって、これって昇格したの?あっ降格か。

それに本当に言葉使い悪いわぁ。でもこいつの親父はなぜかそんなあなたを溺愛しているのよね。


って溺愛もいいけど育て方を間違えてますよぉ!こんなんじゃ嫁のもらい手なんて現れないよぉ!金目当ての男しか現れないよぉ!


「痛い!」


萌の素早いローキックが俺のふくらはぎを捉えた。あまりの痛さにその場に倒れ込む。この、まだ何も言ってないじゃないよ!


「何すんだ!」


「何か腹が立ったから」


…それだけ?あなたはそれだけの理由で罪のない人にローキックを喰らわせるの?そんなんじゃお前の行く先々で俺のように倒れ込む人が続出するってんだ!


「俺の、エビフライ…」


後悔先に立たず、ホントにそうだね。くれるって言ってたんだから、さっさともらって食べちゃえばよかったよね。俺のせいだよね。


「そう気を落とすなよ、俺のやるから」


一郎!やっぱり持つべき者は親友だよね!


「臭ぇんだよ!俺は別に腹が減ってるわけじゃねぇんだ!」


「なんだよ!じゃあいいよ!食っちゃうからね!」


「食べちゃいなさいよ!そして食べたら窓を全開に開けてよね!」


「言われなくても、痛いぃぃ!」


最後の納豆巻きを食べようと、大口を開けた一郎の顔面めがけて筆箱が飛んできた。はい、萌の仕業です。ってそれ俺の筆箱ぉぉぉ!







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