番外編7 俺達から言わせてみれば
またもやの番外編です。今回はサブタイ通り「俺(僕)達」視点の話になりました。前回更新より月日が経ってしまいましたが、読んでいただけたら幸いにございます。併せて活動報告も投稿させて頂きました。
ふは、ふはははは! 今さら萌ちゃんのことが気になりやがって太郎のアホめ! 彼女の秘めたる美しさにやっと気がついたってワケか!
…………なぜだろう、とてつもなく虚しいぞ。萌ちゃんは俺の萌ちゃんで、俺達は一心同体で……。
「晃ナイッシュー!!」
「……くそっ」
俺としたことが部活にも全く力が入らない。……バカ俺! こんなんじゃインターハイになんて行けるか! 萌ちゃんが応援に来てくれるんだぞ!? (インターハイ出場が決まったら全校生徒が応援しに来るだけだがな!)
萌ちゃんは、俺の萌ちゃんだ……ずっとそう思ってきたし、勘違いだとも思っちゃいない。
あの時、ケガした俺を手当てしてくれる彼女の横顔に惚れた。この世のものとは思えなかった。彼女の周りだけ空気が違うような、そんな印象を受けた。それが俺の初恋だ。
小学生の頃からバスケしか知らなくて、それ以外のことなんて興味はなかった。友達もだ、バスケする相手がいればそれで良かった。それを真正面から否定された気がした。この人しかいない! って、中学生の分際で思ったんだ。
「あ、宮田。いま帰り?」
部活が終わり、着替えを済ませて外に出ようと玄関に行くと、見知った顔と出会った。彼女はいつものタオルを首に掛けてお疲れと挨拶をしてくれた。
「おぉ津田、お前も帰りか?」
「うん」
津田……コイツは良いヤツだよな。中学の時から知っているが良いヤツだ。男だったらもっと良かったかもしれな……だ、ダメだ! これ以上萌ちゃんの近くに男はいらん! やばい、コイツが男だったら…………萌ちゃんに会いたい!!
「な、なに? 何で睨んでんの?」
「……お前が女で本当に良かったと、心の底からそう思うよ」
「はぁ?」
「送ってく。外も暗いしな」
「えぇ!? い、いいって! 送ってくれなくていい! 一人で帰れるから!」
なんでだ? なぜ津田は俺が送ると言うと決まって必ず断ろうとするんだろう。いくらお前が強いからって、女子を一人で帰すなんて……。
「いいから行くぞ! そして今日の萌ちゃんはどうだったか教えろ!」
なんとでも言うがいい! そうだよ、俺の目的はただ一つ! 萌ちゃん報告が聞きたいが為だ! それを聞けるならば家が反対方向だろうが何だろうが俺は送る! 嫌がられても送ってやる!
「いつもと同じだっての! あんたの知ってる萌だよ!」
アホ! とスポーツバッグを小脇に抱えて彼女は玄関を飛び出した。が、さすがにバッグを抱えながら走るのはキツイだろう。軽く追いつける。
「うわっ!? ちょっ、来るな!」
「いいから教えろ! 今日の萌ちゃんはどうだった!? 俺が思うに――」
「だから同じだって言ってんでしょうが!! 追いかけて来るな!!」
「待てぇぇえ!! 津田ぁぁああ!!」
は、速い! この俺が逃げられてしまうとは、一生の不覚!
もう追いつけないと立ち止まり、津田が走り去った方角に目を向けた後、夜空を見上げた。萌ちゃんに写メしたいくらいにキレイな星だ。
「太郎……やってくれたな」
やはり俺の勘は正しかったようだ。なんだかんだと萌ちゃんの隣りにいて、それが当たり前になっていた。最初はなんだコイツと敵意むき出しだったが、ヤツのアホらしさにいつの間にか居心地の良さを感じて。
ハハッ、俺もアホだ。恋敵と友達やってんだからな。それも俺が勝てるハズもないであろう恋敵と……。
「太郎の……バカやろぉぉぉぉおおおお!」
俺もバカ野郎だ! 最初から負け戦だ! だがな、男にはやらなきゃいけないことが1つか2つあるんだ! だから俺は諦めない! たとえ萌ちゃんに太郎を好きだと言われてもだ! 俺はバカ野郎でいい!!
あまりにキレイなので、星空を映した……上手く撮れなかったので萌ちゃんには送らなかった。
――――――
ごめんね一条君。あれはただの嫌味だったね。でも、悔しかったんだ。きっと、絶対に秋月さんは君が好きだって分かってるから悔しいんだ。
塾が終わり、夜道を一人歩いていた僕はふと立ち止まり夜空を見上げた。雲一つ無い、綺麗な空だ。
母親からの「帰りに牛乳買ってきて」と電話でのお願いを受け、ふぅっと一息ついてからコンビニを目指して歩き出す。そういえばあのコンビニ、夜は不良みたいな人達が入り口に溜まってるんだよなぁ。どうしようか、遠回りだけどあっちのコンビニ行こうかな。
「……やっぱり、行こう」
いつもの僕なら間違いなく遠くのコンビニまで足を伸ばしていたはずだ。でもそれはしたくなかった。僕は何も悪いことはしていない。その人達が嫌だからって、何故わざわざ別の道を行かなければいけないんだ?
「それはねぇーって! ねぇよマジで!!」
歩き続けて約5分ほどでコンビニにやって来た。思った通り、店の入り口には男女数人がその場に座り込んでいる。夜も遅くなってきたというのに、周りも気にせずに大声を張り上げて喋っている。そしてそれを許せない……けど、何も出来ない僕はあの人達と同類か。
よしっと緊張の面持ちで歩き始めた僕は、すぐにその男達が僕を見て……いや、睨んでいるのに気がついた。でもここで怯めない。僕は何も悪いことはしていないんだ。
「ちょっとお兄ちゃんよぉ」
これも想定の範囲内だ。何もしていなくとも、こういう人達はなんだかんだとイチャモンをつけたがる。ただ歩いている人にすらこうだ。
「お前、ここが俺達のナワバリだって知ってて来てんだろうな?」
髪を金髪に染め上げてオールバックにしている男がコンビニに入ろうとした僕の目の前に立ちはだかった。
「……知りませんでした」
「ここに入りたかったら……おい、ビール足りてるか?」
「ないな~い。買って来て~」
「ってことだ。ビール入った袋両手にぶら下げて帰って来いや」
要するにこれはカツアゲみたいなものか。いつまで経っても僕は弱い人間に見えるから、そういう対象になるんだろうな。一条君だったら……どうしたかな?
『あぁ? ビールぅ? 飲みたいならテメーで買って来いや! ってかココお前の土地なの!? 証明書見せてくれたら買って来ますけどぉ!?』
って言った後にものすごい勢いで逃げそうだ。見せろって言ったのに逃げそうだ。
思わずフッと笑ってしまったのがいけなかったみたいで。それを自分達に向けた侮蔑の笑みと取ったらしい。
「テメェ何笑ってんだよ? ビール買って来たら許してやるって言ってんのに、それじゃ満足しねぇか?」
金髪の男は眉間にシワを寄せて僕の胸ぐらを掴んできた。僕の力ではこの手を振りほどくことは出来そうもない。でも、ただ黙って殴られるのも嫌だ。僕だって、僕だって!
「こ……こ……」
「あ? なんだコラ? 言ってみろや!?」
「ここ……は、あなたの土地なんです、か? 所有しているんですか?」
「あぁ? そうだよ俺の土地だ!」
「だ、だったら……それを証明出来る物を見せて、ください。あなたの土地だと分かったら、勝手に入った事を詫びて、ビールでもつまみでも買って来ます……!!」
これが僕に出来うる唯一の戦い。力じゃどうしようもなく負ける。
「うっせぇんだよ!」
殴られる! 僕は目をつぶった。やっぱり、何をどうこう言っても最後は暴力でしかないのか。でも、後悔はしない。僕は僕が出来ることをやっただけだ。
「っ!」
ガツンなんかじゃなく、表現に困るような鈍い音が頭に響いた。思い切り左頬を殴られた僕は為す術なく地面に突っ伏す。
すごく痛い。口の中が切れたのか、鉄サビのような味が口いっぱいに広がった。
「あ~あ。お前が悪いんだからな? 黙って買ってくれば痛い思いしなくて済んだのに」
しゃがみ込んだ金髪の男は倒れたままの僕を見下ろすとそう吐き捨てる。
僕は、弱い。力もない。強がっても、結局はこうして殴られてしまう。
……でも!
「もう殴られたくないだろ? なら――」
「何度……殴られても、僕の考えは……変わりません……。あなたの、土地だと証明出来る、物を……見せて、ください……」
弱い弱いって、僕はそれを言い訳に今まで生きてきたかもしれない。自分でそう決めつけてた。
けど、殴られるのは痛いし嫌だけど、屈したくない。負けたくない!
痛みを堪えながら立ち上がり、真っ直ぐに男を見る。僕の言葉を聞いた彼の顔がだんだん引きつり始めたのがわかった。
「……上等ぉ。その減らず口叩けねぇようにしてやるよ」
何を言われても僕はもう目を逸らさない。逸らしたら負けだ。殴られるとわかっていても、引けない。
もう一度胸ぐらを掴んできた男はゆっくりと腕を振り上げる。でも僕は目をつぶらない。ジッと男の顔を見つめ続けた。
その時だった。僕でも、もちろん今まさに殴りかからんとする男の声でもない誰かの大声が周囲に響き渡った。
「お前達何してるーー!?」
声の主は真っ青な制服に身を包んだ、見るからに若い警察官だった。大声を張り上げながら猛スピードで自転車を走らせてくる。
「やべぇ!」
捕まるのはゴメンだ! と、男達は四方八方に走り去って行く。残された僕は男達が逃げた方向へ目を向けることなくその場に突っ立っていた。
……お、終わったのか?
「キミ、大丈夫だったか!?」
急ブレーキで止まった警官にそう聞かれ、一度だけゆっくりと頷く。彼は僕の目をジッと見つめると、帽子を脱ぎ敬礼をして見せた。
「キミの勇気、しかと見届けた!」
またまたそう大声を出した警官はすぐさま帽子を被り直し、「待て貴様らー!」と猛スピードで駆けて行った。
終わった……終わったんだ……。イテテ。ほっぺた、というよりも口の中が気持ち悪い。血の味が残っている。
牛乳を買うついでに水も買ってうがいでもしようかと、警察官が去って行った方をぼうっと見つめていると、コンビニから店員と思しき女性が顔を覗かせた。
「あの、大丈夫でしたか?」
そう言って女性……と言っても、僕と同い歳くらいだろうか、店員さんは僕に近寄りハンカチを差し出してきた。
「あ、大丈夫ですから……わわっ」
ハンカチに血をつけてしまっては、と断ろうとする前に彼女は有無を言わさずそれを僕の口元に当てた。
「痛かったですよね……。ごめんなさい」
彼女はうっすらと涙目になりながら何度も謝ってくる。って、僕が殴られたのはあなたのせいじゃないんだけど……。
「あ、あの……あなたが謝ることはないと思うんですが……」
なぜ謝られたのか、いまいちピンとこない僕はハンカチを受け取ると顔を見上げた。この人……僕よりも少し身長が高い。
「キミが殴られたの見えてたのに、何も出来なくて……」
そう言って彼女は手の甲で涙を拭う。……ど、どうしよう。理由はどうあれ、いま僕は女の子を泣かせてしまっている!
「ぼ、僕も……僕があなたの立場だったら、きっと見ていることしか出来なかったと思いますから」
精一杯に笑ってみせると、同時に唇に痛みを感じた。切れたから仕方ないけど、結構ジンジ
ンするなぁ。
なんとか泣きやんでもらえないかとあれこれ考えて……考えた結果、ただ笑う事しか出来なかった。
コンビニの店長と思われる男性から、あの男達には手を焼いていたから本当に助かったと、お礼に牛乳やジュース、お菓子を袋いっぱいにもらった僕は家路を急いでいた。
ハンカチを受け取った後、どうしてあんなタイミング良く警察の人がやってきたかと疑問を口にすると、僕が絡まれている時すぐさま女性店員さんが警察に通報してくれたらしい。
バスを降りて、あとは歩いて帰るだけ。……だけど、いつもなら15分もあれば着くところだが、両手一杯の荷物は思ったよりも重く、一歩一歩がとても辛い。口も痛いけど、両腕が……。
「……あっ」
あまりの重さに立ち止まり、ふと空を見上げたと同時だった。
「願い事、考える暇もなかった……」
流れ星かぁ。前に見たのはいつだったか。あんな一瞬じゃ願い事を言っている時間なんてないよなぁ。なんて考えながら綺麗な星空を眺めた。
荷物を地面に置いて汗を拭こうとポケットに手を入れて思い出す。このハンカチ……洗濯して返さないと。
手の中にはあのとき店員さんから渡されたハンカチ。……それは僕が変わったという証拠のような気がした。
あの行動は自分で驚いた。まさか僕の口からあんな言葉が出るとは思いも寄らなかった。それにいつもなら間違いなく遠くのコンビニへ行っていたはず。なのに、僕はそうしなかった。
「自分が自分じゃないみたいだったな……」
ギュッとハンカチを握り締めて思う。変わった自分に悪い気持ちはしない、むしろ清々しさを感じるくらいだ。
そっと切れた口元に手をやり、小さく目を閉じてから携帯電話を取り出して秋月さんの番号を呼び出す。
「……」
秋月さんの笑顔が見たくて、声が聞きたくて、でも遠くから見つめることしか出来なくて。彼女の隣りにはいつも一条君の姿が当たり前にあって。僕があの場所にいられたらと、どんなに思ったか。
一条君は秋月さんに振られたと言っていた。それは本当なのだろうか? 僕や宮田君の手前、嘘をついたのか……いや、彼は嘘をつけるような人じゃない。本当に、彼は振られたんだ。
「どうしてだろう……」
秋月さんは何を思って彼を振ったんだろう。僕は彼女じゃないからわかるはずもないけれど、どう考えてもおかしい。一条君の事が好きだと思っていたのは、僕の勘違いなのか……ん? 待てよ?
素直に……なれないだけ……?
「有り得る……かな」
秋月さんなら有り得る。断言出来るほど有り得る。なんだかなぁ……。
待ち受け画面に戻した携帯電話を無造作にポケットへとしまい、地面に置いたままの荷物を持ち上げる。空は綺麗な星でいっぱいで、なぜかわからないけれど大声を張り上げたい衝動に駆られた。
「素直になれよ! 秋月さんの……バカーー!!」
――――――
「ただいまキャラメル~! 良い子にしてたか~?」
「ミャ~オ」
「そうかそうか、ありがとうキャラメル、お前だけだよ。……ってチョコお前! それまだ読んでねぇんだぞ!? ビリビリじゃねぇかよ!」
本一冊買うのにどれだけ俺が苦労してるかお前知らねぇだろ!? 血の滲むような努力を積み重ねてんだぜ!? じいちゃん家の掃除、洗濯その他もろもろ! あ? お前らの世話は俺の仕事じゃねぇ、俺の生き甲斐だ!
「ミャ~」
「ぐっ、可愛い仕草したってダメだ! ……あ~あ、まだ1ページも読んでなかったのに、ツイてねぇなぁ」
そんな顔されたら怒る気にもなれねぇよ。
おいでと手を伸ばすと、チョコは俺の足に擦り寄って来る。くっそぉお前可愛い!
「……」
「うわっ! 美咲お前なぁ! いたならいたで声くらい掛けろや!」
よいしょとかがんでチョコを抱っこして、あいよと顔を上げると、いつの間にか美咲が真正面にいやがった。足音立てずにやってくるたぁ良い度胸してんじゃねぇか!?
「……」
何その目!? 兄に向けていい目じゃねぇぞ! 謝れ!
「太郎ちゃん……元気?」
俺じゃなくて太郎かよ!? どいつもこいつも、猫も杓子も太郎太郎ってよぉ! 俺がいるってのに! ってかお前、太郎のことバカ呼ばわりしたクセに気に掛けんのおかしくね?
「太郎は今日も秋月とよろしくやってたよ! 帰りもラブラブだってんだ!」
「……」
なんで俺が喋ったら途端に無言? 俺からの言葉は無視かよ!
「……萌ちゃんは元気だった?」
「あぁ? 俺は秋月じゃねぇんだから元気かどうかなんて知るかよ!」
「ミ~」
「あっ、おっきい声出してごめんなチョコ~。おやつ食おうな~?」
可愛いぜちくしょー。そういやクレープ達はドコ行った? クッキーはじいちゃん家だから、あとはマシュマロ……。
「マシュレープぅぅぅううう!」
お前達は何を!? 何をやってくれちゃったのよ!? 俺の大事なマンガが……さっきのとでダブルショック!! さすが兄妹! やることは一緒ってか!?
「美咲っ! お前知ってたろ!? 俺のマンガがぐっしゃぐしゃになってんの見てほくそ笑んでたろ!?」
チョコを抱いたまま振り返って美咲に突撃! 居間から現れたってことは俺のマンガを助けようとすれば出来たよな!? なんで傍観決めてんだよ!
「私の漫画じゃないし。そんなに大事なら自分の部屋に置いとけ」
「……」
チョコおいでと俺から彼女を奪うと、ふんと鼻を鳴らして2階へ上がって行ってしまった。あの態度、どっかで見たことがある…………そうだ秋月だ! アイツは秋月二世だ!
ふざっけんな! と怒鳴ってみたけど、ヤツはもはや自分の部屋へと行ったのか返事はない。
「なんだよバカやろー……」
良い事ねぇなぁ……まんじゅう食った事くらいしか良いことねぇよ最近。
ちきしょうとビリビリに破けた2冊目のマンガを手に取ってゴミ箱に投げ捨てる。
「……どいつもこいつも、太郎太郎ってかぁ?」
しっかし太郎よ、お前はどこに行きてぇんだ? 秋月に行きてぇのか? 高瀬か? 三井か? もしかしてあかねか?
人生には3回のモテ期があるって聞いたことがあるが、ヤツはまさに今それだな。ってかあれが1回目なら、2回目ってどんなんなる? 考えただけで恐ろしやだぜ。
……俺にも早く来いっつーんだよ。まだ1回も来てねぇぞコラ。本当に3回来るんだろうな?
脱いだ上着をソファに叩きつけて寝転がる。本当に3回来るんだろうな?
脱いだ上着をソファに叩きつけて寝転がる。……イテッ! ボタンが顔に当たった! とことんツイてねぇ。
んがぁと大の字になって天井を見つめて、それから深~い溜め息を吐いてみた。
アイツ、どこまで分かってねぇんだってな。秋月はお前にホの字間違いナシだ。 お前だってそうだろぃ? だって口を開けば「萌が」だしよ。
それをお前、あっちにフラフラこっちにフラフラしてっからモテ期になんぞ入るんじゃ。俺を見てみろ、俺は一筋だからモテ期なんぞクソ喰らえじゃ!
「……虚しい」
あれ? おかしいぞ俺。なんでこんなこと考えてんだ? いくら虚しいからって……何が虚しい?
「た、太郎のバカやろぉぉおおお!!!」
別にどうということはなかったけど、とりあえず叫んでみた。許せ親友、俺の素直な気持ちを言葉にしただけだ。
……あれ? おいクレープ、マシュマロ。お前らなんで離れて行く? なんでそんな哀れみの目をしてる? こっち来てよキャラメルぅぅ!!




