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第16話 あいつは萌にぞっこんラブ

授業終了の起立&礼をした後、俺は庭田先生に呼ばれた。男共ぉ!お前達は呼ばれてないからこっちくんな!


「なんでしょう?」


廊下に出た俺は庭田先生を見つめています。俺はファンクラブ会員じゃないけど、やっぱ美人ですよね。他の生徒に挨拶をされた先生は笑顔を見せる。そのはにかんだ笑顔、もう最高です。

そんな風に天国気分を味わっていた時、またもや背中に視線を感じる。振り向くな!今この視界に先生以外の人を入れちゃダメ!絶対に他の男共だろうし。


「ホームルームのときのことなんだけど」


やっぱり聞きますよね。そりゃそうだ、自分の生徒が鼻血出して教室に戻って来たら、伊藤先生にも言いますよね。安心してください、俺はチクったな?なんて言いませんから。

ってか謝ります!


「怒鳴ってホントにすいませんでした!あの時は俺も、なんていうか」


「あっいえ、いいのよ」


いいんですか!?ホントにいいんですね?俺、やっぱり会員になります!何番になるのかしら?


「あの後、杉原君に聞いたら自分が全部悪いって言われたの。でも理由は教えてくれなくて、一条君なら知っていると思ったんだけど」


「え〜っと…」


言うの?言っちゃうの俺?言いふらすってわけじゃないんだけど、なんかこれ以上言ったらダメな気がするよ。高瀬と萌に悪いし。でも先生は美人だし…って関係ないし!


「先生」


あれこれ悩んでいる俺の背後から女子の声が聞こえた。この微妙に低い声は萌だね。あの子、顔は可愛いクセになんでこんな低い声が出るのよ。ヘタしたら俺よか低い…言い過ぎました。


「秋月さん?に高瀬さん。どうしました?」


高瀬もいるの?あれ、ホントだ。2人仲良く並んで何してんだ?ってぇぇ!後ろに一郎がいるぅ!こっちを見るな!子羊のような目で見るな!後でかまってやるからどっかに行ってて!


「杉原のことなんですけど」


萌さん、そこは一応「杉原君」と言いませんか?庭田先生はあの野郎の担任ですよ?俺もあの野郎とか言っちゃったけど。それは心の中で言ったからオッケーよ。


「一条は何も悪くないんです、私達の為にアイツを殴っただけなんです」


た、高瀬さん?殴っただけって…ほら、先生の目が点になってるよ?しかも高瀬、お前まであいつのことを「アイツ」って。

先生、理解できていないようですね。まぁ高瀬もこう言っているし、説明しておく?


「そう……わかりました。ありがとう」


「え?理由聞かなくていいんですか?」


思わず質問しちゃったよ!理由を言わなくていいんだよ?万歳三唱でしょ?俺ってホントにめんどくせぇ。初めて自分を殴りたいと思いました。


「いいの。そんな真っ直ぐに目を見て話されたら、理由なんて聞けないわ」


「せ、先生ぇ!」


俺は学習能力がねぇのか!か、体が勝手に先生に引き寄せられるぅ!

でも、絶対に触れることはできません。だって、


「ごばぁ!」


またもや華麗にかわされ、今度は裏拳を喰らいました。マジで痛ぇ!俺も鼻血出す勢いだよ、情けねぇ!


(怯まずに先生に抱きつくがいい!そして次はかかと落としを喰らうがいい!そして…)


そしてそしてってうるせぇ!お前さっき自分のこと清楚だって言ったろうが!清楚な奴が「喰らうがいい!」なんて言わねぇよ!ちょっとは先生を見習えボケ!


(…私は清楚よ)


言っただけ!それ言っただけだから!何も意味がないから!

そう言うなら後でまた呼んでやるからその時にマシな事言ってみろよ。俺って優しいね。


(そんな悠長な事を言っている場合じゃないだろうよ!……もうすぐ消えてしまうのに)


消えんの?寂しくなるけど、グッバイ天使。


(塵のように消えるがいいさ!)


俺が消えるのかよ?!って俺が消えたらお前だって消えんだろが!マジでアホだなお前!俺が葛藤してるときだけ出て来いや!


天使とケンカをしていた俺は、気がつくと床に倒れていた。なんか俺って、倒れてばっかだよ。


「ご、ごめんなさい!」


謝りつつしゃがみ込んだ先生は、倒れたまま見上げても、お美しい…ってか俺は誰?

先生の暖かい手を待っていると、萌に蹴られた。あんた、手じゃなくて足を出すかフツー。


「いてぇ!何すんだよ!」


「早く立ちな。スカートの中を覗いてると思われてもいいわけ」


「え…」


目の前にはひざ丈スカートの庭田先生、そして周囲に目をギラつかせている男子生徒…と伊藤先生ぇぇぇ!ガン見してるよ!怖ぇ!

素早く立ち上がった俺は、ごまかし笑いを浮かべる。けど誰もそれに乗ってくれない。あっ遠くで一郎が俺を見てる……冷めた目で。お前もか!


「すいません…」


泣き出しそうな俺を見た先生は「い、いいのよ」と微妙な笑顔を見せてくれた。そうだよね、微妙な笑顔にもなるよね…すいませんでしたぁ!


先生を涙目で見送った俺は、一郎の跳び蹴りもスルーして教室に戻った。

なんかどっと疲れた、まだ3時限目が終わったばっかなのに。普通に高校生活を送りたいだけなのに、なんでこんなに波瀾万丈な生活を強いられるのでしょうか。誰か知っているのなら教えてほしい。


「おひ太郎ぉぉ!」


なんだ?そのアダ名は聞いたことがないぞ?おひ、おひ…お久しぶり太郎、とか?ってかこの声、聞きたくねぇ。


「人が挨拶してんだからこっち向けよぉい!」


「あっ晃ぁ。久しぶりだな!」


「おう!おひ一郎!」


やっぱ「お久しぶり」の略かよ!いらねぇとこを略すんな!普通に言えよ、お前一郎と同じ脳みそ持ってんの?まっ俺も似たようなもの持ってるけど。

このハイテンション野郎は、宮田 晃、たしかB組です。一言で言って色男。なのに一郎と同じ脳みそを持っている、かわいそう。


「お前、もう体は大丈夫なの?」


「体ぁ?俺はピンピンですよ?」


一郎が心配そうに聞いたのに、こいつは。あれ?たしかお前、この前車に轢かれて入院してたんだよね?しかも入院中、「男は見舞いに来るな」って言われてたから行かなかったけど。今日から出て来たんだね、疲れる要因が増えたわ。

って一郎が女子を心配しても男を心配することなんてないんですよ?珍しいことなんですよ?それを簡単にスルーしちゃだめだってば。


「そんなことよか、俺の萌ちゃんは?」


お、俺の…?そうだった、こいつは萌にぞっこんラブ…表現が古いって?気になさらないで、私は中世の生まれ……古すぎだから!

って萌なら、あららいないよ。お前の存在を察知して便所にでもお逃げになったんでしょう。追っちゃダメよ、変態になるわ。


「萌ならさっき高瀬とどっか行ったけど、追いかけたら?」


手をヒラヒラと動かしてどっかへ行けと無言のプレッシャーを与えてみた。しかし晃にそんなものは通用しない。


「マジかよ!お前等ちゃんと捕まえておけよな!ホントに役に立たねぇ!」


一郎さん、やっちゃってもいいっすか?

俺は目で一郎に合図を送る。こういう時はアイコンタクトはばっちり。ってか俺と一郎って同じこと考えてるからアイコンタクト以前かもね。


(やっちゃいましょうよ、太郎さん)


そう目で訴える一郎。お前、目が据わってるよ?さっきあんなに仲睦まじく話をしていたんじゃなかった?……やりましょう。


(いきますわよ?)


いいわよ、やっておしまいなさい!

俺が頷いたイコールやっちゃえ!の合図に一郎が「ひゃっほぉぉ!」と雄叫びを上げて晃に飛びかかる。羽交い締めにしたのを見計らい、俺はヤツの懐に飛び込み、無数の突きを喰らわせた。これで笑わなかったヤツはいない。


「おま、おひゃひゃひゃはひゃ!」


やったよ一郎さん!俺達は倒れ込んだ晃の上でハイタッチをした。いやぁ、最高の気分ですよ。お前、最近女子にキャーキャー言われて調子に乗ってたろ?これは男子達の悲しい攻撃だと思え!


「お、お前等…マジ、マジで」


マジマジなんだ?言葉も続かないほどに笑ってくれたかい?


「俺達の魂の叫び、とくと味わえ!」


一郎がまだ倒れたままの晃にアキレス腱固めを仕掛ける。「いてぇ、いてぇって!」と言う晃の言葉を聞き入れることもなく、一郎は手を緩めない。あんた、相当怒ってるのね。しかも俺達って……ただの八つ当たりじゃね?


「俺、病み上がりなんだよ!もっと丁重に扱え!」


「さっきピンピンしてるって言っただろうが!太郎、いいわよ!」


そこでオネェ言葉かよ!決めるときくらいカッコ良くいこうよ!


「いくわよぉ!」


って俺もぉ!


まだアキレス腱固めを決めている一郎を「ひょぉぉ!」と飛び越え、腕ひしぎ十字固めを喰らわそうと晃の腕に手を伸ばした。


「いってぇ!」


叫んだのは俺です。

技も何も決められてないのになんで?って思った瞬間、あかねの顔が現れた。

あぁ、腕を掴もうとしたとき、あかねに蹴られたのねぇん。しかも後頭部…意識飛ぶわ!


「あんた達、いい歳して何してんの」


その呆れ果てた顔、晃に見せてくださいよ。そして蹴ってやってくださいまし、喜ぶと思いますよ。


「てめぇら、俺が、俺がモテるからひがんでんだろ?」


「…」


図星だよばっきゃろぉ!しかもいつもより無言が長い!悪かったねモテなくてぇ!いいんだよ、俺はみんなに愛されるよりも一人の女性に愛されるから……まだいねぇけど。


「太郎、行こうぜ」


「おぉ」


倒れたままの晃を無視し、俺達は立ち上がると教室を出ようと歩き出す。行くところなんて決まってる、おトイレですよ。モテない男同士、仲良く手をつないで行きますよ。


「え、ちょっと待てよお前ら」


なんだよ、モテ男と一緒にいたってつまらねぇんだよ!ひがみ最高潮だよ!


「あっ津田。俺の萌ちゃん知らない?」


俺達を呼び止めておいてあかねかい。しかもあかねは呼び捨てで萌はちゃん付けかいぃ。見ろ、あかねが呆れ返っているよ。お前って誰にでもモテるわけじゃないんだよ?絶対にあかねは君を見てもキャーキャー言わないからね。彼女の蹴りに気をつけな。


「知らないよ、あたしずっと教室にいたし。っていうかあんたさ、もう萌に付きまとうのやめたら?」


「なんで?というか、付きまとってなんかないよ。俺達は惹かれ合ってんだから」


「…あっそ、もう勝手にして」


あかね、頼むからこいつを蹴ってくれぇ!俺じゃダメなんだよ、こいつに俺の攻撃は効かないんだよ!女の攻撃しか効かないんだってば!一言だけ言ってやって!「あんた嫌われてるよ」って言ってあげて!そしたら彼も自分の過ちに気がつくからぁ!


「勝手にって…津田、悪いが俺はお前の気持ちに答えてやることはできない。すまない」


お前、何をそんな真剣に謝まってんの?お前の脳みそは何で出来てるの?みそと思わせてウニか、ウニなのか。ってウニは高級な食べ物だったよ。じゃあカニみそ……これも高級?


「あんたねぇ……なんか話してるだけで疲れるわ」


ちょっとあかねさん、ダメだって!このバカを野放しにしちゃいけないわよ!もう、私に任せて!

俺は振り返り、倒れたままの晃にカッコ良く指を差した。オレ流の決めポーズ。


「晃ぁ!言っておくが、あかねはお前などに米一粒も興味を示しちゃいねぇよ!なぁあかねぇ!」


「…はいはい」


そこは元気良く言ってぇ!それじゃ俺がまるで負け惜しみを言ってるみたいでしょうよ。

ほら晃の野郎、鼻でスンと笑いやがってるわ!くすぐりどころか首締めてやりてぇ!


「わかったわかった。…敗者の戯れ言だな」


「歯医者?おいおい、今は歯医者の話をしてねぇだろ。何を言ってんだよ」


お前が何を言ってんだよ一郎!しかもなんですました顔して言ってんだ!カッコ良くねぇよ、間違ってんだから!漢字が違うよボケェ!ダメだ、こいつといたら俺までバカだと思われる。


「バカな奴らと無駄な時間を過ごしている暇はないんだ。じゃあな」


「行け!勝手に行け!ってかA組に来んな!」


一郎、もういいよ。ホントに敗者の戯れ言になってるから。あっお前、うっすらと涙を浮かべてるじゃねぇか。


「一郎さん、俺のハンカチでよかったら使ってくれ」


「ありがとう太郎、ってこんな汚ねぇの使えるかよ!」


ハンカチを受け取った一郎は、それを思い切り俺に投げ返してきた。でもハンカチだから痛くない、でも心が痛い。


「てめぇ!人がせっかく優しくしてやってんのにこの対応はひどいわ!」


「いらないわよそんなハンケチーフなんて!自分の持ってるからいいわ!」


ハンケチーフってなんだよ?ってかそれ俺のよりしわくちゃじゃねぇか!いや、しわくちゃというよりグチャグチャだよ。お前、それいつからポッケに入ってた?…怖くて聞けん!



























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